酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

池畑潤二、50歳~聖地が育んだ心優しきモンスター

2009-01-26 00:49:42 | 音楽
 邦楽ロックの歴史教科書があれば、ルースターズに最も多くページが割かれるだろう。日本のヴェルヴェット・アンダーグラウンド、もしくはジョイ・ディヴィジョンとして……。

 ロックの聖地福岡が育んだルースターズは、後世のバンドに多大な影響を与えた。ブルーハーツ、ブランキー・ジェット・シティ、ミッシェルガン・エレファントのメンバーは、「ルースターズ抜きに今の自分たちはない」と語っている。“日本のシド・バレット”大江慎也を83年まで支えたのが、ドラマーの池畑潤二である。

 昨年10月、池畑の50歳を祝うイベント「ビッグビート・カーニバル」が東京(恵比寿リキッドルーム)と福岡で開催された。夏以降、Uターンの準備を進めていたので予約をためらっているうち、タッチの差でソールドアウト……。一転して東京残留となり大きな悔いが残った。先日フジ721で東京でのライブの模様が放映された。

 池畑、花田裕之、井上富雄(ルースターズ結成時のメンバー)、クハラカズユキから成るオープニングユニットに、チバユウスケが加わる。ミッシェルガンはアマチュア時代、ルースターズのコピーバンドだったこともあり、チバの声は大江の曲にフィットしていた。

 続くは御大の石橋凌(元ARB)だ。いきなり「恋をしようよ」で♪ただ俺はおまえとやりたいだけ……と何度も絶叫し、いいとこ取りする。聴衆に「化けもん」コールを要求するなど、ドラマでの渋さをかなぐり捨てていた。そう、池畑は確かに「化けもん」だ。鋭く重く、奔放で的確なドラミングはまさに“日本のキース・ムーン”だが、本家と違って包容力ある親分タイプらしい。

 次に登場したのはルースターズと同じ年(79年)、福岡で結成されたヒートウェイヴだ。ここ数年、活動をともにしている池畑にとり、“第2の家”というべきバンドで、リーダーの山口洋の志向からフォーク色が濃い。

 SIONが現れた時には「おやっ」と思った。池畑がレコーディングに参加した際、親しくなったとのこと。ダミ声で自虐、孤独、絶望を歌うSIONは、その場の空気にマッチしていた。久しぶりに聴いた「俺の声」が胸に染みた。

 満を持してベンジーこと浅井健一がステージに立つ。ベースはもちろん渡辺圭一(ヒートウェイヴ)で、第1期JUDEの一夜限りの再結成となる。途中で花田が加わり「シルベット」などを演奏した。JUDEとはめんたいロックとブランキーの奇跡のコラボだったのだ。池畑の豪快なドラミングが映える「デビル」で締めた。

 トリは後期ルースターズの2枚看板(花田、下山淳)と池畑とのユニット、ロックンロール・ジプシーズだ。下山は大江が心身に不調を来した頃に加わり、頭角を現した。下山への反発が池畑脱退の理由の一つと考えていたが、生々流転を重ねて四半世紀、恩讐を超え、同じフレームで円熟の技を競っている。音楽によって紡がれた絆にジーンときた。

 参加者全員がステージに並び、大江の代表曲「ロージー」で大団円となる。チバ、ベンジー、石橋の順で歌い、各奏者が工夫を凝らしたソロを披露する。大江は福岡のみの参加で不在だったが、集まったすべての者の心の中にいた。

 歴史的イベントを見逃したのは痛恨事だったが、番組を見て傷は少し癒えた。現場にいたら、様々な思いがフラッシュバックし、頬が乾く間はなかっただろう。集まった若者の目に、「キモいおやじ」と映ったに違いない。



コメント (2)
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