殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

源氏物語

2010年06月27日 11時17分19秒 | 前向き論
私のような一介の主婦が、恐れ多くも源氏物語なんぞに

触れてもええんかいな…とも思うが、ま、いいか。


私と源氏物語との出会いは、比較的遅かった。

そういう本があるのは知っていても

元々読書家の類ではなく、古典?文学?勘弁してちょ…のタイプなので

一生読まなくても大丈夫であった。


今はなつかし…九州から帰還した時に住んでいた、アパートの大家さんが

「女のたしなみよ。本より、マンガのほうが読みやすいでしょ」

と言って、源氏物語のマンガ、大和和紀の“あさきゆめみし”全巻を

押しつけるように貸してくれたことがあった。


36~7歳の頃で、私はまだ、一応夫の浮気癖に傷ついていた。

テレビもマンガも小説も、恋愛にまつわるものには、ことごとく拒否反応を示した。


源氏物語なんぞ、もってのほか。

好きモノが、帝の皇子という身分にあかせて女遍歴する話なんて、耐え難い。

しかし大家さんへの義理で、仕方なく読んだ。

後で感想を聞かれるとマズイと思ったからだ。


これで私は源氏物語の良さがわかり、感動したか…

しなかった。

見事。

全然。


すっかり忘れ去り、十年以上経過。

病院の厨房の仕事を辞めた2年前、時を同じくして、大家さんが亡くなった。

まだ60歳だった。

この人には本当に世話になった。

人生で、他人の恩人をあげろと言われたら、まずこの人の名前が出てくる。


家族の仲が良く、色ごととは全く無縁の彼女が

なぜああまでこの物語に心酔し、私に強く勧めたのか。

それとも、邪恋に無関係だから抵抗が無かったのか。

大家さんをしのび、源氏物語をもう一度読んで、気持ちを共有してみようと思った。


まず“あさきゆめみし”を買う。

本でも言葉でも、人にはそれぞれ

与えられるにふさわしい機会、理解出来るようになる時期があるのだと思う。

最初の時には、自己防衛本能から上滑りしていた内容も

今度はちゃんと頭に入ってきた。


あの頃、私に付いていた大小の傷は

まだ別の舞台に間に合うかも…という

未来への淡い期待の裏返しだったのではないかと思う。

それはまた「許せない」という幼く清涼な正義感であり

「私だって」という若さであった。


年を取り、自分に残された時間があまり無いのがわかってくると

よそばかり見て、ああなりたい、こうなりたいという気持ちもしぼんでくる。

ああなりたい、こうなりたいの願望は

ああなれなかった、こうなれなかったという刃(やいば)となり

ブーメランのように返ってきて、自分に突き刺さるのだ。

それが私の傷の正体であった。


自分で自分を傷つけるのは痛いし、年を取ると回復も遅い。

そこでようやく、よその舞台に出演するのをあきらめ

我が身に与えられた役柄を受け入れて、楽しむことを覚えていく。

良く言えば練れた…悪く言えばスレたのだ。

源氏クンの「悪気は無いのに、結果はザンコク」にも

寛大に微笑むことが出来るようになったわけヨ。


それは、時の流れが味方してくれただけではない。

お産より格段につらかった亭主の浮気であるが

それよりも病院勤めのほうが、もっときつかったのを思い知ったからでもある。

狭い周囲を見回して、私が一番不幸…なんてタカをくくっていると

二番底、三番底を体験させてもらえるサービスが、人生にはあるらしい。


かくして今回“あさきゆめみし”が傑作であることは、やっと認知出来た。

源氏物語は、単にスケベ男の生涯を描いたものではない…

源氏を通して、彼とかかわる女達のプライドや生き様を

描きたかったのだ…と思った。


元々、豪華絢爛、美々しいものが好きな私…もっと詳しいことが知りたくなり

田辺聖子、瀬戸内寂聴の現代語訳の本も買い込む。

マンガで知ったあらすじを、今度は本でたどっていくと

マンガでは省略されていた部分の年齢や人間関係、立場などもはっきりしてくる。

逆に、本ではわかりにくい点を、マンガと照らし合わせて知ることもあった。

一夫多妻や身分制度の中で繰り広げられる

泥沼、モノノケてんこ盛りの壮大な絵巻は

文字通りのエンターテイメント小説である。


この物語には、実に個性的な人物が多く登場する。

なよなよした、すぐ死んじゃう女や、性格の良い女よりも

やはり魅力を感じるのは

源氏のつれなさを恨んで生き霊となり、死後は怨霊となって

彼の女たちにたたる六条の御息所(ろくじょうのみやすどころ)

セクシー美人の朧月夜(おぼろづきよ)

