殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ブログ開設5000日突破・老人として生きる

2022年06月30日 10時11分08秒 | みりこんぐらし
気がついたらブログ開設以来、5000日を過ぎていました。

2008年の10月13日から始めたこのブログ、今日で5009日目だそうです。

だからといって、その日数に見合う記事の質や量は心もとない限りですが

とりあえず14年目ということになります。


病院の仕事を辞め、さて何をしようかと考えて始めたブログ。

こんなに長く続けられたのは、ひとえにお越しくださる皆様のお陰です。

訪問してくださる方、ご親切にもコメントをくださる方、応援ポチを押してくださる方

いつも本当にありがとうございます。

改めて厚く御礼申し上げます。

今後ともよろしくお願いいたします。



さて48才からブログを始めた私も、14年経つと62才。

年寄りになって、わかってきたことが色々あるので

今日はそのことをお話しさせていただきます。

例えば資生堂プリオールのメイクが、案外使いやすかったとか。

(私のことだから、その程度のもんよ)




年配向けに発売されたプリオール・シリーズ…

まだまだ、ずっと先で使うものだと思ってたのよねん。

でも同級生のマミちゃんの店で

アイカラーとチークカラーを買っちゃったのよねん。


使用中の物でゴメンなさいましよ。


すると、良かったんだわ、これ。

粉が優しいっての?

粒子が細かいからフワッとしてて、たるみ始めた目元や頬にうまく乗るんだわ。

年配向けのアイカラーやチークカラーといったら、シワやシミ、くすみの出た肌を

ひたすらパール効果でテラテラと反射させる手口かと思ってたけど…

その手口だと、かの有名な後妻業の筧(かけひ)ちさ子って人みたいに

若作りのあざとさが滲み出ると思ってたけど…

パール効果は比較的控えめで、心配したほどじゃなかった。

チークカラーのハケは少々硬めだけど、別に持ってる熊野筆を使えば問題無し。


付け方を説明する文字も大きくて、わかりやすい。

これ、大事。

だってメイクする時は、誰だって老眼鏡かけられないでしょ。

そういうところに配慮を感じると、嬉しいものなのよ。

老人としてはね。


金色の縁取りに赤い宝石みたいなパッケージも、可愛くてアガる。

子供の頃は、金色の輪っかに赤いガラス玉が付いてる指輪を夜店で買ってもらってさ

指にはめて得意満面だったもんだけど

年を取ると、自分の持ち物から赤いキラキラした物が無くなるじゃない。

だけどメイク道具だったら、抵抗が無い。


安っぽいと言えばそれまでなんだけど、もはやしっかり年を取ると

それまで夢中で追いかけていた小粋とか洗練とかに興味を失って

可愛いや楽しいが好きになっちゃう。

そんな年配女性の心理をよく突いてると思うわ。

私もとうとう老人の仲間入りってわけよ。


だから、こんなモンも買っちゃった。


帽子…千円。

帽子はあんまり被らないけど、日傘を使えない時は被ってる。

去年までは黒や紺の、ちょっと気取ったパナマ帽みたいなのだった。

それが今年はこれよ。

老化でハジけたとしか言いようがないわね。


…自分語りを続けさせてもらおうかしらん。

裏庭の一部。


1週間前に剪定してもらったばかりって、信じられる?

