shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

John Lennon Anthology (Disc 1-Pt. 2)

2009-12-11 | John Lennon
 Disc-1 “アスコット” の後半は「イマジン」セッションが中心だ。名曲⑨「イマジン(テイク1)」は公式ヴァージョンには入っていないオルガンやハーモニウムでゴテゴテと着飾った、いかにもスペクターらしいサウンドで、私の耳にはそれらがジョンのヴォーカルの邪魔をしているように感じられる。スペクターという人はロネッツやクリスタルズといった一連のフィレス・レーベルの作品は言うまでもなく、「マイ・スウィート・ロード」や「インスタント・カーマ」のようにツボにハマるととてつもない大傑作を生み出すが、その一方でアルバム「レット・イット・ビー」のように装飾過多なサウンドでロック色が薄まってしまう(←ロックに拘らない一般ピープルにはかえって聴きやすいかもしれないが...)危険性をも孕んでおり、まさに両刃の剣のようなプロデューサーだと思うのだが、このテイク1は後者の印象を受ける。ジョンのヴォーカルに限って言えば、心に沁み入るような瑞々しい歌声で説得力抜群なだけに余計に残念だ。
 ⑪「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」はアルバム「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」収録のザッパとの共演ライブでゾクゾクするようなヴォーカルを聴かせてくれたジョンだが、これは実に貴重なスタジオ録音ヴァージョンで、エッジの効いたシャープなリズム・ギターといい、スリリングなヴォーカルといい、ジョンの本気度を雄弁に物語る。未発表だったのが信じられないくらいのクオリティーの高さだ。⑫「オー・マイ・ラヴ」はドラムレスのリハーサル・テイクで、ややかすれ気味のジョンの歌声が湛えている優しさがじんわりと感じられて癒される。実に素朴な味わいのヴァージョンだ。
 ⑬「ジェラス・ガイ」はストリングスが入ってない分、より自然で生々しいサウンドになっており、ニッキー・ホピキンスのピアノやジム・ケルトナーのドラムも活き活きとダイナミックに響いてこの曲の新たな魅力を実感させてくれる。私的には公式テイクより断然こっちの方が好きだ。⑭「マギー・メイ」はわずか53秒のトラックで、曲と曲の繋ぎというか効果音的に使われているのだが、なぜ1979年のホーム・レコーディングをここに収録したのかは意味不明だ。
 ⑮「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」はまだストリングスが入る前のテイクでジョージのスライド・ギターが実にエエ味を出しているのだが、攻撃的な歌詞を持ったこの曲にはあのスペクター・アレンジのおどろおどろしいストリングスが実に効果的だったことをこのシンプルなヴァージョンが逆説的に証明しているように思う。⑯「ゴッド・セイヴ・オズ」は廃刊の危機にあったアングラ雑誌「オズ」を支援するためのシングル用にジョンが書いた曲で、これはリード・ヴォーカルのビル・エリオットのためにジョンが歌ったガイド・ヴォーカル・ヴァージョン。いかにも “ファイト一発!” といった感じのやや単調な曲ながら、勢いだけで聴かせてしまうような歌と演奏になっており、サウンド的にはアルバム「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」に近い雰囲気だ。⑰「ドゥ・ジ・オズ」は全編を通して気色悪い魔女の断末魔が入っているのでパス。こんなん聴きたくない(>_<) 
 ⑱「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ビー・ア・ソルジャー」は実にハード・ドライヴィングな演奏で、そのパーカッシヴなサウンドは穏やかなイメージのアルバム「イマジン」の中では思いっ切り浮いてしまうだろう。こういう異色のヴァージョンが聴けるのがこのボックス・セットの面白いところだ。⑲「ギヴ・ピース・ア・チャンス」はレコーディング前のリハーサル音源で、ジョンが参加メンバーにアレコレと指示している様子がわかる。歌や演奏がどうのこうのというよりも、一つの記録としてこのボックス・セットに収録されたのだろう。
 ⑳「ルック・アット・ミー」はアコギによる弾き語りで、そのシンプルな味わいは公式テイクとはまた違った魅力に溢れている。ジョンの素朴そのもののヴォーカルが絶品だ。(21)「ロング・ロスト・ジョン」は歯切れの良いアコギのリズム・カッティングがめっちゃ気持ちいいノリノリのナンバーで、リンゴのタイトなドラミングが生み出す躍動感溢れるリズムをバックにジョンの闊達なヴォーカルが楽しめる。このように魅力的なテイクが満載のこのボックス・セット、今では中古なら5,000円弱で手に入るようなので、ジョンのオリジナル・アルバムを聴き込んだファンなら絶対に “買い” でっせ(^o^)丿

John Lennon - "Baby Please Don't Go"