殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

笑い者一家

2008年12月12日 20時08分25秒 | 不倫…戦いの記録
あちらのコンセプトは

ひたすらC子が傷ついて可哀相…

社会人として、責任ある対応を希望する…というものでした。


    「慰謝料の要求ですか?」

と問えば

「いやいや…それはまあ、何とも…」

とごまかし、結局は

「わざわざ遠くから来た」

「Eさんにまでお出ましを願った」「団体が」「幹部が」

の繰り返しです。


ダニ1号のEは、しきりに前科を強調し

「また捕まるのは嫌だからねぇ、ほんとはこんなことしたくないんですよ」
  
   
     「そんなにお嫌なら、首を突っ込まなくても…」
 

こちらが少しでもすっとぼけたり

自分たちに都合の悪い返答をすると

「なにぃ!こらぁ!

 おまえらが悪いんだろうが~!」

と殴りかからんばかりに立ち上がって、ギャーギャー怒鳴るのです。


もうそろそろ飽きてきました。  

   「あのぅ、おっしゃりたいことが

    よくわかりませんので、もう帰ります~」


「なにぃ!帰れる思うとんのかぁ!」

   「帰れますよねぇ。監禁罪になりますものねぇ」
 
     
2時間経って外に出なかったら警察に連絡するよう

長男と打ち合わせをしていました。 


「街宣行かしたろか~!」

ダニ2号、やっと口を開きました。

思うような結果にならない時に決定打…という役目らしいです。

街宣とは、道路で音楽を流しながら色々宣伝するお車のことです。


           「どうぞ」


もし彼らの団体がそのテのお車を保有し

かつこのような些細なことで出動する用意があったとしても

呼ぶとなったらタダというわけにはいきません。


こちらは何を宣伝していただいても

勤め人ではないので、会社に居づらくなることも

近所に顔向け出来なくなることもありません。

恥ならもう、さんざんかいています。

失うものは何も無いのです。


         ほ~っほっほ


        「帰るよ」


「旦那は、何も言えんのか」

ものすごくバカにした口調で、ダニどもが失笑していましたが

何も言ってくれなくて幸いです。


「また連絡させていただきますからぁ!」

ダニ1号が白々しく言いました。

  
     
私は、夫にある疑念を抱いていました。

C子と裏でグルなのではないか…

両親や私から金を巻き上げるため共謀…

または口車に乗っているのではないか…というものです。

決して、はなから夫の言うことを信用し

夫を守るために出向いて来たのではなく、確認のためです。

しかし、ダニ1号を見た途端、これは事実なんだとわかりました。

だからといって、どうなるものでも無いのですが。


夫は帰るなり、ガタガタ震えて寝込んでしまいました。

「この子は恐がりなんだから…あんた一人で行ってくれればよかったのよ」

と義母のありがたいお言葉…。

廃人同様となった夫は、そのまましばらく両親の家に置くことにしました。


翌日義父は、とある国家権力のOBに連絡していました。

年寄りはこういう時、わりと使えます。

同じように鼻を垂らして遊んでいた、ただの幼なじみでも

ある程度の年齢になると

そこそこの地位になった人間の一人や二人いるものです。


Eの前科やその内容も、知らなかったことまで明らかになっていました。

「別件でやらせると言ってる」

もう一方で、仕事で取引のある

とある反社会的組織出身の社長にも頼む用意があると言いました。

ガテンには、こういうおかたも多いのです。


         「ありがたいけど…」

私はこの一件を自分で納める決心をしていました。


   「他人に借りを作りたくありません。

    力で押さえつけたら、多分いたちごっこになるでしょう。 

    ぶち込んでも、せいぜい2~3年。

    出て来た時のことを考えたら    

    将来子供たちが、どこかで借りを返すような事態になるかもしれません。

    こういうゴタゴタは、私たちの代で終わらせて

    まっさらであの子たちを社会に出してやりたいんです」


人に頼めば、タダというわけにはいきません。

しかも助けてやった…という気持ちは、長く尾を引くものです。


あちこちに助けを求めて歩くのが嫌でした。

子供の代まで笑い者になります。 

すでに由緒正しい笑い者一家ですが、そういう笑われ方は気に入らない

厄介な性格なのです。


それにしてもC子め…。

もう2、3発殴っといてやればよかった。
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浮気のお値段

2008年12月11日 18時38分35秒 | 不倫…戦いの記録
C子のアパートに向かうわずかな時間

私たちは打ち合わせをしました。


名刺を求められても渡さない

絶対にイエスと言わない

その場の雰囲気に流されて謝罪しない…などです。


他愛のないことですが

ビビリの夫にはきちんと言っておかないと

恐怖でどんな行動に出るかわかりません。


今夜はまず相手を見て

いったん帰れる方向に持ち込んでから

ゆっくり対策を考えることにしました。


あ~あ、これが全部夢か、夫の勘違いだったらな~

と心から願いましたが、チャイムを押すと

やっぱりC子でなく、おっさんが出て来ました。残念!