庭師の仕事が気になるって、やっぱり年だと思うわ。

昔は庭なんて、何とも思わなかったもの。



この7〜8年ほど、うちの庭師は義父アツシの親戚の子なんだけど、あんまりうまくない。

雑でいい加減。

それは彼だけが悪いんじゃないけど。

名も無き草木がボーボーの人目につかない部分なんて、私だってやる気が出ないわよ。


ただし安い。

そして気兼ねが無いから、安心。

年を取ると他人が一日中、家に居ることがしんどくなる。

だけどこの子なら、全然平気。

技術か、料金と安心か、どっちを取るかよね。

私は後者。

庭の出来栄えだの見てくれだのは、もう諦めた。


今まではヨシコがいなくなった後で慌てないよう

できるだけコンパクトにしておきたいと思って、せっせと切ったり抜いたりしてたわよ。

姑仕えがやっと終わったわ、ジャングルが残ったわ…

老体に鞭打って庭と格闘だわ…

残り少ない余生をそんなことに使うなんて、嫌だったから。


だけどヨシコ、いなくならん。

だから、諦めた。

このままでええんじゃ。

先で困れば、ブルドーザーでぶっ潰したる。


庭だけじゃなく、他のほとんどを諦めた。

死後に悔いが残るのが嫌で、お年寄りだから、一応は親だから

先が短いんだからと自分に言い聞かせ、チヤホヤしていた私はもう終わり。

だって私が年寄りになっちゃったんだもの。

同居12年にして、やっと諦めがついた。

家に居るのは嫁姑以前に、二人の老女でしかない。

少しは働いてもらわんと、こっちの身が持たん。


ところで私が今、気にかけているもの。



これ、オクラ。

近所のおばさんが苗をくれたので、仕方なく植木鉢に植えてみた。

だけど植えながら

「オクラって、上に向いて実が成るんだよ」

と言ったら、家族は誰も信じない。

だから本当だと証明したくて、育ててる。

見てろよ。
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ドタキャン・パート2

2022年06月22日 15時19分56秒 | みりこんぐらし
前回の記事『慰労会』で、仲間内のドタキャンについてお話しした。

その余韻も冷めやらぬ2日後、またドタキャンの憂き目に遭う。

相手はひとつ年下のカナエさん。

20年ほど前、彼女がヤクルトレディとして

うちへ来たのをきっかけに知り合った女性だ。


知り合って10年後、彼女の別れたご主人が

今は亡き義父アツシの会社の社員だったと聞いて

ますます親しくなったことは以前、記事にしたことがある。

その男性、私と同い年のタロウちゃんは裏表の無い働き者で人柄も良く

長く勤めてくれた。

夫も彼には全幅の信頼を寄せていたものだ。


が、アツシの会社が危なくなった頃、別の車両を扱う会社に引き抜かれて辞めた。

良い運転手は転職先に困らないという実例である。

我々夫婦は淋しく思う一方、せっかく良い腕を持ちながら

倒産しそうな会社に居続けるのはもったいないと考えていたため、ホッとした。


そんな思い入れの深い人物とカナエさんが、一時期とはいえ夫婦だったと知って

私のみならず夫も驚いていた。

タロウちゃんが義父の会社に居た頃は独身だったので

カナエさんとの結婚や離婚は、それ以前の古い話だと思う。


彼女が話すには決して嫌いで別れたのではなく、同居していた舅や

近所に住むタロウちゃんの最初の奥さん

そしてその子供たちとのゴタゴタに疲れたのだそう。

離婚後のタロウちゃんとカナエさんは頻繁に行き来し

彼氏と彼女のようなホンワカした関係を保って現在に至っている。


この告白を聞いて以来

「二人でランチに行って、ゆっくりおしゃべりしたいね」

と言い合う私たちだったが、チャンスはなかなか訪れなかった。

彼女のお母さんの介護と見送り、彼女の転職などで暇が無かったからだ。

暇はあったかもしれないが、人には優先順位がある。

後発で親しくなったジェネリックな私と遊ぶ暇は、取れなかったと察する。


ランチ構想から実に10年、やっと実現したのが2年前のこと。

「穴場へご案内したい」と言うので期待していたら

山奥の公共施設に併設された小さな食堂だった。

パイプ椅子を引いたら、コンクリートの床との摩擦でガ〜と音のする…

ハイテンションのおばあちゃんたちが少ない客を切り盛りする…

山菜うどん定食とかの少ないメニューを食券で買う…

つまり、カジュアルでうらぶれた所。


2時間近く走って、ここか…私は少なからず失望。

私って滅多に外出しないじゃん。

だからたまに出かける時は、ハズしたくないという願望が強くて

時間をかけてはるばる行くなら、かけた時間にマッチする結果が欲しいわけよ。

連れて行ってもらっといて、ホント身勝手なんだけど

タロウちゃんとの食べ歩きが趣味と言ってたし

行く店の名前も良い所が揃っていたので、期待し過ぎたみたい。


私にとっては失望でも、カナエさんにとってはやっぱりお気に入りの穴場らしい。

あんまり料理をしない彼女の食べたいもの…

定食に付いてくる干し大根の煮物や肉ジャガの小鉢が嬉しいみたいだ。

男か…。


そうよ、小柄で可愛らしくて、タロウちゃんの前では女性でも

ハートは一人暮らしの長い男性なのよね…と納得。

だけど干し大根や肉ジャガは、普段の私が飽きるほど作っているマンネリ食品。

価値観の違いは、どうにもならない。



そんなカナエさんが近年、焼き物に興味を持ち始め

その流れで茶道にも関心が生じたとおっしゃる。

そこで同級生のりっくんが主催する、月に一度のお茶席を教えたのが今年の始め。

「ぜひ行ってみたいです!」

彼女が言うので一緒に行くことにしたが、休みが不規則なので予定が合わなかった。


以来半年、私は待った。

そして今月、やっとカナエさんのスケジュールが空く。

いつもLINEなので、現実の彼女に会うのは、あの山奥の食堂に連れて行かれて以来だ。


「すごく楽しみです!」

彼女は張り切っていた。

けれども私の方は、りっくんのお茶席にすっかり飽きちゃった。

ユリ寺の祭りで出したカレーのご飯が硬いと、彼が文句を言ったことも根に持っている。

が、カナエさんはそんなことなどつゆ知らず、楽しみにしている。

仕方なく同行を決め、いつもの同級生モンちゃんも行くと言ったので3人で行くことにした。


そして当日。

モンちゃんとは現地集合、カナエさんからは迎えに行くと言われていたため

私は約束の時間の午後2時まで家で待った。

だが、カナエさんは来ない。

電話にも出ないし、LINEしても既読にならない。

変ね、あれほど楽しみにしていたのに…

そうそ、午前中は近所の草刈り行事に出ると言っいたから、疲れて寝てるのかも…

などと思い、単独で行った。


お茶席に行くと、ほどなくモンちゃんも来て、お抹茶とお菓子に舌鼓を打つ。

茶道どころではない。

もはや喫茶。


それにしてもりっくん、この日は何だか元気が無いじゃんか。

彼自らが語るところによれば

ユリ寺の祭りで行った献茶について、東京の師匠から厳しいお叱りを受けたそうだ。

「画像を送って報告したら、勝手なことをするなって言われちゃって…」


献茶は神聖なもの…真似事で済ませられることではない…

まず周囲を清め、身を清め、コロナにかかわらず口にはマスク着用…

お茶を入れた茶碗は必ずフタで覆って臨まなければならない…

そんな作法も知らず、こちらの許可も得ずに独断で行うなんて…

師匠はそう言って、かなりのご立腹だという。


「俺も許可のことは考えないでもなかったけど、急だったし

許可が下りない可能性の方が高かったし

そしたらせっかく声をかけてくれたお寺に申し訳ないから

独断でやっちゃったんだよな…」

うなだれる、りっくん。

「あっら〜!それは気の毒じゃったねぇ!」

カレーの恨みの溜飲を下げる私。


「ユリちゃん夫婦は行事の格が上がったって喜んでたじゃん。

イベントとしては成功よ」

「そうだよね?来年からも続けていいよね?」

「師匠は東京じゃろ?黙っときゃ、わからんよ」

「そうだよね?

