弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

佐藤優氏控訴審に東郷和彦氏出廷

2006-06-24 00:01:27 | 歴史・社会
佐藤優氏については、このブログでも1回だけ触れたことがあります。

元外務省の高級官僚だった東郷和彦氏は、鈴木宗男氏事件との関連で海外に出たきりでしたが、今回4年ぶりで帰国し、佐藤優氏の控訴審に弁護側証人として出廷しました。例えばこのニュース

佐藤優氏裁判での東郷氏の証言ということであれば、確認したいのは以下の2点です。
(1) 東郷氏は、国外に出た後、イギリスで検察の事情聴取を受け、佐藤氏裁判の一審では証人になることを拒否しています。その間、どのようないきさつがあり、今回控訴審で証人尋問に出廷することをどのような心境で応じたのか。
(2) 佐藤氏の2つの罪状のうちのひとつである、イスラエル国際学会派遣の費用をロシア支援委員会から支出したかどで背任罪に問われた件について、東郷氏がどのような証言をするのか。

6月21日に行われた弁護側の尋問に関して、ここここに詳細な記録があります。「日暮れて途遠し」という、佐藤氏裁判をフォローされている方のブログですが、すごいです。裁判での東郷氏に対する一問一答が手に取るようにわかります。

裁判での受け答えを見る限り、東郷氏は、自分の保身についてはあまり考えず、佐藤氏のために真実を語ろうということで帰国し裁判に臨んでいるようです。

佐藤優氏の「国家の罠」から、東郷氏の動きを追うと以下の通りです。
2002年5月の佐藤氏逮捕の直前、東郷氏は外国にいたようです。佐藤氏は、自分の逮捕は鈴木宗男氏と東郷氏を狙った前哨戦であるととらえ、東郷氏の奥さんに「この事件のケリがつかないうちは日本に帰ってきてはなりません」と伝えます。

翌年6月の起訴前後、拘留中の佐藤氏はイギリスで行われた東郷氏に対する検察の事情聴取について検察官に質問します。
佐藤氏「内容はどうだい」
検察官「しょうもない支離滅裂な内容だ」
「西村さんが『しょうもない』というのは僕には有利だということかな」
「そうでもないぜ。東郷は部下を守るという発想の全くない人だよ。君が思っているような人じゃないよ」
「守りに弱いからなぁ。壊れちゃったかな」

2004年春、一審で東郷氏に証人になってくれるように頼み、一度は応諾します。しかし東郷氏側が東郷氏の立場について検察に確認したところ、「共犯者の位置づけだ」との回答があり、その結果東郷氏が身の危険を感じて出廷しないとの決断をしたのです。

以上が「国家の罠」から拾った話です。

次に今回の控訴審での東郷氏の証言です。ブログ「日暮れて途遠し」から。
[2002年2月外務省で受けた事情聴取でのやり取り]
(外務省から)「東郷さん、あなたは辞表をかくべきではないですか」と言われた。
(辞表は)出してない。外務省では、お願いをもって退職するという「依願退職」というのが通例だが、「退官」という異例の辞令であった。
上司として、部下が傷ついたことは遺憾だが、そのことで辞表を出す理由はないと言ったら、「分かりました。東郷さん、あなたは切腹でなく、打ち首を望んでいるのか」と言われた。
そのときから自分の中で何かが壊れた。
退官のときまで疲労困憊の状態になった。
日本に残って何かをするつもりはなく、一刻も早く日本を出て、どこか別の場所に自分を置いて見つめなおしたいと思った。

[ロンドンでの検事の事情聴取]
A.ゴロデツキー教授招聘とテルアビブ国際学会派遣。
①外務省が組織として実行したことで、具体的にはそれぞれの決裁書が共通の構造を持っている。欧亜局がとりまとめ、(条約局が検討)
②ロシア支援協定に照らして合法性。100%の責任(権限)のある条約局がそれでOKとしたものが、違法性を問われることはありえないということを言いたかった。
そのまま書いてほしいと希望したが、それはできないと。

実に生々しいですね。

その他、佐藤氏が外交官として如何に傑出しているか、どれだけ日本外交のために奔走してきたかという点について話されています。また、国際学会派遣にロシア支援委員会の予算を使ったことについて、すべて外務省が組織として行ったことで佐藤氏の背任ではない、という点について主張されています。ぜひ、ブログ「日暮れて途遠し」で東郷氏の生の声を聞いてください。
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5 コメント

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TBありがとうございます (日暮れて途遠し)
2006-06-24 22:13:20
Bongore様実に的確にまとめられていますね。

私が印象に残ったもう一つの点は、支援委員会という国際条約に基づく組織に関し、

「条約とは国と国の権利・義務を定めるものであるという定義に立ち戻って考えると『条約違反』とは義務不履行を相手から訴えられることである」

と東郷氏が整理したことです。

私は、そもそも支援委員会なるものは、日本がソ連崩壊の機を捉えて、北方領土問題解決のために戦略的に作り上げた委員会であり、そのための資金であるはずで、この利用の当事者(すなわち国策を遂行していたロシア支援室や佐藤さんら外務省の当事者)が鈴木議員に関わる権力闘争のためとはいえ、条約違反で国に損害を与えたなどというあまりにも下らない意味のない立件にとんでもない無理があると思うのです。

