殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

また留守番・3

2019年06月29日 16時17分02秒 | みりこんぐらし

 

通夜は午後6時から始まるので、私は5時半に着くよう家を出た。

 

留守番を請け負って30有余年

 

自称・留守番のプロとして今回のケースは

 

誰よりも早く行くのが安全と判断したためである。

 

 

なぜならなっちゃんは、通夜の参列を欠かしたことが一度も無い。

 

いつも早めに来て受付のそばに立ち、後から来る知り合いを待つ。

 

 

彼女より出遅れて、熨斗袋の名前を見られたら

 

香典を届けた者と頼んだ者…二者の関係性を詮索するのは明白。

 

香典を頼むのは、そこそこ親しい間柄と決まっているため

 

どの程度の親しさかを探るのだ。

 

 

これを嫌う同級生は多く、ユリちゃんもその一人。

 

だから、全てを知っていなければ気が済まないという

 

なっちゃんの性分を刺激しないよう

 

是が非でも彼女より先に行くもんね。

 

 

さて、会場に着くと一番乗りだったのでホッとした。

 

けいちゃんとゆっくり話をする時間があったので

 

看病の苦労をねぎらい、「行けなくてごめんね」という

 

ユリちゃんの伝言も伝える。

 

そして記帳が終わったら、すみやかに会場へ入って着席した。

 

 

そこへなっちゃん、登場。

 

すぐに私を見つけ、隣へ座った。

 

けれども案ずることはない。

 

ご会葬御礼の入った紙袋3つは、あらかじめ椅子の下に隠している。

 

 

と、なっちゃんは供えられた生花の名前をしげしげと眺め

 

薄笑いを浮かべて言った。

 

「けいちゃんのお兄さんって、もしかしてコンビニにお勤め?」

 

生花の名札に、大手コンビニの名前が書いてあったからだ。

 

 

彼女には、そういうところがある。

 

ご主人は教師、自分は保育士…

 

夫婦でやり甲斐のある職に就いているのが

 

誇りだと言ってはばからない。

 

 

「同級生の中では私が一番幸せで、経済的に恵まれている」

 

ことあるごとに豪語する彼女は、最初から他者を見下げてかかり

 

自分より不幸と決めつけたい願望が言動の端々に現れる。

 

面倒くさい性格以前に、こういうところが嫌われるのだ。

 

 

私は満を持して答えた。

 

「経営者よ。

 

神戸に3軒ぐらい持ってるんよ。

 

よう見てみんさい、下にオーナー互助会と書いてあるが」

 

「ええ~?!」

 

小柄で座高の低いなっちゃんには、見えなかったようだ。

 

蒙古ヒダのかぶさった細い目を見開いて

 

ひどく驚いているなっちゃんに、とても満足する私。

 

 

「びっくりするのは早いで。

 

けいちゃんのお姉さんのご主人は、〇〇食品の副社長じゃ。

 

そこからも生花が来とるけん、焼香に行った時によう見んさい」

 

「ええ~?!…えええ~?!」

 

誰もが知る食品会社の名前を聞いて

 

椅子から飛び上がらんばかりのなっちゃんに、ほくそ笑む私。

 

 

「エリートやらセレブは、なっちゃんとこだけじゃないんよ」

 

「……」

 

押し黙るなっちゃん。

 

ヒヒヒ…言うたった。

 

他人の肩書を自慢するのもどうかと思うが

 

私には自慢できるところがないので仕方がない。

 

 

さて、帰りはサッと帰るのも留守番のプロとして常識。

 

参列した同級生でかたまり、いつまでもグズグズしていると

 

来てない者の話が出て、ろくなことはないのだ。

 

 

なっちゃんは葬儀に来られないと聞いたので

 

翌日は幾分、気が楽だった。

 

マミちゃんも葬儀に来たが、何事もなく終了。

 

任務を無事終えて、ホッとした私である。

 

 

そして今週、ユリちゃんたちは帰国した。

 

「ありがとう!本当に助かったよ!」

 

2人から、それぞれ感謝のLINEが送られてきたので

 

「またいつでもどうぞ」

 

