未唯への手紙
未唯への手紙
OCR化した5冊
『ザ・ビジョン』
ビジョンを持った企業だけが生き残る
誕生時から不変のAmazonビジョン
ごく初期に芽生えていたAmazonのビジョン
The Everything Sore ジ・エブリシング・ストア
地球上で最もお客様を大切にする企業であること
地球上で最も顧客中心の企業とはどんな企業なのか?
ビジョンのヒントとなる四つのキーワード
四つのキーワードを一つに括ってみる
『現代メキシコを知るための70章』
拡大した階層格差 貧困率60%の社会の姿
階層社会と地域格差 近代民主国家になれないメキシコの理由
「国境の壁」 米国トランプ大統領が構想する「現代版万里の長城」
家族の多様 核家族・ひとり親家族・ディンクス・生涯独身者
メキシコにおけるシェアリングエコノミー 成長と課題
『政治哲学概説』
民主主義の思想原理--古代から現代へ
民主主義とは何か
民主主義の原義
無支配の追求
民主主義の原型
古代の民主主義
近代の民主主義
現代の民主政
民主主義の本質
民主主義の論理
民主主義の精神構造
現代民主主義の課題
公共性と市民社会
ポピュリズムに抗して
討議空間の創出
非暴力民主主義への道
民主主義と日本社会
世界秩序の形成原理--近代国家を超えて
地球社会の地殻変動
国家はどこへゆくのか
国際立憲主義と地球市民社会
グローバル化と移民社会
グローバル化の諸相
越境のカテゴリー
移民・難民の概念
越境することの意味
地球社会の形成原理
地球文化の形成
地球市民社会の形成主体
世界統合の可能性
世界政府の利点
国際立憲主義の進展
世界統合のかたち
戦争廃絶への確かな道
政治の意味--アレントを基軸に
政治とは何か
政治の多義性
政治の概念と国家
政治概念の転換
支配から無支配へ
政治の3つの位相
人間の営みとしての政治
政治的なものの発見
複数性と人間らしさ
世界概念の多義性
活動としての政治
4 政治の両義性
『「プリンセス・ダイアナ」という生き方』
扉をたたく
『14歳から知る影響と連鎖の全世界史』
地球の気候変動と人々
気候変動が文明の危機を招く
人為による気候変動
農業革命
農耕は危機を拡大してきた
国家の誕生と暴力
戦争の人類史
人類と世界宗教
アショーカ王の帝国が仏教を世界宗教とした
インドから日本ヘ
ローマ帝国がキリスト教を世界宗教とした
啓示の宗教
イスラム教は世界宗教となり、今日、世界人口の約30%を占めている
神と預言者と啓典の民
武器・戦争の人類史
鉾と盾、止まることのない攻防は科学技術によって、その果てすら見えない
火薬からA-兵器まで
地球の限界は超えられるのか
地球の気候変動と人々
『14歳から知る影響と連鎖の全世界史』より
地球の気候変動と人々
気候変動が文明の危機を招く
地球史からいえば現在は氷河時代とされ、数万年単位で氷河が拡大する氷期が繰り返されてきました。現在は最後の氷期(ウルム氷期)の後、次の氷期までの間氷期にあたります。ウルム氷期のピークは約2万年前で氷河の発達によって海水面が今より100m以上も低くなりました。ユーラシア大陸とアメリカ大陸間のベーリング海が陸続きになり、人類はアメリカ大陸に渡ることができました。また、氷期の寒冷への適応から分厚いまぶた、低い鼻の黄色人種が生まれました。この最後の氷期は約1万年前に終わりました。気候が温暖化して海水面が上昇し、日本では東京湾沿岸などが広く水没。そこが隆起して陸地になったあたりに縄文時代の貝塚が分布することから縄文海進といいます。
この比較的温暖な時期に農耕が始まり、文明が築かれたのですが、気候の冷暖、湿潤と乾燥は繰り返され、文明は時に壊滅的な影響を受けました。
たとえば現在はまったく乾燥したアフリカのサハラ沙漠にも古代文明の遺跡があり、草原の動物などを描いた壁画が残されています。サハラ一帯は数千年単位で湿潤と乾燥を繰り返し、豊かな緑の時期もあったのです。その後の乾燥化によって人々は追われ、そこに営まれた文明も滅びました。
人為による気候変動
このような気候変動は地球全体で起こり、民族の大移動をも引き起こして、左図に見るような世界史の変動をもたらしました。大きくは地球そのものの気候変動によることですが、局所的には人間の営みが大きく影響しました。たとえば、今は沙漠のレバノン、シリアあたりにはレバノンスギの豊かな森がありましたが、古代エジプト、メソポタミア文明のころから建材や船材に伐り出され、地中海での交易が発展すると、ほとんどの森は消失して気候も乾燥し、砂漠化してしまいました。東アジアでも中国で森林が広範囲に失われました。降水量が少ない大陸では、いったん森が失われると回復が難しいのです。
