極めて小規模ながら我が家も養鶏業を営んでいて、百羽以上を飼っている場合は家畜保健
衛生所の指導の下に鳥インフルエンザ対策等の取り組みを求められている。
そんな中、昨年末の吉川元農林水産大臣の収賄事件の関連でアニマルウェルフェアなる
ものについて知ることが出来た。
報道によると贈賄側の魂胆は「鶏卵価格下落に対する補償等」とのことだったが、「そんな
ことで一千万円超の賄賂を贈るものか?」と疑問に思っていたが、案の定、本音は別のところ
にあった。
世界の潮流となりつつある「とまり木や巣箱の設置」等のアニマルウェルフェアを尊重する
ことになると、日本の大規模養鶏場の主流となっている「ケージ飼育」が不可となり大きな
影響が出ることから、それを阻止するのが目的だったようだ。
この冬も鳥インフルエンザにより各地で万単位で鶏が殺処分されているが、不健康なケージ
飼育が病気を呼んでいる可能性は否定出来ない。
(連日真冬日の鶏舎。夜はとまり木の上で眠る)
(参考1)日本の動物保護団体の見解
「本来ニワトリは1日1万回以上地面を突き、とまり木で眠り、巣に隠れて卵を産み、砂浴びで
寄生虫や汚れを落とし、日光浴をし、運動をして心身の健康を保つ。しかし、いま日本の採卵
養鶏場の92%は、バタリーケージというほぼ身動きが取れないケージに閉じ込め鶏を飼育し
ている。
鶏の骨は放牧と比較すると3分の1の薄さになり、農薬を全身にかけて寄生虫を落とす。
ケージ飼育は、アニマルウェルフェアが著しく低いことは明らかである」
(参考2)日本の保護団体がOIE(国際獣疫事務局)に要望書を提出した際のプレスリリース
OIEのアニマルウェルフェア規約の信頼を取り戻すために!
プレスリリース:2020年12月25日
日本国内で活動をする動物保護団体認定NPO法人アニマルライツセンターとザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパン、そして鶏の福祉向上を目指す国際連合Open Wing Allaianceは、6つの国内動物保護団体とともに、OIEに対して、不正が行われた可能性のある日本の意見が含まれた「第 7.Z 章アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム」の現在のドラフト案は信頼を得られないことを指摘しました。そのうえで、日本のコメントや意見が及ぼした可能性のある項目について再検討すること、及び真にアニマルウェルフェアの向上を世界にもたらしうる、公正な基準に修正をすることを要望しました。
この要望書は2020年12月24日(日本時間)に、OIE本部(フランス、パリ:The Director General, Dr. Monique Eloit)およびOIEの各地域担当者に送付されました。
要望書:https://bit.ly/3ro0a6p
国内消費者や、企業の中でも日本の畜産動物のアニマルウェルフェアの遅れに気が付き、関心が高まっています。犬や猫の保護活動を行ってきた新潟動物ネットワークも、翌25日にOIEに見直しを求める要望書を送付し、市民にもOIEへの意見を求めています。
経緯
鶏卵生産大手のアキタフーズの元代表が、元農林水産大臣に賄賂を渡したとされる疑惑が日々濃厚になっています。このときの目的がOIE(国際獣疫事務局)で策定中の採卵鶏のアニマルウェルフェア規約に対する日本のコメントを、業界に配慮してアニマルウェルフェアを下げる目的であったことが報道により明らかにされてきました。
この採卵鶏のアニマルウェルフェア規約のドラフト案を巡って、私達は科学に基づいたアニマルウェルフェアを規定することを求め、日本政府の動向を見守ってきました。しかし、日本政府は頑なに消費者の意見を反映せず、日本の養鶏業界の現状に合わせてアニマルウェルフェアを下げるための意見を出し続けていました。
この日本の意見は、一部がそのままドラフト案に採用されています。
OIEのアニマルウェルフェア規約は、科学的エビデンスに基づき、世界中のアニマルウェルフェアを向上させることを目的にしています。高いアニマルウェルフェアを実現することは、動物の健康だけでなく、人や環境の健康、持続可能性にも直結しているため、特に日本のような畜産動物のアニマルウェルフェアが著しく低い国でこそ、重要なことです。
強制力のある規約ではありませんが、社会の持続可能性を左右する重要な規約です。その議論の中に、現状を維持したいとする日本の養鶏業界の賄賂が含まれたことは、大変残念なことです。
日本のコメントやOIE総会での意見は不正により歪められた疑惑があります。このような意見をもとに調整された基準は、その正当性や妥当性にも疑問が生じ、世界中の人々の信頼を得ることは難しくなります。当該規約は2021年5月のOIE総会で採択される予定ですが、OIEは、その規約が歪められた可能性があることを認識し、それを正す必要があります。
世界はケージで飼育することをやめ平飼いに切り替えるというケージフリーの飼育に変わっていっています。一部良いものがあるという考え方ではなく、すべて最低限ケージフリーであるという社会に向かっていっています。