酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「相棒」の尽きせぬ魅力

2007-03-02 00:12:55 | 映画、ドラマ
 ここ数年、「相棒」にハマっている。発見したのは午後の再放送で、「おー、水谷豊だ。おじさんになったなあ」が第一印象だった。「男たちの旅路」で吉岡(鶴田浩二)に反抗する陽平を演じた水谷は、当時の鶴田と変わらぬ年齢になった。鶴田びいきの俺でさえ、現在の水谷の方が演技者として成熟していると思う。

 水谷演じる杉下右京警部は、頭脳明晰の東大出身のキャリアながら、変人ゆえ出世コースから外れた。「人材の墓場」特命係に配属され、亀山薫(寺脇康文)と「賢兄愚弟」の凸凹コンビを組んでいる。図体の割に役に立たない亀山だが、右脳的閃きと情熱で杉下を助け、事件を解決に導くことが多い。

 強烈な存在感を放つのが、杉下とは浅からぬ因縁のある小野田官房長(岸部一徳)だ。「もう一度、僕と組まない」と提案するも、いつも杉下にかわされている。杉下と別れた妻たまき(高樹沙耶)、亀山と妻美和子(鈴木砂羽)の4人が、たまきが経営する小料理屋で語らうシーンも、ほのぼのとした味を加えている。

 俺が「相棒」から離れられない理由を、以下に記したい。

 <A…高い質をキープ>
 「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」でさえ、金属疲労で質は低下していったが、「相棒」は「シーズンⅤ」に突入しても高レベルをキープしている。複数の脚本家が切磋琢磨して生み出したスト-リーを、和泉聖治ら優秀な演出家が映像化しているからだろう。「チームの力」を感じさせるドラマだ。

 <B…心地よいマンネリズム>
 杉下と亀山に敵愾心を抱く捜査一課トリオ。「暇か」と特命部屋を訪ねる組織犯罪対策課長。覗き見している2人の刑事。オタクな鑑識担当者。官僚的な刑事部長と腰巾着の参事官……。個性的な役者が「お約束」の言動を披露し、心地よいマンネリズムを生み出している。脇役たちをストーリーに組み込み群像劇に仕上げた元日特番「バベルの塔」は、「相棒」史上に残る傑作だった。

 <C…社会性と反権力性>
 「非情のライセンス」ほどではないが、社会性や反権力性が強い。杉下と亀山は圧力に屈することなく、官房長官、国家公安委員、外務省高官、最高検検事ら、最高権力者をお縄にかけた。警察内部の腐敗、司法制度の矛盾、大企業やメディアの暗部も、職を賭けて抉っていく。特命係とはアンタッチャブルなサンクチュアリで、その活動を陰で支えるのが小野田……という図式が浮かんでくる。

 杉下は番組後半の長回しで犯人と対峙する。初期の「怒りモード」から「人情モード」に移行しつつあるのは、杉下の「亀山化」といえぬこともない。「シーズンⅤ」15話のラストは印象的だった。「特命係は杉下が動かしているとばかり思っていました。しかし、実は君の旦那様だったんだねえ」と、小野田が美和子に呟いた。杉下と亀山のコンビネーションの深まりを感じさせる台詞といえる。

 「相棒」は水谷の代表作だが、鮮烈さなら「青春の殺人者」(76年、長谷川和彦)だ。虚無と衝動に憑かれた青年を演じ、キネ旬主演男優賞に輝いた(作品部門も1位)。「逃がれの街」(83年)以降、活躍の場をテレビに移した水谷だが、スクリーンで円熟の演技を披露する日を心待ちにしている。

コメント (2)
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