goo

意識された「人間原理」

意識された「人間原理」
 人間が意識した時の「人間原理」「宇宙原理」はどうなるのか。意識しないときは大いなる意思の力でバランスがとれていたが、意識することでバランスが崩れる。それが今の「環境問題」。
パートナーとの伝w
 やっと、電話がつながった。90分、話していた。そこでわかったのは、販売店がどのように進んでいくかがメーカーが理解していない。
 グローバルを前提にウェブでの一律的なシステムを狙っているようだが、それで失敗するのは目に見えている。
 販売店をいかに挟み込むかの視点がない。これはパートナーの力なくしてはできない。
地域の販売店と行政
 地域の行政を動かせるのは地域の販売店です。元々、地場の陣容です。青森に行った時も、富山に行った時もその力を感じました。
 時代は共用[シェア]に向かっている。それらを先取りしたのが、アマゾンであり、グーグルであった。地域のインフラに只乗りすると同時に、共有することでユーザーの負担を一気に減らした。
 集中的なサービスに対して、地域の多様性を生かしていくためには、販売店は行政と組むことになる。それで市民にシェアの概念を図りながら、進めていく。
パートナーが向かう先
 パートナーには今までの経験を生かせる道は、この接合部分に入り込むことです。やることはいくらでもある。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

衝撃の未来 人間原理、マルチバース

『シンギュラリティの科学と哲学』より 衝撃の未来
人間原理 人間に都合のよい宇宙
 この宇宙の成り立ちや、地球上の生物の進化の過程が解き明かされるにしたがい、この宇宙は“人間にとって非常に都合よくできている”ことがわかってきました。
 生物学や地質学者は、数十億年前、原始の海で誕生したごく簡単な生命から現在の私たち人類にまで、一度も途切れることなく行われてきた進化の奇跡を観察しています。
 これら起こりそうもない偶然をどのように考え左らよいのでしょう。その1つの哲学的解釈が人間原理です。
 ●ビッグバン宇宙
  現代の物理学は、宇宙誕生の謎に少しずつ迫っています。それがいつ起こり、どのように変遷をして現在のようになったのかといったことです。
  いまから138億年ほど昔、宇宙は無"から誕生したとされます。誕生直後の宇宙は現在の宇宙とはまったく異なっていました。現在の宇宙の次元は、立体の3次元と時間の次元だけが認められますが、最初は11次元もあったと考えられています。
  インフレーションからビッグバンを経てくるにしたがって宇宙は急激に冷えていきました。
  ビッグバンによる宇宙誕生から3分程度経過して素粒子がつくられるようになりました。原子核はできましたが、まだ温度が高すぎて、電子は落ち着くことができず、空間を飛び回っていました。38万年経った頃、宇宙の晴れ上がりが起きます。温度が下がったため、電子は原子核に捕らわれ、原子になりました。
  このときでき左水素やヘリウムが集まって恒星が誕生します。恒星内部では、核融合反応によって水素やヘリウムよりも重い元素が生成されていました。この頃の巨大な恒星は、寿命が短く、超新星爆発を起こし、様々な元素をまき散らしました。これが惑星をつくる材料、そして生命の材料ともなっていったのです。
 ●ファイン・チューニング
  科学者たちはこのような宇宙の成り立ちを科学的根拠、つまり理論に基づいた計算と、実際の観察値をもとに、もっと詳細に描いています。
  例えば、宇宙の始まりを詳細に計算することで、宇宙の終焉が見えてきました。宇宙に終わ叫こついての予測の一つとしてビッグクランチがあります。宇宙膨張は自身の持つ重力によって、あるとき反転するというものです。宇宙は永遠に膨張し続けるのか、それとも縮小に転じ、そのうち特異点に収束してしまうのか、その分岐点は宇宙全体の質量によって決まります。現時点の予測では宇宙の全質量は、膨張を続けられる、ほどはどの質量であると見積もられています。
  生命誕生と進化についても我々の宇宙は、非常に都合のよい環境であることがわかっています。現在、見つかっている生命の体には、炭素が必ず含まれています。科学者は、炭素原子が豊富に生成されたために、生命誕生が起き、さらに多種多彩に進化できたのだと考えています。