とだけ返信した。

 

なっちゃんやマミちゃんの様子を聞きたかったみたいだけど

 

もう終わったことだもの。

 

詳細を伝えたって、画面にありがとうとごめんねが増えるだけだ。

 

 

それにしても、ご会葬御礼のアラレはおいしかった。

 

近頃はお決まりのお茶っ葉やボールペンでなく

 

良い物が増えている。

 

2人の分を預かっているが、紙袋を見るたびに

 

着服したい衝動にかられる私である。

 

《完》

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

また留守番・2

2019年06月27日 12時20分10秒 | みりこんぐらし

 

「何かあったら連絡してね」

 

そう言い残して機上の人となったユリちゃん。

 

もちろん彼女も私も、何も無いことを願っていた。

 

 

はたして、その「何か」は翌日起きた。

 

「さっき、父が亡くなりました」

 

けいちゃんから5人会のLINEに連絡が…。

 

 

けいちゃんのお父さんは、93才。

 

昨年から入院中だったが

 

2月にあった還暦旅行の帰り、最初の危篤に陥った。

 

「お父ちゃんが…お父ちゃんが…」

 

大騒ぎして病院へ向かったけいちゃんだが

 

数日後、お父さんは華麗に復活。

 

その後は危篤と復活を繰り返し


このたび、ついに絶命となったのだ。

 

 

長い時差を経て、ユリちゃんから私にLINEが送られてきた。

 

「申し訳ないけど、けいちゃんのお父さんの件

 

万事よろしくお願いします。

 

それから、くれぐれもみんなには内密でお願いします」

 

慎重な文面である。

 

 

「ラジャー!」

 

気安く返信しながら、私はちょっと可笑しかった。

 

「そこまで心配しなくても…」

 

そう思ったからだ。

 

 

同窓会の役員だった私は、会からの香典を届ける役目があるので

 

同級生の家の不幸に皆勤している。

 

ユリちゃんについては、家が遠いことと

 

彼女が超多忙なことを誰もが知っているため

 

「今日はユリちゃん、来ないの?」

 

なんて話が出たことは一度も無いからだ。

 

 

万一話が出ても、急用と言えばごまかせるのに…


元マドンナって


期待に応えようとする習性が身についているのかなぁ…


美人は大変だ…


などと考えた。



けれどもハワイと日本でLINEのやり取りをするうち

 

慎重になる理由を知った。

 

「涼子ちゃんに連絡したら、彼女も行けないそうで

 

お香典を立替えてほしいそうです。

 

私も涼子ちゃんも、5千円でお願いします」

 

しらじらしいLINEである。

 

 

不幸の連絡は同窓会の一斉メールで回されるので

 

否が応でも全員が一度に知る。

 

その上、涼子ちゃんとけいちゃんは確かに同級生だが

 

双方が人見知りなので、話をしたことがない。

 

わざわざハワイくんだりから

 

涼子ちゃんに連絡する必要は無いじゃんか。

 

 

ユリちゃんと涼子ちゃんは、一緒に行っているのだ。

 

片方が香典の立替えを頼んだため

 

もう片方も乗っかったに過ぎない。

 

 

そうなると、新たな疑問が発生。

 

マミちゃんが日本にいる疑問である。

 

「お通夜は行けそうにないから、お葬式に行かせてもらうね~」

 

マミちゃんは私に連絡してきた。

 

ということはマミちゃん、今回は外されたらしい。

 

そしてこのことは、マミちゃんに知らされてないらしい。


だからユリちゃんは、神経質なほど慎重なのだ。

 

 

御仏に仕え、善男善女の規範であるべきユリちゃんとしては

 

マミちゃんの除外を口に出すのが、はばかられる。

 

そのためユリちゃんからのLINEには

 

やたらと「みんな」や「誰にも」が登場し

 

その後には「秘密」「内緒」「内密」が続くのだ。

 

「みんな」や「誰にも」で、察してちょうだいよ…

 

そう言いたいのだろう。

 

 

通常なら、しらじらしい嘘までつかれて

 

「バカにするな」といった気分になるかもしれない。

 