日本はさいわい海からの風が山地にぶつかって雨・雪を降らせる地形が全国に及び、国土が森林におおわれた稀な国です。ところが、かつてない大雨や巨大台風にしばしば見舞われるようになりました。産業革命以来、大量に排出されてきた二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化の影響です。人類は過去の気候変動を乗り越えてきましたが、今や70億人を超す人口を抱え、大きな危機を迎えています。
農業革命
農耕は危機を拡大してきた
採集と農耕の始まりは重なり合っています。縄文集落跡の青森県の三内丸山遺跡では集落の周囲にクリの木の林がありました。まだ野生種の段階でも、人が選択して育てたのでしょう。バナナは1万年くらい前には完全に作物化されて種子ができなくなっています。バナナとともにタロイモ(サトイモ)、ヤムイモ(ヤマノイモ)も人類最古の作物ですが、一年中、温暖な熱帯雨林地方で必要な時に必要な量を収穫するような小規模な農耕形態で、人と自然が共生していました。
農耕史上の大きな変化は、小麦、稲などイネ科植物の栽培によってもたらされました。イネ科の植物は明るい草地の優占種で、半乾燥地の草原、河川の氾濫原などに大群落ができます。大規模な農耕が発達したのは、やはりイネ科植物が茂る河川の流域で、エジプトのナイル川、西アジアのティグリス・ユーフラテス川、東アジアの黄河流域などです。雨の降り方に季節による規則性があることから自然界の法則や神の意志が発見され、それと人をつなぐ者として王や神官の地位が高まりました。王や神官を仰いで大規模な濯漑設備の工事もおこなわれました。
ところが、農耕文明はいくつかの点て脆弱でした。
①周辺の遊牧民の侵攻と奪略。②特定の作物に依存することによる栄養の偏り。③家畜を飼うことで大量発生する蝿や蚊、ネズミが媒介する疫病の流行。④くりかえしおこる凶作と飢饉。⑤他国・他民族との戦争の拡大。さらに大きな危機は、農耕が本質的に反自然的な営みであることによってもたらされました。森を伐り開いて農地をつくることによって地域の気候が変化し、川が涸れたりして滅びた文明があります。現代の農業ではその破壊が地球規模に達しました。化学肥料や農薬の大量使用による土壌の劣化、拡大する砂漠化などの地域的な問題に加えて、アメリカ中西部などの大産地に世界の食糧が頼るようになりました。大規模農業によって食糧が安価に供給されると、世界各地の従来型農業は衰退しました。しかし、大産地での地下水の大量汲み上げなど自然の収奪は激しく、未来に大きな不安を抱えています。
国家の誕生と暴力
戦争の人類史
山口県下関市の土井ケ浜遺跡から15本の石鏃が打ち込まれた男の遺骨が1954年に発見されました。ムラを守るために戦って死んだ戦士ではないかと見られます。以来、小集団で移動しながら狩猟採集の生活をしていた縄文時代には戦争はなかったけれど、稲作によって定住し、守るべきムラができたときから戦争が始まったという見方が一般化しました。実際には人が戦争をする理由はさまざまですが、村程度のクニが王を戴く国家になり、集団の規模が大きくなるにつれて、戦争の規模も大きくなるのが当然のなりゆきです。王は法廷を設けて民衆の暴力をコントロールしたり、隣国と協定を結んだりして戦争を避けましたが、時には戦士を率いて大規模な対外戦争をしかけました。
人を常に戦争に駆り立てたのは「恐怖」でしょう。武器が発達するにつれて敵への恐怖は高まり、「やられる前にやれ」という心情は強まります。組織化された軍隊による皆殺しの恐怖も生まれました。恐怖で押さえつけられていた民衆の暴動が革命のような運動になるときにはすさまじい殺戮がおこなわれました。
そして現在、第二次世界大戦後に国連という国際協調機関があるにもかかわらず、地域紛争は絶えません。また、1991年にソ連が崩壊して東西冷戦が終わり、一時は核軍縮が進むかに見えましたが、近年はむしろ核兵器拡散の危機が増しています。
さらに、かつてない恐怖が生まれました。AIで自立的に動くロボット兵器の登場です。国家の指導者にとっては、自国の青年を戦場に送らずにすむので戦争の歯止めがひとつ外れました。兵器の開発者は、攻撃や殺人を抑制する感情や自分が破壊されることへの恐怖をロボットに組み込まないでしょう。かつてSF作家のアシモフは口ボット工学の第二原則を「ロボットは人間を傷つけてはならない」としましたが、現実はまったく逆に進んでいます。