部屋に、C子や子供たちはいませんでした。

玄関に出たのが、C子の母親の彼氏という人でしょう。

50代半ばくらいの、ガッチリした体つきの男です。

精一杯派手なトレーナーの上下をお召しですが

安物感と洗濯でのくたびれ感が漂っていました。


奥へ…と勧められましたが、すぐ逃げられる玄関近くに夫と座りました。

なにしろ狭いので並んでは座れず

私は「控えめな妻」を装い、しおらしく夫の斜め背後に…。


いざとなったら敵に夫を与え、私だけ逃走するつもり満々です。

牛飼いはピラニアの河を渡る時

一頭を犠牲にして、その隙に河を渡るのです。


部屋にはもう2人男がいました。

その1人…30代後半の男を見て「ちぃっ!」と思いました。


知人の義弟です。

子供の頃、何回か見たことはありますが

メタボなおっさんになっていました。


ボロボロの軽自動車をわざとゆっくり運転して

後続車にあおられたら急ブレーキで追突させ

因縁をつけて金を巻き上げると評判の札付きのワルでした。

どちらかというと右ふう?…の小規模な団体に属し

それを印籠に個人的収益を上げている男です。


のっぺりした顔とは裏腹に

口が立って悪知恵だけは働くという、早い話が町内のダニでした。

この一件を聞きつけて、儲け話に乗ったに違いありません。

もう一人は、その仲間のようでした。


C子の母親の彼氏らしき男は、自分をWと名乗りました。

「いやぁ~、娘が心配で来てみたんや」


       うそこけ…
 
       急に親子になりやがって…


「ここにおられるEさんをご存じ?」

         「…はい」

Wは満足そうに

「そうだよねぇ、こっちじゃ有名なお人だもんねぇ」
  

        有名ですとも。ダニとして…


愛想よく話すWが進行役のようです。

猫なで声でヘラヘラと人なつこく振る舞っておいて

各自必要によって豹変するのが、効率のよい恐喝です。

完全に仕組まれた席でした。


      こっちもヘラヘラしてやろうじゃないか…


「わしらの団体でも、このことが問題になってねぇ

 はっきりさせたいと思って、出て来たわけですよ」


        問題になるわけないじゃないか。

        団体を強調したいだけだろうが…


「ちゃんと事情を説明してもらってね

 ケジメをつけてもらわないと、こっちも困るんですわぁ」

   
     「事情ならC子さんから聞いていらっしゃいますでしょ」


「すべて認めるということで、ええんかいな?」


   「そちらに伝わっていることが、どこまで本当かはわかりませんが

    娘さんが結婚を望んでおられるということなので

    それを承諾すればよろしいということでしょうか?」


さっきから黙ったまま

会話の一言一言に聞き耳をたてているEが不気味でしたが

金にならない方向へ行き始めたら都合が悪いので

いずれ介入してくるでしょう。

    
「いやぁ~、それじゃあもう済まなくなっているからねぇ。

 なにしろ団体の幹部のほうにも伝わっているんでねぇ」

さも困ったように、Wは腕組みをして短髪の頭をかしげました。

猿芝居もいいところです。

    
        「で、どうしろと?」


そりゃあ、なぁ…Wはダニ2匹のほうを見ました。

「あんたらの気持ちってものを表してもらいたいわなぁ」


      「気持ち?どういうことですか?

       はっきりおっしゃってくださいな」


はっきりおっしゃれないのです。

金額を提示した時点で、恐喝が成立するからです。
                  

ダニ1号のE、ようやく口を開きました。

「おたくの旦那の不始末をどうケリつけるかっていうことですよ」

 
   「不始末?…当の二人は終わってないんですのよ。

    回りが始末だのケリだの言っても

    始まらないじゃありませんか」


「なんだと?こらぁ!

 女と思って下手に出りゃあ、ふざけやがって!」


            ほうら、来た…

           

女として生きることを封印せざるを得なかった十ウン年…

これくらいで縮み上がっていては

母親稼業は張っていかれないのです。

   
        「まぁ!怖い…

         浮気されてひどい目に遭っているのはこっちですのに。

         これではまるで、脅迫ですわ!

         わたくしどもも、呼び立てられましたからこそ

         こうしてやって来ましたのに、何をお望みやら…

         ああ…恐ろしい…」


脅迫は、人を怖がらせ、ダメージを与えた時点で成立するのです。

どうにもならなければ倒れるから救急車を呼べ…

と夫と長男に言い含めてありました。

卑怯なヤツには卑怯で対抗です。


「奥さん、俺たちはね、そういうつもりじゃないんだよ。

 怖がらせたとしたら、ごめんな」

今度はガラッと優しい口調に変わるダニ1号。

    

       こいつは相当「お勉強」を積んどるな…


この強弱で、相手を精神的に追い込んでいき

最終的に自ら進んでイエスと言わせるのが、最も安全なプロの手口です。


ダニ1号は、○○剤で前科一犯、たしか執行猶予中です。

新聞に載ったので、知っていました。

次に犯罪を起こせば、小さなことでも間違いなく服役が待っています。
    
それでかなり慎重になっている様子でした。    
 
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被浮気妻の決心

2008年12月10日 20時22分20秒 | 不倫…戦いの記録
翌日の夜、義母からすぐ来るようにと電話がありました。

両親の家へ行ってみると、夫がいました。

旅行帰りのような荷物と一緒のところを見ると

C子の家から出て来たようです。


久しぶりに見る夫は、少し痩せていました。

青い顔でうつむいたまま、微動だにしません。


「女のアパートから逃げて来たんだって…」

義母が、好物の大きな饅頭をほおばりながら言います。

義父は、いつものことですが

腕組みをして、眉間にシワを寄せています。


「なんか、そのアパートにこれから怖い人が来るらしいよ」

ズズズ…とお茶をすする義母。


     「それで、逃げて来たわけ?」


結婚話が進まないことに業を煮やしたC子が

四国の実家の母親に言いつけ

母親の同棲相手の男性が、怒っているということでした。


母親の彼氏は某団体に属しており

こちらの支部に声をかけて

何人かで夫と話をつけに来るのだそうです。


夫はC子に

「今すぐ離婚して自分と結婚しないと

 生きては帰れないだろう」

と言われ、隙を見て逃げ帰って来たのだそうです。


     「それに従えば良かったじゃん。

      逃げたって、ここに来るじゃん」

 
「そう言ったんだけど…」

「いったんこっちに来られたら、手ぶらじゃ帰らんぞ」


短い沈黙の後、義母が言いました。

「それでね…あんた、行ってくれないかしら」


       「え~?」


「そうだ、そうだ、それが一番いい」

子供の発表会の「村人A」みたいな口調で義父が賛成します。

すでに打ち合わせがされていたようです。


        「私が行って、何話すんですか~?」


「そりゃあ、おまえたち夫婦の問題だから

 相手が納得する条件を話し合ってだな…」


     「あ、離婚するって言えってこと?」 


「そりゃあ、わしらには言えん。

 夫婦のプライバシーだからな」


    プライバシー…一緒に暮らしていた頃は

    夫婦の寝室に忍び入って

    タンスの中やゴミ箱までチェックしていたおかたの

    言葉とは思えませんわ~


C子のアパートへ行って

離婚を宣言すればすむとは到底考えられませんでした。

目的は金です。


先に夫の親に連絡したのです。

心配させて、金を出しやすいムード作りをしているように感じました。

両親は、無い金をむしり取られる目先の恐怖を回避するため

息子の離婚も再婚も今は気にならない様子でしたが

向こうは金だけが狙いです。

離婚も結婚も、知ったこっちゃないのが実情でしょう。


C子はバカだから、我々をちょっと脅して

自分の欲望が叶えられたら終了と思っているのかもしれませんが

そうは問屋がおろさないでしょう。


ビビリの夫は、どれほど高額な要求でも飲んで

すごすごと帰って来ること間違いなし。

簡単に約束させるわけにはいきません。

慰謝料もらいたいのはこっちです。


不景気になると、このようなヤカラが増加します。

あくせく働くより、なにがしかの団体を結成して

集団で他人の弱点を突くほうが儲かるのです。


夫が言うには、C子の母親の彼氏は地元では怖れられていて

敵に回すと厄介な人物だということです。

C子の母親も「姐さん」と呼ばれていると言います。


    「それ、C子に聞いたんでしょ?

