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ファーウェイ製スマホ検証

2023-09-09 08:33:14 | 知的財産権
中国半導体5G並みか 米、ファーウェイ製スマホ検証
2023/9/8付日本経済新聞
『米政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が発売した新型スマートフォンの検証を始めた。2019年から強化してきた米国の半導体技術の禁輸で、高速通信規格5Gを搭載した高性能スマホは事実上生産が難しくなっていた。
ファーウェイは自社開発の半導体を搭載し、制裁の影響を軽減している可能性がある。米国による規制の有効性にも疑念が強まりそうだ。
『ファーウェイが自社開発し、SMICが製造した「キリン」チップが搭載されていると結論づけた。
回路線幅は7nmで、5Gに相当する通信に対応しているとみられている。量産が始まっている「3ナノ」「4ナノ」に比べると2世代前とまだ差があるが、SMICは先端半導体をリードする台湾のTSMCや韓国サムスン電子に次ぐ微細化技術を進めている可能性がある。』
『今回の7ナノ品の生産では先端の露光装置の技術を使えず、歩留まりが業界水準を下回るという調査もある。効率的な生産が実現しているかは不透明だ。』
『米連邦議会では現状の対中輸出規制が緩いとの不満がくすぶる。』

私はこのブログで、湯之上隆著「半導体有事」 2023-06-04を書きました。
『半導体の微細化の閉塞感を打破したのは、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)を使った露光装置である。オランダのASMLがEUV(1台200億円)の量産機を出荷し、TSMCは1年間に百万回の露光の練習を行った末に、2019年に7nm+というロジック半導体の量産に成功した。
インテルは、2023年に7nm+クラスが立ち上がっていない状況である。
中国のSMICは、2022年に、EUVを使わずに7nmの開発に成功した。これが、米国の「10・7」規制の直接理由である。

『2022年10月7日に米国が発表した「10・7」規制
これは、中国半導体産業を完全に封じ込めるための措置であり、半導体の歴史を大きく転換するだろう。
① 中国のスパコンやAIに使われる高性能半導体の輸出を禁止する。
② 先端半導体について、米国製の半導体製造装置の輸出を禁止し、エンジニアとして米国人が関わることを禁止する。
③ 半導体成膜装置のうち、規制に該当する装置を輸出する場合、米政府の許可を得なくてはならない。中国半導体にとっては致命傷となる規制である。
④ 中国の半導体製造装置メーカー向けには米国製の部品や材料等を輸出することを禁止する。
⑤ 中国にある外資系半導体メーカー(TSMCなど)にも規制を適用する。
この「10・7」規制により、中国は工場の新増設が困難になる。またエンジニアが派遣されないので既設半導体工場が停止する。』

今回の新聞記事では、「中国のファーウェイはは7ナノ品を用いて5Gスマホを発売した」「米国の対中輸出規制が緩いのではないか」と騒いでいます。
しかし、湯之上氏の著書から明らかなように、中国のSMICが7ナノ品の量産に成功していることは1年前にわかっており、昨年の米国による対中「10・7」規制はそれを契機として発動することになったのです。日経新聞はその点に気づいていないようです。
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