都知事選で3位に甘んじたに蓮舫氏が「共産党と連携したため浮動票が
逃げた」或いは「キツイ印象があるので嫌われた」等々各方面から言いたい
放題の露骨な批判に晒されている。
しかし、「真の敗因」はそこにはない。
さしたる実績も無いまま安芸高田市長を辞職して都知事選に立候補した
石丸信二氏の「新手の選挙戦術」に負けたのである。
そのような選挙結果の分析が報道されないまま石丸氏がマスコミの寵児と
化しているのを不思議に思えた。
しかし、今朝の毎日新聞では「好きなものに群がるのは消費行動にすぎない。」
と正鵠を得た論評が為されていた。

「石丸現象」の失敗=伊藤智永(毎日新聞編集委員兼論説委員)2024.7.20
今や国家目標と化している出生率向上、その対策として、一夫多妻制導入
や遺伝子操作を提案する自称「政治家」を初めて見た。
東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏である。
今すぐにではなく、100年先をめざし社会を変えると言い訳したが、どんな
思考と理念の持ち主かは、これで十分。皮肉なのは、その正体が選挙後、
あれだけ敵視したテレビのバラエティー番組で明らかになった点である。
「石丸現象」は、候補者と有権者がメディアを介さず、ネット交流サービス
(SNS)で直接つながる新しさがはやされた。石丸氏は自分が何をするかは
ほぼ語らず、「変えるのはあなたです」と一人一人にささやきかけ、投票した
人のたぶん100万人超は、その言葉に夢を見た。
既存の政党やメディアに幻滅し、変化を求めた人々の受け皿になったと識者
は説く。変化。何を、何に、どうやって。政治に問いは欠かせない。問いは
批判精神から生まれる。好きなものに群がるのは消費行動にすぎない。
SNSは双方向伝達なのに、必要な問いと応答が成立しなかった。政治の意思
疎通として、石丸氏には成功でも、正確な情報を得られなかった有権者に
とっては失敗である。そして、投票日までに十分な問いを発しなかったメディ
アは、深刻な敗北を喫した。
余計なお世話だ、石丸氏の一夫多妻制に賭ける、という有権者もいるだろう。
小池百合子都知事の疑惑や公約不履行もメディアはかなり報じたが、現職
は強かった。膨大な予算に黙ってぶら下がる既得権益層はそれほど厚い。
米国では議会襲撃を扇動したトランプ前大統領が、なお熱狂的な有権者に支持
されている。民主主義は、有権者の自分本位むき出しの投票だけでは健全に機能
しない。
(以下省略)