     自己申告じゃん」
  

団体の名をかたってはいますが

それが実在するのかどうかもわかりません。

真に思想ある人や、任侠の道を行く人たちは

こういうケチなことにアンテナを張らないのではないかと思いました。


C子の娘、M美が以前うちに泊まった時

「おばあちゃんは缶詰の工場でお仕事してる」

と言っていました。

姐さんともあろう人が、工場で働いているはずがないのです。


怖れられているとまで言われる人が

60近い内妻を働きに出すのはおかしいです。

勝算は、わずかだがあるのではないかと思いました。


いずれにしても、ここでウダウダ言っているより

出かけたほうが早いです。

怖がって拒否した…と両親に思われるのがシャクな一心でした。


同じ行くなら、向こうから催促されて渋々行くより

こっちから乗り込んだほうが強気に出られます。

まず相手を見てからのことです。
   
  
       「とりあえず行ってみるわ」

「大丈夫…?」

行くと言ったら初めて心配そうにする、かなりゲンキンな義父母…。

      「金が目当てなら

       手に入るまでは相手も無茶はしないでしょ」


「俺も行く…」

夫が立ち上がりました。

「あんたはここに居なさい…」

義母が止めましたが、夫は振り払いました。

「俺が悪いんだから」


いつになく勇気を出したと思うでしょう。

違います。

自分が陰でしていたことが

明るみに出るのが心配なのです。


秘密を妻にどこまで知られてしまうかを

自分が把握できないことが一番怖い。

そのためだったら、どんなに恐ろしい所でも付いて来ます。

浮気癖のある男というのは、力の入れどころが通常と異なるのです。

うまく利用すれば、戦争にだって喜んで行くでしょう。


いくら向こう見ずな私でも、恐喝の場に丸腰では行きません。

危険とわかっている所へ、息子は止めて嫁は行かせる両親を

さすがにいい気持ちで眺めることはできませんでしたが

私が将来、嫁にこんなことをしなければいいことです。


私には強い味方?の長男がいました。

こういうことに我が子を出すのは、はなはだ遺憾ではありますが

外で待機して、いざという時は加勢くらいしてくれるはずです。


こんな面倒くさい事態になるなんて…。

さっさと離婚しなかったのを後悔しました。

しかし、すでに起きてしまったのです。


         脅されて逃げたと思われては

         被浮気妻の名折れじゃ…

戦ってやる…と誓った夜でした。
         
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不倫の迷路は右折で迷走

2008年12月09日 19時43分57秒 | 不倫…戦いの記録
夫は、そのまま家には帰らず

C子のアパートで暮らしていました。

着替えなどは、私の留守に

こっそり取りに来た形跡がありました。


私の怒りを見て

帰るに帰れない状態であろうことは察しがつきます。

やることは大胆不敵なのに

実はびっくりするほど小心者なのです。


かといって、冷めかけたC子と暮らすのはさぞ苦痛なことでしょう。

子守りでもしながらC子のパンツでも洗濯して

我が身から出たサビを舐めてりゃいいのです。


何も知らない義母から電話があった時は

「この間はありがとう」

と言っておけば間違いはないので、そのまま2ヶ月が過ぎて行きました。

しかし、そんな平穏な日々がそう長く続くはずはありません。


ある日、義母からいつもの電話がありました。

しかし、内容はいつもの他愛のないおしゃべりではありませんでした。


「さっき、変な人から電話があったのよ…」


            「…誰?」


「ナントカ党…○○○○会っていう男の人…」



   もしや…どちらかっていうと右側っぽいおかた…      


「なんか、あんたたちに関係があるらしいの…。

 知り合いが嫁さんに殴られたとか…。

 …あんた、誰か殴った?」



        「ハハハ…殴った」


「なんで?いつ?どこで?…」

5W1Hを並べて興奮する義母。

  

     「今度からこっちへ連絡するように言って」


「もう言ったわよっ!変なのに関わるのは嫌よっ!」
 

説明しろ、会社に何かあったら困る…と言ってきかないので

今つきあっている女性がいることだけ話しました。


「んまあっ!あの子、まだそんなことしてるの?

 K病院の女に、私があれだけバシッと言ってやったのに」

     
それこそ、いつ?…ですが

年寄りというのは、薄らぎやすい記憶を

自分に都合の良い方へ塗り替える生き物です。


「あの子…本当に色キチ○イなのね…」


         今知ったんかい…



「そうそう…

 なんか、息子が母子家庭に入り込んで

 結婚の約束したのに守らないって言ってた…」

  

          それを先に言わんかい…


「…ねえ、母子家庭って、どういうこと?」
 

       「子供が二人いるのよ。女の子と男の子」
  

「ええっ?男の子は困るわ!うちにはもういるんだもの」


            そこかい…


「どうしよう…あの子、ひどい目に遭わされるんじゃないでしょうね」


          「目的は恐喝でしょ」


私の所でなく、まず両親に連絡してきたことから

それはうかがえました。


「何言ってんのよ!そんなお金出したらうちはつぶれてしまうわっ!」


         とっくにつぶれかけてるくせに…


「とにかく、なんとかしてちょうだい!

