少し前の記事、『名古屋場所』のコメント欄で
つけもりさんと、大柄女性のファッションについて話した。
>オフィシャルな場で、女性らしく品もあり
>でもモサくならない着こなしに悩んでいます。
…つけもりさんはおっしゃる。
大柄族の一味である私にとっても、これは永遠の課題。
普段着ならいざ知らず、オフィシャルな場では
女性らしく品もあり、でもモサくならない着こなしを
常に心掛けている。
心掛けているからといって課題をクリアしているかは疑問だが
本人だけはそのつもり。
中でも大柄族が最も回避したいのは、「モサい」という状況。
モサいとは、モッサリして見えることを指す。
長身で肉厚な大柄族は、ごく若いうちから老けて見られやすい。
その原因は細い首や肩、くびれたウエストなど
女性特有の可憐や華奢を表現する部分が見当たらないためだ。
風雲幾星霜を乗り越えた、強くたくましい印象を与えてしまい
つまるところ、それがオバサンぽい。
そして大柄族はかさばる。
立っても座っても大きいという印象はぬぐえず
こっちは遠慮しいしいでも、はた目にはそう見えない。
オバサンぽくてかさばる…それがモサいの素である。
身体が大きいので、衣類の分量も多くなる。
上下同じ色の物、つまりスーツやアンサンブルを着たら
ますます大きく見えてしまい、モサさはバージョンアップ。
きちんとした場所、つまりオフィシャルは大柄族にとって鬼門だ。
きちんとした場所できちんとすべく、大柄族は努力を試みるが
そもそも大柄族に合う服が少ない。
普通サイズでは小さく、肥満サイズだとブカブカ。
長身、肉厚、長い手足の大柄族は、日本の衣料界において規格外なので
流通する洋服の絶対数が少ないのだ。
少ない中から、まず入るものを選別する。
次に袖丈やスソが短くないものを選別すると、残りはごくわずか。
それからやっと色やデザインの検討。
好きだの嫌いだのと、選り好みできる身の上ではないのだ。
しかしそこで妥協すると、問題は振り出しに戻ってしまう。
オバサン問題である。
ゆったりだの大きめだのという服は、たいていオバサン風。
ババアはこれでも着とけ!とばかりに
色が地味で、腕回りや胸周り、腰回りが大きめに作ってあるので
ただでさえかさばるというのに、ますます大きくかさばって見える。
オバサンぽいのと、かさばりを避けたかったはずが
結局は堂々巡りというわけだ。
このジレンマを分かち合える同志が現れて嬉しいので
田舎のオバサンである私なりの大柄対策を話したくなった。
な~んてえらそうに言ってるけど
実は私、洋服に関してさほどの苦労はしていない。
なぜなら20代の若かりし頃より
「ワールド」という神戸の国産メーカーの
大柄族御用達ブランドを愛用していたからである。
自分で探したのではない。
よく行く町内の洋品店が、たまたま扱っていたのだ。
このメーカーにあるコルディアというブランドは
ちょっと大きめの女のために作られている。
コルディアは最初の頃、「ワールド・コーディネート」という名前だった。
その名の通り、コーディネート商法と呼ばれていて
同じ素材を使った色違い、デザイン違いの商品が何種類もあり
店員が組み合わせてくれた上着、インナー、ボトムを身にまとえば
それなりに着こなせるシステム。
やがて町内にもう一つ、同じワールドのリニアという
クィーンサイズを扱う店ができた。
このリニアの一番小さいサイズが、私にはピッタリ。
同じ店に、やはりワールドのウナパルテという
生地や染色に凝ったブランドが置かれるようになった。
こっちも大きめサイズ。
私は中高年向きのコルディアや、色が地味なリニアより
華やかなモード系のウナパルテが好みだった。
町内でワールドを扱う店は他にもあった。
ルイ・シャンタン、ビルダジュールなどのブランド名で