物語ではピエロ的役割の、不細工な末摘花(すえつむはな)などである。


様々なタイプの登場人物に、自身を重ね合わせるのも楽しい。

私には、弘徽殿の女御(こきでんのにょうご)あたりが、ぴったりだと思う。

源氏の父である帝の寵愛を競うライバルとして

源氏の母をいじめ抜き、成長した源氏をも葬り去ろうと画策する。

あの底意地の悪さは、とても他人とは思えない。


スピリチュアルの視点で読むのも一興。

生き霊、怨霊、魑魅魍魎…病気でもお産でも、何かっちゅうとすぐ祈祷。

医学が発達していないので、この方面に頼るしかないんだろうけど

もしや千年昔は、それら得体の知れない物体と共存していた時代であり

源氏の悪癖も、それらが関与して、自分ではどうにもならないことだった…

と前提して読むと、また違った味わいがある。

宿業だの因縁だのもたっぷり出てきて、雰囲気バッチリ。


読んでいて、つい思うのは

「この人ら、いつ寝るんじゃ?」

やれ月が美しい、それ明け方の霧や雪は趣がある…

琴だ、笛だ、物思いだ、夜這いだと、夜は本当に忙しそうだ。

短命なのも、これが一因じゃないのか…などと勝手に案じてみる。

昼寝もするんだろうけど

そんなことを考えるのも、楽しみのひとつである。


作者の紫式部は、多情な夫を持つ苦しみを、確かに身を持って知っていた。

その連帯感を道しるべに、幸も豪奢、不幸も豪奢の世界で

男心や女心を味わうのは「いとおかし」。


そこいらのネエちゃんや、おばはんをだまくらかし

コソコソと出し入れする、現代の不倫男の小ささよ…。

単なる盗み食いを、どうにかして美化しようと

乏しい頭をひねる、現代の不倫女のセコさよ…。

源氏物語は、色で傷ついた女性のリハビリ期に

けっこう効果的な薬品ではないかと思う。
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婚活バーベキュー

2010年06月23日 09時37分30秒 | みりこんぐらし
夫の姉カンジワ・ルイーゼが、女性経営者の会を辞めた。

なんだかちょっぴり残念な私よ。


我が町にあるこの会は、実家や嫁ぎ先が

たまたま会社や商店だった人の集まりである。

近頃は、人数が減ってきたので

マルチ関係者や、社長の愛人兼事務員風味も動員。

一般的な女性経営者の集まりとは異なり

かなりいいかげ…いや、おおらかな会であることをお断りしておく。


会には、私の同級生や知人が何人かいる。

ルイーゼも、ウルトラ意地の悪いルイーゼの従姉妹もいる。

よって、ときたま私の話が、ルイーゼや従姉妹の耳に入ることもあるし

ルイーゼと従姉妹が、故意に聞き出すこともある。


それを彼女達がかなり歪曲して、義母ヨシコに伝え

誤解したヨシコが、私に怒りをぶつけることもよくあった。

そのリスクを差し引いても、面白さのほうが断然大きかった。


ヨシコが言うには、ルイーゼの退会は

女性経営者の会が取り組む今年のテーマ

“婚活”が原因だそうだ。

「あの子、うわついたことが嫌いでしょ。

 婚活なんて、馬鹿馬鹿しいって言うのよ」


スーパーでばったり会った会員の子が言うには

“両親が病気で、忙しくなった”が退会理由だそうだ。

事情を知る会員から

「世話は、弟さんの奧さんがしてるんじゃないの?」

とツッコミが入ったが

「いいえ!私がしています」

キッパリ答えたという。

さすがルイーゼ!

こういうとこ、嫌いじゃない。


    「そうよ。義姉は大変なの」

ルイーゼの名誉のために、私も口添えする。

本当にルイーゼは大変なのだ。


彼女は主に、ヨシコの脳トレと筋トレを担当している。

ヨシコが書類や書き物を頼むと「自分でやれ」…これが脳トレ。

買物に連れて行ってと頼むと「自分で行け」…これが筋トレ。

甘やかしたら、ボケるばっかり…

どこでも車で連れて行ったら、体が衰えるばっかり…

ルイーゼは心を鬼にして、母親を鍛えているのだ。


まあ、真相は、2個イチで組んでいた従姉妹と

些細なことで喧嘩になったのが発端である。

同い年の従姉妹に、昔から引きずり回されていたが

ここにきて嫌気がさしたのだろう。

会で他人にもまれ、ルイーゼにもやっとわかったのだ。

あの会は、ルイーゼにとって、無駄なものではなかった。


これらの話は、決して私が取材して歩いているのではない。

会員は、聞きもしないのに、会の話をするのだ。

どんな活動をして、誰が何をして、これこれこういうことがあって…

生き甲斐…ライフワーク…町のため、人のため…

女は、自分が優越感に浸れることを、人にしゃべりたいものだ。


さて、その婚活であるが、参加者の募集も一段落し

過日、第1回目の婚活パーティーが、にぎにぎしく開催の運びとなった。

お日柄もよく、土砂降りの中

浜辺のバーベキューの成果があったかどうかは、どうでもいい。

私が驚いたのは、ちょうどその日の夜、用事で会った会員の知人が

大量のおむすびの嫁ぎ先を思案していたことであった。


十数人の参加者から、形ばかりの会費は徴収するそうだが

それではとてもまかなえない。

参加者より、世話をする会員の方が多いのだ。

優しい彼女は、自前でおむすびをこしらえて、パーティーに持参した。

しかし、雨でいまひとつ盛り上がらなかったので、まるまる残ってしまった。


なんでそこまでせにゃならんのじゃ。

手弁当どころの騒ぎではない…持ち出しじゃないか。

そのようなことを言ったら、知人はにっこりして言う。

「だって、みんなで集まって、ワイワイ騒ぐのは楽しいもん。

 会の集まりと言えば、外に出られるでしょ。

 時間のある人は、昨日から会長さんの家に集まって準備をしたけど

 私は行けなかったから、おむすびくらいは出さないと、理事としての立場がねぇ」


なるほど、楽しいらしい。

求めるのは成果でなく、楽しみだったのだ。

わたしゃまた、婚期が遅れた若者のために、頑張っているのかと思っていた。

とんでもない誤解であった。


「あなたも誘いたいけど、主婦じゃあ、会員資格がねぇ…」

と、おっしゃる。

めっそうもねぇですだ…

わたくしめのような者が、そんなところに入ったらバチが当たりますです…はい。


「おむすび、少し持って行ってくれない?」

と言われたが、遠慮した。

雨の砂浜で、いろんなモノに一日さらされたおむすびを

めとる勇気は無い。

根性無しの私である。
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ガーインのホーオー

2010年06月20日 15時50分17秒 | 検索キーワードシリーズ
おとといのこと。

義母ヨシコが電話を取ると、いきなり泣き声が聞こえたという。

「ヨシコさん!私よ、ゆみ子よ!