  多くの元素は恒星内の水素やヘリウムを原料とし、原子核と電子を追加する形で生成されます。
  炭素は、3つのヘリウムを原料としてつくられます。このため炭素合成の反応をトリプルアルファ反応と呼んでいます。
  トリプルアルファ反応の第一段階では、ヘリウム原子(He) 2個からベリリウム原子(Be)ができます。第二段階としてベリリウム原子1個とヘリウム原子1個が核融合して炭素原子(C)ができます。
  この反応が起きるためには恒星内に多くのヘリウムがあり、さらに温度が1億K(ケルビン)ほど必要です。
  ビッグバンから約38万年経った頃の宇宙の温度は3000Kと冷えていたため、炭素の生成はほとんどなかったと考えられます。
  このため炭素の生成は、恒星内部での核融合を待たなければなりませんでした。
  恒星内部の核融合反応によって、炭素のみならず、酸素や窒素、ナトリウムやカリウム、鉄など生命にとって必要な各種の元素もつくられました。
  このように、宇宙は生命にとってほどほどに、ちょうどよい具合に調整されている(ファイン・チューニングされている)ように見えます。
 ●人間原理とは
  まだ宇宙のことで、わかっていないことも多いのですが、確実に言えるのは、私たち人類が太陽系、第3惑星、地球に暮らしているという事実です。地球誕生から46億年、宇宙の誕生からは138億年という時間がかかっていますが、その間も宇宙は消えることなく続いていました。そして、この先も突然、消えてなくなるという証拠は見つかっていません。
  そこで、科学者であるブランドン・カーターは、人間こそが宇宙を説明する根本であるとする哲学的考察を行い、人間原理(Anthropic principle)と名付けました。
  人間原理によれば、自然界の様々な法則や宇宙を支配する定数は、人間がこの宇宙でこのように生きているのにちょうどよいように調整されています。もしも、これらの法則や定数がわずかでもこれまでの値と違っていたら、宇宙は現在のように安定した平衡を保った状態ではなく、既に消滅してしまっている、またはそこまでいかないにしても人間のような生命は誕生していなかったと考えます。これを弱い人間原理といいます。
  さらに、宇宙は、宇宙を観察する人間がいるから、宇宙はこのような法則や定数が調整されているのだ、という量子論的な考え方を取り入れたのが強い人間原理です。これは、人間にとってちょうどよいように宇宙は作られたと解釈したもので、“神”の実在を証拠立てる根拠とする神学者や哲学者もいます。
  地球以外に生命はいないと考えるのが科学的に無理なように、我々の宇宙以外にほかに宇宙がないと考えるのも無理があります。しかし、そのように無数に存在する宇宙には、人間のような生命は存在しないかもしれません。人間原理では、宇宙を観察し、そのことについて考える知的生物がいないのであれば、その宇宙は存在しないも同然であると考えるのです。
マルチバース 宇宙の根本
 物理学は、宇宙が無限にあっても不思議ではないという仮説を掲げています。この1つがマルチバース(多重宇宙)です。
 マルチバースを説明する元となる宇宙の根本的な成り立ちに関する理論の1つとして注目されている超弦理論は、宇宙のはじまりや重力の謎を解き明かすものとなるかもしれません。
 ●相互作用力の統一
  人間原理によらずとも、我々のいるこの宇宙は人間にとって都合のよいつ<りになっています。宇宙を支配する物理法則が少し違っただけで、生命は高度に進化できなかったといわれています。
  その都合のよい物理法則の1つが基本的な力です。基本的な力は、電磁相互作用(電磁気力)、弱い相互作用(放射性原子核のベータ崩壊を引き起こす力)、強い相互作用(原子核の陽子と中性子を束縛している力)、そして重力の4つの力に分けられます。
  これら4つの力は、ビッグバン直後は1つの力であったと考えられるため、4つの力をまとめて扱う統一理論が研究されてきました。既に電磁力と弱い相互作用は統一されています(電弱統一理論)。これと強い力を一緒に扱おうとするのが大統一理論(grand unified theory、GUT)です。
  4つの基本的な力は、素粒子間に相互にはたらく力だと考えられます。このためこれらを、4つの基本相互作用ということもあります。
