今年も年の一度必ず受けている半日人間ドックの日が近づき
提出用の検便を採取しなければなりません。
昔は寄生虫の卵の存在の有無を調べるために実施した検便の目的が
飲食業に携わる方はそのままのようですが、最近では
微量の血液の存在から胃や大腸など消化器系の腫瘍、つまり癌の可能性を探る目的に
変わっていることを知ったのは、つい7、8年ほど前のことでした。
その頃受診していた病院の看護“婦”(当時はまだこう呼んでいた)さんに
2日で2本の排便を提出しなければならないのになぜか2日目に便が出なかったため
「1本で大丈夫、虫などいないから」とうそぶいたら
「ヤダー、今は虫の検査でなく大腸癌の検査でやるのよ!」と笑われたからです。
確かに、これだけ世の中の住環境が清潔になっているのに
未だにこんなことをするなんて、と疑問に感じてはいたのですが…。
「ああ、そうなんですか 」
残りの1本を後日、わざわざ届けたことをよく覚えています。
ところで、昔の検便提出用の器具はヒドイものでした。
私が記憶している50年ほど前のものは
平べったい木製アイスクリームバー(多分、そのものの流用?)ですくって
ビニール袋に入れ、口を輪ゴムで止める方式です。
確か、マッチ箱のような箱に直接便をいれる方式もあったような…。
そして、それだけではありません
そもそもこの頃の便所は、今時の小さな子供は「怖い!」と叫ぶであろう
大きな穴がポッカリと口を開けていて下が丸見えの和式ドッポン方式
つまり、時として“おつり”と呼ばれる跳ね返りがお尻にくっ付くあの便器なのですから
“何か”で一度モノを受けないと、もうその日は採取不能に陥ってしまうのです。
幸運にも商家だった私の家には段ボールがたくさんあり
これを適当な大きさに切って使ったことをよ~く覚えています。
硬いコロコロの時は転がり落ちないよう注意しましたが
意外と粘着性があり、失敗したことはありません。
それよりも何よりも、上に顔があるのですからすくう時に臭いのなんの
多分、今ではもう耐えられないかも知れません。
ちなみに、この頃はトイレットペーパーなどなく
お大尽の家では黒っぽくて厚いチリ紙がすでに使われていたと思いますが
一般庶民は新聞紙を手でクシャクシャに揉んで柔らかくして事後、拭いていたはずですので
汲み取られた糞尿の行く末の畑には、カサカサになったこれらの残骸をよく見かけたものです。
あれから50年、水洗便所の普及とともに、検便ひとつを取っても
便器に敷いてモノを載せるペーパーまで添付されているのですから
清潔・簡単な世の中になりましたねぇ