夫が出て行き、やれやれ…と寝ていると
また電話が鳴りました。
「頼む…来てくれ…俺じゃあどうにもならない…」
無視して電話を切ろうとしたら、C子の声が聞こえました。
「来れるもんなら来てみやがれ!
早く離婚しろ!クソババア!」
…なんですと?
「おまえがさっさと別れないから悪いんだぁっ」
すでに絶叫です。
夫の携帯を取り上げたのでしょう。
「バカヤロー!」
「やかましい!野良犬がっ!
今から行くから、待っとれ!」
完全にぶちキレました。
挑発に乗ったと言えばそれまでですが、正直、暴れたかったのです。
C子が介入してからの様々な出来事は
自分の激しい気性を押さえ込む作業との戦いでした。
二人ともバカだから、放っておくのが一番いい…と考えていましたが
バカも超ド級になってくると
どこかでバシッと叩いてやらないとどこまでも際限なくのさばります。
子供がはしゃいで止まらなくなるのと同じです。
私は相当ナメられていたようです。
あのアパートに着きました。
相変わらず玄関の前は洗濯物ののれんです。
ドアを開けると
ストーブの熱で狭い部屋はムンムンしており
小さい子供のいる家庭特有の
甘酸っぱいような臭いが立ちこめていました。
少し酔いがさめたのか
私をチラリと見て下を向くC子と、そばに正座する夫。
上がり込んで、C子の前に立ちました。
「言いたいことがあるんなら、言ってみな」
C子のふてくされた顔を見ていると
ボコボコにしてやりたくなります。
「さあ、言いなよ。さっきの元気はどうした」
C子は口をとがらせて、黙ったままです。
浅黒い顔の上に福笑いのようにまき散らされた
つり目や広がった鼻、分厚い唇を見ていると
ぎゅうっとつねってやりたくなります。
「…だって、別れてくれないんだもん…」
なにが「だって」だ
何に対しての「だって」だ
なにが「だもん」だ
…そのツラで!
こういう、おのれを知らないタイプに
理屈は通用しないし、何を言ってもコタえません。
会社に一人いるので、よくわかっていました。
好き好んで仲良くする気がなければ
罵倒か無視しか無いのです。
C子の胸ぐらをつかみました。
「ええ加減にせぇよ」
C子はつかまれたまま、ツーンと横を向きました。
どこまでもふてぶてしい女です。
C子を床にたたきつけるように手を離すと
「ああっ」
と赤茶けた畳の上に大袈裟に倒れ込みました。
「暴力よね、これ」
金髪に近い傷んだ髪の間から、こちらをにらみつけています。
まったく図太い女です。
「違~う。暴力っていうのは、こうやるんじゃ!」
C子のほっぺたを張り飛ばしました。
「ギャアッ!」
C子はまたオーバーな叫び声を挙げ、夫にすがりつきます。
「傷害よっ!」
素早く夫を盾にして、自分はその後ろに回っています。
「これが傷害なら、おまえは泥棒じゃ~!」
夫を盗られているという観念はまったく無いのですが
ここは場面の構成上…。
「野良犬のぶんざいで、今度私に迷惑かけたら、殺す」
固まっている二人を置いて、部屋を出ようとしました。
M美が奥のふすまの蔭から、半分顔を出してのぞいていました。
「バイバイ」
と言うと
「バイバイ」
と、ゼンマイ仕掛けの人形のように手を振りました。
外に出てから思い出しました。
「火をつけるって言ってたっけ…」
あれはどうなったんだろう…。
すっかり忘れていました。
残念~!
また電話が鳴りました。
「頼む…来てくれ…俺じゃあどうにもならない…」
無視して電話を切ろうとしたら、C子の声が聞こえました。
「来れるもんなら来てみやがれ!
早く離婚しろ!クソババア!」
…なんですと?
「おまえがさっさと別れないから悪いんだぁっ」
すでに絶叫です。
夫の携帯を取り上げたのでしょう。
「バカヤロー!」
「やかましい!野良犬がっ!
今から行くから、待っとれ!」
完全にぶちキレました。
挑発に乗ったと言えばそれまでですが、正直、暴れたかったのです。
C子が介入してからの様々な出来事は
自分の激しい気性を押さえ込む作業との戦いでした。
二人ともバカだから、放っておくのが一番いい…と考えていましたが
バカも超ド級になってくると
どこかでバシッと叩いてやらないとどこまでも際限なくのさばります。
子供がはしゃいで止まらなくなるのと同じです。
私は相当ナメられていたようです。
あのアパートに着きました。
相変わらず玄関の前は洗濯物ののれんです。
ドアを開けると
ストーブの熱で狭い部屋はムンムンしており
小さい子供のいる家庭特有の
甘酸っぱいような臭いが立ちこめていました。
少し酔いがさめたのか
私をチラリと見て下を向くC子と、そばに正座する夫。
上がり込んで、C子の前に立ちました。
「言いたいことがあるんなら、言ってみな」
C子のふてくされた顔を見ていると
ボコボコにしてやりたくなります。
「さあ、言いなよ。さっきの元気はどうした」
C子は口をとがらせて、黙ったままです。
浅黒い顔の上に福笑いのようにまき散らされた
つり目や広がった鼻、分厚い唇を見ていると
ぎゅうっとつねってやりたくなります。
「…だって、別れてくれないんだもん…」
なにが「だって」だ
何に対しての「だって」だ
なにが「だもん」だ
…そのツラで!
こういう、おのれを知らないタイプに
理屈は通用しないし、何を言ってもコタえません。
会社に一人いるので、よくわかっていました。
好き好んで仲良くする気がなければ
罵倒か無視しか無いのです。
C子の胸ぐらをつかみました。
「ええ加減にせぇよ」
C子はつかまれたまま、ツーンと横を向きました。
どこまでもふてぶてしい女です。
C子を床にたたきつけるように手を離すと
「ああっ」
と赤茶けた畳の上に大袈裟に倒れ込みました。
「暴力よね、これ」
金髪に近い傷んだ髪の間から、こちらをにらみつけています。
まったく図太い女です。
「違~う。暴力っていうのは、こうやるんじゃ!」
C子のほっぺたを張り飛ばしました。
「ギャアッ!」
C子はまたオーバーな叫び声を挙げ、夫にすがりつきます。
「傷害よっ!」
素早く夫を盾にして、自分はその後ろに回っています。
「これが傷害なら、おまえは泥棒じゃ~!」
夫を盗られているという観念はまったく無いのですが
ここは場面の構成上…。
「野良犬のぶんざいで、今度私に迷惑かけたら、殺す」
固まっている二人を置いて、部屋を出ようとしました。
M美が奥のふすまの蔭から、半分顔を出してのぞいていました。
「バイバイ」
と言うと
「バイバイ」
と、ゼンマイ仕掛けの人形のように手を振りました。
外に出てから思い出しました。
「火をつけるって言ってたっけ…」
あれはどうなったんだろう…。
すっかり忘れていました。
残念~!