俺、モクネンさんに今後もお願いしますって、改めて頼みに行くよ」


りっくんは元気が出たようだ。

「カレー、美味かったよ…」

今頃になって、何を言うか。



1時間後、モンちゃんと別れて帰宅したら、カナエさんからLINEが入っていた。

電話もかかっていたが、気づかなかった。

「家族から込み入った内容の電話がかかっていて、みりこんさんのLINEに気がつきませんでした。

本当にすみませんでした。

今日は疲れたので寝ます」


お茶席に予約は必要無いので、全く腹は立たない。

彼女の一族は家庭運に恵まれてないらしく

いつも何か深刻な問題が起きてゴタゴタしているのは知っている。

しかもこの暑いのに、あの小さい身体で草刈りだもの、疲れて当たり前よ。


「変わったことが無かったのなら、良かった。

ゆっくり休んでください」

と返信したが、多分もう彼女と何かの約束をすることは無いだろう。

振り回されるのは、姑一人で十分だ。


で、明日はまた、同級生5人会の女子会。

先週会ってから、1週間経ってないハイペースだ。

メンバーはいつものユリちゃん、マミちゃん、モンちゃん、私

そしてユリちゃんの兄嫁さんと、今回はお寺料理のお仲間、梶田さんが初参加だそう。


だんだん5人会じゃなくなってきているのはさておき

今度は梶田さんの希望でマミちゃんの親戚の店に決まったため

マミちゃんが予約を引き受けてくれた。

予約係から解放され、手放しで楽しみにできる、この開放感。

最高じゃ。
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慰労会

2022年06月20日 14時35分09秒 | みりこんぐらし
先日、ユリ寺祭りの慰労会があった。

コメント欄でReiさんが、打ち上げの話を楽しみにしていると言ってくださったので

そのお気持ちに甘え、お話しさせていただこうと思う。


さて、慰労会のメンバーはユリちゃん、彼女の兄嫁さんとその娘

そしていつものマミちゃん、モンちゃん、私の合計6人。

ユリちゃんのご主人モクネン君から、我々料理番に金一封が出たということで

さっそくの女子会である。


兄嫁さん母娘は、初めての参加。

以前から我々の集まりに参加したいと言っていた兄嫁さんはともかく

娘のミクちゃんも来ると聞いて、「ホントかよ?」と思ったものだ。

若い娘がオバさんたちに混じって飲み食いなんて、何が楽しかろう。


ともあれ女子会の場所はユリちゃんの強い希望により、町内の小洒落たレストラン。

彼女の大好きな、こってりした横文字料理を出す店だ。

マミちゃん、モンちゃん、私は和食希望だけど

モクネン君からお金が出ているからには、ユリちゃんに従わざるを得ない。


同級生の女子会では、ほとんど私が予約係を引き受ける。

予約係だの幹事だのは、今まで数えきれないほどやってきたので慣れているが

この女子会に限っては、実のところイヤ。

たいていのことは受け入れ、楽しめるかどうかわからないけど

できるだけ楽しみたいという主義の私にも、嫌なことはあるのだ。

が、私以外は皆、現役で働いているので忙しい。

誰もやらないので私がやるしかなく、それが定着してしまった。


この女子会で予約係をするのが何で嫌かというと、プレッシャーとの戦いだから。

今までに何度か、やられているのだ。

何をって、ドタキャンだわさ。

だから気の小さい!私は、当日まで気が抜けない。


いっそ大人数ならどうってことないが、5〜6人という中途半端な人数だと

商売人のサガか、つい店側の迷惑を考えてしまう。

都会ならいざ知らず、我々が使うのは田舎の小店だ。

テーブルセッティングや仕入れの都合など

こっちが考えなくていいようなことまで、つい案じてしまうので

人数変更の電話をするより、欠席した人の分を自腹で払い

皆で食べてしまう方がよっぽど気が楽だ。

しかしそうすると他のメンバーが、騒ぐか引くのは明白。

私がこういうことについて異様にうるさいと知られたら

今後の付き合いに差し支えるので我慢している。

急な欠席の連絡に「了解!」で軽く済ませる私だが、心の方はメラメラなんじゃ。


で、ドタキャンだけど、これをやるのはけいちゃんとユリちゃん。

けいちゃんの方は人の世話をしたことが無いので、ドタキャンの迷惑を知らない。

「急に娘が来ることになったので、今夜は行けなくなりました」

「親の用事で…」、「今、姉が来ていて…」

家族の理由でいとも簡単に欠席するため、いつもヒヤヒヤしていたが

彼女は横浜へ行ってしまったので、もう心配は無い。


ユリちゃんの方はお寺の嫁だから、人の世話はプロみたいなもの。

だから友だち関係の集まりでは、あえて世話めいたことを避けるフシがある。

それはいいけどこの人、突発的な怪我が多いのだ。

「腕をガラスで切って縫ったから、車のハンドルが持てない」

「転んで右足を捻挫したので、今日はアクセルが踏めそうもない」

欠席の理由は壮絶である。


彼女だけは遠い市外在住なので、タクシーというわけにはいくまいし

何しろ怪我なんだから、ドタキャンを責めるつもりなど到底ありはしない。

しかし気位の高い選民なので、LINEで理由を述べる口上が気に食わん。


それはいつも、「悲しいお知らせがあります」で始まる。

事件?の状況説明、家族の冷たい反応を訴える話が長々と続いた後

「そういうわけで今日はお休みしますので、一人分キャンセルでお願いします」

決まってこれで終わる報告に、いちいちキー!と腹を立てなければならない。

明日のことは誰にもわからないので

次は自分がドタキャンする事態になるかもしれない。

それでも、“悲しいお知らせ”は違うだろ…そう思ってしまう。


これを何回かやられると

今まで、一度としてこのようなことが無かったマミちゃんとモンちゃんが

輝いて見えるというものだ。

マミちゃんは自分の親戚の店で女子会をやる時、予約係を交代してくれるし

モンちゃんは鎖骨が折れて日が浅くても来た。

彼女らも私と同じく商売人の娘なので、そこのところが分かり合えているように思う。


ともあれ今回の慰労会、長年の勘によれば、どうも悪い予感がする。

コース料理を頼んでおいて、ドタキャンは勘弁してもらいたい。

6人と言われたんだから6人で予約するしかないが

欠員が出るなら早目に連絡してくれれば…そう祈る私だった。


そして久しぶりの女子会が明日に迫った午後、ユリちゃんから電話があった。

「ミクちゃん(兄嫁さんの娘)が行けなくなったので、一人減らしてください。

それと来月、料理をしていただくのは5日になります」

話は早くも別件に移っとるし。


やっぱりね。

このメンバーには、無理があった。

酒好きのユリちゃんと兄嫁さんは、ミクちゃんに送迎させようとしたに違いない。

しかしミクちゃんは、それに納得しなかった。

説得を続けるも翻らないので、前日のキャンセルとなったのだ。

彼女らのこういう状況、今までに何度も見ているから間違いない。

が、目に入れても痛くない姪っ子について

よろしくないことをしゃべるわけにいかないユリちゃんは

事務的にサラッと流したと思われる。


ということでミクちゃんは欠席し、誰もミクちゃんのことには触れないまま

それなりに楽しい慰労会となった。

本当に久々のこってり料理は、美味しかった。


料理の一部







支払いの時、モクネン君からの金一封が1万円

祭りの実行委員会からの補助金が2万円で、合計3万円が出ていたことを知る。

税込6千円で飲み放題のコースだったため、支払いは5人でちょうど3万円ぴったり。

自腹で払う必要が無かったのは良かったのかもしれないが、タダ飯ほど恐ろしいものは無い。

我々は、ますますの労働を望まれるだろう。

こういうお金を飲み食いに使ってしまわず、コツコツ貯めれば

台所にエアコンが設置できるんじゃないのか…

暑い夏を前に、つい考えてしまう私だった。
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手抜き料理・定番の目論見・2