が、こちとら留守番のプロじゃ。

 

嫁いで39年、夫の両親の旅行では

 

ことごとく留守番を引き受けてきた。

 

年に一度や二度ではなく、ほぼ毎月である。

 

 

いつも「土産がいるから人に言うな」と口止めされ

 

どうしようもなくて禁を破った時には、後から厳しく責められた。

 

それでこっちも、だんだん上達。

 

来客や近所の不幸を口から出まかせで乗り切り

 

すぐにでも帰って来るふうを装ったものだ。

 

 

これに比べりゃ、チョロいぜ。

 

秘密を守り切って任務を遂行するという決意の前には

 

誘われなかったマミちゃんがかわいそう…とか

 

私にまで嘘をつかなくても…などといった

 

女々しい感情なんて吹っ飛ぶのさ。

 

 

ちなみにマミちゃんが外された理由は、何となくわかる。

 

おっとりして優しい彼女のことは私も大好きなんだけど

 

近年、大好きなお酒がめっきり弱くなった。

 

酔うと声がやたら大きくなり、忘れ物や紛失物はしょっちゅう。

 

しかも千鳥足であらぬ方角へ行ってしまうため

 

介助が必要なのだ。

 

たまに会うなら面白いが、連れて歩くとなると手がかかる…

 

おそらくこれが原因。

 

 

それはともかく、私は心配になった。

 

ユリちゃんが5人会のLINEで、けいちゃんにお悔みを言うと

 

外国にいることがバレてしまうではないか。

 

 

私とのやり取りも、ユリちゃんからの発信は現地時間の4時

 

こっちが受け取って返信すると15時の表示。

 

あまりに不自然じゃないか。

 

当事者で余裕の無いけいちゃんと

 

スマホ初心者で眼の悪いモンちゃんはごまかせても


肝心のマミちゃんは、LINEに詳しくて海外旅行が好き。

 

時差で全てを知ってしまうのではないかと思った。

 

 

しかし、さすが旅慣れている人は違う。

 

職業柄、人の不幸には人一倍丁寧なユリちゃんから

 

けいちゃんへのお悔みのLINEは送信されなかった。

 

送らないのが一番安全と踏んだらしい。

 

 

訃報を聞いた翌日、お通夜が行われた。

 

私はユリちゃんと涼子ちゃんの香典を携え

 

自宅からほど近い葬儀場へ赴いた。

 

《続く》 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

また留守番・1

2019年06月26日 07時35分45秒 | みりこんぐらし

先日、同級生の友人ユリちゃんはバカンスに旅立った。

 

お寺の奥さんをやっている彼女は

 

二つのお寺を守っているので超多忙だ。

 

二つのお寺というのは嫁ぎ先と、後継者のいない実家である。

 

どちらもユリちゃんのご主人が僧侶を務め

 

彼女はそのマネジメントや接客

 

行事の采配、出納管理などの社務を行っている。

 

 

たまに一週間ほど休みを取って

 

海外旅行に出かけるのが彼女の楽しみ。

 

電話一本で帰って来られる国内では、休養にならないからだ。

 

 

今回の行先は、一昨年の秋と同じくハワイ。

 

一昨年は私も誘われたが、断った。

 

何年か前なら暇だったので、ホイホイと行ったかもしれないが

 

今は夫と息子たち3人の男が家にいる上に、姑仕えの身。

 

毎日じゃないけど会社の仕事もある。

 

6泊8日の留守は、まず不可能だ。

 

 

結局ユリちゃんは、いつもの5人会の一人マミちゃんと


同じく同級生でハワイ暮らしの経験がある、独身の涼子ちゃん

 

それから私の代わりに誰か知らない彼女の友人を誘い

 

4人でハワイに旅立った。

 

 

この時、私は留守番を担当。

 

同級生の親が亡くなった場合に備えてである。

 

不幸があった時、地元周辺で暮らす同窓会のメンバーは

 

通夜か葬儀にできるだけ参列するのが恒例だ。

 

一度に3人抜けたら目立つので

 

それをごまかすのと、香典の立替えが私の任務である。

 

