shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

John Lennon Anthology (Disc 2)

2009-12-12 | John Lennon
 Disc-2 “ニューヨーク・シティ” には「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」~「マインド・ゲームズ」の頃のアウトテイクスと、この時期に出演したコンサートのライブ音源が収録されている。①「ニューヨーク・シティ」はホーム・レコーディングによるわずか56秒のアコギ弾き語りで、あっけなく終わってしまうので不完全燃焼もいいところ。本テイクが素晴らしいだけに、それに迫るような別テイクを期待していたのだが...(>_<) ②「アッティカ・ステイト(ライブ)」と③「イマジン(ライブ)」の2曲はアポロ・シアターにおけるチャリティー・コンサートのライブ録音で、どちらもかなり充実した歌と演奏だ。特にアコギ弾き語りによる③はピアノ主体の公式ヴァージョンとは又違った深い味わいがあり、グッと胸に迫ってくる。
 ④「ブリング・オン・ザ・ルーシー」はラフなリハーサル・テイクながらジョンは結構ノッていて、自らを鼓舞しながら(12~24秒あたり)実に気持ち良さそうに歌っている。「ウーマン・イズ・ザ・ニガー・オブ・ザ・ワールド」は⑤がホーム・レコーディングによるわずか39秒のアコギ弾き語りで、「ワン・トゥ・ワン・コンサート(昼の部)」での同曲ライブ・ヴァージョン⑦のイントロ的な扱いだ。このコンサートからは続く⑧「イッツ・ソー・ハード(ライブ)」、⑨「カム・トゥゲザー(ライブ)」と3曲連続で収録されているが、そのどれもがアルバム「ライブ・イン・ニューヨーク・シティ」収録の夜の部よりもジョンの出来が良いように思う。特に⑨ではアドリブで “ストップ・ザ・ウォー!” と叫ぶなど気分の面でもノッており、何でこっちを単独で出さんかったのか不思議なくらいだ。
 ⑩「ハッピー・クリスマス」は公式ヴァージョンのラフ・ミックス、つまりテイクは同じで最終的なお化粧がまだ済んでいないというだけの違いなので特に目新しさはない。似通った曲想の次曲⑪「ラック・オブ・ジ・アイリッシュ(ライブ)」へのつなぎとして入れたのだろうか? その⑪は⑫「ジョン・シンクレア(ライブ)」と共にミシガン大学で行われたジョン・シンクレア救済コンサートからのライブ音源で、その政治的な歌詞とアコギ主体のサウンドは60年代のフォーク・フェスティバルを思い出させるが、ジョンのヴォーカルは凡百のフォーク・シンガーとは次元の違う説得力を持って激しく迫ってくる。
 ⑭「アイ・プロミス」と⑮「メイク・ラヴ・ノット・ウォー」は共に「マインド・ゲームズ」の原曲と呼べるもので、元々は曲の断片のような⑭(←まだ最終形の面影は殆どない...)があり、その “ラヴ イズ ジ アンサ~♪” の部分を核にして曲を発展させていったのが⑮(←ラフだが構成はかなり最終形に近い...)という感じだろうか。とにかくジョンの曲作りの一端が垣間見れて非常に興味深いトラックだ。
 ⑯「ワン・デイ・アット・ア・タイム」は派手な女性コーラスの入っていない素朴そのもののリハーサル・テイクで、若干テンポを落として1オクターブ低い声で歌い、ギター・ソロのフレーズをハミングするジョンがめちゃくちゃ渋くてカッコイイ(≧▽≦) この声こそが私をジョン・レノン狂いにした張本人で(笑)、装飾過多な公式ヴァージョンよりも遥かに魅力的に響く “ネイキッドな” ヴァージョンだ。⑰「アイ・ノウ」もシンプルなホーム・デモだが、超素晴らしい⑯の次に聴くとどうしても印象が薄くなってしまうのはしゃあないか。
 ⑱「アイム・ザ・グレイテスト」と⑲「グッドナイト・ヴィエナ」の2曲は共にジョンがリンゴのアルバム用にプレゼントした曲だが、ここではジョンがリンゴのためにガイド・ヴォーカルを歌っているヴァージョンが収録されており、リンゴには悪いがジョンが歌うことによって曲の良さを極限まで引き出しているように感じられる。この2曲は本当に素晴らしい!特にまるで初期ビートルズのようなハンド・クラッピングの入ったウキウキするような⑲は個人的にはこのボックス・セットの中でも1・2を争うほどの愛聴トラックだ。
 (22)「リアル・ラヴ」はあの “アンソロジー・プロジェクト” の目玉とでも言うべき再結成シングルのベースになった “テイク1” とは微妙に違う “テイク4” というのが嬉しい。幽玄の美を湛えたようなジョンのピアノ弾き語りによるこのヴァージョンにはただただ涙ちょちょぎれる。(23)「ユー・アー・ヒア」は本テイクと甲乙付け難い素晴らしいヴァージョンで、ジョンのヴォーカルだけに限って言えばこっちの方がより優しさに溢れていて良いかもしれない。他のアーティストとは違い、ジョンの場合はあれこれアレンジを凝らすよりも何も考えずにシンプル&ストレートに歌ったデモやリハーサル・テイクの中にこそ宝が潜んでいることをこのボックス・セットが如実に物語っているように思う。

John Lennon - Goodnight Vienna - A Extended Mix