前回の「公用文における漢字使用等について」に続き、今回は「公用文作成の要領」からの抜粋です。
今回話題になった「横書きでは『,』を用いる」については、終わりの方の<注>2.に登場します。
公 用 文 作 成 の 要 領
昭和27年
まえがき
公用文の新しい書き方については,昭和21年6月17日に「官庁用語を平易にする標準」が次官会議で申し合わせ事項となった。その後,次官会議および閣議では,公用文改善協議会の報告「公用文の改善」を了解事項とし,昭和24年4月5日にそれを「公用文作成の基準について」として内閣官房長官から各省大臣に依命通達した。この「公用文の改善」は,いうまでもなく,さきに出た「官庁用語を平易にする標準」の内容を拡充したものである。しかし,具体的な準則としては,なお,「官庁用語を平易にする標準」その他から採って参照すべき部分が少なくない。そこで,国語審議会では,これらを検討し,必要な修正を加え,「公用文の改善」の内容を本文とし,他から採ったものを補注の形式でまとめ,ここに「公用文作成の要領」として示すこととした。
公用文を,感じのよく意味のとおりやすいものとするとともに,執務能率の増進をはかるため,その用語用字・文体・書き方などについて,特に次のような点について改善を加えたい。
第1 用語用字について
1 用語について
1.特殊なことばを用いたり,かたくるしいことばを用いることをやめて,日常一般に使われているやさしいことばを用いる。(×印は,常用漢字表にない漢字であることを示す。)
たとえば 稟請→申請、充当する→あてる・・など
2.使い方の古いことばを使わず,日常使いなれていることばを用いる。
(略)
3.言いにくいことばを使わず,口調のよいことばを用いる。
たとえば 拒否する→受け入れない はばむ→さまたげる
4.音読することばはなるべくさけ,耳で聞いて意味のすぐわかることばを用いる。
たとえば 橋梁→橋、塵埃→ほこり、陳述する→述べる・・・など
5.音読することばで,意味の2様にとれるものは,なるべくさける。
たとえば
協調する(強調するとまぎれるおそれがある)→歩調を合わせる
勧奨する(干渉する)→すすめる・・・など
6.漢語をいくつもつないでできている長いことばは,むりのない略し方をきめる。
たとえば 経済安定本部→経本
7.同じ内容のものを違ったことばで言い表わすことのないように統一する。
たとえば 提起・起訴・提訴 口頭弁論・対審・公判
2 用字について
1.漢字は,常用漢字表による。
(1) 常用漢字表を使用するにあたっては,特に次のことがらに留意する。
(略)
(2) 常用漢字表で書き表わせないものは,次の標準によって書きかえ,言いかえをする。
5.かな書きにする。
ア 遡る→さかのぼる、 看倣す→みなす
イ 漢語でも、漢字をはずしても意味のとおる使いなれたものは、そのままかな書きにする。
たとえば でんぷん、めいりょう、あっせん
ウ 他によい言いかえがなく、または言いかえをしてはふつごうなものは、常用漢字表にはずれた漢字だけをかな書きにする。
たとえば 右舷→右げん、 改竄→改ざん、 口腔→口こう
6.常用漢字表中の,音が同じで,意味の似た漢字で書きかえる。
たとえば 車輛→車両、煽動→扇動、碇泊→停泊、編輯→編集
哺育→保育、抛棄→放棄、傭人→用人、聯合→連合、煉乳→練乳
7.同じ意味の漢語で言いかえる。
ア 意味の似ている、用い慣れたことばを使う。
イ 新しいことばをくふうして使う。
剪除→切除、毀損→損傷、擾乱→騒乱、譴責→戒告
8.漢語をやさしいことばで言いかえる。
隠蔽する→隠す、庇護する→かばう、牴触する→ふれる
漏洩する→漏らす、破毀する→破る、酩酊する→酔う、趾→あしゆび
2.かなは,ひらがなを用いることとする。かたかなは特殊な場合に用いる。
(略)
3 法令の用語用字について
(略)
第2 文体について
1.公用文の文体は,原則として「である」体を用いる。ただし,公告・告示・掲示の類ならびに往復文書(通達・通知・供覧・回章・伺い・願い・届け・申請書・照会・回答・報告等を含む。)の類はなるべく「ます」体を用いる。
2.文語脈の表現はなるべくやめて,平明なものとする。
3.文章はなるべくくぎって短くし,接続詞や接続助詞などを用いて文章を長くすることをさける。
4.文の飾り,あいまいなことば,まわりくどい表現は,できるだけやめて,簡潔な,論理的な文章とする。
敬語についても,なるべく簡潔な表現とする。
(略)
第3 書き方について
(略)
<注>
1.文の書き出しおよび行を改めたときには1字さげて書き出す。
2.句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。
事物を列挙するときには「・」(なかてん)を用いることができる。
3.同じ漢字をくりかえすときには「々」を用いる。
4.項目の細別は,たとえば次のような順序を用いる。
(略)
-------------------------
しかし、昭和27年に制定したまま修正がされていないということは、現実の文書作成の常識からはかけ離れている可能性もあります。本当のところ、この「公用文作成の要領」はどの程度尊重されているのでしょうか。
