殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

虎の穴

2008年12月27日 08時02分23秒 | 不倫…戦いの記録
ほどなく、実家の近所…徒歩10秒の場所にある

小規模な病院の求人広告を目にしました。


「給食調理員募集」


実家の両親も60代後半…出来れば近くにいたい。

一番簡単に取れそうで、老人になっても役に立ちそうな資格…調理師もあり?

候補の一つとして、軽い気持ちで面接を申し込みました。


チョロいと思っていた面接が、実は難関でした。

私の前歴がネックとなりました。

面接をしたのは現場の人ではなく、事務長と庶務課長でしたが

「大手企業で経理と人事に携わっていた」というのが

どうもいけないらしいのです。

その時、理由はまったくわかりませんでした。

「ここは汚れ仕事だし、無理かと思いますよ…」

「給与とか、労働条件にも詳しいんですよね…ちょっと、うちでは…」

        あきらかに入れたくない素振り…


完全に断られると思い

他にもとりあえず宅建と介護の資格を取りたかったので

講習の準備などしていたら

2日後に採用決定の電話がありました。

あんなにもったいぶってたのに、なんで?…ですが

他に来る人がいなかったからでしょう。


その病院の面接を受けたことを人に話すと

「やめたほうがいい」と口を揃えて言われました。

「虎の穴と呼ばれている」

「鬼のような調理員と、悪魔のような栄養士がいると聞いた」

「人が続かないことで有名な恐ろしい所だから、いつも募集しているのだ」

しばらくよそで暮らしていたので

その悪名高き職場の噂を知らなかったのでした。


でも私は、承諾してしまったのです。

期待してくださったかた、すいませんでした。

私は給食のおばちゃんになることにしたのです。


調理師免許の受験資格が得られる2年をメドに

噂どおりつらくても頑張ろう…。

人の言う「恐ろしい、とんでもない所」というのを一度体験してみたい…。

自分の生まれたその病院に、魅入られたように入りました。


私と一緒に、50才の女性も採用されました。

結局2人しか面接に来ず、続くかどうかもわからないので

どちらも入れたらしいです。


給食調理員になることに対して、私にはひとつ打算がありました。

夫と色恋の関係になった後、相手が気になるのは妻のことだと思います。

「女房は給食のおばさん」と聞いて

それでも夫を自己申告どおりの

バリバリの青年実業家と思う女性がいるでしょうか。

一瞬で夫の嘘に疑いを持つのではないでしょうか。


長男に続いて、次男も家業への入社を希望するようになっていました。

二人とも、よそへ行くのが嫌なのではなく

業種と重機が好きでたまらないのですからどうにもなりません。

修行に出し、よそでもやって行ける確信を得てからですが

次男の夢もなんとか叶えてやりたいと思いました。


兄弟仲良く一緒に働くなんて、絵空事です。

夫がいい例です。

時期が来たら、私は適性を見てどちらか一人をふるい落とすつもりです。


          そんなに甘くないんじゃ



しかし、女性に無駄な夢を見せないこと…

それは精神的、金銭的平和を意味していました。

風が吹けば桶屋が儲かる…といった類の

はなはだ頼りない理論ではありますが

相手の野心から生じる余計な問題を最初から排除し

難しい年頃の次男を良い環境で成人させて当面の夢を叶えてやるには

私がユニーク?な仕事に就くことが

援護射撃になるのではないかと思いました。


パートなので、給料は見事に3分の1となりましたが

やってみると案外奥が深くて面白い仕事でした。

ちょうど、一般的な病院食から

個別対応のきめ細かい治療食への移行が始まった時期で

症状別の介護病食作りは、親や自分の将来にもかなり役立ちそうでした。


虎の穴は、私には思ったより過ごしやすい印象でしたが

浮気されるつらさに比べたら、地獄すら居心地がいいというところでしょうか。

「頑張りましょうね」と誓い合って一緒に入った人は

1ヶ月もたたないうちにノイローゼで退職しました。

コメント (11)
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