  4つの基本的な相互作用の中で重力だけがほかの3つに比べて非常に小さ<、その理由も謎の一つでした。
 ●超弦理論
  4つの基本的な相互作用を統一し、重力の謎も一気に解決できそうな理論があります。それが超弦理論です。超弦理論では素粒子の大きさをプランク長(1.16×10**-35m)程度の1次元の振動する弦と考えます。弦には輪ゴムのように閉じたものと、1本の弦のように開いたものの2種類があります。
  超弦理論によるブレーンワールド宇宙論では、宇宙は10次元空間に浮かんだプレーンという膜だと考えます。そして、開いた弦の素粒子(電磁相互作用、強い相互作用、弱い相互作用)はこの3次元のブレーンに端が固定されているといいます。物質はもちろん、光もこのブレーンから出ることはできませんが、重力だけは閉じた弦なので、ブレーンに拘束されません。このため、プレーンの外にも力線が及ぶと考えられます。
 ●マルチバース
  超弦理論によると、宇宙は多次元上に浮かぶブレーン上にあります。ブレーンはいくらあってもよく、異なる宇宙が無数にあるかも知れません。
  異なる宇宙では異なる物理法則が支配していて、中には生命が存在していなかったり、まともな物質すら存在していかなったりする宇宙もあるでしょう。そのような多元宇宙(超弦理論によるブレーン宇宙以外にマルチバースを連想させる宇宙理論は数多くあります)の中には、宇宙の進化にとってちょうどよい具合に物理法則が調整されているものもあるでしょう。これが無数にある宇宙の1つである、我々の宇宙だというわけです。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

衝撃の未来 学習、戦争

『シンギュラリティの科学と哲学』より 衝撃の未来
学習 学習形態の変化
 シンギュラリティによって、「学校」というこれまでの教育機関の枠組みは再構築されます。
 幼児教育から初等教育程度の生きるために必要な基本的な知識は、これまでと同じように人間が教える方式が有益であると思われますが、それ以上のある年齢から教えられてきた多<の知識や技能に関する記憶は、脳に直接ダウンロードされるようになるでしょう。
 人間は、これまでのように長い教育期間や膨大な学習量から解放されることになります。
 ●学校教育の中での学習
  現在、学校で行われている教育システムの多くは、同年齢で同地域出身(同じ言語を理解する)の未成年者を1つの教室に集め、1人ないしは2、3人程度の教師が授業を行うという一斉授業の形式をとっています。
  一斉授業とは、テキストに載っている事柄を原則一人の教師が教える、という形式です。この学習形式が、生徒(学習者)にとって、どの程度効率的に行われているのかを疑問視するのは杞憂です。一斉授業という形式が数世紀以上続いていること。世界中の多<の国や地域の公の学校で採用されていること。さらに、一斉授業形式を経験した人たちが、そのような学習形式が無駄なものだったと強く思わないこと。これらが、その理由です。
  しかし、同時に個人的な教師に学習を手助けされた経験があれば、できるだけ少ない人数での一斉授業、ま左は教師1人に生徒1人の対面授業が理想的であると思うのではないでしょうか。
  少人数での学習が必要な教科は別として、個人の学習能力を高めるには、教師対生徒は1対1が理想的です。現在、幸いにもコンピューターの指数関数的な進化かハードウェアの価格を安価にし、生徒1人にコンピューター1台が割り当てることは可能になっています。優良なソフトウェアを供給することの問題はありますが、生徒1人が自分の進度に合わせて、自分用の学習スケジュールに沿って学習を進めることは可能なのです。
  こうなると、学校の学習に関する役割は、生徒のモチベーションの維持、精神的に安定して学習に集中できる環境、人間の関係を考慮して社会性を育む、学習の定着と応用に向かうようになるでしょう。
 ●オンライン授業
  授業を録画したコンテンツが、動画サイトなどにアップロードされていて、無料で誰でも見られるようになっています。
  ハーバード大学、MIT、スタンフォードなどの大学では、誰にでも無料で大学教育を提供する目的で、録画した授業をウェブサイトで配信しています。さらに、視聴するだけではなく、授業に関するテストを受けたり、課題を提出したりできる場合もあります。
