弁理士の日々

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コロナ・墨田区の戦略

2021-08-12 17:56:10 | 歴史・社会
東京都で新たに4989人の感染確認 重症者は218人で過去最多 初の200人超え
8/12(木) ABEMA TIMES
『重症の患者は前の日から21人増え218人。』
感染急増「制御不能な状況」 東京都コロナ会議で専門家
8/12(木) Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE
『東京都は12日、都内の新型コロナウイルスの「感染状況」や「医療提供体制」を専門家らが分析・評価する「モニタリング会議」を開いた。会議で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫(のりお)国際感染症センター長は「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、新規の陽性者数が急増している。制御不能な状況だ。災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態で、この危機感を現実のものとしてみんなで共有する必要がある」と訴え、危機感を露わにした。』

東京都の医療崩壊は明らかです。菅総理が8/2の記者会見で示した政策の正しい解釈(当ブログ記事
『万策尽きた。医療崩壊が近づいている。これからは、入院できないがために死に至る人の数をできるだけ少なくするよう、トリアージを始める。』
が、東京都の本音でしょう。
われわれ東京都民は、この医療崩壊に対して「制御不能な状況」として手をこまねいて見ているしかないのでしょうか。

東京都では「自宅療養者のフォロー」も崩壊…そのウラで際立つ「墨田区の凄まじい戦略」
山岡 淳一郎 2021.8.12.現代ビジネス
を読みました。
この記事によると、東京都内のコロナ対応状況は決して一様ではなく、ひとり墨田区が、極めて優れた対応を行っているということです。私の肝に銘じるために、ここに抄訳をアップすることとします。
--記事内容抄訳-----------------
東京都は約6000床の病床を確保しているが、即応できるのは半分ばかりで、自宅療養者が2万人ちかくに膨張している。感染者を病院や宿泊療養ホテルに振り分ける保健所の職員は、「先日は、血中の酸素飽和度80%の方の入院を調整本部に委ねたけど、10病院で拒否されました。まだか、まだかと催促している間に本人が救急車を呼んだ。酸素飽和度は、なんと60%まで下がっていた。救急隊が大慌てでやっと大学病院に搬送できたんです」と語る。

しかし、医療を統括する東京都幹部の対応はというと、とうに病床が逼迫していた7月27日、都庁の吉村憲彦福祉保健局長は、メディアへの説明会で「30代以下は重症化率が極めて低く、100人いたら、せいぜい十数人しか入院しない」と語り、こう言い放った。
「いたずらに不安をあおることはしていただきたくない」

都は「自宅療養者フォローアップセンター(FUC)」を設けている。しかし、その実態はというと、「FUCは対象の自宅療養者が2000人を超えて、ほぼパンクしました。連絡がとれない、パルスオキシメーターも食べ物もこない。それでとうとう7月27日以降、都は支援する自宅療養者を30歳未満に絞っちゃった。30代~50代の面倒はみません。年齢が上がるほど重症化のリスクが高くなるからでしょう。同居者がいる人も対象外。それが実態ですよ」

都も区も総崩れのような状況で、異彩を放つ自治体がある。墨田区だ。
墨田区は、50代のワクチン接種率が65・1%、40代が58・3%と他区を大きく引き離す。さらに、自宅療養者への医師+看護師の訪問診療やオンラインの健康観察、軽症で重症化リスクの高い患者への抗体カクテル療法、区独自の優先病床20床を活用した中等症患者の治療と回復後の自宅への下り搬送と、「地域完結型」のコロナ戦略を打ち立てている。

じつは、墨田区の独行の始まりは昨春にさかのぼる。
大多数の自治体はキャパシティ不足を理由にPCR検査を断っていたが、新任の保健所長、西塚至氏は「必要な検査はすべてやろう」と職員を鼓舞。自前の検査施設を立ち上げ、保健所の医師自ら検体を採取した。墨田区は、保健所に最新鋭の検査機器を導入し、民間検査会社を誘致して検査のキャパを拡大。クラスターが発生すれば「ローラー作戦」と呼ぶ大規模検査を実施し、陽性者を隔離する。

その一方で、西塚氏は区内の医師会、診療所と病院の責任者が参加するウェブ会議を立ち上げ、行政と医療機関との連携を図った。
当初、10人だった墨田区保健所のマンパワーは、人材派遣会社からの保健師(看護師)や区役所の他の部署からの応援を含めて約100人に拡大している。

墨田区には四つの「入院重点医療機関」があり、そのなかの一つに区独自に運用できるコロナ病床を13床(軽症用)確保していた。この墨田区優先枠を一挙に60床ちかくまで拡張するよう病院に要請した。
病院側は、これに応じ、7月初旬から墨田区優先病床が稼働する。さらに60床のうちの30床を中等症対応にグレードアップ。そのうち20床が墨田区優先の中等症病床とされた。酸素投与やステロイドが使えるようにして8月上旬から中等症患者を受け入れている。

8月6日時点で、墨田区には自宅療養413人、入院60人、宿泊療養126人の感染者がいる。往診やオンライン診療でひんぱんに連絡を取って、軽症の説明をし、治療をして落ち着いていただく。
そして、もしも症状が悪化して中等症になったら、区の優先病床に入っていただく。ただ、この病床は区民共有の医療資源だから、回復したら休日でも夜間でも、退院していただき、ベッドを空けて、次の方が入れるようにする。

できるだけ軽症のうちに重症化の芽を摘む。そのために抗体カクテル療法も行っている。同愛記念病院では、7月下旬から8月10日までに16人の患者が抗体カクテル療法の点滴治療を受けている。
いよいよ病床が足りなくなった場合に備えて、酸素濃縮装置を確保して、24時間対応で医師が往診し、ステロイド剤も在宅で投与できる態勢をとっている。
--記事内容抄訳終わり-----------------

当ブログの「大規模接種センター予約ガラ空き 2021-06-09」でも紹介したように、自衛隊の大規模接種センター(東京、大阪)について、6月14日から27日までの予約枠がガラガラで埋まらない状況がありました。当時、予約を65歳未満にも拡大していました。予約には接種券が必要なのですが、大部分の自治体ではまだ65歳未満に接種券を発送していなかったのです。そんな中、こちらの記事にあるように、6月16日の時点で墨田区と中野区のみ64歳以下全員への接種券発送が完了していたのです。この点でも、「墨田区はすごい!」が明らかです。

新型コロナ対応の司令塔は保健所であり、東京都は23区が特別区としてそれぞれ保健所を統括しています。従って、制度としては、保健所ごと、即ち区ごとに、コロナ対策が異なっていたとしてもおかしくありません。実際、ワクチン接種体制については、区ごとに全然施策が異なっています。
しかし、コロナに打ち勝つための対応については、最も良い方法をどの区でも採用すべきであり、それぞれの区が「最善を尽くそう」と考えたら、どの区も似たり寄ったりの体制になるはずではないでしょうか。
しかし実態は、墨田区がたまたま優秀な保健所長をいただいていたことを幸いに、墨田区のみが最善の施策を突っ走っています。墨田区以外の区に住む住民は、自分の区でも同じように最善を尽くして欲しいと思っています。何で、墨田区の方法が他の区に波及していかないのでしょうか。
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