shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Some Time In New York City / John Lennon

2009-12-05 | John Lennon
 「ジョンの魂」、「イマジン」に続くソロ第3作「サム・タイム・イン・ニューヨーク・シティ」はそれまでとは打って変わったようなアグレッシヴな内容のアルバムで、当時の世界情勢とジョンを取り巻く環境の変化を色濃く反映した政治色の強いものだった。
 まずは何と言ってもニューヨーク・タイムズ紙をパロッたジャケットのインパクトが強烈だ。ニクソンと毛沢東が裸で踊っている合成写真とか、 “血の日曜日事件” の写真とかをフィーチャーし、記事にあたる部分にに歌詞を載せているのだ。このアイデアは非常にユニークで面白いし、これほど攻撃的な歌詞をジャケットに印刷すること自体、ジョンの並々ならぬ決意の表われだと思う。
 アルバムはスタジオ録音の Disc-1 と 過去の2つのライブを収めた Disc-2 の2枚組で、当初の予定では前年にライブ単独で「ロンドン・エアー・アンド・ニューヨーク・ウインド」というタイトルで出す予定だったものが、「バングラデシュ・コンサート」とリリースが重なるということで翌72年のこのアルバムに組み込まれることになったという。そのせいかアルバムとしての立ち位置が曖昧になってしまい(「ロンドン・タウン」に「USA ライブ」がカップリングされてるよーなモンやね...)、そのあまりにも政治的な内容と相まって不当なほど低い評価に甘んじているのだが、私は一部の不快なパート(笑)を除けばこの盤が大好きで、ジョンの全作品中でもトップ3に入るほど愛聴しているアルバムなのだ。
 ①「ウーマン・イズ・ザ・ニガー・オブ・ザ・ワールド」はフィル・スペクターの “音の壁” で強化されたエレファンツ・メモリーの分厚いサウンドをバックに、腹の中にあるものをストレートにぶちまけるジョンの潔いヴォーカルがカッコイイ!放送禁止?上等じゃねえか!発売禁止?大いに結構!ゴチャゴチャぬかしてる奴はこれでも食らえ、と言わんばかりの熱唱が素晴らしい。それでこそジョン・レノンだ (^o^)丿 
 ⑤「ニューヨーク・シティ」はジョンの全ソロ作品中トップ3に入るほど大好きな曲で、ジョン・レノンの魅力ここに極まれりといった感じの痛快なロックンロール。これを聴かずしてジョンを語るなかれと声を大にして言いたくなるような疾走系のナンバーだ。エレファンツ・メモリーの演奏もノリノリで、2分59秒からのピアノの連打なんてもう最高!!! 向かうところ敵なしといった感じのゴリゴリのブギー・ロック・サウンドが圧巻だ。
 ⑥「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」は非武装のアイルランド市民がイギリス軍に虐殺された “血の日曜日事件” を取り上げたもので、U2 のものとは同名異曲。ジョンの戦闘的な姿勢が最も顕著に表れた歌詞とサウンドがスリリングだ。⑦「ザ・ラック・オブ・ジ・アイリッシュ」は「ハッピー・クリスマス」に非常に似た雰囲気を持った大名曲で、何と言ってもメロディー展開が素晴らしい!とにかくあまりにも良く出来た曲なので、苦手なヨーコのヴォーカルも気にならないほどだ(笑)。歌詞はその穏やかな曲調に反して過激で、 “略奪者” や “大量虐殺” といった言葉のバズーカ砲を容赦なく浴びせ、祖国イギリスを徹底的に非難している。
 ⑧「ジョン・シンクレア」は心地良いドブロ・ギターのサウンドが耳に残る佳曲で、 “ガッタ ガッタ ガッタ...♪” を15回も繰り返すなど、アレンジも凝っている。⑨「アンジェラ」は旋律の起伏に乏しく、ストリングスを加えたりタンバリンでメリハリをつけたりとあれこれとこねくり回してサウンド・プロダクションに工夫を凝らしてはいるが、このアクの強い曲が揃ったアルバムの中ではイマイチ印象が薄いように思う。
 Disc-2 の前半は1969年12月にロンドンで行われたユニセフのチャリティー・コンサートのライブで、ジョージやクラプトン、キース・ムーン、アラン・ホワイト、クラウス・ヴアマン、ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンスといった錚々たる顔ぶれによる演奏で、8分を超える①「コールド・ターキー」は混沌とした中にもこの曲が内包している殺気のようなものを見事に表現した緊張感溢れる演奏だ。
 Disc-2 の後半は1971年にニューヨークのフィルモア・イーストで行われたフランク・ザッパ & マザーズ・オブ・インヴェンションとのライブ・セッション。ジョンの “昔リヴァプールのキャヴァーンで歌っていた曲だよ。” という MC から始まる③「ウェル(ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー)」はジョンの第一声 “ャノウ アィ ラーヴュー ベイベェー プリーズ ドン ゴゥ~♪” がもう鳥肌モノ。大げさではなく、音楽を聴いて背筋がゾクゾクする瞬間というのはこういうのを言うのだろう。バックで “キェェェ~” と叫び始めるヨーコを圧倒するかのように爆裂するザッパのギター・ソロが最高だ(^o^)丿 ⑤「スカンバッグ」は非常にテンションの高いインスト演奏をバックに “スカンバッグ!” と連呼するだけの曲なのだが、全員が一体となって疾走するグルーヴは快感の一言だ。この際、何かワケのわからんことをわめいているヨーコは無視しよう(笑)
 とまぁジョンのレコードを聴く時に何かとしゃしゃり出てきて鬱陶しいことこの上ないヨーコだが、 Disc-1 の②「シスターズ・オー・シスターズ」は前衛かぶれのヨーコととはとても同一人物と思えない軽快なガール・ポップ風の佳曲だし、歌詞が面白い⑩「ウィー・アー・オール・ウォーター」は気色悪い叫び声(←頭おかしいとしか思えん!)に目をつぶればエレファンツ・メモリーのノリノリの演奏が楽しめるブギー・ロックに仕上がっている。両方とも曲として十分傾聴に値する中々の出来だと思うが、 Disc-2 における発狂した魔女の断末魔のような雄叫びは相も変わらずで、ジョンとザッパの初共演に泥を塗って涼しい顔の KY ぶりを存分に発揮している。厚顔無恥とはこういう人のことを言うのだろう。まぁ Disc-1 は彼女の曲を飛ばして聴けばすむので特に問題はないが、ライブの Disc-2 はそうもいかないので、最新のデジタル技術を駆使してヨーコの声をキレイサッパリ消し去ってくれたら超愛聴盤になるのになぁ...(>_<)

New York City - John Lennon