  ヴァーチャル・リアリティが進めば、世界中から生徒たちがオンラインで仮想教室に集い、授業者から討論形式の授業を受けることが可能になるでしょう。
  この仮想教室では、実験・観察や絵画鑑賞などもCGで行うことができます。物理実験では、無重量での物体の運動実験や火山火口での化学実験などもできます。
 ●脳へのダウンロード
  脳とコンピューターが直結されれば、コンピューターから脳への知識データのダウンロードが可能になります。
  知識獲得のための学習は、原則不要になるでしょう。知りたいことがあれば、脳からコンピューターにリクエストが送られ、最適化された検索結果がダウンロードされるのですから。
  外国語を勉強しなくても、話したいと思うフレーズを頭に思い浮かべるだけで、脳と直結しているコンピューターから翻訳された外国語データがダウンロードされ、中枢神経に渡されます。学習したことがない外国語であっても、ネイティブと変わらず、滑らかに話せるようになるでしょう。
 ●脳の増幅
  遺伝子工学とナノテクノロジーが発展すれば、脳の機能を人工的に増幅することもできます。
  フラッシュ暗算や記憶力で常人を超えた結果を出す人がいます。ボードゲームのチャンピオンもそうです。このような人は、トレーニングを積むことで、暗算や記憶、洞察力を鍛えています。
  “脳を鍛える”ことの意味が工学的にわかれば、工学的な手法でその能力を引き上げることができます。
  特に創造性に関する分野は、AIであっても簡単には獲得できないのではないかと思われています。芸術分野の創造性を発揮する脳の分野を増強することで、これまでにはない芸術を生み出すアーチストが出てくることも考えられます。
戦争 戦闘ロボット
 アメリカ統合指令本部のアルファ計画によると、2025年にはロボット化のかなり進んだ戦闘が想定されています。
 この戦闘ロボット(TAO)は、AIの頭脳を持ち、任務内容によっては完全に自律した戦闘を行います。
 戦闘において知的兵器を使用することは、味方兵士の犠牲を減らすことになります。それは、戦争にかかる予算を減らし、効率よく戦闘を行うのに、ポットなどの機械兵器が有効だ、という考えに基づいています。
 ●軍事装備
  ハウス・アメリカーナと呼ばれ左アメリカの軍事戦略は、リーマンショック以後、効率を重視する方向へ転換を図っています。IOT技術によるインテリジェントな部隊を編成しようとしています。
  装備改革として打ち出したフューチャー・コンバット・システム(FCS)は、無人偵察ヘリコプターや無人偵察車両などが収集した敵の情報を兵士のヘルメットのディスプレイに表示します。ところが、開発の遅れから予算削減にさらされ、打右切りが決定しました。代わって、高エネルギー思考兵器の搭載も計画されていた戦闘車両(GCV)の開発に移行しましたが、これも2014年には中止されています。
  ボストン・ダイナミクス社が開発した4足歩行ロボットの「BigDod」を改良したラバ型ロボットは、軍の荷物や燃料を運ぶことを想定しています。なお、同社はGoogleに買収された後、ソフトバンクに買収されました。
 ●無人兵器
  各国の軍では人的被害を少なくする研究・開発が活発です。国民である兵士が被害を受けなくなる無人兵器の購入や開発に充てるなら予算は通りやすいと考えられます。
  アメリカをはじめ、イギリスやイタリアなどの空軍で使われているプレデターやリーパーは、遠隔操作によって操縦されます。
  強固で頑健な装備を持たない簡単な自律型ロボットでも、非常に多くの数が集まり、それらがひとまとまりになって行動することで、大きな攻撃力を発揮するという「群れ」(ボイド)の研究も進んでいます。
  クレイグ・レイノルズは、衝突回避、整列、接近の3つのルールだけで群れ行動をすることを見つけました。これを応用したボイド型ロボットは、複雑で高度なAIを必要としません。このため、比較的、安価に製造することができるとされています。
 ●ナノウェポン
  ナノテクノロジーは、兵器にも応用されるでしょう。ナノサイズの自律型ロボットは、見つかりにくいため大量のスパイを送り込むことができます。