 

なぜそこまで気を遣うかというと、ひとえに『なっちゃん対策』。

 

なっちゃんというのは、やはり同級生だ。

 

決して悪い子ではない。

 

真面目な保育士で、同窓会の活動にも熱心である。

 

 

ただし彼女の場合、熱心過ぎることが問題。


10年ほど前、隣の市に家を買って地元を離れたのを機に

 

なっちゃんの同窓会愛はより強くなった。

 

家が遠くなった自分だけ、のけ者にされていないか…

 

自分を除いた他のメンバーで、個人的な飲食が行われていないか…

 

彼女は常に目を光らせ、同級生の動向を

 

全て把握しなければ気が済まなくなったのだ。

 

 

彼女の情報網は、地元で生活する6人の兄姉を始め

 

保育園の教え子と、その親たちによって張り巡らされている。

 

それだけではない。

 

地元で暮らす同級生の男子とその妻も、我々にとっては危険だ。

 

彼らの子供たちの多くは、なっちゃんの勤める町内の保育園に行った。

 

皆、我が子の恩師が

 

まさか同級生女子のプライバシーを探っているとは

 

夢にも思わないため、喜んで情報を提供する。

 

 

狭い田舎町でこれをやられたら、穴はほぼ無い。

 

彼女の目を盗み、仲良しだけで何かやることは

 

かなりの困難を要する。

 

 

そしてなっちゃんを除外したことが

 

図らずも発覚した場合、厄介なことになる。

 

「何で誘ってくれなかったの!」

 

「自分たちだけで楽しんでいいと思ってるわけ!」

 

個別の電話攻撃の後は、会うたびにキーキーと

 

恨みごとを言われ続ける。

 

 

ただしユリちゃんと私への抗議は無い。

 

ユリちゃんは職業柄

 

やんわり説き伏せる技術を持っているのもあるが

 

実は怒らせたら誰よりも怖いのを本能で知っているからで

 

私の方は、口数の多さで返り討ちにされるからだ。

 

 

なっちゃんは、おとなしい相手をちゃんと選んでいた。

 

そこがかえって病的に感じられ、なっちゃんはますます怖がられる。

 

その雰囲気を感じ取り、なっちゃんの干渉はますます強まる。

 

この10年、その繰り返しだ。

 

 

そんなわけで我々仲良しで結成する5人会のことも

 

なっちゃんに知られてはまずいため、他の同級生には秘密。

 

同級生3人のハワイ行きが発覚したら

 

なっちゃんはどんな暴挙に出るかわからない。

 

私はそんな3人の懸念を払拭するための留守番役だった。

 

 

ユリちゃんたちのハワイ行きは

 

5人会の残りのメンバー、けいちゃんとモンちゃんにも内緒。

 

秘密は徹底しなければ、漏れる恐れが…というほどではない。

 

土産を買うのがかったるいからだと思う。

 

 

この時は誰も亡くならず、平和に終わった。

 

そして今回、ユリちゃん御一行は再びハワイにアロハオエ。

 

私は前回同様、また留守番を引き受ける。

 

 

会員が還暦を迎える年の3月末をもって

 

同窓会は解散するという町の慣例に倣い

 

我々の同窓会も、この3月いっぱいで解散した。

 

そこでひとまず、なっちゃんの縛りから解放されたかに見えたが

 

通夜葬儀の連絡と参列は今まで通り継続されることに決まった。

 

 

皆で遊びに行く計画も、すでに練られている。

 

当面の予定は夏の花火見物と

 

還暦旅行で食べ損ねた蟹を食べるため

 

『かに道楽』へ行くというもの。

 

メンバーの兄が、かに道楽の社員だそう。

 

解散しても何ら変わりは無いため

 

注意一秒けが一生の精神は健在なのである。

 

 

それにしてもユリちゃん、今回は何だか前回と違う感触。

 

「今度の旅行のメンバーは、絶対に言うわけにいかないの」

 

 留守番を頼む口ぶりには、緊張感が漂っていた。

 

 行けないこっちは、メンバーが誰だろうと知ったこっちゃないが

 

