元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

町中の小さな映画館

2014-09-28 | 実生活

神戸新聞の記事を読んで、珍しく観たい映画を見つけて元町映画館に出かけて行きました。

今はアラスカに関する本ばかり読んでいるけれど、前はスペインやフラメンコが好きで、関連書籍にはまっていましたので、「ジプシーフラメンコ」というタイトルを見掛て、ひとごとではないと思いました。

元町商店街は、東端の大丸側から入っていくと、1丁目2丁目と進んで西に行くほどディープさが増していく。

花隈通りと交差する3丁目までは華やかな雰囲気が残っているけれど、元町映画館は急に暗くなる4丁目に入ってすぐのところにあります。

小さなシアターが1つあるだけの町中の小さな映画館という趣きの元町映画館ですが、「ジプシーフラメンコ」を観ようとしている人でいっぱいで、最近行ったどの映画館よりも席の埋まりはよかったように思いました。

カリメ・アマジャというビッグネームダンサーの血を引くメキシコの著名なフラメンコダンサーとバルセロナのフラメンコバンドが共同でステージを作り上げていく過程をドキュメントした映画で、彼らのフラメンコへのこだわりが嫌というほど感じられたし、何よりもカリメ・アマジャの女っぷりが印象に残りました。

きっと妻は眠かったと思いますが、私はいつまでも映画の余韻が体の中に残っているような、スペインの汗ばむような空気が体にまとわりついていた。

もの悲しくけだるい男のギターの音、力強く気高い女のステップの音がいつまでも耳の奥で鳴っていました。

 

全国チェーンの大劇場でしてもお客は集まらないかもしれないけれど、好きな人は少なからずいて、面白いと思ってもらえる。

そんな映画を元町映画館は上映して、成功しているのだと思いました。

だからこそ人通りが急に寂しくなる4丁目でやっていくことができているし、そういう方針で行くには4丁目はちょうどいい立地なのかもしれないと思いました。

こういう映画を扱えばいい。多くの人には見向きもされないけれど、一部の人が何回でも観たくなるようなもの。

大きなものに対して我々のような小さな店が反射的にとっている施策がよく表れていて、私はやはりこういうもの全てが好きだと思いました。