 息子が死んじゃったの!

 嫁に殺されたのよぉ~!」

殺人事件かと、驚いたヨシコ。

私がヨシコの所へ行ったのは、その電話の直後だった。


電話の相手は、40年前、近所に住んでいた

3歳年下のゆみ子さん。

ご主人が出張の多い人だったので、いつもヨシコ一家を頼りにして

仲良く行き来していたそうだ。

ヨシコの昔話は、ほとんど聞きつくし

往復も何回かしていると自負する私だが

ゆみ子という名前が出るのは、初めてだった。


当時、ゆみ子さんは二人目の男の子を生んだ。

生後10日を過ぎても、赤ちゃんに名前をつけないので

イライラしたヨシコが「信治」はどうかと提案。

ゆみ子さんは、赤ちゃんにその名前をつけた。


やがて、ふとしたことから絶縁状態となる。

2~3年後、ヨシコは、今の家に引っ越したため

それきり、ゆみ子さんとは会っていなかった。


そしてその日、ゆみ子さんから、40年ぶりに電話がかかってきたのだ。

「ヨシコさんが名前をつけてくれた、あの信治が、自殺したのよ!」

ゆみ子さんは、そう言って泣くのだという。


「こんなのどう?って言ったら、いつの間にか、それで届けを出してたのよ」

ヨシコの解説が入る。

人情家のヨシコが、いつになく冷ややかだ。


信治君は何年も前から、奧さんの浮気に悩んでいた。

自分さえ黙っていれば、子供を泣かせることはない…と

何年も辛抱していたそうだ。

しかし、ある日とうとう我慢出来なくなって、問いただした。


向こうも妻子ある人だったので、奧さんは「二度としません」と

泣いて謝り、元のさやに収まった。

が、信治君の目を盗んで、また会うようになっていた。

奧さんの携帯を見て、それが発覚した。


信治君は、奧さんの浮気相手が勤務する会社の駐車場で

排ガスにて、亡くなっていたそうである。

間男に対する、無言の抗議であろう。

男性の方がダメージが大きく、思い切ったことをする。

女でよかったわい…と言い合うヨシコと私。


でもね…ヨシコは言った。

「ゆみ子さんは、旦那さんと同じ会社の人と、ずっと浮気してたの。 

 旦那さんの留守に、家に泊まりに来たのも何回も見たわ。

 信治君はその人に生き写しなの。

 名前をなかなかつけなかったのも

 今思えば、ご主人も何かは知っていたからだと思う」


元々正義感が強く、亭主の浮気に早くから苦しんでいたヨシコ。

「子供のために、浮気はやめなさい」

と、ゆみ子さんに苦言を呈さずにはいられなかった。

ゆみ子さんは逆上し、口論の末に絶交の運びとなった。


「浮気なんてする人はね、なんでも人のせいなのよ。

 “信治の名前は、ヨシコさんがつけたんだから…”なんて言われたら

 自殺したのが私のせいみたいじゃないの」

ヨシコは不機嫌だ。


「信治君、かわいそうに…まだ43歳だったのよ。

 因果応報よ…母親の罪を、息子がかぶらされたのよ」

宗教に傾倒して久しいヨシコは、そう言う。

何十年も経って、忘れた頃に上映される、自分の行いの再現フィルム。

しかも、自分の時より深刻になってるし。


しかしまあ、そんなのはよくあること。

私が軽くうなったのは、絶交して40年のヨシコにまで

連絡を取らなければ気がすまない、ゆみ子さんだ。

信治君が亡くなったのは、4月というから

あちこちに電話をかけては、嫁の罪状を訴えるうち

ヨシコにもたどりついたのだろう。


「嫁が遺体の引き取りを拒否したのが、一番悔しい…。

 主人に頼んで、うちで葬式を出したのよ」

ゆみ子さんは嫁の冷酷を強調するが、ヨシコのように事情を知る者には

頼まないと引き取れないなんて、ご主人はやっぱり全部知ってたのね…

などと後でささやかれ、因果応報なんて無責任なことを言われる。

本人は永遠に気づかないだろうが、これはみじめだ。


それでも、ゆみ子さんはまだいい。

生きている。

だが、決定的な罪を犯していない信治君はどうなる。

因果応報で片付けられたら、たまったもんじゃないのではなかろうか。

信治君の冥福を祈るばかりである。
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泥沼キーワード

2010年06月16日 13時42分00秒 | 前向き論
『親子 禁断の恋』 『母子不倫物語』

『祖母と孫の不倫』 『田舎の祖母と禁断』

『義理父との不倫告白』 『義父と嫁の逢い引き』

『告白 義母と婿』 『告白 禁断の婿と義母』『義母と娘婿の不倫』

『女房のお母さんに誘われてホテルへ…』

『伯母との不倫関係映像』…


ここ1ヶ月の検索キーワード、身内部門ですわい。

単語の順番が前後しているのや、意味が同じもの

『義父と若妻』などの、ぼやけた内容も入れると、この数倍になります。


ブログの内容に、不倫や家族の話が多いので、ヒットするんでしょうけど

現にこのキーワードで、何かを知ろうと検索している人がいるわけです。

つくづく、病んでいるなあと思います。


『授かり婚 旦那 浮気』

なに婚でも、浮気する人はしますよ。

要は、避妊失敗でしょ?