 私はもうトシだから、こういうことは心臓に悪いのよ…」


     こういう時だけ、急に年を強調する…

 

           「了解」



C子め…。

こういう手を使ってくるとは、考えていませんでした。


しかし、右だろうが左だろうが

あのC子の言うことを聞くような人間です。

たいしたことはないと思いました。

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裏話(2)

2008年12月08日 20時30分35秒 | 不倫…戦いの記録
当時、私は新しいことに挑戦している時期でした。

選挙カーのウグイスです。


きっかけは、九州時代でした。

ひいきのお客さんに市議会議員がおり

車で手を振るだけでいいから…と頼まれて

一日だけ手伝いに行きました。


しかし、先に乗り込んでいたウグイス嬢(婆?)が

私を同業者と思い込み、妙なライバル心を燃やしたのでした。

「お手並み拝見」とマイクを渡され、いつもの芸人の血が騒ぎました。


ガテン稼業と選挙とは、少なからず関係があり

衆議院と県議会の時は、夫も選挙カーの運転手に

毎回駆り出されていました。

それでよく、用語や選挙法に絡んだエピソードを

聞いていたのが役に立ちました。    


余談ですが、独特の興奮状態の中

長時間を同じ密室で過ごすわけですから

もちろん夫とウグイス嬢とおかしなことになったのも

一度や二度ではありません。

    
ことに衆議院選は、期間が長くて範囲が広いので

泊まりがけになる上

若いウグイスを何人も招集するため

中には必ずバカも混ざっているわけです。    

当然夜も、また選挙後も、熱心に活動することになります。

従って国会の解散と我が家の平和とは、密接な関係があるのです。

    
しかし、この恋は絶対に長続きしません。

選挙の興奮から覚めると、自然にお互いの気持ちも冷めるようです。     
    
    
ちなみに、運転手とそういう仲になってしまうような不届きなウグイス嬢は

プロではなく、求職の合間などにアルバイトで参加した

はっきり言えばプータローのどしろうとばかりです。

最近は、選挙専用の派遣業もあり、そういうタイプは減少したと感じます。


そんなわけで門前の小僧未満ですが、少し知識はありました。

元々アガらない性格もあって

まったくすんなりと出来てしまったのです。


選挙カーに搭乗するには、事前の申請が必要です。

運転手を始め、お手振りとウグイスもそれぞれ名前を書く所が違います。

私は人数不足のためか、なぜかウグイスで申請されていたので

間違えられたのも無理はないのでした。


ぜひ明日からも続けて来てほしいと言われましたが

仕事があるし

何より、私の横で悔しそうにハンカチを揉んでいる

ウグイス老婆の生き甲斐を奪うような

罪深い行為はしたくないので断りました。


しかしその時、これはもしかして自分に合っているのかも?と感じました。

日当は、12時間もしくはそれ以上の拘束時間で

上限が1万5千円と決まっているので

割りの良い仕事ではありませんが

自分の声とボキャブラリーだけで勝負出来ます。


こちらに帰ってからは、休日と有休の取れる日だけ

あちこちの選挙運動に参加し

プロに付いて勉強を続けていました。


もちろん仕事優先ですし

そうめったにあるものではないので

無理のない程度ですが

続けていればいつか役に立つだろうと思いました。



選挙事務所は、人間観察には最高に面白い場所です。

嫌われ者ほど事務所でいばる…

票集めの下手な者ほど事務所に入り浸る…

見ていると本当に楽しいです。


都市部より田舎のほうが、そして小規模のほうがさらに面白いです。

「政治家の娘なので、選挙は詳しい…」

が口癖の、元気のいい女性が参謀の一員をつとめる市議選がありました。

いばり散らして少女漫画の悪役みたいです。


よく聞けば、そこがまだ「村」だった頃

父親が一期だけ、村会議員だったということです。

村だったのは50年前でした。

         
           言ったもん勝ち…




私が尊敬するプロのウグイスは

多分一般の会社員だったら悪魔でしょう。

小さい選挙では

普通の奥さんがつきあいで駆り出されることも珍しくありません。

初日、初老の奥さんは上品に挨拶しました。

「初めてで何も出来ませんが、よろしくお願いいたします」


プロは、一刀両断です。

「何も出来ないなら、邪魔ですからお帰りください」

厳しい世界なのです。


候補名を書いたアンドンが古い民家の軒先に接触し

その振動で家が崩れたり

狭い道で脱輪したのをみんなで引っ張り上げたり

車ごと川に落ちたこともありました。


私は多分、この非日常が好きなのだろうと思います。

今も、たまにですがこの仕事は続けています。

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修羅の道

2008年12月07日 11時24分06秒 | 不倫…戦いの記録
夫が出て行き、やれやれ…と寝ていると

また電話が鳴りました。


「頼む…来てくれ…俺じゃあどうにもならない…」

無視して電話を切ろうとしたら、C子の声が聞こえました。


「来れるもんなら来てみやがれ!

 早く離婚しろ!クソババア!」


             …なんですと?


「おまえがさっさと別れないから悪いんだぁっ」


すでに絶叫です。

夫の携帯を取り上げたのでしょう。


「バカヤロー!」


      「やかましい!野良犬がっ!     

       今から行くから、待っとれ!」


完全にぶちキレました。

挑発に乗ったと言えばそれまでですが、正直、暴れたかったのです。


C子が介入してからの様々な出来事は

自分の激しい気性を押さえ込む作業との戦いでした。

二人ともバカだから、放っておくのが一番いい…と考えていましたが

バカも超ド級になってくると

どこかでバシッと叩いてやらないとどこまでも際限なくのさばります。

子供がはしゃいで止まらなくなるのと同じです。

私は相当ナメられていたようです。



あのアパートに着きました。

相変わらず玄関の前は洗濯物ののれんです。

ドアを開けると

ストーブの熱で狭い部屋はムンムンしており

小さい子供のいる家庭特有の

甘酸っぱいような臭いが立ちこめていました。 


少し酔いがさめたのか

私をチラリと見て下を向くC子と、そばに正座する夫。

上がり込んで、C子の前に立ちました。


     「言いたいことがあるんなら、言ってみな」
     

C子のふてくされた顔を見ていると

ボコボコにしてやりたくなります。


      「さあ、言いなよ。さっきの元気はどうした」


C子は口をとがらせて、黙ったままです。

浅黒い顔の上に福笑いのようにまき散らされた

つり目や広がった鼻、分厚い唇を見ていると

ぎゅうっとつねってやりたくなります。   



「…だって、別れてくれないんだもん…」


       なにが「だって」だ

       何に対しての「だって」だ

       なにが「だもん」だ

              …そのツラで!