  ナノウェポンに自己複製力を持たせることができれば、戦闘能力は爆発的に拡大します。ただしこれは諸刃の剣となり、人類存亡の危機を招く恐れもあります。
  高度な製能力を持ったナノウェポンを掃討するには、相手もナノウェポンを持たなければならなくなり、そうなれば戦争はこれまでとはまったく異なった次元の戦いに入ることになります。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

EUというキーワード

『朝日キーワード2020』より
支持率低下するメルケル政権
 ドイツで2018年3月、第4次メルケル政権が発足した。すでに主要7カ国(G7)のトップの中で最も長い在任期間となったメルケル首相だが、最近は連立政権内の内輪もめが目立ち、支持率の低下が止まらない。一方で、難民排斥を掲げる新興右翼政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が支持を伸ばす。ポピュリズム政治が世界で台頭する中、民主主義や人権の守り手として重要な役割を担ってきたメルケル氏の足元が揺れている。
 第4次メルケル政権は、メルケル首相率いる中道右派、キリスト教民主同盟(CDU)、姉妹政党で南部バイエルン州を活動基盤とするキリスト教社会同盟(CSU)、中道左派の社会民主党(SPD)の3党で発足した。発足直後から足並みの乱れが目立ったのは、CDUとCSU。10月のバイエルン升lの州議会選挙を前に、AfDの台頭に危機感を持ったCSUは難民受け入れに厳しい政策を相次いで打ち出し、メルケル氏と衝突。一時は連立崩壊の危機にまで陥った。
 有権者そっちのけで内輪もめを繰り返す両党に有権者は批判を強め、10月の世論調査で両党の支持率は過去最低の26%に低下。CSUは州議会選挙でも歴史的な大敗を喫した。
 一方でSPDの衰退も止まらない。「保守との連立では存在感が薄れる」として、もともと連立参加には消極論が強かったが、その懸念が顕在化し、世論調査ではAfDや緑の党に抜かれる局面も増えてきた。
 AfDは、15年にメルケル氏がシリアなどからの多くの難民受け入れを決めたのを機に伸長。第3党となった17年9月の総選挙後も旧東独地域を中心にじわじわと支持を伸ばしている。
 トランプ米大統領の対極として「正論」を放ってきたメルケル氏だが、政権の組み替えや解散総選挙を予想する声は絶えない。10月29日、メルケル氏はCDU党首の辞任を表明。21年の任期満了後は政界から身を引く意向も示した。
EUの移民・難民対策
 中東やアフリカから欧州を目指す難民・移民の流入が止まらない。欧州連合(EU)は、受け入れ数を加盟各国で割り当てることを決めたが、実数は大きく下回っている。公平な負担を求めるイタリアなどの不満は根強い。 EUでは移民排斥をうたうポピュリストや右派政党が台頭、加盟国で押しつけ合う構図が欧州分断の火種になっている。欧州へ渡る前に難民かどうか判断する仕組みも議論されたが、実現への道のりは厳しい。
 2011年の「アラブの春」やシリア内戦をきっかけに、これまでに数百万人の人々が祖国を逃れて欧州に向かった。目指すルートは大きく分けて二つある。一つは、主にトルコを経由してギリシャに渡り、バルカン半島を縦断してドイツなどに向かう束地中海ルート。もう一つはリビアから地中海を渡り、主にイタリアに上陸するルートだ。
 迎えるEU加盟国の間では、「ダブリン規則」によって、最初に上陸するイタリアやギリシャに受け入れの負担が押しつけられる形となり、イタリアでは国民の不満が高まった。18年の総選挙の結果、移民排斥をうたう右派「同盟」が政権入り。サルビーニ党首が難民・移民問題を担当する内相となり、EUにダブリン規則の抜本的な見直しや、加盟国の「公平な負担」を求めた。
 一方、ドイツはメルケル首相が15年に難民申請希望者の受け入れを表明したことで、百万人にも及ぶ人々が国内に流れ込んだ。人道的な対応が世界的な称賛を浴びる一方で、難民の要件を満たさなくても経済的な豊かさを求めてやってくる移民が激増した。国内では反移民の世論が高まり、極右政党の伸長を招く結果となった。 18年秋にはメルケル氏が率いる与党「キリスト教民主同盟」が州選挙で相次いで敗北。メルケル氏は党首を辞任し、3年後の政界引退を表明した。