生じた結果を小綺麗な言葉で格上げし、後付け…

私は個人的に好きじゃありません。

デキちゃった婚のほうが、よっぽどすがすがしいです。


似たようなキーワード、以前からちょくちょくあります。

必ず、デキちゃったじゃなくて、授かり婚なんですよね。

表現に逃げ道を探して、甘える癖をつけたらダメです。

だから浮気と授かり婚をつなげる、幼い発想に至ってしまうんです。


授かったと言うなら、誰から授かったんでしょうね。

神仏?先祖?旦那?

授かった…こんな私でも子供を持つ喜びを与えていただいた…

そう言えるだけの畏敬の念や信仰心をお持ちなら、子供のために頑張れますね。


『愛人 むなしい』

愛人とは、そもそもむなしいもんです。

好きになれば交際、交際すれば結婚、結婚すればああもしたい、こうもしたい…

女は、発展を望む生き物です。

無意識に発展の方向へ向かう本能を持ち合わせているのです。


発展の可能性が最初から無いんですから

やがてむなしくなるのは、当たり前です。

逆走のむなしさですね。

むなしさが感じられる人は、まだマトモだと思います。


『不倫 相手の妻に気がつかせる』

電話一本するか、行きゃあすむところを

自分が悪者にならずに知らせて、苦しめる方法を考える。

幼稚な残酷ですね。


結婚できないなら、せめてめちゃくちゃにしてやりたい…

破壊して、男がどんな態度に出るか見てみたい…

イライラして、ヤケになって、石を投げてみたくなる…

これも一種の発展願望かもしれませんね。

心配しなくても、奧さんは気がついていますよ。


あ、それと“妻に”の後に言葉を続けるなら

「気がつかせる」じゃなくて「気づかせる」ですからね。

まあ、しかたがないか…その程度のおつむだから。


『不倫願望 むさぼるように愛されたい』

これ、不倫の倫と願望の願が、わざわざ旧漢字でしたよ。

本か何かのタイトルかもしれませんが、尋常じゃない雰囲気を感じましたね。

何にしても、よっぽどなんでしょうねえ…。


『帰りたい 動けない 浮気』

浮気する人の気持ちをよく表わしていると思います。

湯がだんだんとぬるくなって、このまま浸かっていたら

やがて冷水になるのは、わかってるんだけど

今出て、外気に触れたら、ひや~っと一瞬冷たいのよね。

それがおっくうで、グズグズしてるだけ。


じっとしていたらいいんですよ。

風呂だと思っていたのが、肥だめとわかるまで。


『不倫しやすい女』

誰でも、不倫する可能性はあると思います。

なにも特別な人がする特別なことではないんです。


「自分はこんなはずじゃなかった…」と思ってる人の前に

「自分はこんなはずじゃなかった…」と思ってる人が現われます。

こんなはずじゃなかったの二乗…

こんなはずじゃなかったの組んずほぐれつ…

そりゃ、ますますとんでもないことになりますね。


幸福は、自発的飢餓、慢性的不満が嫌いです。

不倫しやすい女…それは、幸福が避けて通る女なのかもしれません。

職業愛人でなく、単なる不倫相手をお探しなら

いつもブツクサ言ってる人に当たれば、イチコロですよ。


『夫に浮気を認めてもらっている妻 マドンナ』

旦那さん、どこか体が悪いんですかね。


『灰になるまで私は現役』

頼もしいですね。

どうぞ頑張ってください。
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記念日

2010年06月13日 10時31分45秒 | みりこんぐらし
最近、すっかりご無沙汰のバンド活動。

しばらく参加しないでいるうちに、一人減り、二人減り

存続の危機すら危ぶまれる状態になっていた。


ちょうど、我々の生まれた町の公民館活動で

社会人によるブラスバンドが結成される運びとなった。

町内初の試みであるらしい。

「消滅する前に、指導者のもとで基礎からやり直そう」という話になり

結成にあたっての説明会があるというので

今いるメンバーで、行ってみることに決まる。


私は夫に頼んだ。

「その日は、15分ほど早めに帰って来てくれる?」

思えば、夜の単独外出は2ヶ月ぶりである。

夫はこういうことに寛大なので、当然快諾してくれると思っていた。


ところが…ダメと言うんじゃ。

言い方が悪かったらしい。

行くのがダメなんではない。

15分と、細かい指示をされたのが、気に入らない。


いつもどおり夫の実家に集まって

全員の夕食を少し早めに終わらせ、後片付けもすませて

何の心残りも無いままゴー!をもくろんだのが失敗だった。

そうそう…夫は、人の都合でペースを乱されるのが、大嫌いだったわい。

ちなみに、逆は、いい。


男も年を取ると、年々気むずかしさが増す。

お出かけが減ったら、そこらへんの勘が鈍ってしまうわ。


私は公民館でブラスバンド…という話に、本当は乗り気ではなかった。

会場は、メインの公民館ではなく、町外れの古い分館だ。

道がすっごく狭い。

民家だったところを改築しているので、車で集まるように出来ていないのだ。


駐車場なんて無いもんで、ずいぶん手前で路駐して

暗く、細い道を歩かなければ、たどり着けない。

今回は勢いでどうにかなるにしても、毎週通うとなると、実は自信が無い。

どうしても行きたい場合は、夫が何と言おうと気にせず出かけるが

そこまでの情熱が無いもんだから、あっさり引き下がった。