こういう、おのれを知らないタイプに

理屈は通用しないし、何を言ってもコタえません。

会社に一人いるので、よくわかっていました。

好き好んで仲良くする気がなければ

罵倒か無視しか無いのです。


C子の胸ぐらをつかみました。

        「ええ加減にせぇよ」


C子はつかまれたまま、ツーンと横を向きました。

どこまでもふてぶてしい女です。


C子を床にたたきつけるように手を離すと

「ああっ」

と赤茶けた畳の上に大袈裟に倒れ込みました。       


「暴力よね、これ」

金髪に近い傷んだ髪の間から、こちらをにらみつけています。

まったく図太い女です。



     「違~う。暴力っていうのは、こうやるんじゃ!」


C子のほっぺたを張り飛ばしました。



「ギャアッ!」



C子はまたオーバーな叫び声を挙げ、夫にすがりつきます。
    

「傷害よっ!」

素早く夫を盾にして、自分はその後ろに回っています。



      「これが傷害なら、おまえは泥棒じゃ~!」


夫を盗られているという観念はまったく無いのですが

ここは場面の構成上…。



     「野良犬のぶんざいで、今度私に迷惑かけたら、殺す」


固まっている二人を置いて、部屋を出ようとしました。

M美が奥のふすまの蔭から、半分顔を出してのぞいていました。


         「バイバイ」

と言うと


「バイバイ」

と、ゼンマイ仕掛けの人形のように手を振りました。


外に出てから思い出しました。

       「火をつけるって言ってたっけ…」

あれはどうなったんだろう…。

すっかり忘れていました。

            残念~!
           
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燃えろ!

2008年12月06日 01時41分17秒 | 不倫…戦いの記録
「…一緒に来てくれないかな…」

電話を切った夫は、身支度を始めました。


        「何か変わったこと?」


「酒飲んでギャーギャー言ってるから…」

        
        「アホか!一人で行け」



酒が飲めない夫は、酔っぱらいがキュウリの次に苦手です。

自分が嫌だからといって、私に同行を求めるのはお門違いです。

そういう甘えた人間だから、こういうことになるのです。


ふぅ…と芝居じみた大袈裟なため息をもらす夫に

つい引っかかってしまいました。

    
       「自分の女くらい、ちゃんとしつけなさいな」


「俺もこんなことされるとは思ってなかった」


       「…携帯、着信拒否してるんでしょ」


「…」

       「…会社の電話も居留守使ってるんでしょ」

「…」

       「そりゃ、こっちにかけてくるわ。

        ちゃんと最後までつきあわないとダメだよ。

        向こうは生活かかってるんだからさ~」
 


「あんなにしつこいとは思わなかった…」

    
    「いつも最後には言うよね。

         女って、みんなしつこいんだよ。
        
         知らないのは、あんただけだよ」 




「この間、Kの介が車にはねられたんだ…」


            「はあ?」


子供を使って寝入りばなを起こされて一緒に来いと言われ

うっかりムッとしたことを後悔しました。


この男は、いつも唐突にそんなことを言います。

言うべき時にはひた隠しておいて

自分で解決できなくなってしまってから、結局しゃべるのです。

しかもその内容が、意外に面白かったりするから始末が悪い…。

寝不足になってしまうではないか。



「骨折なんだけど

 あいつ、看病のために仕事休んでるんだ」

              
このまま辞めて結婚したいと言われて

どうにも困っている…ということです。


        「あら、結婚してあげなさいよ」


「うぅ…それは…」


冷めかけている夫は、その要求が苦痛になり

逃げ回っているというのが真相でした。
   

「これからガソリンまいて、火ぃ付けて死ぬって言ってる…」


        「いいじゃん。死んでもらえば」


そう言う女に限って、死ぬわけがないのです。

死ねるものなら、一回死んでみればいいのです。

線香くらい上げてさしあげます。


夫の恋の仕方は、ヘタでした。

「好き好き」の後は、必ず早々に結婚をほのめかします。

最初は自分がいかにも立派なことを吹聴します。

この町の経済は、自分を中心に回っているというランクの嘘です。

日本の…と言わないだけマシかもしれませんが

少し付き合うと、不審が生まれます。


「会話のキャッチボールも苦手みたいだし

 これで経営なんて、出来るのかしら…。

 ひょっとして、大ボラ吹き?」

どんなにバカでも、たいていの女性ならそう思います。


そこで女性から核心をついた質問が出るようになると

「結婚」です。

その禁じ手を使うと、女性はひとまず大人しくなるからでした。

「親も喜んでくれている。式は…花嫁衣装は…将来は…」

と言われれば、バカな女はだまされます。


夫は自分の発した言葉が

相手の心の中で反芻され、拡大されていく罪深さに

気付かないまま、嘘に嘘を重ねて行きます。


そのトップバッターが、何を隠そうこの私なのでよくわかるのです。

最初なので、たまたま籍に入ったり子供を生んだりしましたが

順番がちょっとズレていたら

歴代の女性たちと同じことになっていたかもしれません。


自営の家に生まれたので、その厳しさは知っており

経営云々、将来云々に期待を持つことはありませんでしたが

そういうソースの無い環境で育った人は

どこまでも自分に都合の良い、甘い想像をふくらませるでしょう。

別れのもめ方は、ふくらんだ大きさに比例します。


ここしばらくは物質的、肉体的に満たされ

明るい未来に手が届きそうな所まで来たら

急激な男日照り…では、酒でも飲んで火のひとつも

つけたくなることでしょう。



「最初は子供と3人で生きて行くから

 会ってもらえるだけでいいとか言ってたのに

 急に変わるんだから…」


       「あんたがそうなるように仕向けたんでしょうが」

「…」

    
      「早く行きなさいよ。

       火事になったら大変よ~ん」



車に居てくれるだけでいいから…としつこく懇願するのを

玄関から押し出すようにして、行かせました。



        一緒に焼け死んだらいいのに…

    おほほ…

    C子、頑張れ、有言実行…




♪燃えろ、いい女~♪

♪燃えろ、C子~♪


懐かしの歌を口ずさみながら、再び布団に潜り込んだ私でした。
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異界のかたがた

