弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

原発事故対策の迷走

2011-03-25 22:20:58 | サイエンス・パソコン
1号機の圧力容器に海水注入がはじまったのが、地震発生翌日の3月12日であり、翌13日には3号機、そして14日には2号機の圧力容器への海水注入が始まりました。福島第一原発で燃料棒を収納している3機すべてにおいて圧力容器への海水注入です。

その翌日、15日の朝方に目が醒めると、原発の心配事が頭を回って寝付けません。15日の記事2号機は悪い方向に向かっているに書いたとおりです。
『(1) 圧力容器内の水位はあっという間に下がるようだが、崩壊熱のみでそんなに水は蒸発するものだろうか。
・・・・・
(6) 海水を注入し続けているが、どんどん蒸発しているとすると、圧力容器内には塩が溜まっていくはずである。塩が溜まっても本当に問題ないのだろうか。
(7) なぜ海水なら注入可能なのに、淡水は注入できないのだろうか。「淡水が枯渇した」ということであれば、いくらでも船で運び込むことが可能なように思われるが。』

それ以来、「海水注入で圧力容器内に溜まる塩は問題ないのか?」という疑問がずっと頭にあったので、報道も注目していました。しかし、「圧力容器内の塩」についての報道は皆無であったといえます。

そんな報道が急に変化し、「塩、塩、塩」と言い出したのはここ数日です。今ではどの報道でも、「圧力容器内に塩が溜まると問題だから海水から真水に替える」と報じています。
何でこんなに突然風向きが変わったのでしょうか。
内閣官房参与に原子炉工学専門家2人を任命したのが22日、そしてその日、参与に任命された東京工業大原子炉工学研究所長の有冨正憲教授の発言として、
『「海水注入は塩分が炉内にたまり、冷却能力が低下して腐食が進む。早急に真水に切り替えなければならない」と語った。
東京都内で開かれた市民らとの「情報交換会」で発言した。有冨教授は「海水注入は緊急避難としてはやむを得ない措置だったが、海水注入は一刻も早くやめるべきだ。政府や東電に申し入れてきたが後手に回っている」と語った。』と伝えられました。
有富教授が参与になってから、「真水化」の方向で動き出したようにも思います。

読売新聞 3月25日(金)18時3分配信では
『東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所の1、3号機で25日、仮設ポンプで原子炉内に真水を注入する冷却作業が始まった。これまでは海水を注入していた。真水の使用には、海水による配管や電気設備の腐食などを避ける狙いがある。福島第一原発の冷却に真水を使うのは、被災からの復旧が本格化して以来初めて。
水源ダムから給水する準備が整ったため、真水に切り替えた。冷却水には、水源から取水する「原水」、フィルターを通した「濾過(ろか)水」、さらに精製した「純水」があり、それぞれにタンクが備えられている。現在は精製設備などが復旧していないため、原水のまま配水できるようにした。
2号機では、別に設置した仮設タンクから給水する予定。』
とあります。あたかも、前から予定していたが、やっと準備が整った、かのような書きぶりですが、前から準備していたなどという話を聞いたことはありません。

さらには、米軍が大量に貯水できる「はしけ船」に真水を積んで発電所の近くに運び、米軍から提供を受けた大型注水設備で東電と自衛隊が注水するという話も突如出現しました
『北沢氏(防衛大臣)によると、緊急的に行っている海水による注水について、米側は塩分で原子炉内部が腐食する可能性があり、不測の事態を招きかねないと懸念しているという。日本政府も発電所近くの「坂下ダム」(福島県大熊町)から真水を採水する方針だが、北沢氏は「ダムだけでは地震の影響で本来の水量を確保できない可能性がある」と述べた。』

私が心配しだした15日に対策本部も同じように心配したのであれば、「可及的速やかに真水に戻そう。まずは船で真水を運べないか」と八方手をつくし、米軍がはしけ船を持っていることを察知し、18日くらいには真水注入が開始できたと思われます。そしてはしけ船を使っている間に、「ダムからの取水」などといわずに近くの川からの取水を準備すれば、今ごろはとっくに、圧力容器への真水注入を安定して実施できていたのではないか。今回開始する真水注入のポンプは「仮設ポンプ」とありますから、電源も移動式電源車で十分であり、原子炉に外部電源が接続されるのを待つ必要もないはずです。

どうも、原子力災害対策本部も、原子力安全保安院も、東電も、思考停止に陥っているのではないかと危惧します。
これからが正念場です。日本の底力を発揮しようではありませんか。
コメント (3)
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