今回話題になった「横書きでは『,』を用いる」については、終わりの方の<注>2.に登場します。
公 用 文 作 成 の 要 領
昭和27年
まえがき
公用文の新しい書き方については,昭和21年6月17日に「官庁用語を平易にする標準」が次官会議で申し合わせ事項となった。その後,次官会議および閣議では,公用文改善協議会の報告「公用文の改善」を了解事項とし,昭和24年4月5日にそれを「公用文作成の基準について」として内閣官房長官から各省大臣に依命通達した。この「公用文の改善」は,いうまでもなく,さきに出た「官庁用語を平易にする標準」の内容を拡充したものである。しかし,具体的な準則としては,なお,「官庁用語を平易にする標準」その他から採って参照すべき部分が少なくない。そこで,国語審議会では,これらを検討し,必要な修正を加え,「公用文の改善」の内容を本文とし,他から採ったものを補注の形式でまとめ,ここに「公用文作成の要領」として示すこととした。
公用文を,感じのよく意味のとおりやすいものとするとともに,執務能率の増進をはかるため,その用語用字・文体・書き方などについて,特に次のような点について改善を加えたい。
第1 用語用字について
1 用語について
1.特殊なことばを用いたり,かたくるしいことばを用いることをやめて,日常一般に使われているやさしいことばを用いる。(×印は,常用漢字表にない漢字であることを示す。)
たとえば 稟請→申請、充当する→あてる・・など
2.使い方の古いことばを使わず,日常使いなれていることばを用いる。
(略)
3.言いにくいことばを使わず,口調のよいことばを用いる。
たとえば 拒否する→受け入れない はばむ→さまたげる
4.音読することばはなるべくさけ,耳で聞いて意味のすぐわかることばを用いる。
たとえば 橋梁→橋、塵埃→ほこり、陳述する→述べる・・・など
5.音読することばで,意味の2様にとれるものは,なるべくさける。
たとえば
協調する(強調するとまぎれるおそれがある)→歩調を合わせる
勧奨する(干渉する)→すすめる・・・など
6.漢語をいくつもつないでできている長いことばは,むりのない略し方をきめる。
たとえば 経済安定本部→経本
7.同じ内容のものを違ったことばで言い表わすことのないように統一する。
たとえば 提起・起訴・提訴 口頭弁論・対審・公判
2 用字について
1.漢字は,常用漢字表による。
(1) 常用漢字表を使用するにあたっては,特に次のことがらに留意する。
(略)
(2) 常用漢字表で書き表わせないものは,次の標準によって書きかえ,言いかえをする。
5.かな書きにする。
ア 遡る→さかのぼる、 看倣す→みなす
イ 漢語でも、漢字をはずしても意味のとおる使いなれたものは、そのままかな書きにする。
たとえば でんぷん、めいりょう、あっせん
ウ 他によい言いかえがなく、または言いかえをしてはふつごうなものは、常用漢字表にはずれた漢字だけをかな書きにする。
たとえば 右舷→右げん、 改竄→改ざん、 口腔→口こう
6.常用漢字表中の,音が同じで,意味の似た漢字で書きかえる。
たとえば 車輛→車両、煽動→扇動、碇泊→停泊、編輯→編集
哺育→保育、抛棄→放棄、傭人→用人、聯合→連合、煉乳→練乳
7.同じ意味の漢語で言いかえる。
ア 意味の似ている、用い慣れたことばを使う。
イ 新しいことばをくふうして使う。
剪除→切除、毀損→損傷、擾乱→騒乱、譴責→戒告
8.漢語をやさしいことばで言いかえる。
隠蔽する→隠す、庇護する→かばう、牴触する→ふれる
漏洩する→漏らす、破毀する→破る、酩酊する→酔う、趾→あしゆび
2.かなは,ひらがなを用いることとする。かたかなは特殊な場合に用いる。
(略)
3 法令の用語用字について
(略)
第2 文体について
1.公用文の文体は,原則として「である」体を用いる。ただし,公告・告示・掲示の類ならびに往復文書(通達・通知・供覧・回章・伺い・願い・届け・申請書・照会・回答・報告等を含む。)の類はなるべく「ます」体を用いる。
2.文語脈の表現はなるべくやめて,平明なものとする。
3.文章はなるべくくぎって短くし,接続詞や接続助詞などを用いて文章を長くすることをさける。
4.文の飾り,あいまいなことば,まわりくどい表現は,できるだけやめて,簡潔な,論理的な文章とする。
敬語についても,なるべく簡潔な表現とする。
(略)
第3 書き方について
(略)
<注>
1.文の書き出しおよび行を改めたときには1字さげて書き出す。
2.句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。
事物を列挙するときには「・」(なかてん)を用いることができる。
3.同じ漢字をくりかえすときには「々」を用いる。
4.項目の細別は,たとえば次のような順序を用いる。
(略)
-------------------------
しかし、昭和27年に制定したまま修正がされていないということは、現実の文書作成の常識からはかけ離れている可能性もあります。本当のところ、この「公用文作成の要領」はどの程度尊重されているのでしょうか。
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