2022年06月14日 08時39分36秒 | 手抜き料理
祭りの人数も段取りもわからないままだったが

フタを開けて見ると、手伝いの人々は去年の倍の30人余り

複数人とだけ聞いていた大学生は、男女合わせて12〜3人はいただろうか。

つまり考えていたよりずっと多い人数だったものの

料理の方はそこそこうまくいったと思う。


オードブルの便利な点は、減った料理を次々に補充できるところ。

家でも食べられて値の張らないサラダや漬物は、なかなか減らないと決まっている。

減るのは動物性たんぱく質と、手のかかる揚げ物。

それらを一度に盛り付けてしまわず、舞台裏にキープしておくと

一つの団体が食べて減った部分に再度盛り付け直し

次の団体に出すという卑怯な手が使える。

カレーをメインにしたため、添え物扱いになったオードブルの減りは緩やかだったので

合間で米を炊き足す時間的な余裕もあり、バタバタしなくて済んだ。


早くから来ていた大学生に昼食を出すのが一段落し

我々裏方が昼食を摂っていると、りっくんからLINEが。

お茶の師範をやっている、同級生だ。

私は男とLINEはしないが、りっくんは中性なので許可した。


「今日はお祭りだよね、顔出してもいいかな?」

「どうぞ。カレー食べにおいで」

「了解!着物で行くよ」

「手伝ってもらうから、普段着で来て」

「わかった」


このやり取りを口頭で皆に披露していると、一緒に居たモクネン君が言った。

「この方、お茶の先生ですよね。

勤行の前にご本尊に献茶をしていただくというのはどうですか?」

「え〜?!すごく喜ぶと思います。是非お願いします」

で、りっくんに伝えたら、光栄だと大感激。

とりあえず普段着で来て、打ち合わせをすることになった。


「着物で行くとおっしゃるからには、お茶のことを広めたい気持ちがあると思います。

ささやかなチャンスになればと」

モクネン君は後で言った。

ユリちゃんには冷酷な彼だが、こういう配慮に優れた面があり

そこが檀家や同業者の尊敬を集めているのだ。


りっくんはすぐに来て、初対面のモクネン君にご挨拶。

献茶は初めてだそうで、モクネン君から親切に手順を教えてもらい

その後、カレーを食べた。


食べ終わるのを待って、私は彼に炭火をおこさせる。

献茶も初めてだが、炭火をおこすのも初めてだそう。

が、着火剤のおかげで炭には難なく火がつき

私は無事に鶏の山賊焼を制作することができた。

炭火おこすの、かったるいのよねん。


やがてりっくんは一旦帰宅して着物に着替えると、お茶道具を持参して再訪。

「そうですね…お茶碗は夏らしい雰囲気のものが良いでしょう」

モクネン君のアドバイスを受けた彼は、薄手の青磁を持って来た。


献茶は、午後4時から始まる勤行の前に行なわれ

彼は緊張した面持ちで儀式を終えた。

そしてそのまま大学生に混じり、夜9時の打ち上げまで居たが

持ち前の人懐こさですっかり人気者になっていた。


それはいい、それはいいのよ。

が、この男、台所に来て言うではないか。

「昼のカレーは米が硬かったな。

ご飯の量も多過ぎた。

もっと柔らかく炊いたご飯をほんの少し、というのが上品でええな」


なに?こいつ?腹立つわ〜。

先月のお茶席に行った後、こいつから礼状が届いたけど

12円だか13円だかの料金不足だった。

繊細クンなので気にするだろうから黙っていたというのに、こいつときたら。

若いモンにチヤホヤされて興に乗り、食通を気取って余計なことを口走る…

腐ったオジン丸出しじゃんか。


昔、OLだった頃にも似たようなことがあった。

相手は姫路出身の男の子。

ある日、仕事上の必要にかられ、私は社内でおむすびを作る状況になった。

そしたら、そいつが後で言ったではないの。

「おむすびの塩が効いてなかった。

塩の中へおむすびをぶち込むぐらいのつもりで握らんとな」


所長に頼まれたとはいえ、炊飯器の無い事務所で米を炊けるのは私しかいなかった。

善意で取り組んだにもかかわらず、食通を気取ってケチをつけるので

私は頭にきたものだ。

「山ほど食べといて、いまさら何をほざく。

嫌なら一個でやめときゃよかったんだ」


するとヤツは平然と言ったね。

「まずい物はまずいと、本人にはっきり言うてあげるのが本当の親切やって

お母ちゃんから教えられてんねん、ボク」

「やかましい、このマザコンが」

「自分の作った物がマズいって知らんまま、一生を送る方が不幸やんか」

「いずれ結婚したら、自分の女房に言って捨てられろ」


今思い出しても、腹立つわ〜!

まずい物はまずいと教えてあげるのが本当の親切…

理屈ではそうかもしれないけど、人の好みはそれぞれ違う。

行きずりで口にする食べ物まで自分色に染めたがる習慣こそ、不幸ではないのか。

おむすびを作ったのが、すっごく偉い人でも塩が効いてないと言えるのか。

すっごく偉い人がおむすびをくれるかどうかは知らないが、言えはすまい。

相手を見て言ってるのが、さらに腹立つわ〜!