しかし、当日になって、争いは勃発した。

「こないだ言ってたバンド、行ってもいいぞ。

 オレ、早く帰るから」

    「いいよ。もう断ったから」

「行けよ、せっかくだからさ」

    「気にしないで」

「オレが困るんだよ!明日、同窓会の飲み会が決まったんだ。

 お前を出さずにオレが出かけたら、出にくいじゃん」


なんじゃ…その言い草。

さすがにムッとする。

    「主人の機嫌が悪いから、出してもらえないって言った~。

     いまさら機嫌が直ったからって、のこのこ行けないわ~」

「そんなこと言ったのかっ!」

    「うん」

「いい加減なこと、人に言うな!」

    「事実じゃん!」

「うるさい!」

    「あんたのほうがうるさい!」

ものすごく怒る夫。

ひひひ…言うわけないじゃんけ。


相当腹が立ったらしく、夫はしばらく口をきかなかった。

おじんのふくれっ面って、醜いったらありゃしない。


そのうち私は、はたとあることに気がついた。

    「ちょっと、ちょっと~

     私ら夫婦、女関係と嫁しゅうと以外で喧嘩したの、お初じゃない?」

「そうだっけ…」

内心、話しかけられるのを待っていた夫は、パ~ッと顔を輝かせる。


     「記念日じゃん」

「うん、記念日じゃ」

この男のことだから、謝りはしない。

ただ、急にあれこれ話し始める。

「オフクロのやつ、おまえが庭に水まいてる間、のんきに散歩しやがって。

 散歩が出来るんなら、水もまけるだろうに…けしからんやっちゃ。

 あいつら、どこまでも増長するんだから、ほどほどにしとけよ」


だったらオマエが水まけや!と言いたいのは、やまやまであるが

私は優しい微笑みを浮かべ、いいのよ…ありがとう…と言う。

昨日、玄関前の植木鉢に引っかけたままだった

夫の姉カンジワ・ルイーゼの日傘…

うっかり水がジョボジョボ~ッと入ってしまい

そのまま放置したことなど、言いはしない。


まあ、どう転んだって、私の亭主…ここまで気がつけば、上出来さ。

おじんのザンゲは、いつも人知れず、ひそかに行われる。

一応記念日ということで、カルピスで乾杯した。
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ダブル不倫語録

2010年06月11日 10時40分58秒 | みりこんぐらし
知人に、ダブル不倫中の奧さんがいた。

40代の、ごく一般的な女性だ。


相手は、かなり以前に趣味を通じて知りあった、同じ年頃の男性。

当時からずっと好きで、2年前に告白し

1年返事を待って、去年「結ばれた(本人談)」と言う。


「ずっと秘めていた思いを大事に大事に育てて、やっと実った感じかな?」

彼女はそう主張するが、私は違うと思う。

このタイムラグが怪しい。


男には、不倫というものを一度してみたい気持ちが前からあった。

同じ冥土の土産なら、出来れば上等なの…若くて、かわいいのを持参したい。

しかし、頬を染めて「好きです…」と言ってくれたのは

肥満したおばさんであった。


それでも相手が誰であろうと、告白されれば嬉しいに違いない。

もしや、初のモテ期到来?

気を良くして、男は他にも立候補者がいないか、待った。

しかし誰も現われず、浮世の義理として、返事もしないといけない。

どうする?オレ!

…やがて妥協。

これが、下世話な私の推理である。


「私が告白して1年間、彼も葛藤したそうよ。

 でも、自分の正直な気持ちに勝てなかったんだって」

ものは言いようだねぇ。


「ホテルで過ごすより、一緒に食事に行くのが楽しいの」

どんな所に行くのか、たずねてみたら「イタリアンや、中華のお店」と言う。

よく聞いたら、ファミレスじゃん。

この人、自分じゃ気づいてないけど、まことによく召し上がるのだ。

最初から言わないところを見ると

やはり本人も、何かは感じているのだろうと思われる。


が、この女もさるもの

「ファミレスは、二人でいても自然だし

 時間を気にせずにおしゃべりが出来るでしょ」

とおっしゃる。


「もっといいもん食べなよ~…カニとか、フグとか…」

時は冬であった…よせばいいのに、ついそんなことを口走る私。

しかしその次に、この名言で感動する。

「彼がね…“オレがカニ料理に誘ったら、もう最後と思え”って。

 しゃべりたくない相手としか、カニは食べない主義なんだって」


おお!交際費節約の素晴らしい言い訳!

しゃべりたくない相手に、カニをおごるわけがない。

しかし男のほうは、ひとまずこれで、財布の危機を逃れたらしい。


フレンチや和会席は、店員が度々来るので落ち着かない…

焼肉は、においで家族にバレるから無理…

フグにいたっては、アレルギーなんだと…

お見事。

また感動。


私の表情を察して、彼女もソワソワと言う。

「デートに経費を使わないのは、彼の愛情表現だと思うから…。

 そりゃ勤め先の経費を使えば、高い所にも連れて行ってくれると思う。

 彼、職場で、色々任されてると言ってたから。 

 でもそんな卑怯な男の人、こっちからお断りよ。

 領収もらってる後ろ姿なんて、見たくないもの」

ムキになって、言えば言うほど、イタい。

経費なんか、持たせてもらってるもんかい…窓際候補に決まってら。


「たまにしか会えないんだけど、お互いその日のために生きてるって感じ?

