酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

オバマ新大統領に思うこと

2009-01-23 00:09:47 | 社会、政治
 黒人差別の深甚さを示すエピソードが、「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」(佐野眞一著)に記されていた。奨学生として米南部を訪れた大田昌秀氏(元沖縄県知事)は「有色人種用」トイレに入ろうとして、周囲から「白人用」を指されたという。

 第2次大戦と朝鮮戦争で体を張った仲間を、敵(日本人)より下に置くのが当時の南部の“常識”だった。あれから六十余年、差別との闘いで斃れた無数の人々を悼むと同時に、彼らの夢が叶ったことを素直に喜びたい。

 黒人大統領実現への貢献度や低所得層との距離を考えれば、ボブ・ディラン、ムハマド・アリ、ラッパーたち、スパイク・リーが壇上に立つべきだったが、前夜祭に集ったのは別の面々だった。大統領と大衆の乖離は、既に始まっているのだろうか。

 就任演説を聞き、以下のように茶々を入れてみた。

 「我が国は暴力と憎悪のネットワークと闘っている」…<アメリカ=イスラエル>こそ世界最大のテロ国家では?

 「一部の人々の貪欲さと無責任が経済を疲弊させた」…オバマ陣営最大のタニマチはウォール街である

 「医療費は高く、(金融詐欺で)多くの人々はホームレスになり、職を失った」…オバマ大統領を救世主と見做す人々に、ワシントンを訪ねる余裕はあっただろうか?

 「(アフリカの)飢えた人々に栄養を与え、農地と水を手に入れるために我々は働く」=「我々」が常任理事国を指しているなら、まずは武器禁輸に足並みを揃えてほしい

 <「候補者ビル・マッケイ」のラストのように、オバマ氏は当選後、撒き散らした言葉の重みに押し潰されるかもしれない>……。

 別稿(昨年2月9日)でこのように記した。オバマ新大統領は今、中下流層とパワーエリートのいずれに軸足を置くべきか、心身を引き裂かれるような感覚を味わっているはずだ。 

 寺島実郎氏は「報道ステーション」で、「オバマ政権は全方位、超党派を前面に押し出しているが、いずれバランスが崩れるのではないか」と危惧していた。オバマ氏には政治的に“うぶ”というイメージもあるが、実際は妥協上手のネゴシエーターだと思う。

 魑魅魍魎、百鬼夜行ぶりは日本の自民党をも凌ぐイリノイ州の民主党で、オバマ氏は出世の階段を上ってきた。改革派潰しへの加担、大資本優遇の追認など批判も多いが、トップに立てば豹変する可能性もある。オバマ氏は就任翌日、5本の大統領令を出したが、いかにイスラエルの暴走を抑えるかで真価が試される。

 当ブログではアメリカを「資本主義独裁国家」、「唯一無比のテロ国家」と悪しざまに記してきたが、不自由で非民主的な選挙制度の下、オバマ氏が最もましな候補だったことは間違いない。現状では「イエス・ヒー・キャン」だが、大衆の声に応えて「イエス・ウイ・キャン」が目に見える形になった時、オバマ暗殺が現実味を帯びてくる。



コメント (4)
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