ところで、内藤さんは弁理士さんなのですね。クレームの構成・特許明細書の取りまとめには論理的かつ広い視野と文章力が求められるはずですが、多分大変信頼されるお仕事をされておられることと想像いたします。サッカーがお好きなのですね。私も若い頃サッカーをやっていていろいろ言いたいことがあるのですが

不満しか出てこないので押さえています。
拝見しています (ボンゴレ)
2006-06-25 00:04:11
日暮れて途遠しさん、お越しいただき、ありがとうございます。

おかげで、佐藤優さんの控訴審については居ながらにしてリアルタイムで裁判を傍聴することができます。これからもよろしくお願いいたします。

佐藤さんの背任容疑については、どう考えても無理があります。鈴木宗男氏が頼みもしないのに条約局を怒鳴り上げたのは、佐藤氏にとって不運ではありましたが。

国家の罠を読んで、佐藤優さんは本当にすごい人だとつくづく思います。この裁判ではぜひ正しい判断が下ることを願っています。今回東郷さんが証言に立たれたことも勇気をたたえたいと思います。



弁理士という職業をご存じなのですね。技術関係をやられていらっしゃるのでしょうか。年代もおそらく私と近いのでしょうか。

私も高校の頃に下手ながらサッカーをやっていました。日本代表について思うことは、今回大会が始まる前に発言しておきました。終わった今はあまり言うこともありませんが。
TBありがとうございます (VIVA)
2006-06-26 10:12:50
拙ブログにTBをいただきました。佐藤優氏に関しては私も、日暮れて途遠しさんのサイトを拝見しております。ボンゴレさんの↑の記事に非常によくまとまっている件を、私も知りたいと思っております。

私は塾の英語講師なので、生徒やご父兄がご覧になることもあり、政治的な発言は控えたいのですが、この件は、やはり多くの人に関心を持っていただきたいと思い、取り上げました。これからも時々おじゃまさせて下さい。失礼します。
控訴審の進展を期待します (ボンゴレ)
2006-06-26 12:55:25
VIVAさん、ここまでお越し頂き、ありがとうございます。

佐藤優氏の控訴審が地裁判決を容認する結果に終わるのでは悲しすぎます。ぜひ、関係者のがんばりで真の姿を明らかにしていただきたいと思っています。



教育に携わられているということであれば、中立ということで発言を控える途もあるでしょうが、やはり社会問題・歴史問題で問題を投げかけることの方が重要ですよね。



これからもご健闘をお祈りします。
9条は実現するものであって日本国家と国民はこれを破棄して滅ぼされてはならない。 (jonah)
2020-01-05 06:46:48
佐藤優さんは国民にとって良い方です。だから安倍政権下では足を引っ張られる。国民にとって悪い人が今の安倍政権下で足を引っ張られることはない。世間はそんなものです。

そもそも、戦争の原因に恒久対策を打った憲法9条は、実現していくよう働くのが正しいのです。恒久対策を破棄して応急処置の武力増強を訴えるのは、つまり、「9条は諸悪の根源」とかいう人は、人殺しがしたいというような人であって、これは何も問題解決にならず、ただ戦争を繰り返したいと言っているだけでしょう。とんでもない主張です

そもそも「攻められたらどうするのか?」を問うならば、「攻められない国造り」でなければならない。どうするのか?ジュネーブ条約第一追加議定書に規定する「軍民分離」と「無防備地域宣言」の基づく平和条例を制定し、日本にある軍事基地や施設以外は無防備地域とを定め、「平和無防備地域宣言都市」の標識を建てるのだ。そして、憲法9条を実現するよう平和行政に励まなければならない。憲法9条が世界で実現するように働かなければならない。
ところで、自衛隊は「自衛は生物体が持つ自然権」であって現行憲法の中でも憲法を超えて存在し得るのです。
ですから、日本は憲法改変をしなくても自衛隊法を改変して憲法第13条の下に法律で位置付け、憲法9条実現のために平和事業に励まなければならない。

そもそも人類普遍の原理に基づく「民主主義憲法」や人道の基本に基づく「平和主義憲法」並びに1銭5厘で国民を戦場に拉致した大日本帝国から奴隷解放した「主権在民憲法」の日本国憲法を安倍総理のように「押し付けられた」「みっともない」「恥ずかしい」というのは、まったく筋違いだというのです。
安倍政権のような憲法改変の主張は、検査の強化で不良品を除くようなものです。つまり、憲法改変は、検査の強化に過ぎない武力増強で延々と戦争を繰り返させられるだけというのです。
というわけで、
結論: 恒久対策を破棄する問題解決はない。自衛隊は憲法第13条の下に置けば、軍民分離の下でいくらでも武力増強は可能なのだ。日本国家と日本国民は、武力増強の目的を間違え、戦争屋がつく「嘘と不公平」に乗せられて日本列島を放射能に汚染される不毛列島にしてはならないというのです

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