 彼も忙しいし、私にしょっちゅう会うと

 自分をコントロール出来なくなっちゃうんだって…」

うっとりとのたまう、にわか王女様。

さすが…とひそかに喝采。

小遣いが大変だからじゃないんだ~。

コントロールなんだ~。


「両方の相方が死んだら、二人で暮らすのが、夢なの」

お前らが二人共、都合よく生き残るとは限らんぞ。

「胸が大きいから、他の男が見るのよね…彼、すごく妬けちゃうみたい」

胸も大きいかしらんが、腹も大きいぞ。

「会うといつも体を求められるんだけど、私、そういうの好きじゃなくて。

 でも彼、聞いてくれないの」

おっとっと…責任回避と株価上昇を同時に狙うか。


「ごはん食べて、おしゃべりして、バイバイじゃダメなのかなぁ。

 血のつながってない妹じゃ、いけないのかなぁ」

あんた、ゴクミ(古!)のつもりか。

妹になるのは、難しいんだぞ。

本人に、それなりの品質が無いとな。

そんなに嫌なら、毎回、生理日にデートしたらええじゃんけ。

会ってもらえないだろうけど。


「老後に一緒に暮らすのも夢だけど

 いつか二人が同時に納得して、綺麗に別れるのもいいかな。

 その時が来たら、奥様にそっとお返しするつもり」 

“バカか?”のひと言は飲み込んだが、これは言った。

    「何がそっとお返しよ…あつかましい。

     さんざん手あかつけて、ねぶり回したカスを」


「ええ~?彼、私のカスなのぉ?」

彼女と私は顔を見合わせ、爆笑した。

同じテンションの笑いではあるが、その意味は全く別のものだった。
          
     
「お互いに家族を傷つけるのは、絶対に嫌だから、セーブしてるの。

 でも、もしもバレたら、その瞬間が最後の時…その覚悟は、いつも出来てる」

口を一文字に結び、そう答える彼女であった。


しかし、ほどなくバレた。

覚悟というのは、口だけだったらしい…

その後も家族の目を盗んで会い、またバレた。


老後を共に過ごそうと約束した彼からは

「しつこいから、仕方なく会っていた」と言われた。

「そっとお返し」するはずだった奥様からは

この次に会ったら、訴訟を起こすと言われた。

不倫の覚悟なんて、その程度のもんだ。
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怪しい献立

2010年06月09日 11時06分37秒 | みりこんぐらし
最近、義母ヨシコの体脂肪が9%減った。

最後に測ったのが先月の15日なので、3週間でこれだけ減ったことになる。

ヨシコは、毎朝自分で作る野菜ジュースのおかげだと主張し

私は、自分の作る食事だと思っている。


私は彼らの朝食に、タンパク質と食物繊維の多めの摂取を心がけている。

今回、ひそかに人体実験をしてみたくなったのだ。

パン好きで、偏食がひどいヨシコに合わせ

卵やチーズのサンドイッチと、野菜サラダが中心。


食材や気分によって、オープンサンドやホットサンド

カナッペ風や、ピザ風にすることもある。

クッキー型で、食パンを切り抜いてやったりすると、とても喜ぶ。


和食でもいいんだけど、味噌汁の豆腐ぐらいでは、タンパク質は足りない。

干物や卵焼きを足すと、塩分が多くなる。

ヨシコの場合、ついでにザブザブ醤油をかけた漬け物や

ふりかけなんて暴挙に出る恐れもあり

一日分の塩分摂取が、一食で越えてしまう。

よって、作り置きで摂取量が監視できる、サンドイッチ方式が良いと判断した。


ヨシコの野菜ジュースは、ケールというキャベツみたいな葉っぱ1枚と

リンゴとバナナをテキトー、そこに低脂肪牛乳をテキトー、それをミキサーでガー。

ケールが無い時は、キャベツでいい。

簡単で、けっこうおいしいらしい。


サンドイッチか野菜ジュースのどちらか…または両方…

はっきりしないのが、しろうとの哀しさよん。

でも、体脂肪でお悩みのかたは、ダメもとで試してみていただきたい。


昼食は、野放しだ。

一応、私の見ていない所で麺類を食べるな…とは言ってある。


夕食のほうは、夫の姉カンジワ・ルイーゼの気まぐれな差し入れにより

カロリー計算も、塩分制限も、バランスも、水の泡となることがある。

計画的にやっているので、食事の面だけは手出ししないでほしいのはやまやまだ。

しかし、ルイーゼのほうも

「私だって、親の食事に無関心ではない…」というジェスチャーが必要なのだ。


先日は、ルイーゼから、刺身の盛り合わせがプレゼントされていた。

ルイーゼが、残り物でなく、お金を出すのは珍しい。

ヨシコがステーキを欲しがるので、小さいヒレ肉を用意した日であった。


生の肉と一緒に、サラダ、スープ、付け合わせなどを抱えて行くと、これだ。

刺身は、二人分のみ。

ルイーゼは、皆に行き渡る分量を用意することは無い。


「せっかくだから、刺身を食べるわ。あの子の気持ちだしね。

 あ、肉が欲しければ、焼けば?」

遠慮と開き直りの入り交じった口調で、ヨシコは言う。


昔の私なら、絶対カッとなっていた。

誰が肉が食べたいと言うたんじゃ!

おのれ!ルイーゼめ!たまの気まぐれで、こっちの気持ちを踏みにじりおって!