 いつになく慎重だ。

 

 

「じゃあ、何かあったら連絡お願いね!絵文字・絵文字・絵文字」

 

ユリちゃんは、関空からのLINEを残して飛び立った。

 

《続く》

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大草原の小さな家

2019年06月19日 09時57分19秒 | みりドラ


 


『大草原の小さな家』は、中学生の時にテレビで知ったと思う。

新天地を目指す旅。

何があっても家族、家族、笑顔、笑顔。

 なんて素晴らしいんだ…。

こんな暮らしがしてみたい…。

私の頭の中にあった三大物語

赤毛のアンも、アルプスの少女ハイジも

小公女も吹っ飛んだ。


これらの共通点は「親の不在によって生じる各種の不都合」。

女の子が読む本といったら、たいていそんな屈折した話だ。

しかし『大草原の小さな家』は違う。

逆境をものともせず良い子に成長するという

教訓めいたところが無く、手放しで楽しめた。


そんなある日、学校の図書室で

『大草原の小さな家』というタイトルの本を発見。

ドラマの原作らしいではないか。


夢中で読んだが、期待に反して内容はテレビと異なっていた。

何もない所で火をおこすことから始めるサバイバル本か

家事の指南書みたい。


バターの作り方も書かれていたが

まず牛の乳しぼりから始めるという

気が遠くなるような工程。

できあがったバターを薄黄色に着色するため

すりおろした人参の汁を加えると書いてあった。

そうまでして色付けをする必要があるのかどうか

中学生の私は頭をひねるのだった。


ともあれこれで、昔の旅や何もない所での生活が

かなり大変そうなのはわかった。

生活全般がキリスト信仰を中心に営まれるのは

面倒くさそうだし、狼なんかも出てくるというではないか。

というわけで、私の憧れは消滅。

が、ドラマのほうは大好きで

放映されるたびに見て現在に至る。


お父さん役のマイケル・ランドン、超ステキ。

でも一番好きなのは、オルソン夫人と娘のネリー。

同じ町で、スーパーみたいな店を経営する資産家だ。

母娘ともども、意地が悪くてどうしようもない。

橋田須賀子の渡る世間…なんて目じゃない。

この2人が出てくるとワクワクする。


さて冒頭の絵は、お父さん。

説明が必要な似顔絵って、どうよ…とも思うが

仕方がない。

お母さんも並べようとしたけど、挫折。

お父さんを描いていて、思った。

「これ描けたら、江口洋介から竹内力まで描けるわ~」
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

みりこん流・ドラマの見方

2019年06月12日 14時59分03秒 | みりこん流

主婦時々事務の私は家にいることが多いので

 

楽しみといったらテレビドラマを見ることくらいしかない。

 

とはいえ姑仕えの身、テレビにばかりかじりついてもいられず

 

台所にいる時だけなので、そう長い時間ではない。

 

 

家事の合間に見るテレビは、サスペンスが多い。

 

見るのはほとんど昼間なので、サスペンスの再放送ばかりだから。

 

 

古い刑事もので注目するのは、ストーリーでも出演者でもない。

 

ひたすらホワイトボード。

 

殺害現場の写真と共に、被害者と容疑者の顔写真が貼ってあり

 

その下に色々書いて捜査の参考にする

 

刑事ドラマではお決まりの、あのホワイトボードだ。

 

制作スタッフが書くんだろうけど

 

綺麗な字、汚い字、雑な字…

 

番組によって、さまざまな字と構成を眺めることができる。

 

 

きちんとした字で、整然とわかりやすく書いてある時は

 

そこそこお金をかけて作られた、見ごたえのある内容の場合が多い。

 

文字も構成も滅茶苦茶で、画面にチラッと映った時

 

一瞬で内容を把握できない仕上がりの場合は

 

役者の格も内容もそれなり。

 

この自分なりの基準が合っていると、ニンマリ。

 

 

やがて、私は究極の楽しみを発見してしまった。

 

日本の番組を日本の役者が演じているはずなのに

 

ホワイトボードには、なぜか見慣れぬ文字が…。

 