2008年12月05日 10時53分40秒 | 不倫…戦いの記録
夫とC子は、退院後も変わりなく交際を続けていましたが

なんとなく一時の情熱は失われているように感じました。


夢中になっている時は、目玉に炎が宿り

古いたとえですが、大リーグボールを投げる星飛雄馬…。

その火が鎮火し始めたら、本人も夢から覚めるという

いつものパターンに入ってきていました。


ここからが面白いのです。

線香花火の最後のように

パッともう一回火花を散らしてひと波乱。

全てが終わったらぐったりと沈み込み、熱を出す時もあります。

魂が抜けたようになって、しばらく鬱状態です。


恋が始まると急に口数が多くなり

聞きもしないのに

外であった出来事や将来の夢など

追いかけるようにして、ぺらぺらとよくしゃべりますが

それと逆になるわけです。 


おそらく、精神的な病気の一種ではないかと思います。

または、憑依ととらえたほうが納得しやすいかもしれません。

これまでにも、不可解に思える出来事はたくさんありました。


自分の中にある醜い感情に、魑魅魍魎が共鳴するのか

単に頭がおかしいだけなのか…。

相手が憎い、呪ってやりたいと思っていた頃は

確かに変なものをよく見ていました。


帰って来た夫の肩に、女性の首が乗っかっていることもありました。

マネキンをくっつけているのかと思うくらいリアルでした。

夫のアゴのあたりにまで、赤く長い舌を伸ばしていました。

そんなのはわかりやすくてまだかわいい、ほんの一例です。

この方面のことが好きな人間だったら

宗教や、今で言うスピリチュアルにはまっていたと思います。


実際誘われてセミナーとやらへ行ったり

本を集めたこともありますが

それらは私にとって「逃げ」としか

とらえることは出来ませんでした。


「悪いのは私じゃない。霊だ、成仏してない先祖だ…」

と言っていれば、確かに気が楽になりました。

しかし、そこにとどまって悦に入っていられない問題が次々にやってくると

祈るだけは解決できないとわかってくるものです。


変なものは、家を出て九州へ行ってから見なくなりました。

家に居るその存在と距離的に離れたからか

精神的にふっきれたからかは、わかりません。

知ろうとも思いません。


なぜ?なぜ?と立ち止まっていると、また変なものが出て来ます。

そんな非現実的なことにうつつを抜かしている暇は無いのです。

私は子供を躾け、育て、愛情を与え続ける義務があります

父親がしっかりしてない分、物心両面においてカバーする必要がありました。


解決を望んで祈ったり

精神世界の迷路に迷い込むより

夫の行状を面白がるほうが私には合っているようです。

暴力や借金でなく、浮気だから痛いのは心だけです。

給料を渡さないのは不満ではありますが

欲を言えばきりがありません。

だからこういう考えですむのですが。



夫は食中毒以来、外泊をしなくなっていました。

夜も仕事が終わると早く帰って来ます。

ポツポツしゃべるところによると

あのトイレの奪い合いが、決定的だったようです。


こうやって、飽きたらパッと冷めるので

一波乱も二波乱も起きてしまうのです。

自分はさんざん楽しんだカスだからいいでしょうが

相手も同時にパッと冷めることはまれです。

ここが男女関係の最も難しいところかもしれません。

やはり保温機能や、目的意識の差というものがあるのです。



ある夜、寝ていると、電話が鳴りました。

なにごとかと思って出てみると

「おばちゃん…」

M美です。

       「M美ちゃん、どうしたの?

