酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「渇き」~アガペーとエロスに揺れるバンパイア

2010-03-28 02:35:01 | 映画、ドラマ
 島津有理子キャスターがNHK「おはよう日本」を卒業した。知性と愛嬌を合わせ持つ島津さんはこの1年半、俺にとって〝朝の天使〟だった。寂しさは否めないが、異動先(ニューヨーク支局)で資質を磨いてほしい。

 先日、「渇き」(09年、パク・チャヌク監督)を見た。カンヌ映画祭審査員賞など多くの賞を獲得しているが、肩透かしの感は否めなかった。

 本作を論じる前に、脇道から進めてみたい。

 キム・ヨナと浅田真央、宮里藍と韓国女子ゴルファー、野球、サッカーetc……。スポーツ界で日韓は常にライバル関係にある。芸能界では韓流ドラマに続き、東方神起が日本を席巻中だ。夏には同時期にロックフェスが開催され、両方にブッキンングされたバンドが日韓を行き来する。日韓国民は様々なジャンルで同じものに触れ、心を熱くしている。
 
 「爆笑問題のニッポンの教養」で上智大・鬼頭宏教授(歴史人口学)は、「奈良時代の人口の70~80%は朝鮮半島からの渡来者」と語っていた。日韓が同根の〝兄弟木〟なら、感性とトレンドが似るのは当然だ。

 「とんでもない。私は生粋の日本人だ」と主張する人に、簡単なルーツ識別法を伝授する。耳アカが粘っこければ縄文人(原日本系)、乾いていれば弥生人(渡来系)という。俺が韓国映画にピンとこないのは、きっと縄文人だからだろう。

 以下に興趣を削がぬよう「渇き」を紹介するが、辛口なのは縄文人の独り善がりと斟酌願いたい。

 サンヒョン神父は<アガペー>に生きる神のしもべだ。謎のウイルスに苦しむ患者を救うため検体になり、絶命後、バンパイアとして甦る。自己犠牲を厭わぬ高潔なサンヒョンは、血だけでなく愛にも渇きを覚えるようになる。人妻テジュに心乱れ、<エロス>に身を焦がすのだ。

 神父がバンパイア? ありえない! だが、多くの映画は夢でありメルヘンだ。別稿(09年10月18日)で絶賛した「空気人形」(09年、是枝裕和監督)では、ダッチワイフが心を持つ。現実を超越した設定でスタートした両作は2時間後、大差になってゴールテープを切る。愛の普遍と残酷さ、人間の孤独を抉る<至高の寓話>に昇華した「空気人形」と対照的に、「渇き」は<並のバンパイア映画>に堕していた。

 サンヒョンは<アガベー>と<エロス>の境界でさほど苦悩しない。多過ぎる夾雑物が、テーマの深化を邪魔しているように感じた。テジュに引きずられて罪を重ねるなら、いっそ冥府魔道を突き進めばいいのに、サンヒョンはただ揺れるだけだ。愛とは第三者の承認、限りある時間によって成立する……。ラストシーンを深読みすればこうなるが、的外れに違いない。

 職場の映画通は<女優を見るだけで価値がある>と「渇き」を評していた。テジュ役のキム・オクビンは稀有な新人で、純粋、狂気、妖艶、アンニュイ、魔性を22歳の若さ(撮影当時)で見事に表現していた。「空気人形」のペ・ドゥナとともに、韓国映画界の底力を証明する実力派といえるだろう。

 最後に高松宮記念の予想を。◎は勢いと地力を認めて⑥キンシャサノキセキだが、外差しが決まることを想定し、○⑬サンカルロ、▲⑮プレミアムボックス、△⑱ピサノパテックの追い込み勢を重視する。4頭BOXで馬連と3連複を買い、当日の気配や馬体重を見て、3連単を買い足すつもりだ。




コメント (2)
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