弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

原発事故対策と帝国陸海軍とは似すぎている

2011-03-29 21:42:35 | サイエンス・パソコン
原発事故対策の最近の体たらくを見ていると、本当に腹が立つし歯がゆく感じます。そしてこの風景、日本の近現代史として見たことがある風景にそっくりではないですか。
戦前戦中の日本帝国陸海軍が見せた体たらくは、結局日本人のDNAに根ざすものであって、今回のような危機勃発時にはどうしても出てしまうものなのか、と暗澹とします。

《大本営発表》
わが家ではテレビでTBSニュースバードを見ていることが多く、東電や原子力安全保安院の記者会見を結構な時間かけて見ています。いやはや、どちらも情報を隠している、というか都合の悪いデータについては口をつぐんでいるのが見え見えで、現在の状況がまったく見えてきません。アメリカが独自に原発周囲50kmからの退避を勧告し、フランスをはじめとして外国人が続々と日本を脱出する気持ちが良くわかります。
これって、「大本営発表」ではないですか。

《ロジ(兵站)の軽視》
不眠不休で修復作業に当たっている作業員の方々は、朝食はビスケットと野菜ジュース、夕食は非常食用の五目ご飯などと缶詰で、1日2食となっており、夜は原発1号機から300メートル離れた「免震重要棟」の緊急時対策室で雑魚寝する状態です。各人に配布されているのは毛布1枚です。28日現在、東電や協力会社の計450人が所内で作業に携わっているといいます。
「免震重要棟」にすし詰めになっているのは、フィルター付き空調のあるこの棟でないと、人間が住めないからでしょう。
想像するに、米軍は核戦争に備えて移動式の核シェルターを大量に保有しているはずです。自衛隊も持っているかもしれません。そのような設備を緊急で借り受け、事故現場に大々的な現地施設を設けるべきです。
そのような発想が生まれず、現地作業員の精神力のみで頑張らせるというのは、まさに帝国陸軍の兵站軽視と同じではないですか。

《兵士は優秀だが高級将校は無能》
ノモンハンの戦いでも書きましたが、ノモンハン事件でソ連軍の司令官だったジューコフがスターリンに以下のように報告したそうです。半藤一利「ノモンハンの夏」にあります。
「日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である」
現場の劣悪な環境の中、放射能被曝の危険と隣り合わせで、不眠不休の活動を続けている現地の人たちには本当に頭が下がります。
それに引き替え、東電の記者会見に出てくる副社長は何でしょう。あの人が最高責任者で陣頭指揮をしていると思うと、情けなくなります。
また、原発事故対策の迷走で書いたように、原子力災害対策本部(以下「本部」)、原子力安全保安院、東電のいずれものトップが思考停止状態になっているとしたら、まさに「高級将校は無能である」という世界です。

《情報の軽視》
原子力安全保安院の記者会見を聞いていると、「不都合な情報については述べない」という姿勢が見えるのに加え、「東電から十分な情報を受けていない」とも感じます。
「本部」は、現場における生データを含めすべてのデータを東電と共有しているべきです。本部の事務局は経産省のはずで、保安院もその中に組み込まれているはずですが、その本部の事務局が東電から十分な情報を吸い上げていないということでしょうか。東電が隠すのであれば、法律を変えてでも情報を出させるべきです。
“情報の軽視”といえ、帝国陸軍の姿(堀栄三「大本営参謀の情報戦記」)と重なります。

《指揮命令系統の不備》
猪瀬直樹blogでは、今回活動した東京消防庁の隊員が受けた印象が書かれています。
『政府・東電の指揮命令系統が明確でないことがわかった。
○ 本部は原発の現場より20km離れたところに前線指揮所が設置されている。
○ 現場を知らない本部の人達から、東京消防庁が現場で判断した方針を変更するよう度々要求された。』

《大本営政府連絡会議》
今回の事故に対応して、原子力災害対策特別措置法に基づいて直ちに原子力災害対策本部が設置されています。
管首相はそれとは別に、「福島原発事故対策統合連絡本部」を設置しました。これって、第二次大戦中の「大本営政府連絡会議」に名前がそっくりですね。大本営政府連絡会議はまったく機能しなかったようです。
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1 コメント

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unthinkable (noga)
2011-03-29 21:56:46
我が国が核攻撃を受けたらどのような事態が発生するか。
我が国の原発が大事故を起こしたらどうなるか。
疾走する弾丸列車が貨物列車に激突したらどのようになるか。

悪夢は見たくない。いつまでも能天気でいたい。
天下泰平の気分を壊したくない。

自分に都合の良いことだけを考えていたい。
それ以外の内容は、想定外になる。

ただ「間違ってはいけない」とだけ注意を与える。
「人は、誤りを避けられない」とは教えない。
「お互いに注意を喚起し合って、正しい道を歩まなくてはならない」とは、考えていない。

もしも自分にとって都合の悪いことが起こったら、びっくりする以外にない。
そして、「私は、相手を信じていた」と言い訳するしかない。だから、罪がないことになる。

危機管理は大の苦手。
だが、ナウな感じのする犯人捜し・捕り物帳なら大好きである。毎日テレビで見ている。

日本語には時制がないので、未来時制もない。
未来の内容を鮮明に正確に脳裏に描きだすことは難しい。
一億一心のようではあるが、内容がないので建設的なことは起こらない。
お互いに、相手の手を抑えあった形である。すべては安全のためか。不信のためか。

問題を解決する能力はないが、事態を台無しにする力を持っている。
親分の腹芸か、政党の内紛のようなもの。
今回の事件はわが国の国民性を色濃くにじませている。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812
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