さて、カレーとご飯の関係について、さんざんウンチクをたれたりっくんだったが

打ち上げが終わると、あれもこれもと残り物を詰めたパックをごっそり抱え

嬉しそうに帰って行った。

一人暮らしだと、一品でも多く欲しくなるものよね。

荷物の中にはもちろんカレーも

そして硬いと文句を言ったカレーの残りご飯を握ったおむすびも入っている。


大人数の食事なんか作ったことないから

一人一人の好みに合わせてるわけにいかないなんて、わからないわよね。

カレーだから、ご飯を硬めに炊いたことも知らないだろうし

ご飯が多ければ潔く残すか、カレールーを足せばいいことよ。

祭りはまだ序の口、打ち上げまでに足りなくなったら困るもんで

カレールーを早い時間から、みんなにザブザブとかけまくるわけにいかないのよ。

そもそも誰の善意で献茶の栄誉に浴し、さらにタダメシまでありつけたっちゅうねん。

ま、炭火おこしてくれたから許そう。


こうして祭りは終わったが、今年は皆さん、料理にひどくお喜びだった。

毎年手伝う人たちも、去年とは全く違う反応。

先にカレーでお腹を満たしたのが、満足感につながったと思う。

来年からは、カレーとオードブルを定番にしようと誓った。


そうそう、モクネン君もかなり嬉しかったらしく、彼から我々女子に金一封が出た。

後日、行うであろう慰労会の足しにしてくださいということだった。

努力が報われたようで嬉しいけど、近日開催予定のその慰労会に

ユリちゃんの兄嫁さんとその娘も参加するという。

金一封の喜びを分かち合うつもりらしい。


決して嫌ではないけど、そうなると同級生5人会の女子会ではなくなる。

主催者とその身内、そして我々使用人の会合じゃん。

人数が増えて強気になった彼女らから、積年の苦労話を聞かされるのは決定事項。

なんだか釈然としないが、あきらめよう。



さてと、定番つながりでお祭りの時にマミちゃんに教えてもらい

私がこの夏、定番にしようと決めた感動の一品をご紹介したい。

クラシルというアプリに出ているそうだけど

マミちゃんから教わった方がわかりやすかった。


『キャベツの豚肉巻き・レンジ蒸し』



①豚バラ肉の薄切りを長い物は半分に切って3枚程度、まな板に並べ塩コショウ

②千切りにして水を切ったキャベツをひとかたまり、豚バラの上に縦に並べ

テキトーに巻く

③キャベツを巻いてロール状になった肉の終わりの部分を上にして、皿に並べる

④軽くラップをかけたらレンジでチン…肉巻きの数にもよるけど3分ぐらい

出来上がりは肉がきっちりと締まって、バラバラにならない。

⑤白ネギ、またはネギとミョウガのみじん切り

すりおろしたニンニクとショウガ

醤油、酢、砂糖を合わせたタレをかける


何といってもフライパンや火を使わず手軽にできるので、夏に最適。

こんなに簡単で、野菜が食べられ、味もけっこう美味しくて

ちゃんと一品になるところが気に入っている。

中に巻く生の野菜はキャベツでなくても、ネギ、豆苗、水菜などでもいい。

中途半端に持て余している野菜の処分にぴったり。


下は水菜バージョン。



タレを作るのが面倒であれば、ポン酢でもいい。

酸味が嫌な人は、ポン酢にミリンを少し加えるとまろやかになる。

今年の夏、我が家ではたびたび登場しそうだ。
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手抜き料理・定番の目論見