        なにかあったの?」


「ママがねぇ、パパに代わってって」


夫を起こすと、グズグズして出たがりません。

だからといって私が用件を聞くわけにもいかないので

叱り飛ばして受話器を渡しました。


電話の向こうから、なにやら泣き叫ぶような声が聞こえてきます。

夫は大嫌いなキュウリをかじったような顔で

たまに「あ~」「う~ん」とつぶやいています。


    
             ほれほれ来なすった…

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寄生計画

2008年12月04日 12時10分34秒 | 不倫…戦いの記録
「M美…おなかすいた…」

テーブルの上にあったパンを見ながら

少女がつぶやきました。

「Kの介も…」

午前1時…。


夜更かしすると、お腹が減るものです。

私も食べたくなりました。

パンで釣っている間に急いでうどんを作り、三人で食べました。


昔、子供たちが使っていた

熱くならないドンブリなど出して来て、久かたぶりの子育て気分です。


       「いつも二人で留守番してるの?」

「うん!」

        「すごいね」

「M美、おねえちゃんだから、がんばらないといけないの」

「Kの介もがんばるー」

        「えらいねぇ」


「がんばったらシアワセがくるって、ママが言ってた」

        「ふ~ん」

「それでね、大きくなったらね

 M美はシャチョウレイジョウになれるんだって」

      「ほぅ…そりゃすごいね」

「パパのお父さんが死んだら~、パパがシャチョウサンになって~

 そしたらM美はシャチョウレイジョウなんだって」

      「へぇ~」

「それでね、Kの介は大きくなったら
 
 シャチョウサンになれるんだって」

  
    「…じゃあ、ママは?ママは大きくなったら何になるのかな?」

「シャチョウフジン~!」  

          「ほぉ~」

「だから、おるすばんをがんばるの」

        「がんばってね」



C子みたいなのがいるから、世の中は面白いのかもしれません。

なかなか楽しい計画ですが、平成以降の零細企業は悲惨です。

それに…長男の入社が決まっていました。


サラリーマンになったほうがまだ安全だと思っていましたが

生涯いち従業員でいいとまで言うので

翌年から、ひとまずよその会社へ修行に出すのを決めたところでした。


        悪いが…多分君たちの計画は白紙だよ…         


幼い子供の口から出た話…半分に聞いても

それを日々彼らにインプットしているC子の気持ちは容易に想像できます。


寄生という手段で幸せをつかもうとするC子。

我が子のために、どうしても引きたくない私。

綱引きするほどの値打ちもない、つぶれかけた会社と

資金繰りの厳しさや家族の確執を受け止めきれないまま、恋に走る夫。

風呂に入り、寝てしまった二人の顔を見ながら

複雑な思いにかられる私でした。   


こういう気分の時は

目の前の今できることをひたすらやるのが良策です。

寝ること、そしてこの子たちを無事C子の元に返してやることでした。


翌日の昼過ぎ、夫は子供たちを連れに来ました。

窓から見えない離れた場所に車を置いたところをみると

C子も退院して一緒に来たのかもしれません。


「おばちゃん、さよなら~」

パパの後について、二人は帰って行きました。

手がかからず、かわいらしい子供たちでした。

淋しい子供というのは、どこでももの怖じせず

スッと入り込めるようです。


M美の話によると、C子はM美たちの父親の転勤で

…小学校に入る前と言うから…

3年ほど前に四国からこの県に来たようです。

ほどなく離婚して父親は自分の郷里に帰りました。

「それから今のパパじゃないパパと遊園地に行った」

と、ややこしいことを言います。

夫の前に彼氏がいたため

その住まいから離れなかったのかもしれません。


「ママが、今のパパのほうがショウライがいいんだって。

 遊園地行けないけど」
    
       
          将来ねぇ… 


確かに夫はそういう場所が苦手でした。


C子の実家も四国ですが

母親も独り身で働いている上に

一緒に住んでいる男性がいるらしく

あまり行き来は無いようでした。


あの子たちが幸せになれますように。

       あ、それには私が邪魔なのか…

             へへへ
 
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愛人道

2008年12月03日 11時30分25秒 | 不倫…戦いの記録
彼女の家から病院まで、車で5分とかかりません。

その間私は、昔の早回しの8ミリフィルムみたいに

頭の中でいろいろな想像を巡らせていました。


妻だと名乗ってイヤミのひとつも言えば、さぞ爽快でしょう。

しかし、子供の前です。

母親の行状がどうであれ、子供は無関係なのです。

寝てくれればいいものを

夜更かしに慣れているのか二人は元気いっぱいでした。


それに相手には、動けないというハンディがあります。

戦えない相手に何か言って去るというのは

武士道?に反するような気がしました。


会社によく、さまざまな宗教の勧誘の人が来ます。

忙しかろうが来客中であろうが、お構いなしです。

家ならドアを閉めれば終了ですが

いつも開放状態の会社だとそうはいきません。


家でも迷惑は迷惑ですが

閉じられない場所にやって来て

その場から逃げられない相手に自分の言いたいことだけ言う…

それはとても卑怯な行為だと、前々から軽蔑していました。


そんなにすばらしい宗教なら

いちいち訪問して伝えなくても自然と信者は増えると思います。


          彼らと同類になってしまうではないか…



着替えを持って来ると伝えてあったので

病院の玄関は開けてありました。

「あ、来てくれたのね。良かった。

 貸した検査着のストックが、もう無いのよ。

 でも、そろそろ落ち着いたから」

同年代の夜勤の看護師は、こぼしました。

「家で全部出してしまってから、来てくれれば良かったのに」

まったくです。


あと何週間かで、ここは救急病院ではなくなるのです。

この数日入院患者はおらず、夜勤も形式的だったので

彼女にとってその夜はとんだ災難でした。


「ねえ、ねえ、あの人…誰よ」

白衣の天使も、この手のことには興味しんしんです。

         「この子たちのママよ」

「な~んだ」

子供を連れていたことで、詮索の気持ちは消えたようです。
      
      迷惑料がわりにサービスしたいのはやまやまですが

           あしからず…


まず夫の部屋へ行き

動けるようなら子供と一緒に届けさせ

私は待っているつもりでしたが

とてもそんな状態ではありません。


子供たちは、声をかけるでもなく、パパと呼ぶでもなく

入り口に立って、ただ凝視しているだけでした。


ママの部屋は隣です。

M岡C子と書いたプレートがありました。

部屋へ入ると、やはり子供です。

「ママー!」

枕元に駆け寄るのでした。


C子もやはり死にそうな形相で、子供も目に入らないようです。

携帯を握りしめ、うつろな表情をして横たわっています。


   「初めまして。私、姉です。

    弟に頼まれたので…」


大嫌いな女になりすますのは抵抗がありましたが

この際しかたがありません。


C子の着ている物もベッドも

ほとんど水みたいなものですが悲惨な状態でした。


二人でホテルへしけ込むというスケベ心を起こさなければ

各自の家でそれぞれ出す物を出してから

対策を講じる手段があったでしょう。

気の毒なことです。


C子は動けないので

看護師と一緒に敷き布団とシーツを交換し、着替えさせました。

すでにおむつをされていたので

例のパンツは必要ありませんでした。

退院の時にでも使ってもらいましょう。


血の気の引いた毛深い足に

塗り立ての真っ赤なマニキュアが毒々しく浮かんでいました。


ネイルより、脱毛が先だろう…と思いながら

このちぐはぐ感が、案外男性には可愛いのかも…

などとひそかに研究する私でした。

今さらその成果を発揮する予定は無いのですが。

来世があれば、頑張ろうと思います。


私が誰であろうが、子供がどうしていようが

それどころではない様子なので、早々に立ち去ることにしました。

ずいぶん気を使ったつもりでしたが、まったくの杞憂に終わりました。

「気にならない…」愛人道には重要な素質かもしれません。


子供たちは、我が家へ連行です。

うちの子たちは夏休みの旅行中だったので

ちょうどよかったと思いました。


「ここがおまえのアジトか~!

 おれが爆破してやる!ババババババ…」
    
    
    「はいはい、爆破でもなんでもしてくださいよ~。

     中身はとっくに崩壊してるんだから~」     
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愛人宅

2008年12月02日 09時40分35秒 | 不倫…戦いの記録
彼女のアパートに着きました。

奥まった、わかりにくい場所でしたが

以前長男がそのあたりを通りかかった時

「親父の車が停めてあるのを見た」

と聞いていたので、すぐにたどり着けました。


玄関の前には、洗濯物がたくさん干してあり

子供服ののれんをかき分けるようにして、チャイムを押しました。


ドタドタ…。

子供特有の賑やかな足音がして

小学校3年生くらいの女の子が顔を出しました。


「どなたですか~?」

一応形式的にたずねはするものの

その声や表情は、心細さから解放されたようにはずんでいました。
       

      「お母さんから電話があったでしょう。

       着替えを取りに来たのよ」


「ママじゃなくて、パパから電話があった」

       「ふ~ん…

        じゃあ、そのパパが言ってたでしょ。

        着替えを用意してって」

「うん!」

       「おばちゃんに渡して」

「どれかわからない…」

       「パンツとか、シャツよ。お母さんがいつも着てるものよ」           
「…これ?」


いったん奥へ引っ込んで、持って来たものは

黒いラメ入りのTバックでした。
     
           なるほど…
     
     よその亭主と寝るには、こういうのをはいて
    
     サービスせにゃならんのか…


「これでいいよ。もう一枚くらい無い?