などと恨みに思っていただろう。


だが、今回のヨシコの入院で、ふと気づいたことがある。

ちょっくら、いい子ぶってるかもしれないが、書き留めておこう。

「ヨシコは、我々に成り代わり、病気を受けてくれている」


ヨシコは、病気ばっかりで手のかかる、困った姑ではないのだ。

病気を一身に受けて、代わってくれている。

世話するのと、痛いのでは、世話するほうが断然いい。


私と子供の3人は、滅多に病院へ行くことがない。

今後は知らない…しかし、少なくとも今までは、無事であった。

それで充分だ。

ヨシコだけでなく、アツシも、いい仕事をしてくれているのだ。

ありがたいと思わなければ、バチが当たるっちゅうもんだ。


私は明日のために、いそいそと肉を冷蔵庫にしまう。

二人分の刺身は、ルイーゼが一部持って帰ったので、さらに少なくなっている。

それを6人で分ける。


サザエはひと切れ、オコゼはふた切れずつしか無い。

それでも無理矢理メインディッシュよ。

“一杯のかけそば”より、ずっと割り当てが少ない。

次男は「淋しすぎる」と、サザエの殻を自分の皿に飾った。


    「みんなで分け合って食べると、おいしいわね~!ホホホ~」

野菜スープ、ミモザサラダ、人参とズッキーニのグラッセ

そして3きれの刺身…なかなか不気味な取り合わせ。

こころなしか会話も途切れがちな、怪しい夕食であった。


なぜ6人で刺身を分けたか、お話しておかなければならない。

長男とヨシコは、ついに2年ぶりの再会を果たした。

夕食が終わって、片付けていると

長男が突然「こんばんは」とやって来たのだ。

びっくりしたぞい。


ヨシコは泣いていた。

アツシも嬉しそうだった。

私が一番喜んだ。

何が嬉しいって、これからは、自宅と実家の二ヶ所で

別々に食事を用意しなくていいのだ。

以来、夕食は夫の実家に集まり、家族6人で食べている。


なんたって、楽。

想像以上に簡単。

ブラボー!