2022年06月12日 08時12分38秒 | 手抜き料理
先週、いつもお馴染み同級生ユリちゃんの実家のお寺で

年に一度のお祭りがあった。

祭りの形態はコロナ禍により、去年と同じ分散方式。

一般の祭り客はシャットアウトし、檀家と手伝いの人

それに歌や演奏を披露する人たちとその関係者を時間差で呼ぶのだ。


去年の分散方式は、そりゃもうくたびれた。

ユリちゃんたちも初めての形だったし

我々も分散がどんなものかを知らずに臨んだので、現場は混乱した。

次から次へ食事、お茶、おやつを出し続け、準備と後片付けで台所は修羅場。

同級生の料理番、マミちゃん、モンちゃん、私の3人は

寺で地獄を見たものである。

座る暇すら無かった、あの悪夢はもうごめんだ。

今年はもっと計画的にするもんね…私は心に誓った。


が、祭りが近づくと計画どころの騒ぎじゃない。

寺はとっても不穏な空気よ。

祭りに向け、数回にわたって行われる実行委員会のミーティングに

ユリちゃんと兄嫁さんが参加できなかったため

彼女らは祭りの日時以外、何も知らないまま当日を迎えたからだ。


なぜミーティングに参加できなかったかというと

ユリちゃんの旦那モクネン君が、ミーティングの日時をわざと教えなかったから。

モクネン流のイケズである。

ユリちゃんの夫婦仲は年々順調に悪化しているが、とうとうここまで来たようだ。

そのためユリちゃんは旦那の仕打ちを嘆きつつ

手探りで祭りの準備をしなければならなかった。


およその人数や段取りなどの情報がゼロなので、我々の把握する事柄はほとんど無い。

ユリちゃんが小耳に挟んだところによれば

人数は不明だが、複数の大学生が手伝いに来るらしいという話だ。

他には先月のお寺料理の際、モクネン君が私に鶏の山賊焼きをリクエストしたことぐらい。


が、情報が少ないからと、ひるむ私ではない。

去年もやったし、さほど大きな寺でもなし、聞いて何になる。

大学生が来る=食う

山賊焼き=炭を使わせるからには少人数ではない

これで十分だ。


どの団体は食べずに帰ります…

どの団体は夜だけ召し上がってお帰りです…

この団体とあの団体は、夜と打ち上げの二食です…

それぞれの人数は何人…お出しする時間はいつ頃…

なんて、ユリちゃんからしょうもないことを聞いたところで何の参考にもならん。

料理がタダで食べられると聞けば、なぜか皆さんの予定は変わりなさって

たまげるほど人が増えるものよ。

特に、あの寺はそうだ。

たくさん用意すればいいことである。


私には秘策があった。

カレーじゃ。


去年、ユリちゃんの兄嫁さんが檀家と我々の昼食用にと

カレーをたくさん作ってくれていた。

檀家と我々だけなので尋常でない量が余ったが、あれはもったいなかった。

「これは身内用で、お客様に出す予定で作ってないから」

と謙遜だか、日頃からカレー反対派のユリちゃんを慮ってだか

兄嫁さんに釘を刺されたので、みすみす少人数にしか与えなかったのは

あまりにも残念だった。

カレーの大鍋を横目に、大量のオードブルやおむすびを作る虚しさよ。


今年はカレーを本線に、オードブルとおむすびをサイドメニューにして

昼食、夕食、打ち上げの三食をこなすんじゃ。

さすればカレーで腹を満たせるため

狂ったようにオードブルやおむすびを作らなくても3人で回せるはず。

これがうまく行けば、来年からカレーを定番にして、オードブルも同じ物にするつもり。

人数とメニューを考えなくていいとなれば、ずいぶんと気が楽だ。


食べ慣れたカレーでなく、人の作った珍しいおかずがあれこれ並ぶのを好むユリちゃんは

この案にわずかな難色を示したが

私は人数や段取りがわからないという理由をつけて押し切った。


で、今回のメニュー。

まずカレー。

マミちゃんが作りたがっていたが、分量がわからないと言うので

今年はとりあえず私が作った。




これ、直径50センチぐらいの鍋。

カレールーは、ハウスジャワカレーの業務用。

ジャワカレーの業務用大箱には、甘口辛口の区別が無いが

家でも使っていて、そこそこ辛いので採用。

ひと箱で40皿できると表示してあるやつをひと箱半、使った。

マミちゃんが、コロッケ作りで余ったと言って

味付け済みの合挽きとタマネギを持って来ていたので、それも全部つっこんだ。


カレーは大量に作ると野菜の甘みが容赦なく出て、どうしても甘くなる。

来年はもっと辛口のカレールーを使うか、カレー粉を足して調節しようと思った。

ご飯は、少なめに盛り付ける予定で2升炊いた。

自分で作ったため、味は家で食べるのと同じでちっとも面白くなかった。


カレーの盛り付けは白い円形の紙皿に、マミちゃんが例のごとく

可愛いホイルカップに入れた野菜サラダや福神漬けを飾って美しく仕上げてくれたが

写真を撮る暇が無くて残念だった。


オードブルのコロッケ、作成中。


コロッケはユリちゃんのこだわりが強いので、はずせないのだ。

子供の頃から、お祭りには買ったコロッケを出す習慣だったそう。

うちらが料理番になるまでは、彼女が肉屋さんに予約注文したコロッケが並んでいた。

そっちの方がよっぽど美味しかったが、うちらにやらせたら安くつく。


とはいえ今、ジャガイモが高い。

困ったね、と言っていたら直前になって、マミちゃんの店のお客さんがひと箱くれた。

マミちゃんの人徳か仏の慈悲か、それをコロッケとカレーに使うことができた。


コロッケはマミちゃんが家でタネを作り

モンちゃんがお寺で成形してマミちゃんが揚げた。

マミちゃんが独断でカレーコロッケにしていたので

「カレーライスに、カレーコロッケかよ」

と密かに思ったが、食べてみるとカレー味というよりエスニック調になっていて

オツな味わい。

どうやら中に入れられたコーンがカレー粉のカドを和らげ、国籍不明にしたらしい。


できあがったオードブル。




マミちゃんのコロッケとサラダ、私の海老パン…ほぼ去年と同じだ。

それからモクネン君のリクエスト、鶏の山賊焼き。

山賊焼きは炭火を起こし、台所の裏庭で焼いた。


兄嫁さんには、恒例のナスバンジャンを作ってもらった。

揚げたナスを、豆板醤入りの甘酸っぱいタレに漬けるものだ。

