先日はタイル画家のこだんみほさんにお声掛け頂き、昨年末に閉店したばかりの
伏見桃山の呉竹湯さんへの取材に同行をさせていただく機会に恵まれた。
呉竹湯さんへは以前この付近を町歩きした時に外観を見たことがあるだけで、
中へは入る機会がなく、タイルもすばらしいということで楽しみにやってきた。
呉竹湯さんへ行く前に駅前の中華料理「呉竹」でランチして、お隣の
喫茶「呉竹」でお茶し、「呉竹」尽くしで準備万端?!
呉竹湯では91歳になられるご主人とその娘さんにお迎え頂けた。
入口にはお店を閉められるにあたってのご挨拶がご主人直筆で書かれたものが貼りだされている。
経営者の老化、ボイラー等の機器類の傷み、建物の老朽化との理由と
「ホットする反面、淋しい気持ちでいっぱいです。」とのご主人のお言葉も。
入口にかかる女湯の表示板。
下駄箱の上にはご主人が描かれた絵がかけられている。
玄関のたたきに貼られていたタイル。
お風呂上りに休めるお部屋があり、まずはそちらへ案内していただいた。
レトロな照明付きの鏡。
こちらの部屋で、ご主人を囲み、お話をいろいろ聞かせて頂いた。
91歳の方とは思えないくらいお元気でしっかりされた話しぶり、ひとつひとつの言葉が心に響いてくる。
とてもよいお人柄を感じることができ、さぞ人気のご店主さんだったのだろうなと思わせられた。
最も驚いたのは50歳の時から始められたという「心の糧」と題されたノート。
毎日読む新聞の中から自分の心に響いた言葉を書き留められているそうで、
その数はノート40冊にも上るという。
そのノートを拝見すると、美しく整った字で、はっとさせられる名言や格言から、
新たに得られた知識などが細かく記述されていて、
ご主人が勉強熱心で、ありとあらゆるジャンルに好奇心を示されている様子がうかがえる。
本当にすごいなあと・・ずっと読んでいたいと思うくらいすばらしいノートで、
ご主人のお話を聞いていると、91歳になる今まで常に勉強されてきて、得た知識を見事に実践してこられてきたんだなあと感動させられた。
他にも回顧録と題されたご主人が20代のころに書かれたスケッチつきの文章やたくさんの書や絵を見せていただくことができた。
本当に資料館ができそうなくらい貴重なものがたくさん。
お話の合間に浴室内外も見学させていただいた。
浴室へ入る手前の床に敷かれていたタイル。
淡いパステル調の色合いの玉石タイルが美しい。
縁には水色の役物タイルが使われていて、その取り合わせにもうっとり。
段差の立ち上がりにもまた違ったモザイクタイルが。
そして洗面台周りにもさまざまなタイル。
天井からはレトロなデザインの照明が下がる。
こちらは番台。
女湯の脱衣所のベビーベッド兼ロッカー。
天井は波打ったような変わったデザインに。
そして浴室内へ。
真ん中の仕切りには大きなタイル画が描かれ、浴室内はさまざまなモザイクタイルの競演が見られる。
そして、浴槽の中には鯉のタイル!!
赤や黒の鯉のタイルが水色の玉石タイルの中にちりばめられている。
お湯が張られると、本当に泳いでるように見えるんだろうなあ。
タイルをじっくり見るにはお湯が抜かれた浴槽が有難い。
ああ、素敵な浴槽。。
貝の上に正座する女性像。
貝から浴槽へお湯が注ぎ込まれていたようだ。
奥の浴槽にはイルカ?に乗る少年像。
浴槽のヘリには赤いモザイクタイルが貼られる。
コーナーに貼られたタイルがたまらない~
緩やかに弧を描くアール・・ここからのタイルの眺めもいいなあ。
こちらは水風呂の浴槽。
ライオンの湯口。
浴槽の外側に貼られてるこの大小花模様のタイルも可愛い!
この複雑な色味が混じり合ったグリーンのタイルも美しい~
こだんさん注目のこのモザイクタイルも、真ん中に丸く乗った釉薬が味わい深い。
この角度からだとひとまとめにタイルが撮れると言われて激写!
ああ、タイルを思う存分味わえて幸せすぎるひと時だった。
最後にはご主人と娘さんは私たちが見えなくなるまで丁寧に見送ってくださった。
タイルの美しさもさることながらご主人や娘さんの温かいおもてなしとお人柄に触れ、こちらも温かい気持ちになった。
呉竹湯のご主人、娘さん、ここへ連れてきてくださったこだんさん、ご一緒したみなさんどうもありがとうございました。