欧米バンドのメッセージを正しく理解するのは難しい。例えば、字面(邦訳歌詞)上は極めてラディカルなMUSE……。“MTV EXIT”とのコラボ曲のタイトル「MKウルトラ」は、CIAによる洗脳活動のコードネームでもある。
彼らのメッセージがどこまでリアルなのか、俺には判断がつかない。かつて知人を介して英語圏の音楽通と話す機会があったが、いずれも〝常識〟を吹っ飛ばされ、日本人として洋楽を聴く限界を思い知らされたからだ。
<黒人のコミュニティーじゃ、プリンスはジョークに過ぎない。スモーキー・ロビンソンの焼き直しで、まともに受け止めてる奴なんていないよ>……。
元米兵の黒人(輸入業者)は20年前、日本のメディアが神格化していたプリンスを斬り捨てた。
<メッセージを信じるに足るバンドは、UKじゃマニック・ストリート・プリーチャーズぐらい。高等遊民の僕なんか、連中にとっちゃ敵だろうけど>……。
5年前、ロンドン出身の英会話教師はいかにもインテリのネイティヴらしく、数多のバンドの仮面を剥いでくれた。
比類なきインテリジェンスを誇るマニックスが、1年4カ月の短いインターバルで新作「ポストカーズ・フロム・ア・ヤング・マン」を発表した。彼らは90年代後半、オアシスの失速を埋める形で<国民的バンド>に上り詰めたが、世紀が変わってからは量的な勝負を避けている。左翼としての矜持から必然の帰結だと思う。
前作「ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ」では、リッチー(現在も行方不明)が遺した散文や詩にエッジの利いたサウンドを被せた。アルビニ独特のスタジオライブのアナログ一発録りで、マニックスは原点に回帰した。
前作のライナーノーツでニッキーはUKニューウェーヴへのオマージュを明かしていたが、新作「ポストカーズ――」にはイアン・マカロック(エコー&ザ・バニーメン)が参加している。両者の接点は知らないが、攻撃性という面では共通点がある。
最初に聴き終えた時、「失敗作?」と首をひねってしまった。ストリングスとコーラスが導入され、らしからぬマイルドなテーストになっていたからである。繰り返し聴いているうち、マニックスの辛口の本質がジワジワ染み出てきた。
ポップな♯1「(イッツ・ノット・ウォー)ジャスト・ジ・エンド・オヴ・ラヴ」から、バンドのマニフェストというべきタイトル曲の♯2へと続く。♯3ではゲストのイアンとジェームズがボーカルを取っていた。バニーズの代表曲「ネヴァー・ストップ」のフレーズが流れるのはサービス精神か。
バンドはカラフルな仕上がりを目指したようだが、アレンジの奥にあるストレートでモノトーンの素の音が広がってくる。ニッキーが中心になって書いた詞は、いつものように濃く、激しく、重くて深い。泣きが入った不惑オヤジたちの成熟と恬淡を示すアルバムがライブでどう化けるか、2カ月後(11月26日、スタジオコースト)が楽しみだ。
併せて購入したブロンド・レッドヘッドの新作「ペニー・スパークル」も、前作「23」と並んで愛聴盤になっている。日本人女性カズとイタリア人の双子男性のユニットが奏でる音は、4ADレーベルでもあり、ニューウェーヴど真ん中だ。コクトー・ツインズの浮遊感と狂おしさが懐かしい人にはお薦めのバンドである。
彼らのメッセージがどこまでリアルなのか、俺には判断がつかない。かつて知人を介して英語圏の音楽通と話す機会があったが、いずれも〝常識〟を吹っ飛ばされ、日本人として洋楽を聴く限界を思い知らされたからだ。
<黒人のコミュニティーじゃ、プリンスはジョークに過ぎない。スモーキー・ロビンソンの焼き直しで、まともに受け止めてる奴なんていないよ>……。
元米兵の黒人(輸入業者)は20年前、日本のメディアが神格化していたプリンスを斬り捨てた。
<メッセージを信じるに足るバンドは、UKじゃマニック・ストリート・プリーチャーズぐらい。高等遊民の僕なんか、連中にとっちゃ敵だろうけど>……。
5年前、ロンドン出身の英会話教師はいかにもインテリのネイティヴらしく、数多のバンドの仮面を剥いでくれた。
比類なきインテリジェンスを誇るマニックスが、1年4カ月の短いインターバルで新作「ポストカーズ・フロム・ア・ヤング・マン」を発表した。彼らは90年代後半、オアシスの失速を埋める形で<国民的バンド>に上り詰めたが、世紀が変わってからは量的な勝負を避けている。左翼としての矜持から必然の帰結だと思う。
前作「ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ」では、リッチー(現在も行方不明)が遺した散文や詩にエッジの利いたサウンドを被せた。アルビニ独特のスタジオライブのアナログ一発録りで、マニックスは原点に回帰した。
前作のライナーノーツでニッキーはUKニューウェーヴへのオマージュを明かしていたが、新作「ポストカーズ――」にはイアン・マカロック(エコー&ザ・バニーメン)が参加している。両者の接点は知らないが、攻撃性という面では共通点がある。
最初に聴き終えた時、「失敗作?」と首をひねってしまった。ストリングスとコーラスが導入され、らしからぬマイルドなテーストになっていたからである。繰り返し聴いているうち、マニックスの辛口の本質がジワジワ染み出てきた。
ポップな♯1「(イッツ・ノット・ウォー)ジャスト・ジ・エンド・オヴ・ラヴ」から、バンドのマニフェストというべきタイトル曲の♯2へと続く。♯3ではゲストのイアンとジェームズがボーカルを取っていた。バニーズの代表曲「ネヴァー・ストップ」のフレーズが流れるのはサービス精神か。
バンドはカラフルな仕上がりを目指したようだが、アレンジの奥にあるストレートでモノトーンの素の音が広がってくる。ニッキーが中心になって書いた詞は、いつものように濃く、激しく、重くて深い。泣きが入った不惑オヤジたちの成熟と恬淡を示すアルバムがライブでどう化けるか、2カ月後(11月26日、スタジオコースト)が楽しみだ。
併せて購入したブロンド・レッドヘッドの新作「ペニー・スパークル」も、前作「23」と並んで愛聴盤になっている。日本人女性カズとイタリア人の双子男性のユニットが奏でる音は、4ADレーベルでもあり、ニューウェーヴど真ん中だ。コクトー・ツインズの浮遊感と狂おしさが懐かしい人にはお薦めのバンドである。