士師記 9章1−21節
エバル山とゲリジム山との間に挟まれたシェケムは、旧約聖書では重要な場所の一つです。アブラハムがハランから旅をしてカナンの地に入って最初に祭壇を築いたのはここでした。創世記12章6節は「当時、その地にはカナン人がいた」と記します。また、ヨシュア記8章にはエバル山とゲリジム山との間の場所で神との契約の更新が行われ、全焼のいけにえと交わりのいけにえがささげられたとあります。さらに、ヨシュアがイスラエルの全部族を集めて最後の教えを与え契約を更新したのも、シェケムでした。⇒ヨシュア記24章
こうまでもして権力を手に入れたいのか、というのがここを読んで思ったことです。アビメレクは父ギデオンとシェケムに住むそばめとの間の子。オフラにあった父の家に住む70人の兄弟たちとの間には、何らかの確執のようなものがあったのかもしれません。シェケムにはこの時、かなりの数のカナン人がイスラエルの民とともに住んでいました。アビメレクは、自分が勇士エルバアル(ギデオン)の子どもであるということを武器に、カナン人たちの思いをすくい上げようとします。そして、事実でないことをねつ造して人々を不安に陥れ、シェケムの人々に身内だと思わせるようにするアビメレクの知恵は悪らつです。
一方で一人生き残ったヨアシュは、ゲリジム山の上から寓話を用いてシェケムの人々がアビメレクを王にしたことを非難します。「誠意と真心をもって行動して」というヨアシュのことばを心に留めました。安っぽい身内意識をくすぐられて、なるべきでないものを王として祭り上げた彼らの行動を「誠意と真心をもって」したのかと、問うのです。
イエス・キリストをお遣わしになって救ってくださった神に、自分は「誠意と真心をもって行動しているか」と、問いかけてきます。