例えばそれは、『木』と『又』が並んだ文字。

 

ドラマの脈絡から察するに

 

被害者である『権藤さん』の『権』だ。

 

 

もしも旧漢字であったとしても

 

ドラマは平成時代に作られたものなので

 

日常的に旧漢字を使う製作スタッフは、すでにいないはず。

 

中国人が書いたと思っていいのではないだろうか。

 

 

日本の正しい当用漢字を知らない人に

 

ホワイトボードを任せられる神経と

 

任せられて書ける厚かましさに、舌なめずりする私。

 

そして気づかないのか、わざとなのか

 

そのまま放映されていることも、十分に怪しめる。

 

 

ホワイトボードをこの視線で見るようになると

 

たまに未知の漢字が発見できるようになる。

 

テレビ業界は平成の早期から

 

この鈍感と厚かましさに席巻されていたらしい。

 

そして知らなかったのは、視聴者だけらしい。

 

 

ホワイトボードだけではない。

 

セリフもおかしい時がある。

 

これは数年前に放映されたサスペンスの再放送だったが

 

若いカップルが、道で倒れている男性を発見した。

 

「もしもし?もしもし?」

 

男性に駆け寄り、口々に延々と繰り返しながら

 

倒れている者を揺さぶり続けるカップル。

 

 

いまどきの日本で、行き倒れの人に声をかける時

 

「もしもし?」なんて言う若者がおろうか。

 

若い子だって、意識不明の人をむやみに揺さぶっちゃいけないことは

 

知っているのではなかろうか。

 

 

倒れている人を見つけたら、もしもしと声をかけ

 

とにかく揺さぶるのが親切という

 

制作側の既成概念に基づくセリフではないのか。

 

韓流ドラマの中では、人がヒステリーを起こしてよく倒れるが

 

その時に見る光景と似ている。

 

はい、制作したのは隣国の人という疑惑が発生。

 

 

こうなると、出演者の一人一人を観察する楽しみが出てくる。

 

目の釣り具合はどうか、耳たぶはあるか

 

下まぶたのたるみは…アゴは張ってないか…

 

まじまじと見る。

 

もちろん、多数発見できる。

 

 

女性の衣装にも注目だ。

 

主役にはスタイリストが付いていることもあるので

 

スタイリストの付かない脇役、ちょい役が主な対象。

 

上下が派手な原色同士ではないか…

 

そうでなければ、ひどく地味で貧乏くさくないか…

 

つまり中間の無い両極端が、高確率で発見できる。

 

 

さらに、靴も注目箇所。

 

ファッション後進国は、靴選びに繊細な気を回せないものだ。

 

同じ理由でバッグやアクセサリーもしかり。

 

 

はは~ん…と納得したら、俄然楽しみになってくるのがエンドロール。

 

監督と脚本家の姓名を確認するためだ。

 

が、こんな時は日本ふうの名前と決まっている。

 

チッ。

 

 

こうして私は、短く貴重なテレビ鑑賞で重箱の隅をつついては

 

リアルタイムで放映された頃には

 

気づかなかった己の油断を悔やみ

 

「だまされるものか」と、決心を新たにする。

 

趣味の一つだ。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大奥

2019年06月08日 09時45分14秒 | みりドラ


大富豪同心のコメント欄で


 


ぎんどさんから「大奥の上位の役の独特の髷」


 


というご要望をいただいた。


 


一度描きたかったので、ふたつ返事で取り組む。


 


後ろ向きでないため、細かい所までは描けなかったが


 


この程度でお茶を濁させていただこう。


 


 


で、こんな頭、やろうと思っても


 


なかなかできないのはわかった。


 


中年になると髪の毛の量が減るだけでなく


 


コシが無くなるからだ。


 


 


そこへセットのために油脂を塗りたくり


 


滅多にシャンプーもしないとなれば、まず早々に禿げる。


 


地毛でこのヘアスタイルを何年も保つのは、ほぼ不可能。


 


髷が結えなくなったら暗黙の掟で引退…


 


もしくはお金のある人だったら


 


付け毛やカツラを使用していたと思われる。


 


 


