元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

一番愛用している万年筆(原稿募集中) 9月末まで

2014-09-14 | 仕事について

来年初頭にお客様からの投稿をまとめた冊子「文集雑記から2」を発売します。
タイトルは「一番愛用している万年筆」で、一番愛用されている万年筆についての文章を1000文字程度にまとめてお寄せいただけたらと、思います。
締め切りが9月末になります。
原稿は、メール(penandmessage@goo.jp) 、郵送、FAX(078-360-1933)なんでも構いません。
ぜひ、ご参加下さい。

私もひとつ書いてみました。

 

「一番愛用してきた万年筆」

気持良い書き味が好きで使い始めた万年筆でしたが、柔らかさを追究したり、希少な限定品に惹かれたりということはありませんでした。

それよりも自分の精神性的な支えとなるもの、言い古された言葉かもしれないけれど、武士の刀のような存在のものが欲しいと思うようになりました。

書き味が良いと思えることは当然の条件として、こんなペンを持つような人になりたいというのが、選ぶ条件のようになっていたように思います。

そんなふうに思うようになった万年筆はと考えて、自分のコンプロット10を開いて、アウロラ88クラシックを選びました。

88クラシック自体は、この店を始めてしばらくしてからの、40歳以降に使うようになりましたので、それほど長い付き合いではないけれど、88クラシックのペン先はもともとアウロラオプティマについていたもので、それを金キャップの88クラシックに付替えたのでした。

30代までは金など有り得ないと思っていて、銀金具あるいは金がそれほど目立たないものばかりに惹かれていました。

金に何かオヤジ臭さのようなものを感じてしたのかもしれません。

でもそれなりの歳になって気付いたら、金に惹かれるようになっていて、金の全てを肯定するようになっていた。

万年筆は黒金のものばかりで面白くないと思っていたのが、黒金が一番飽きがこずに長く使うことができる組み合わせなのだと思うようになっていたし、オヤジ臭いと思っていたのは、そこに男臭さと見るようになっていた。

童顔が嫌でヒゲを生やしてみたりしたけれど、それと同じ理由で現行品で最も男臭い万年筆だと思っている88クラシックに惹かれたのだと思います。

アウロラはペン芯がエボナイトで、馴染むとよりインクを濃く、多く供給してくれるようになるし、鉛筆のような書き味だったペン先は長年の使用で鍛えられたかのように、粘りのある柔軟性を持ち始めています。

このペン先とは15,6年の付き合いになっていて、万年筆は使い込むととても良い書き味に変ってくれるということ、万年筆とインクとの相性というものがあるということを教えてくれた。

そして何よりも、こんな万年筆が似合う大人の男になりたいと思わせてくれた私にとって先生のような万年筆がアウロラ88クラシックです。