彼女のナスバンジャンは毎年大人気で、今年もこの味に魅せられた女子大生が

メモを片手にレシピを聞きに来た。


奥にある鯛は、鯛そうめんにするつもりで錦糸卵や椎茸煮と共に持って行った。

山賊焼きのついでに炭火で焼きはしたものの、表向きは時間が無くて…

本当はかったるくなって、マミちゃんとモンちゃんの土産にした。

《続く》
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現場はいま…しばしの平和か・6

2022年06月09日 08時57分00秒 | シリーズ・現場はいま…
シュウちゃんに退職の告知をするという辛い作業を済ませた同じ日

夫と息子たちは次の運転手を決めることにした。

早くしないと本社がハローワークに募集を出し

募集を見た、わけわからん人が来てしまう。

わけわからん皆さんは、面接で立派なことをおっしゃるけど

本人が申告するほどのレベルは、まず期待できない。

良いダンプドライバーは利益を生む貴重な存在なので、普段から噂の的だ。

どの会社も欲しがっているため、たとえ無職になっても放っておかれることは無い。

わざわざハローワークで仕事を探さなくてもいいはずなのである。


とはいえ求職の権利は誰にもあるので、応募があれば面接をしなければならない。

面接となると、本社から暇なのがゾロゾロと張り切ってやって来る。

アレらは、自分が威張れる面接が大好きなのだ。

よその会社で面接を受けたら真っ先に落とされそうなのが

ふんぞり返って面接をする滑稽な図が展開される。


夫も面接には立ち会うが、一切の意見を言わないことにしている。

そもそも募集したって、わけわからんのしか来ないのに

ヘタに意見を言うと怪我の元。

わけわからんのは、必ずとんでもないことをやらかすものだ。

案の定、入社してから何かやらかすと、監督不行き届きだの

育てようとする意思が無いだのと、全てを夫のせいされるからだ。

何も言いさえしなければ、「決めたのはあんたらじゃん」

と反論できることを数々の苦い体験で学習した夫は、面接そのものが無駄だと思っている。

よって面接祭が始まらないうちに、シュウちゃんの後任を決めたがっていた。


後任の決定を急ぐ理由は、他にもあった。

別の支社で持て余している職場のお荷物を、親切ごかしに回される恐れだ。

「ダンプの経験は無いけど、大型免許は持ってるそうだから…」

いかにも助けてやるという口調で押し付けられそうになったことが

一度や二度ではない。

その都度からくも回避してきたが、このやり取りも時間の無駄である。

よそでいらない人は、うちでもいらない。

姥捨山じゃないっちゅうんじゃ。


加えて現在、もう一つの問題が生じている。

うちで唯一の女性運転手、ヒロミじゃ。

彼女は、前の職場で同僚だったムッちゃんという50代の女を

以前から入社させたがっていた。

「シュウちゃんが引退したら、ムッちゃんを入れて!」

シュウちゃんの社会人生命が長くないと考え、日頃から熱心におねだりをしているのだ。


ムッちゃんもヒロミから各種の待遇を聞いて、こちらへ転職したくなり

早くも社員気取りだ。

この頃はうちの仕事について、生意気にもヒロミを中継役に口まで出す始末。

「ムッちゃんがこう言ってたよ」

「こうした方がいいんじゃないかって、ムッちゃんが…」

アホのヒロミが皆に伝えては、無線でボコボコに怒鳴られている。


そういうわけで、ヒロミがシュウちゃんの退職を知ってしまったら

いよいよムッちゃんの入社が叶うと踏んで、燃えるのは明らか。

舞い上がってめんどくさいじゃないか。


お友だちと連れ立ってダンプを転がしゃ、そりゃ楽しかろうが

ここはあいつらの会社じゃない。

人事に口出しができる身の上ではないということが、あの子らにはわからないのだ。

バカにつける薬は無いらしいが、愚かな女につける薬も無い。

そのためシュウちゃんの退職が拡散しないうちに、全てを終わらせておきたいのだった。



夫と息子たちはさっそく、順番待ちをしている3人の中から1人を決める作業に入る。

短い話し合いが持たれ、全員一致でマルさんと呼ばれる50代の男性に決まった。

この人は、あの藤村と癒着していたM社の社員。

藤村が居た頃のM社は、社長も運転手もヤツに迎合し

我が物顔に振る舞っていたが、彼一人だけは違っていた。

夫やうちの社員に礼儀正しく、裏表が無く、キビキビとよく働くので

夫は気に入っていたのだ。


マルさんは当時から、夫や息子たちと一緒に働きたいと言っていた。

だからヒロミだったか、数日で辞めて本社へ乗り込んだ男だったかが入る前に

一応、声をかけたが、彼は辞退した。

「藤村がいると必ず暴力事件になるので、皆さんに迷惑をかけてしまうから」

鉄火肌の彼らしい理由からである。

その頃の藤村は労基の罰則が確定していなかったため

うちでまだウロチョロしていたのだ。


その時、ヤツがいなくなったら是非、という話になっていた。

鉄火肌が是非と言ったら、その場しのぎではなく本気の是非。

そしてヤツはいなくなり、欠員が出た。

機は熟したのである。


次男がすぐマルさんに電話したら、「行きます!」と即答。

M社にはその日のうちに、6月いっぱいで退職することを伝えた。


これは実質、引き抜きということになる。

M社から抗議があれば、藤村時代の恨みもあって戦うつもりでいた夫だが

マルさんにとっての退職は、それ以前の問題だった。

藤村がいなくなって以来、M社は仕事が激減していて

マルさんが言うには、正月休みのあった1月は給料が7万だったそうだ。

日給月給だと、どうしてもそうなる。

生活して行けないと言えば、誰にも止められない。


次男はすぐ、河野常務にも連絡した。

「M社のマルさんを引っ張ろうかと話しているんですが」

「あそこに一人、ええ運転手がおるのは親父から聞いとる。絶対引き抜け」

すでに引き抜いているが、ハイ、必ずと言って花を持たせる。

こうしておけば、常務の主導で引き抜いたことになるので

あとあとマルさんも可愛がられるはずだ。


こうしてマルさんの入社は決まった。

シュウちゃんが入社した7年前以降、新人は不作続きだったが

ようやくまともな人が来てくれそうで、ホッとしている。


ヒロミ?