おしゃれな物が揃っていたが
これらは普通サイズなので、私には太刀打ちできなかった。
大柄族御用達のコルディア、リニア、ウナパルテは
Tシャツの普段着からスーツやコートまで種類が豊富。
型紙からして大柄族を研究してあり、着心地が抜群で細く見えた。
縫製技術が素晴らしく、ニットも布も肌ざわりが良く
私好みのシックなデザインなのも気に入っていた。
難点を挙げるとすれば、田舎主婦にとっては少々高いこと。
よって、セールの時にまとめ買いをしたものだ。
ワールドのデッカちゃん用ブランドさえ着ていれば
何とかなるので、私は安心しきっていた。
冒険より安定を選んだ不甲斐ない私は
センスを磨くなんて微塵も考えないまま、年ふりたのである。
ところが15年ほど前だったか
お気に入りのリニア、ウナパルテを扱う店が閉店。
続いて数年前、コルディアを置く店も廃業。
知らない町の知らない店へ行ってまで
安くない買い物をする気にはならず、私は頼りのワールドと決別した。
以後は自力で調達している。
集合写真を撮ったら、人間の中にドラえもんが一匹…
誰かと思えば自分だった…なんて失敗も時にはあるけど
ワールド時代の記憶をなぞっていれば、及第点は取れる。
その記憶によると、大柄族が最も留意すべき点は「襟」。
丸首や、立ち上がってない大きめの襟は大柄族に似合わない。
フード付きも、ますますかさばって見えるので、よした方がいい。
デコルテの美しい人なら、いっそ胸元を大きく開けたものも良かろうが
大柄な女性って、私を含め鎖骨が目立たない。
こういうタイプは胸を開けたら、ダボシャツを着た寅さん状態になる。
これらを消去法で無くすと
チャイナカラー、小さめのシャツカラー、Vネック、ショールカラー
前身頃が着物のように打ち合わせになったカシュクールなどが残留。
襟さえ似合っていれば、多少は見られるものだ。
しかし個人的見解と周囲の反応によれば
大柄族に最も似合う襟は、これだと思っている。
下の絵の右側。
開いた襟ぐりから、襟が立ち上がっているのが
おわかりいただけるだろうか。
人の目というのは、襟が始まっている部分から内側を首
襟から腕までを肩と思い込む習性がある。
よって肩幅が狭く見えるため、全体的に細く見える。
頑丈な首は、ネックレスで引き締めるのがコツ。
左側の絵は、大柄族にとってポピュラーなデザインの服。
大柄用のスーツといったら
たいていこんなのしか売ってないので描いてみた。
けれども大柄族がモサくなく見える最も簡単な技は
実のところ、着る物よりも髪である。
ヘアスタイルはショートでもロングでも、何でもいい。
意識して、頭頂部を高くすることだ。
頭頂部を盛り上げると、たいていの衣類は着こなせる。
上の絵の左側をごらんいただきたい。
これはこれで、人によっては素朴な感じが好ましいかもしれないが
大柄族に最も合わない印象は、素朴方面である。
スポーツ選手でなければ、ただ大きいだけの女の人になってしまう。
大柄族はゴージャスが身上。
これに反すれば反するほど、モサ方面へ向かう。
オバサンと呼ばれる年齢になって頭頂部がぺちゃんこなのは
モサさの素なので描いてみた。
大柄族は、これ以上長身に見えなくてもいいという概念があるため
小柄な人に比べて頭頂部への配慮が足りない。
一度だまされたと思って、頭のてっぺんを盛り上げてみるといい。
頭を縦長にすると、顔の幅も細く見える。
頭と顔を長方形にすると、若く見えるだけでなく
全身のバランスが整い、細く見えるはずだ。
目の錯覚とはいえ
頭頂部の盛り上げ一つで錯覚してもらえるんだから
大柄族はもっと頭頂部に気を回したほうがいい。
そして長身者しか履きこなせないハイヒールで
堂々と闊歩してもらいたいと願っている。
ご清聴ありがとうございました。