殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

浮気のお値段

2008年12月11日 18時38分35秒 | 不倫…戦いの記録
C子のアパートに向かうわずかな時間

私たちは打ち合わせをしました。


名刺を求められても渡さない

絶対にイエスと言わない

その場の雰囲気に流されて謝罪しない…などです。


他愛のないことですが

ビビリの夫にはきちんと言っておかないと

恐怖でどんな行動に出るかわかりません。


今夜はまず相手を見て

いったん帰れる方向に持ち込んでから

ゆっくり対策を考えることにしました。


あ~あ、これが全部夢か、夫の勘違いだったらな~

と心から願いましたが、チャイムを押すと

やっぱりC子でなく、おっさんが出て来ました。残念!


部屋に、C子や子供たちはいませんでした。

玄関に出たのが、C子の母親の彼氏という人でしょう。

50代半ばくらいの、ガッチリした体つきの男です。

精一杯派手なトレーナーの上下をお召しですが

安物感と洗濯でのくたびれ感が漂っていました。


奥へ…と勧められましたが、すぐ逃げられる玄関近くに夫と座りました。

なにしろ狭いので並んでは座れず

私は「控えめな妻」を装い、しおらしく夫の斜め背後に…。


いざとなったら敵に夫を与え、私だけ逃走するつもり満々です。

牛飼いはピラニアの河を渡る時

一頭を犠牲にして、その隙に河を渡るのです。


部屋にはもう2人男がいました。

その1人…30代後半の男を見て「ちぃっ!」と思いました。


知人の義弟です。

子供の頃、何回か見たことはありますが

メタボなおっさんになっていました。


ボロボロの軽自動車をわざとゆっくり運転して

後続車にあおられたら急ブレーキで追突させ

因縁をつけて金を巻き上げると評判の札付きのワルでした。

どちらかというと右ふう?…の小規模な団体に属し

それを印籠に個人的収益を上げている男です。


のっぺりした顔とは裏腹に

口が立って悪知恵だけは働くという、早い話が町内のダニでした。

この一件を聞きつけて、儲け話に乗ったに違いありません。

もう一人は、その仲間のようでした。


C子の母親の彼氏らしき男は、自分をWと名乗りました。

「いやぁ~、娘が心配で来てみたんや」


       うそこけ…
 
       急に親子になりやがって…


「ここにおられるEさんをご存じ?」

         「…はい」

Wは満足そうに

「そうだよねぇ、こっちじゃ有名なお人だもんねぇ」
  

        有名ですとも。ダニとして…


愛想よく話すWが進行役のようです。

猫なで声でヘラヘラと人なつこく振る舞っておいて

各自必要によって豹変するのが、効率のよい恐喝です。

完全に仕組まれた席でした。


      こっちもヘラヘラしてやろうじゃないか…


「わしらの団体でも、このことが問題になってねぇ

 はっきりさせたいと思って、出て来たわけですよ」


        問題になるわけないじゃないか。

        団体を強調したいだけだろうが…


「ちゃんと事情を説明してもらってね

 ケジメをつけてもらわないと、こっちも困るんですわぁ」

   
     「事情ならC子さんから聞いていらっしゃいますでしょ」


「すべて認めるということで、ええんかいな?」


   「そちらに伝わっていることが、どこまで本当かはわかりませんが

    娘さんが結婚を望んでおられるということなので

    それを承諾すればよろしいということでしょうか?」


さっきから黙ったまま

会話の一言一言に聞き耳をたてているEが不気味でしたが

金にならない方向へ行き始めたら都合が悪いので

いずれ介入してくるでしょう。

    
「いやぁ~、それじゃあもう済まなくなっているからねぇ。

 なにしろ団体の幹部のほうにも伝わっているんでねぇ」

さも困ったように、Wは腕組みをして短髪の頭をかしげました。

猿芝居もいいところです。

    
        「で、どうしろと?」


そりゃあ、なぁ…Wはダニ2匹のほうを見ました。

「あんたらの気持ちってものを表してもらいたいわなぁ」


      「気持ち?どういうことですか?

       はっきりおっしゃってくださいな」


はっきりおっしゃれないのです。

金額を提示した時点で、恐喝が成立するからです。
                  

ダニ1号のE、ようやく口を開きました。

「おたくの旦那の不始末をどうケリつけるかっていうことですよ」

 
   「不始末?…当の二人は終わってないんですのよ。

    回りが始末だのケリだの言っても

    始まらないじゃありませんか」


「なんだと?こらぁ!

 女と思って下手に出りゃあ、ふざけやがって!」


            ほうら、来た…

           

女として生きることを封印せざるを得なかった十ウン年…

これくらいで縮み上がっていては

母親稼業は張っていかれないのです。

   
        「まぁ!怖い…

         浮気されてひどい目に遭っているのはこっちですのに。

         これではまるで、脅迫ですわ!

         わたくしどもも、呼び立てられましたからこそ

         こうしてやって来ましたのに、何をお望みやら…

         ああ…恐ろしい…」


脅迫は、人を怖がらせ、ダメージを与えた時点で成立するのです。

どうにもならなければ倒れるから救急車を呼べ…

と夫と長男に言い含めてありました。

卑怯なヤツには卑怯で対抗です。


「奥さん、俺たちはね、そういうつもりじゃないんだよ。

 怖がらせたとしたら、ごめんな」

今度はガラッと優しい口調に変わるダニ1号。

    

       こいつは相当「お勉強」を積んどるな…


この強弱で、相手を精神的に追い込んでいき

最終的に自ら進んでイエスと言わせるのが、最も安全なプロの手口です。


ダニ1号は、○○剤で前科一犯、たしか執行猶予中です。

新聞に載ったので、知っていました。

次に犯罪を起こせば、小さなことでも間違いなく服役が待っています。
    
それでかなり慎重になっている様子でした。    
 
コメント (6)
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