 あと、ブラジャーとか、Tシャツとか…ある?」


今度は、スパンコールの蝶がアクセントの

ピンクのスケスケおパンツ…。

その次の便では、くたびれてワイヤーが出かけたブラジャーと 
     
色あせたTシャツを一つずつ持ってきました。


辛抱強く待っている私を蚊が狙います。

玄関の中へ入り、サビのきた重いドアを閉めました。


眠っていたらしい

幼稚園の年長くらいの男の子が出て来ました。

「おまえは誰だ!

 俺が相手になってやる!」

ヒーローものの真似をしてポーズを取ります。


「アヤしいオンナめ!帰れ!」

ツバまで吐きやがります。

おお、勇ましいこと。

うちの子なら、たたきまわしています。

しかし、男児の扱いには慣れています。


    「○○星から来た。地球を守ってくれてありがとう」

「うそだぁ~…」

照れて身をよじり、おとなしくなるのです。

騒がれて、近所に興味を持たれるのはごめんでした。

パパが出入りするのだから、すでに興味は持たれているでしょうが。


散らかった部屋の隅に置かれた

段ボールのおもちゃ箱から

ボロボロになったクリスマスのブーツの先がのぞいています。


買い換えた時、誰かにあげたと言っていた

古い電気釜と電子レンジもここでちゃんと使われています。

今度は洗濯機も買い換えようかしらん。


やっと、ご衣装が出そろいました。

床に落ちていた紙袋を持って来させて着替えを入れ

   「じゃあね。お母さん、多分明日帰って来れると思うから

    いい子でお留守番しててね」


「…おばちゃん、帰るの?」

         あったりめぇよ…

「ママ、どこ…?」

二人はしくしく泣き出しました。


ママは仕事やデートに忙しく

留守番には慣れているはずですから

ずっと二人だけなら平気なのでしょうが

なまじ夜遅く人の顔を見たのが刺激になったようでした。


「ママに会いたい…」

「ママに会いたい…」

上の子が泣くと、下も心細くなるものです。


このまま置いておくのも酷な気がして

連れて行くことにしました。

玄関先に干された子供の衣類を端からブチブチっとはずし

それを抱えて子供たちと一緒に車に乗り込みました。


         なんで私が…
 
         どうしてこんなことに…


ここらあたりから

もうそういう無駄な問い合わせはしないようになりました。

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ざるそばのたたり

2008年12月01日 16時50分52秒 | 不倫…戦いの記録
夫が自分の給料を家計に入れてくれる習慣は

いつの間にか途切れていました。


九州から帰ってから

毎月10万だけは義務として入れてくれていたのですが

今度の彼女になってからは、その習慣は消えていました。


資金難で給料が遅れる…と何度か言われたと思いますが

催促もしなかったので、そのままになっていったようです。

困ることがなかったので、長い間気がつきませんでした。

モップの彼女の懐に入っているのでしょう。


家でごはんを食べながら

よそに給料を貢いでいるのは確かに面白くないですが

この頃にはもう、どこまでバカか見てみたい気がしていました。


それに、何か欲なことを言ったら

たいした資格も特技も無い自分が運だけで得ている収入に

ミソがつくような気がしていたのです。



お盆休みのことでした。

夜、義母から電話がありました。


「あの子、入院したらしいの。すぐ行ってやってくれる?」


        「…なんで…」


「食中毒らしいのよ。今、K病院から連絡があったの。

 着替えがいるらしいわ」


またK病院です。

K病院と私は、よほど相性が悪いのでしょう。


車で30分の私より、町内の義母のほうがよほど近いのですが

着替えがいるのでは仕方がありません。

のろのろと支度をして出かけました。


K病院は、以前の小規模な総合病院的形態から

来たるべき高齢化社会に備えて

リハビリ主体の医院に改革をしている最中でした。

入院応需を取りやめる移行期間だったので

その頃、病室は二つしか残しておらず

食事も近所の仕出し屋が請け負っていました。


二階の病室に入ると、夫はこの暑いのに布団を被って寝ています。

声をかけても反応が無いので、掛け布団をめくりました。

              「…」

夫は汗びっしょりになってメールに夢中でした。


            「何してんの…」


「…」

 
見れば服もシーツもウ○チの跡だらけでびしょ濡れです。

さっき階下で会った夜勤の看護師さんが不機嫌だったわけがわかりました。


…死んでもラッパを離しませんでした…

という戦時中の兵士の逸話を聞いたことがありましたが

下痢ピーの海でも携帯を離さない夫は、ただの阿呆です。


これ以上長居をして

尻の始末をさせられる羽目になるのはゴメンなので

帰ろうとしました。


「待ってくれ…」

         「…」   

「あいつの…」

           ほら、きた…

「頼む…あいつのことも、なんとかしてやってくれ…」

      
      …てことは、あのかたも、同じ境遇に…
   
  隣のお部屋で寝てるのを、メールで励ましていたってことね…


         「私にどうしろと…」


「子供が家で待ってるんだ。

 着替えを取りに行ってやってくれないか?

 俺、動いたら出ちゃうしさ、あいつはもっと重症なんだ…」

      
         「なんで私が…」


「こんなこと、頼める身じゃないことはわかってる。

 でも、そこを何とか…お願いします…」


    「他に友達とか、いるんじゃないの?」


「ここの生まれじゃないし、親しいのは会社の人だから

 ばれたら困るんだ」


   「困るんなら最初からしなきゃいいじゃんけ」


無視して帰りたいのはやまやまでしたが

私は以前、生牡蠣にあたったことがありました。

お産より数倍つらかったです。


こうして後でとやかく言うくらいなら

関わらなければよいのですが

偽善者の私としては、見捨てることが出来ませんでした。


夫に家を聞いて、行くことにしました。

夫はついでに、こうなった事情も説明しました。

二人で食事をした後、少しドライブして

ホテルに入ってから発病したそうです。


トイレの取り合いで醜い修羅場となったあげく

救急車を呼ぶ勇気もなくて

心やすいK病院に二人で駆け込んだのでした。



     「ところで…何食べたの?」


「ざるそば…。ウズラの卵が怪しい…」


     「もっと、いいもん食えよ…」
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