シュウちゃんの退職を知って有頂天。

いよいよムッちゃんの入社が実現すると思い込み、次男にそれとなく面接の日取りをたずねていた。

この子は夫と長男が怖いので、何でも次男だ。

ムッちゃんの方もすっかり勘違いして、会社に退職の意思を伝えたという。


そんな先日、ヒロミは事務所にあったマルさんの履歴書を発見。

「ねえ、どういうこと?ムッちゃんはどうなるん?」

会社で聞き回っていたそうだが、誰も取り合わなかった。

ヒロミとムッちゃんの友情は存続するのだろうか。

うっとおしい女どもの仲を裂くため、迅速かつ秘密裏に次の運転手を決めたことは内緒である。

《完》
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現場はいま…しばしの平和か・5

2022年06月07日 10時29分28秒 | シリーズ・現場はいま…
最年長の社員、シュウちゃんが辞める…

これは我々にとって非常に残念な出来事である。

無事故無違反の働き者で、常に明るく社員を引っ張ってくれる彼には

永遠に来てもらいたかったし、彼も続けるつもりだった。

だが問題は、7月で75才になるシュウちゃんの年齢。


本社には元々、70才以上の高齢者を雇わないという方針があり

役員だけはこの方針から除外されるが

他の人たちはそれに従って退職する決まりになっている。

が、シュウちゃんだけは特例。

彼が息子たちのスカウトで入社した時には、すでに68才だった。

若い運転手が来るまでの繋ぎとして、2年をメドに採用したが

我が社を担当する河野常務が、運転手としての優秀性を認めていたからである。


常務はたまにしか来ないし、来ても夫と話すだけですぐ帰る。

運転手と接触することはほとんど無く、各自の仕事ぶりを目にする機会も無い。

が、日々の売り上げデータや請求書に必ず目を通している。

現場で一緒に仕事をしなくても書類や画面で…いや、書類や画面だからこそ

相手の印象に惑わされることなく様々なことがわかるというのは

私も経験しているが、確かにあるのだ。


常務は、誰の車両に支払いがいくら発生したかをあまねく把握していて

それによるとシュウちゃんのダンプは修理の請求がほとんど無い。

車検や点検は皆と同じだが、ちょっとぶつけた…ちょっとかすった…

などの細かい修理が滅多に発生しないのだ。

ぶつける時は誰でもぶつけるし、起きたことは仕方がないという大前提はあるものの

凡ミスで余計な経費を使わない運転手は、そのまま運転技術が高いということになる。


もちろん、高齢の彼を厄介な現場へ行かせないよう

息子たちがカバーしているという実態もあるにはある。

しかしそれを差し引いても、シュウちゃんの優秀性が変わるものではない。

楽な現場へ行ったって、ぶつける人はぶつける。

特に加齢で視力が衰えると、あちこちぶつけるようになる。

視力が衰えると、感覚が狂うからだ。

修理が頻発すると高齢の運転手は自信を失い、それを機に引退するものだが

視力が現役バリバリのシュウちゃんには、誰も引退の必要性を感じなかった。


他にもシュウちゃんの優秀性を証明するデータはある。

売り上げ伝票、出勤簿、タコメーター、運転日報その他…

これらを照らし合わせたら、運転手一人一人の働き方や心がけは一目瞭然。

例えば我が社の誇る筋金入りの怠け者、佐藤君のものと比較した場合

暇な時期には張り切って出勤し、忙しくなると何だかんだ理由をつけて休む彼と

月に一度、奥さんを病院に連れて行く以外は休まないシュウちゃんとでは

年間の売り上げに大差が出ている。


誰のダンプがどれだけ稼ぎ、修理や経費でいくらマイナスになるか…

もちろん数字が全てではないが、運転手の良し悪しは数字にちゃんと現れる。

人を見る目なんてあやふやなものより、数字の方が正確かもしれない。


そんなわけで常務も我々も、シュウちゃんにはずっと勤めてもらいたかった。

しかし、高齢者の起こす交通事故が社会現象となった昨今

事故の規模が大きくなりがちな大型車両の運転手に

高齢者を雇うのは非常識という風潮が業界に浸透しつつある。

常務は、シュウちゃんの年令を気にせざるを得なくなった。


心配なのは事故だけではない。

彼が仕事中に倒れでもしたら、労災だ。

後期高齢者を現役と同じに働かせていたとなると

責任の所在はうちだけでなく本社にも及ぶ。

いくらスーパー爺ちゃんでも、明日の保証は無い。

よってシュウちゃんには、後期高齢者未満の74才のうちに

退職してもらうことが決まったのである。


常務からその件を内々に告げられた夫は、もちろん継続雇用を求めた。

しかしそれは、シュウちゃんに対するせめてもの誠意に過ぎなかった。

室内の仕事ではなく公道を走るのだから

何かあったらゴメンでは済まないのが運転手という仕事だ。

この5月から後期高齢者の免許更新制度が変わり、多少難しくもなった。

「今回は更新できませんでした、明日から働けません」

急にそんなことになっても困る。

会社は、人情だけでは回らない。

シュウちゃんの退職は、どうにもならないことだった。


爽やかな五月晴れの日。

天気とは裏腹の重い心で、夫はシュウちゃんに退職の件を話した。

最初は驚いて嫌がったシュウちゃんだが

「力及ばず、本当にすまない」

夫が謝ると納得してくれたという。

夫の交渉と常務の温情により、シュウちゃんには手厚い退職一時金が支払われる。


けれども淋しさに打ちひしがれてはいられない。

急いで新しい運転手を決めなければならなかった。

探すのではない。

うちに入りたいと、よそで働きながら順番待ちをしている人が何人かいる。

その中から決めるのだ。


うちは、この業界では珍しい月給制。

これは、本社と合併する時に私が主張した条件の一つである。

本社の経理部長だったダイちゃんの宗教勧誘を断った際

報復のつもりだったのだろう…

「上に働きかけて日給制に変える」とさんざん言われたが

やれるもんならやってみぃ、拍手したるわい…

と思い、無視したまま現在に至っている。


ともあれダンプの運転手の多くは日給月給で

忙しい時は給料がそこそこあるが、暇な時は目も当てられない。

さらに盆正月、ゴールデンウィークなどの休みが続く時や

雨降りが多い時は出勤が無いので給料が少なく、文字通りの日干しだ。


その点、月給制はボーナスもあり、収入が安定している。

その割に仕事が楽な所が人気で、高望みさえしなければ

仕事を長く続けられる良い職場なのだ。

そのため、順番待ちが出ているのだった。

《続く》
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現場はいま…しばしの平和か・4

2022年06月03日 21時12分20秒 | シリーズ・現場はいま…
F社長の話が出たので、しばらく前からテーマの一つとなっている

F工業への転職話にも触れておこう。

あの話は、まだ生きている。

一時は今日明日にも転職しそうな夫と息子たちだったが、最近は落ち着いた。

その余裕は、河野常務が元気を取り戻したことに由来する。


永井部長が次男に「辞めてもらってかまわない」と言った時は黙認した彼だが

今になって反省しているらしく、次男に「辞めてくれるな」と言うようになった。

それで次男の方もひとまず気が済んだようだが

辞めるな、辞めるなと度々言うところを見ると

早耳の常務には転職の話が聞こえているのかもしれない。


その転職について、私は依然としてこれといった意見を言ってない。

実際に働くのは彼らなので、気軽に言えないからだ。

仕事のことを何も知らない変なヤツらに

好き放題される彼らの苦しみを見てきた身としては、止める気は無い。

年寄りの夫はどう転んだって社会人生活の終わりが見えているし

息子たちは独身なので、妻子のことを考える必要が無い。

たった一度の人生なんだから、好きにすればいいと思っている。


が、あちこちの職場で様々な仕事をしてきた私は

彼らより転職のリスクを知っているつもりだ。

今は創業者の一族ということで、本社からある程度は優遇されているが

よそへ行ったら新人のペーペー、ただのヒト。

向こうの人々には普通のことでも

彼らにとっては厳しい現実と感じる事柄がたくさんあると思う。


例えば新人は、古いダンプをあてがわれるのが業界の常識。

走行距離が何十万キロの古いダンプは故障しやすく

冷暖房は効かず、クッションは悪く、ハンドルが曲がっているなんてザラだ。

新車を与えられ、撫でさするように愛情をかけてきた息子たちにとって

それが嬉しいとは思えない。

夫の扱う重機だって、今のように重機のトップメーカー

コマツ製の最新型とはいかないだろう。


F社長は業界でも稀な好人物で、行けば良くしてくれるのはわかっている。

転職という思いもよらない選択肢を与えてくれ

夫や息子たちを絶望から救ってくれたことにも心から感謝している。

しかし彼の会社はすごい勢いで規模拡大中とはいえ

本社の年商にまだまだケタが届かない。

大きい所から小さい所へ変わるとは、やる仕事は同じでも商売道具からして違うということだ。

今度は変な人たちでなく、変な乗り物に消耗する可能性だってある。

そういう現実的なことは行ってみなければわからないだろうが、行ってからでは遅い。

その辺のことをもっと考えてから、結論を出してもらいたいと思っている。



さて、永井部長はD産業にせっつかれて困っている…

田辺君の報告でそのことを知った夫。

永井部長の言う通り、D産業から1台だけチャーターを入れることにした。


え〜?藤村が左遷された時、D産業も切ったのに、何でまた?…

ここは断固拒否じゃないの?…

永井部長の願いをはねつけ、彼を絶望の淵に追いやる方が胸がすくだろうに…

普通はそう思うだろう。

が、夫は涼しい顔で言う。

「1台でもいいと言われたから、1台だけ入れる」


夫はこの業界が長い。

女房の立場や心情には無関心だが、仕事で関わる他人の立場や心情は

おそらく周囲の誰よりも知ってる。

永井部長に金を出したD産業は、いっこうに見返りが無いので

かなり焦っているはずだ。

そこへちょっとだけ仕事を振る。

D産業はいよいよ専属契約の第一歩だと思い込み

最初は1台でも、ほどなく2台、3台と増えていくに違いないと踏む。

けれども片足で一歩踏み出したまま、それっきりの宙ぶらりんであれば

D社長はどんな気持ちか。


砂漠で喉の乾きに苦しむ旅人に水を一滴だけ与えると

乾きはますますひどくなるものだ。

D社長は以前より、もっと不満を持つ。

その不満は怒りとなって、永井部長に向けられる。

夫はこれを楽しみにしているのだった。


D社長に責められた永井部長がまた何か言ってきたら、夫はこう言えばいい。

「1台と言われたから、1台入れた」

日頃、彼にはバカにされているのだから、こういう時はとことんバカになりきるのである。


D産業からチャーターを1台だけ入れ始めて1週間が経った頃

ちょうど暇な時期が訪れた。

暇な時は自社のダンプだけで間に合うため、チャーターを呼ぶ必要は無い。

夫は、このような仕事の波も計算に入れていた。


暇な時期は10日ほど続き、それが終わると再び忙しくなったが

D産業はそのまま来なくなった。

誰も呼ばないし、向こうからも来ない。

それっきり、D産業のことは忘却のかなた。

D産業と永井部長の間では色々あったかもしれないが

どっちも何も言ってこないので、そのままだ。


確認はしてないが、この現象もまた、河野常務の復活に関係していると察する。

常務の目が再び光り始めたので、永井部長は勝手なことがしにくくなったのだ。

ひとまずは小さな嵐が過ぎ去り、ホッとしている私である。


が、一難去ってまた一難。

最年長の社員、シュウちゃんが6月いっぱいで退職する。

永井部長なんかより、こっちの方がよっぽどショックだ。

とはいえ会社は生き物。

色々なことが次々に起こる。

それが会社というものであり、それが無ければ会社ではない。

《続く》
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