夏でも、雪解けがあるらしい。
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サザンカを脅す

2010年06月06日 10時12分36秒 | 前向き論
義母ヨシコは無事退院し、自宅療養となった。

私は相変わらず、義父母の夕食を作り

毎日6時を過ぎると、鍋やタッパーを持って夫の家へ行く。


夫と義父アツシは、食後にサウナへ行くので

帰って来るまで、私はヨシコと過ごす。

一緒にテレビを見たり、ヨシコが今回の入院でハマッた

塗り絵にいそしむのを眺めたりする。


おしゃべりもする。

「あそこのお嫁さんはねえ、娘が台所をやってると

 な~んにもしないんだって~」

と、ヨシコ。

    「そりゃ娘がしゃしゃり出たら、嫁は手が出せんわ~。

     娘も考えないとねえ…もうお嫁に行ったんだから~」

「あ~ら、嫁がしないから、娘がするんじゃないの~?」

    「娘を押しのけて立ち回るのは、難しいと思うわ~」

「そういうもんかしらね~…私は一人っ子だから、よくわからないわ~」     

    「残酷よね~…動きを封じて、怠け者扱いじゃあねえ~」

「そうそ、あの姑さん、そういうとこ、あるのよ~」

このような、スリリングな会話もかわす。


退屈なので、掃除をすることもある。

ヨシコが、かがんで掃除機をかけるのがきついと言うので

スタンド型の掃除機を買ってやった。

お掃除ロボという手もあるが、あれは高いので惜しい。


すると今度は、新しい掃除機が重たいと言いだした。

紙パックじゃないので、ゴミ処理も難しいと言う。

何度やって見せても、わからないと言う。

結局、掃除は完全に私の仕事となる。

ハメられた感もあるが、深く考えないことにする。


またある日、家に行くと、アツシが汚れたズボンを着替えていた。

庭木の水やりをしていて、転んだという。

持病で足元がおぼつかなくなっており、ホースに足をとられたそうだ。

幸い、ケガは無かった。


ここでまた悪い癖が出る。

     「危ないから、これからは私が水をまくわ」

「そう?!」

待ってましたとばかりに、顔を輝かせるヨシコ。


「私がやれればいいんだけど、心臓がねえ…

 爆弾を抱えてるようなもんだって、先生に言われてるしねえ…」

またしてもハメられた気がするが、深く考えないことにする。


庭木に水をやるのは、ここを出て以来15年ぶりだ。

広い庭ではないが、家を囲むように木が並び

ヨシコの植えた花々が、ジャングルのように生い茂っている。

全部に水をやると、ゆうに30分はかかる。


若い頃は、これがイヤでイヤで仕方がなかった。

毎夕、水をやる夏は、蚊の餌食になった。

子供に手がかかるわ、メシの支度はせにゃならんわ、泣きたかったぜ。

雨が降ったら、カッパのような心持ちで喜んだっけ。


冬は冬で、4~5本植えられているサザンカの花が落ちる。

おびただしい量だ。

いったん落下したら最後、花びらはガクを離れて、思いっきり散らばりやがる。


冬枯れの硬い芝生に落ちた、白やピンクの花びらは

少々掃いたぐらいでは取れない。

寒い庭で、小さな金属のクマデを使用し、掻き出さなければならない。

   「自分が落としたものぐらい、自分で後始末しなさいよっ」

私はサザンカにつらくあたったものだ。     


そして考えたあげく、落ちる前に花を摘み取る方式を採用した。

こりゃあ、ええわい…自分の名案に感心し、せっせとブチブチやっていた。

やがてバレて、木が傷むと怒られる。

   「そのうち、おまえらを全部切り倒してやる…

    それまでの命と思えよ!」

腹立ち紛れに、いつもサザンカを脅迫していた。


昨日、水まきをしながら改めてよく見ると、サザンカが1本しか無い。

ヨシコに聞くと、枯れたと言う。

咲いたばかりの花を摘み続けたから、弱ったのか。

脅していじめたからか。

死因が何であれ、いびりまくった相手がいなくなると、後味が悪い。

気の毒なことをした。


   「あの時は、すいませんでしたねえ…」

残ったサザンカを始め、松、梅、クロガネモチ、ヒイラギ、菊桃…

その他のキャストにも、謝りながら水をまく。

彼らもまた、サザンカほどではないにしろ、私から脅迫を受けていたのだ。


15年の間に、いちだんと大きくなった木々…

植物と触れあう心地よさ…

もう若い頃ほど私の血液を欲しがらない蚊…

歳月は、苦しみを楽しみに変える。

お帰り…と言うように、風が吹いた。
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亭主の好きな…

2010年06月03日 09時45分23秒 | みりこんぐらし
亭主の好きな赤烏帽子(あかえぼし)…ということわざがある。

亭主の好きなものなら、それがどんなに妙ちきりんだろうと、認めてやりな…

みたいな意味らしい。


うちの亭主の好きなのは、赤烏帽子ならぬ、白肌着である。

俗に言う丸首シャツ…少し厚手の、フィットしたやつでなくてはならない。

結婚前から、夏にはこれを着、頭をゆるやかなリーゼントにし

なんたらいうメーカーのジーンズをはいて

恐れ多くもジェームス・ディーン気取りであった。


ジミーが着ていたのは、丸首シャツでなく、シンプルなTシャツだったと思う。

Tシャツにたくましい肉体を閉じ込めるので、必然的にピタッとする。

しかし夫の場合、日本のTシャツでは

それが表現できないということで、丸首シャツになったらしい。


付き合っている頃は「んまあ…この人、肌着じゃん」

と違和感があったが、多少の勘違いは、若さがカバーしてくれる。

夏以外の夫は、ここらで言う“伊達こき”であったため

肌着姿も一種のファッションとして、周囲も認めている様子であった。

しかし問題は、初老となった今も、依然としてこのスタイルを好むことである。


暑くなってくると、これ一枚で過ごそうとする。

家だけならまだしも、近所ぐらい平気で出かける。

妊婦のような腹に、肌着が伸びてへばりつき、見苦しいのなんの…。


特に見苦しいのは、ヘソのあたりだ。

通常の体型ならば、ズボンの中に隠れるはずのヘソが

膨張のために収まりきらず、のぞいてしまう。

しかも太ると、ヘソも伸びて広がる上に、深くなる。

腹に張り付いた伸縮性のある白い生地が

その周辺のみ、黒ずんだ深い洞窟を見せつける。

まさに、人体の魔境。


人は誰でも、我が身がかわいい。

自分の好みが、人に迷惑をかけているとは夢にも思わない。

夫のイメージでは、肌着姿の自分は、青年のままなのだ。

自信満々の前半生を送ってきたがゆえに

加齢による劣化の認識装置が備わっていない。


病院へ勤めていた頃、通勤路にたこ焼きの屋台があった。

そこで近所のおじいさんが、屋台に上半身を突っ込むようにして

店番の人といつも話し込んでいた。


おじいさんは、老人にしてはかなり太って大柄だった。

問題は、そのファッション…いつも肌着にステテコなのだ。

脂肪で盛り上がった、とてつもなく大きな尻をクリクリと動かしながら

おしゃべりに興じている。


夏でも冬でも、必ずその姿がある。

うっすらと透ける肌やパンツも生々しく、これを見るたび、実に不快であった。

なんで毎日こんなものを見なきゃならんのじゃ…と腹立たしかった。


何年かして、屋台はたたまれた。

経営不振という話であったが、私は絶対あのステテコ親父のせいだと思っている。

あんなのが、出腹や大尻をプリプリさせて

一日中あそこに居たら、客は寄りつかない。

いやしい私だって、一度も寄ってみようと思ったことはない。


夫は、元々筋肉がつきにくい体質だ。

スポーツによって中途半端な筋肉が乗っかった、厚みのある体型だったが

今はすべてが脂肪に成り代わった。

つまり、たこ焼き屋で肉体をさらすおじいさんと同類で、生々しい。


毎年、肌着で外へ出ないように、厳しく監視する。

そのまま外出しそうになると、サッと上着を持って行く。

丸首シャツを買わなきゃいいんだけど、これだけは夫が自分で買って来るので

エンドレスな戦い。


長年の不毛な攻防に、いささかくたびれた私は

今年こそあきらめさせるという野望を抱いた。

早い話、夫の肉体は、それほど醜い姿になり果てたということである。

もう「本人の好みだから」という理由で、放置できない状況なのだ。


今年も例年どおり、丸首シャツが登場し始めた。

    「そのシャツはやめたら?」

「オレはこれが好きなんだ!」

毎年繰り返すやりとり。

途端に不機嫌になるから、困ったもんだ。


私は思わず言った。

     「あんたは永遠にジェームス・ディーンのつもりでも

      ハタには、下着姿の太ったおじいさんよ…」

夫は一瞬黙った。

     「時は流れたんだわ…ジェームス…

      あの頃のあんたは、もういないのよ…」

両手を胸に当て、ポーズをとってそう言ったら、笑いが止まらなくなった。


身をよじって笑い続ける私に背を向け、夫はプイとどこかへ出かけてしまった。

かなりショックだったらしい。

あれから1週間経つが、夫はあのおぞましい格好をしていない。

今年こそ、白肌着から脱却できそうだ。


さて、私も人体の魔境ぶりでは、人のことは言えない。

こういうのは、出すか出さないか、紙一重の違いに過ぎない。

夫の不倫に耐え、身を持ち崩さなかった妻…しかしその実態は

とてもじゃないが他人様にお目にかけられるような肉体を

保有しなかったからなのかもしれない。


もしも自信があったなら…丸首シャツは着ないけど

いまだに姉ちゃん婆ちゃんの格好をして、得意満面しゃなりしゃなり

亭主の不実を言いわけに、快楽の道を選んだ可能性、なきにしもあらず。

貞操は、意外な理由で守られた。
コメント (102)
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