ところで私は大奥、大好き。


 


和洋を問わず、お金のかかった豪華絢爛が好きなのだ。


 


それに、窮屈な制約の世界も大好物。


 


自由を謳歌するニイちゃんとネエちゃんが


 


普段着を着て惚れた腫れたなんか、興味無し。


 


 


「…だったのでございます…」


 


子供の頃、岸田今日子の粛々としたナレーションで進行する


 


テレビドラマの大奥をリアルタイムで見ていた。


 


嫉妬やいじめは当たり前、毒を盛ったり盛られたり


 


井戸に飛び込んで死んだり、幽霊になって出てきたり


 


そりゃもう当時としては画期的なドラマ。


 


夜遅い時間だったので滅多に見られなかったが


 


つくづく「大変そうだなあ」と思ったものだ。


 


 


大奥をテーマにした映画やドラマは、現代でも制作されているが


 


大奥総取締の役は、何といっても浅野ゆう子。


 


しんねりした年増のお局(つぼね)は、彼女のはまり役だと思う。


 


 


中学生で歌手デビューし


 


『恋はダンダン』という歌を歌っていた彼女を


 


テレビで初めて見た時は、ちょっとした衝撃だった。


 


それまで私の認識する芸能人といえば


 


少数の子役を除いて自分より年上のお兄さんやお姉さんばかり。


 


だから芸能界は大人の世界だと思い込んでいたが


 


私より一つ年下の浅野ゆう子がデビューしたことで


 


自分が大きくなったのを実感したからである。


 


以来、ずっと注目してきたが


 


数十年後、まさか大奥に出るとは思わなかった。


 


 


清楚じゃダメ、可憐もダメ、可愛いのもダメ。




かといって不細工じゃあ、なおダメ。


 


声が細いのも、立ち姿が弱々しいのもダメ。


 


美しくてケンがあって、ドスがきいていなければ


 


女の園で頂点に君臨する総取締は務まらない。


 


 


映画やドラマでたびたび取り上げられる大奥ものだが


 


近年は色恋やハーレム状のシステムばかりに


 


スポットが当たりがち。


 


管理職の矜持や悲哀を眉毛一つで表現できる


 


浅野ゆう子の総取締をぜひまた見たいものだ。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今年も祭

2019年06月05日 09時59分03秒 | みりこんぐらし

先週末は、お祭を手伝った。

 

同級生の友人、ユリちゃんの実家のお寺で開催される祭だ。

 

お手伝いは昨年に引き続き、2回目。

 

いつもの同級生けいちゃん、マミちゃん、モンちゃん、私の4人で

 

早朝から出かけた。

 

 

担当は、今年も台所。

 

檀家のおばあちゃん2人と一緒に

 

スタッフの昼ご飯と晩ご飯を作るのだ。

 

 

我々はこの日に向け、昨年の反省点や改善点を話し合ってきた。

 

中でも重要案件だったのは、ラスボス美和子ちゃんの対策である。

 

美和子ちゃんは、総代の姉。

 

我々より2つ年上で、中学のブラスバンド部の先輩だ。

 

 

お寺の祭は檀家、地元有志、商工会、観光協会など

 

さまざまな団体が関わる。

 

その中で檀家の総代は最上階に位置する別格の存在で

 

祭は総代の開会宣言に始まり、閉会宣言で終わる。

 

美和子ちゃんはその姉であるから

 

本人的には祭ピラミッドの頂点にいるつもり。

 

誰かれ構わず、きつい、気まま、気位が高いの3Kを振りかざすため

 

皆から恐れられていた。

 

 

昨年の失敗は、この美和子ちゃんに弁当の分配を担当させたことにある。

 

祭では、食べきれないほどの料理に加え

 

夕食の一品として仕出し弁当を配るのが慣例。

 

私は途中から福引の受付に流れたため、全容を知らなかったが

 

美和子ちゃんは長時間にわたって

 

弁当の保管場所となった台所をひっかき回し

 

一同は疲労困憊したという。

 

 

特に、唯一ブラスバンド部員でなかったけいちゃんと

 

3年生から入部したモンちゃんは

 

