shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

John Lennon Anthology (Disc 3)

2009-12-13 | John Lennon
 Disc-3 “ザ・ロスト・ウイークエンド” は「ウォールズ & ブリッジズ」と「ロックンロール」セッションのデモ & アウトテイクスで構成されている。「ウォールズ & ブリッジズ」はジョンのアルバムの中ではターンテーブルに乗る回数が一番少なかったとこの前書いたばかりだが、不思議なことにこの「アンソロジー」収録の別テイク群はスーッと心に入ってくる。私が馴染めなかったのはアメリカ的なアレンジやAORっぽいサウンドだったので、私的にはそういった装飾を施される前のシンプルなテイクと出会えただけでもこのDisc-3 は価値がある。①「ホワット・ユー・ゴット」はホーム・レコーディングによる超シンプルなアコギの弾き語りだが、まるでジョンが独り言を呟いているかのようなトラックだ。②「ノーバディ・ラヴズ・ユー」はストリングス類が入っていない別テイクで、シックな公式テイクと甲乙付け難い名唱が聴ける。曲もヴォーカルもそのすべてが素晴らしい、ジョンの隠れ名曲といえるだろう。
 「ホワットエヴァー・ゲッツ・ユー・スルー・ザ・ナイト」は38秒のホーム・レコーディング③をイントロにして同曲のリハーサル・テイク④が聴けるが、エルトンが入っていない分ジョンのヴォーカルが存分に堪能できるし、シンプルな楽器構成も良い。これでピアノがエレピじゃなかったら最高なのに...(←生理的にエレピの軽薄な音が嫌いですねん!) ⑧「スケアード」は公式ヴァージョンよりも遥かにシンプルかつ重厚で、グッと迫ってくるものがある。この「アンソロジー」にはそういった別テイクが数多く収録されており、特に「ウォールズ & ブリッジズ」に関してはどうしてもこっちを聴いてしまう。
 ⑨「スティール・アンド・グラス」は姉妹曲(?)の「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」同様、やっぱりストリングス入りの方が雰囲気が出ていて良いように思う。⑩「サプライズ・サプライズ」はエンディング部分の「ドライヴ・マイ・カー」アレンジはまだ無いが、ジョンの歌声は力感に溢れており、これはこれでエエ感じだ。⑪「ブレス・ユー」は別テイクながら公式テイクとそれほどの違いは感じられない。どっちにしてもサビのメロディーを聴くとストーンズの「ミス・ユー」を思い浮かべてしまう(>_<) タイトルもソックリやし、やっぱりミックがパクッた、というか拝借したような気がする。(24)「オールド・ダート・ロード」は本テイク同様、私にはちょっと薄味というか大人しすぎてあまり楽しめない。これは曲の善し悪しではなく、私が苦手とするタイプの楽曲なので仕方がない。
 ⑬「ムーヴ・オーヴァー・ミズ・L」は「ニューヨーク・シティ」の気分で「スリッピン・アンド・スライディン」を演ったかのような公式ヴァージョンが圧倒的に素晴らしいが、この別テイクもかなりの出来だ。要するにこの曲が本質的に持っているノリの良さがジョンのロックンロール・スピリットに火をつけるのだろう。こんなカッコイイ曲なのにアルバム未収録でシングルのB面に甘んじているというのが不憫でならない。
 ジョンのソロ作品中私が最も好きなアルバム「ロックンロール」からの音源はどれもこれも聴き応え十分だ。ブラッシュを擦る音の後、ジョンのカウントで始まる⑥「ビー・バップ・ア・ルーラ」のカッコ良さは筆舌に尽くし難い。ロックンロールを歌うために生まれてきた男、ジョン・レノンの真骨頂が聴ける名唱だ(^o^)丿 ⑦「リップ・イット・アップ / レディ・テディ」はあの豪快なホーン群が入る前のヴァージョンだが、このままでも十分通用する熱いヴォーカルが素晴らしい。 “リトル・リチャードといえばポール” のイメージがあるが、どうしてどうして、ジョンだって “リトル・リチャード好き” を全開にしてロックしている。その最たるものが⑮「スリッピン・アンド・スライディン」で、⑦と同様にまだホーン群は入っていない別テイクなのだが、そんなのカンケーネェ!とばかりに疾走するジョンが圧巻だ。ピアノの連打(←こーゆーの大好き!)もスリリングで名演度アップに拍車をかけている。
 ⑯「ペギー・スー」はバンドが一体となって火の出るような勢いで突っ走るところが最高だが、わずか1分強で終わってしまう理不尽さが悲しい。コレはもっともっと聴きたかった...(>_<) ⑰「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー / センド・ミー・サム・ラヴィン」もホーン抜きのテイクで、変にアレンジせずにストレートに歌っているところがいい。(22)「ビー・マイ・ベイビー」はフィル・スペクターを起用して破綻したLA セッションからの音源で、「ルーツ」で耳ダコとはいえ、何度聴いても重苦しいだけのヴァージョンだ。せっかくの名曲が拷問に耐えているように響く。(23)「ストレンジャーズ・ルーム」は後に「ダブル・ファンタジー」に収録されることになる「アイム・ルージング・ユー」の原型で、1980年のホーム・レコーディングながら、この時期の体験を元にして出来た曲だからという理由でここに入れられたという。ヨーコによる判断だが、何となく居心地の悪さを感じてしまうのは私だけかな?

EARLY TAKE - Be Bop A Lula