 メルケル氏が対策の先頭に立ってきた、EU加盟国による難民受け入れの割り当ても行き詰まっている。15年に、イタリア・ギリシャにいる16万人を加盟国で分担して受け入れる計画だったが、実際に受け入れた総数は計画の約2割にとどまった。18年に「反移民法」を可決させた八ンガリーのように、受け入れ自体を拒否する国もある。北アフリカのリビアから地中海を渡ってくる難民を救助、支援する船がイタリアやマルタに寄港を拒否され、受け入れ先をめぐって「たらい回し」になる事態も発生。地中海ルートでの最大の上陸国は、イタリアからスペインに移った。
 EUは同6月、受け入れについて首脳会議で議論したが、根本的な解決策は打ち出せていない。 EU内に共通の収容施設をつくることで合意はしたものの、設置は各国の判断に委ねられた。またイタリアなどの主張により、欧州に渡る前に難民かどうかを判断する施設をEU外に設け、移民の流入を減らす方針で一致。だが設置に応じる国はなく、実現性を疑う指摘も出ている。
強まるEUの遠心力
 米国のトランプ大統領に象徴される「自国第一主義」の波が、欧州連合(EU)を揺さぶっている。 EU主要国の南欧イタリアでは、難民排斥を訴えるEU懐疑派政権が誕生した。東欧ハンガリーでも反移民、反EUを掲げる政党が圧勝。東欧の一部の国とEUは民主主義をめぐっても大きく対立し、EUは南北、東西間で問題を抱える。親EUの筆頭であるドイツ、フランスでもこうした機運が高まり、EUの遠心力が強まっている。
 2018年、EUで最も注目されたイペントの一つは3月のイタリアの総選挙だった。EUの行政機関トップ、ユンケル欧州委員長が事前に「結果を心配している」と述べた通り、反EU、反難民を訴える新興政党・五つ星運動が躍進。「第一にイタリア人の仕事と未来を守る」として移民の強制送還などを訴える右派政党「同盟」と連立を組み、6月に新政権が誕生した。
 新政権はさっそく、同月のEU首脳会議で難民受け入れ問題に関し強硬な主張を展開。予定した抜本的な改革案の決定は見送られた。自国の19年予算案でも、財政赤字の削減をめぐりEUと対立した。
 東欧で、反EU勢力への支持の強さを改めて浮き彫りにしたのは4月のハンガリーの総選挙だ。反EU、反難民を強く打ち出した与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が、前回選挙に続き圧勝した。
 欧州委は17年12月、EUで決めた難民受け入れの義務を果たしていないとして、ハンガリーとともにポーランド、チェコをEU司法裁判所に提訴。その後も、欧州議会がメディアや大学への圧力を問題視し、ハンガリーヘの制裁を求める決議をしたり、司法の独立が脅かされているとして欧州委がポーランドを提訴したりするなど、EUと東欧の関係が改善する兆しはない。
 一方、親EU狽口よ足元が大きく揺らいでいる。 EUの重し役として、難民受け入れの分担を求めたり、民主主義的価値観の尊重を強く訴えたりしてきたドイツのメルケル政権、フランスのマクロン政権はともに、国内で大きく支持を落としている。
 メルケル首相は18年10月、党首を務める「キリスト教民主同盟(CDU)」が二つの州議会選挙で歴史的な大敗を喫した責任をとり、党首の辞任を表明。いずれの選挙でも、難民排斥を訴える新興右翼政党が勢力を伸はした。
 17年5月に就任したマクロン大統領は当初、メルケル氏とともにEUの統合を深める存在として期待されたが、労働市場改革などで批判を浴び、支持率は就任1年半で約半分の30%程度に。ナンバー2の内相や環境相らの辞任もあり、政権基盤が弱まっている。
 反EU機運の高まりと親EU政権の低迷が示すのは、人々の移民への不満、不安の大きさだ。反EU派は「移民vs.自国民」という構図を描き、移民に厳しい姿勢をとらないリベラル政党や、加盟国に難民受け入れを求め、域内での人の移動の自由を義務づけるEUを移民側に位置づける。説得力ある答えや政策を示せない政権、EUはその構図を打ち崩せず、支持を失うという流れだ。
 EUは19年5月、5年に1度の欧州議会選を迎える。EUの遠心力がさらに強まるのか、歯止めがかかるのか。結果は、EUの将来を大きく左右することになりそうだ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )