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以前より、ここのタイルが見たいと思っていた、甲子園口の松山大学温山記念会館の見学の機会を有難くも与えて頂くことができ、先日訪れてきた。
松山大学温山記念会館は、昭和3年、松山出身の実業家、新田長次郎が孫の為に建てたスパニッシュ様式の邸宅。
設計者は、木子七郎で、新田長次郎の娘婿とのこと。
現在は、松山大学が所有し、関西地域の教育研究の拠点として活用されている。
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車寄せから玄関へ向かうと、いきなり、入口のタイルに囲まれた美空間が出現。心の準備ができてなかったので、おお~っこれか~と驚く。
タイルの壁面は、外へ向かってやや開くように角度が付けられていて、
タイルに誘われるように中へ。
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エントランスを囲むようにコの字に貼られたタイルは、連続して並べるとイスラムの伝統的な文様でもある八芒星と十字が現れるものになっている。
濃紺の差し色以外は、明るいブルー、グリーン、黄土色、白といった、やわらかなトーンの色彩でまとめられていて、上品で美しい。
十字になる部分は、白いものから、肌色系のものまで、少し変化がつけられているようだった。
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これらのタイルは、加藤郁美さんの「にっぽんのかわいいタイル」の中でも紹介されていて、このタイルの石膏型が見つかったことから、多治見の笠原出身のモザイクタイルの創製者といわれる山内逸三制作のものとのこと。
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色の塗分けは、一枚一枚、手作業で行われているため、所々むらがあったり、濃淡があったりと、同じものはひとつもなく手仕事の跡が見られる。
文様は細かいし、塗り分けするには、さぞ手間がかかったことだろう。
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玄関の中に入ると、アールにカーブを描く壁面には、ニッチが設けられていて、その下部にも、やはりタイルが貼られている。
こちらのタイルも、同じデザインの試作品が見つかったことから、山内逸三の作だとのこと。
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こちらのタイルは、ややグレー味を帯びた背景に、やはりグリーン、ブルー、黄色の不透明釉で彩色されていて、
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中央部分は、タイルが湾曲しながらも、上下のボーダータイルと共に、ぴったりと収まっている。
収縮することを計算の上、このアールの壁面にぴったりと沿わせる技術がすばらしい。
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たたきには、ボーダータイルがヘリンボーン状に貼られていて、その周囲には、布目のボーダータイルが囲んでいる。
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上がり框には、アールの壁面と同じくチューブライニングのボーダータイルが
ぴったり収まっていて、色味もデザインも上品なコーディネイト、ほんとに素敵なタイル空間にうっとり。
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ホールから玄関を見渡す。
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入口の扉は、入口のタイルと同じく、スパニッシュの邸宅では典型的な意匠でもある八芒星が中央に彫刻された重厚なもの。
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扉の横には、小窓があり、
瓶の底のような牛の目ガラスが使われており、外からの光を取り込んでいる。
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邸宅内は、当時最先端のセントラルヒーティング設備が完備。
玄関にも設置されていて、そのグリルの装飾も美しい。
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玄関ホールは、ゆるやかなアーチを描く梁と階段裏のカーブが美しく、目に留まった。
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玄関ホールから階段への眺め。
照明は新しいもののようだけど。
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階段ホールは、三つのアーチ窓が階段状に並び、小さなバルコニーが張り出す。このバルコニーが良いアクセントになって、階段室の雰囲気をより一層高めていて素敵だった。
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階段のアーチ窓にはステンドグラスが入り、オパール味を帯びた乳白色のガラスが、やわらかな光を通している。
ガラスが外側に大きく膨らんでいたのが心配だったけど。
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そして1階へ戻り、ダイニングに続く応接室から。
現在はセミナー室として使われている部屋。庭に面して、大きく窓が取られ、隣にはサンルームのような部屋が続く。
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部屋の一画には、鹿の剥製の周囲に貼られたタイルが見られる。
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タイルは、アーチの間に、馬に乗った騎士、植物文や動物文様に囲まれた僧侶のような姿が描かれた2種類で、とても細かな図案。
多彩に色が塗分けがされていて、手が込んでいる。
こちらは石膏型などが見つかっておらず、作者は不明のよう。
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応接室中央のシャンデリア。
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応接室も、隣のダイニングも、中央の豪華なシャンデリアの周りに、
鎖で繋がった少し雰囲気の違う陶製の傘のシャンデリアがいくつか下がっていた。
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アンバー色のガラスの支柱が美しいフロアライトも。
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お隣には三つのアーチ窓が並ぶサンルームのような部屋。
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半円アーチ部分の淡い色彩のステンドグラス。
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こちらの床もやはり寄木貼りだけど、デザインはこのようなちょっと変わった
感じに。
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元ダイニングルームには、新田長次郎の銅像が置かれている。
日本産業の発展に多大な貢献をした新田長次郎は、
松山大学の前身である松山高等商業学校の創設者でもある。
温山記念会館の温山とは、新田長次郎の雅号にちなんで命名されたのだそう。
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ダイニングルームのヒーティンググリル。
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勝手口?のたたきにも、表玄関と同じくヘリンボーン状にタイルが貼られ、
周囲は布目のボーダー、立ち上がりにはモザイクタイルが貼られてた。
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小さな空間にも凝った細工がすばらしいコート掛けなどが残されていて
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宿泊室として使われている小部屋にもこのシャンデリア。
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そして2階へ。
こちらは、談話室として使われていた部屋で、中央には、ビリヤード台が置かれている。
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床はモダンなデザインの寄木貼り。
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天井のガラスの照明カバーには、アール・デコ文様がうっすらと入っていた。
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窓に沿った造り付けのL字型のゆったりしたソファは、座り心地よさそう。
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階段から見上げていた小さなバルコニーは、この談話室についていたもの。
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アーチの小さな扉を開けると、階段を見下ろせる。
遊び心で付けられたものなのだろうか?
細かな仕掛けがおもしろい。
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談話室の向かいの洋室には、素敵なアール・デコのステンドグラスが存在感を放っていた。
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ステンドグラスは、マーブルがかったちょっと渋めの色合いの中に、ブルーのきれいな差し色が入り、無色のものも地模様が様々で、とても美しくまとまっている。
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緩やかに弧を描く窓周りには、
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窓に沿って、造り付けの家具とヒーターがビルトインされていて、スマート。
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天板には、アール・デコな換気口がおしゃれだった。
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2階の和室には、丸窓のある窓辺に、一枚板で作られたという違い棚が組み合わされていて、初めて見るような造りに。
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丸窓は、開閉できるようにもなっていた。
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広縁には、低めの台がついていて、座って日向ぼっこできそうな良い空間だった。
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お隣の洋室との境には、台形アーチの扉があって、
扉の寄木細工もモダン。
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お隣の会議室1
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新しそうな照明だけど、デザインもこの部屋にぴったり。
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造り付けの可愛い棚。
引き出しのつまみは、市松模様に。
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バルコニーに出ると、階段室のアーチのステンドグラスが外からも眺められ、
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足元には、やや凹凸のある渋めのタイル。
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和館と洋館の間にある階段室の手摺は、シンプルな格子状のもので、
和にも洋にも馴染むものだった。
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外へ出て、お庭から建物を。
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テラスには、壁泉があって、思わず近寄ると、
陶製かと思ったライオンは、銅製のようで、背面にはグリーンのモザイクタイルが貼られてた。
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洋館の方の妻壁にあった換気口。
換気口周りまでが手抜かりなくデザインされてた。
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和館側の壁面。
和室にあった開閉式の丸窓が見える。
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お庭は、広大な池泉回遊式庭園になっていて、
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お庭の一画には、防空壕までが備わっている。
邸宅竣工の翌年に造られたものだそう。
こちらの中へも案内して頂いた。
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入口上の天井にはガラスブロックがはめ込まれていて、
つくられた当初は明かりが入ってきたのかも。
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防空壕の内部。
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お庭には、こんな灯籠も。
傘を閉じたようにも、アール・デコぽくデザインしたようにも見える。
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最後に、今回見学手続きなど、お世話してくださった方のフォトジェニックな一枚。
とてもこの空間の雰囲気に似合っていて、思わず撮らせて頂いた。(掲載承諾済)
見学は、管理人さんの案内を含めて2時間たっぷり楽しませて頂いた。
見学後の旧宮塚家住宅のムジカでのお茶会や食事会含めて楽しいひと時でした。
今回ご一緒させて頂いた方々、ありがとうございました。