美和子ちゃんと面識が無いために風当たりが強く

 

つらい数時間を過ごしたようだ。

 

「あの人がいるなら、もう行きたくない」

 

とまで言い出した。

 

 

ユリちゃんも、皆の気持ちはよくわかっている。

 

彼女に対する美和子ちゃんの態度は、ひどいものだ。

 

が、総代はお寺の命綱。

 

その家族の悪口なんて、口が裂けても言えない立場だった。

 

 

そこで私は先月、ユリちゃんに提案した。

 

「弁当を廃止したら?」

 

美和子ちゃんをどうにかするより

 

いっそ出番を無くした方が早いではないか。

 

 

しかし、そのことは言わない。

 

表向きは、あくまで私の気まぐれ。

 

「料理はたくさんあるんだから、弁当まで必要無いと思う。

 

足りなきゃナンボでも作る」

 

 

けいちゃんが真っ先に賛成し

 

弁当の代わりに自分が何か作って持っていくと言ったので

 

私はトマトソースのハンバーグとスパゲティ・ナポリタンを所望した。

 

昔、大阪で喫茶店のママをしていた彼女の得意料理だ。

 

 

祭で作る料理は鶏のから揚げ、キュウリなます、ヒジキ煮

 

マカロニサラダ、みそ汁など。

 

たくさん作るのでおいしいが、なにしろ色が地味。

 

檀家のおばあちゃんたちが、それぞれ自分の作れる物を作って何十年

 

これが定番になりました…というメニューだ。

 

 

それはそれでけっこうなことだけど、手伝うスタッフは若者が多い。

 

赤い色を足せば食卓が締まって華やぐし

 

洋食屋っぽい雰囲気に若者は喜ぶはず。

 

 

が、そのことも言わない。

 

メニューが地味だの、今どき鶏のから揚げなんて誰も喜ばないだの

 

しろうとの色彩構成では食卓が暗くぼやけて

 

もてなされた印象が薄いだの、本当のことは言えないじゃないか。

 

 

ユリちゃんはこの提案を非常に喜んだ。

 

弁当を用意する側なので、言い出しにくかったらしい。

 

弁当は廃止となった。

 

 

そして今年、この方針は当たった。

 

鮮やかな赤いソースのかかったハンバーグとスパゲティに

 

歓声を上げる若者たち。

 

人に作らせておきながら、自分の演出に満足する

 

卑怯きわまりない私よ。

 

 

そして弁当を廃止したので、祭が終わるまでラスボスの登場は無く

 

嘘のように順調だった。

 

打ち上げパーティーは総代が主催するため、ラスボスをはずせなかったが

 

昨年の失敗を教訓に、我々は満を持して臨んだ。

 

 

打ち上げの行われる裏庭は、日没から蚊取り線香を焚いておくこと…

 

打ち上げメニューのモツ鍋は、早くから湯を沸騰させておくこと…

 

飲食に必要なオタマや食器類も、早めに用意しておくこと…

 

初めてだった昨年はこれらが間に合わず

 

ラスボスのイライラをさく裂させてしまった。

 

 

今年はモツ鍋以外の料理をすくう

 

スプーンが出てないと指摘されたくらいで

 

たいした問題は起きなかった。

 

来年はスプーンを山ほど用意することを誓う。

 

 

こうして祭は終った。

 

順調、順調と思っていたが、よく考えたら

 

蒸し暑かった去年と違って今年は涼しかった。

 

気温が適切だと動きやすいし、人の心も和む。

 

それでスムーズだったのかも。

 

 

昨夜、我々5人会は祭の慰労会と称して集まり

 

いつもの暴飲暴食にいそしんだ。

 

この女子会にあたって、ユリちゃんのご主人モクネン君は


「会費の足しに」と、ユリちゃんにポケットマネーをことづけていた。


我々の働きが嬉しかったのだそう。

 

いいとこ、あるじゃん。

 

 

しかしこれは働きというより

 

渾身でラスボスをガードしたことへの報酬だったような気がする。

 

今凝っている梅酒を飲みすぎたのか、今日は胃が痛む。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする