殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

華麗なる変身

2009年12月29日 09時32分00秒 | みりこんぐらし
先日、夫と二人で外にいたら

お派手な美女が親しげに会釈する。

こちらも会釈を返すが、夫はあきらかに彼女を知っており

私には心当たりがまったくない。

    「誰だっけ?」

「ヨシダさんの奥さんだよ…これからスナックに出勤するんだ」

    「ええっ?!」


近所に住むヨシダさんとこの奥さんは

いつもスッピンにジャージで子育て中の

言っちゃあナンだが子豚ちゃんのようなおかた…

お世辞にも美しいとは…


「化粧したらああなるんだ」

    「ええっ?」

そう言われれば、ピアスだらけの耳に見覚えが…

    「うお~!たまげた~!ああまで化けられるもんかい!」

「最初は地味だったけど、だんだん濃くなってきたからわかる」

夫は得意げ。


ごっついツケマツゲにカツラまでかぶっているから、まったくの別人。

のっぺりしてる分、化粧映えするのかもしれない…などと考える。

エベレスト級のハイヒールで、背まで高くなっておりなさる。

原形をとどめない高度な技術は、梅沢富美男クラス。

いやはや、見事な化けっぷりだ。 


近頃私の住む町では

赤ちゃんを持つ若妻のスナック勤めが増えたように思う。

旦那さんが帰宅したら、タッチ交代で子供を預けて行くのだ。


水商売も景気は最悪だろうが、雇う側にとって人妻は

ヒマな時に休んでもらえて便利に使える。

人妻のほうも、家でおむつを替えているよりはお金になる。

旦那が子守りなら託児所もいらないし

オシャレも出来て、つかの間の開放感を味わえるかもしれん。


この場合、たいていそのうち離婚する。

奧さんに彼氏が出来たり、衣装や装飾品でかえって家計が圧迫され

旦那が子守りに飽きたところで喧嘩が増えるのだ。

まあ、乳飲み子置いてのスナック勤めを容認する旦那のほうも

それなりの人物であろうから、これは正しい判断かもしれない。


それはそれで各自の生き方…けっこうなことだが

これが後日、意外な方向から私に関与してくる結果となった。


…このところ、夫の愛用する百円ライターが美しい。

白地に細密な花の絵がプリントしてあるものだ。

アマリリス、アヤメ、ツバキなど、いくつか種類がある。


裏を見ると、どれもつるりと真っ白で何も書かれていない。

しかしその真っ白は、何かで文字を削り取られてツヤを失った白である。

どうやら私が見てはいけないものが書かれているらしい。

だったら持たなきゃいいものを

せっせと消してまで身近に置いてしまうのが、夫らしいところである。

ライターはだんだん増えていき

ほどなく12種類の花のコレクションが完成した。


元来うかつな夫のこと

中にはうっかり裏を消し忘れたものも出現するようになった。

“スナックR(仮名)”。

電話番号もある。

数年前、駅前に出来た店だ。

はは~ん。


この習性は夫特有のものなのか

好きな女の店のライターを集めるのは、以前もやっていた。

そういえば…と、学習能力の無い私は思い出す。


思い起こせば、まず最初にゴルフコンペありき。

流れで行った店で、獲物をゲットしたらしい。

お酒を飲まない夫は、こういうチャンスを実にうまく活用する。


以来数ヶ月、またパチンコを始めただの

父親の代理で商工会の集まりだのと言っては

帰りが遅くなる日が増えたように思う。


すでに確認の必要は無い。

このところ見え隠れしていた女性は、そこにお勤めなのであろう。

昼間は地味でも、夜になったら美しく変身なさるのかもしれない。

ヨシダさんとこの奧さんも、その店にいるのだ。

だからあれほど変貌していてもわかるのだ。

世事にうとい夫が、近所だからというだけで判別できるはずがない。


しかし、そんなことに目くじらなんて立てない。

どうせそのうち飽きて捨てられる。

それに、これは使えるのじゃ。


…テーブルにライターをずらりと並べておく。

この間から、近所の空き地で古い電化製品を

無料で引き取る催しをやっている。

そのチラシを眺めながら

「年末で色々処分したいけど…五十肩が痛くて」

と言ってみる。


夫は「オレが持って行く」と言い出し

汗びっしょりになって、納戸に押し込んでいた古い電子レンジや食器洗浄機

壊れた扇風機や掃除機などをすっかり処分してくれた。

ブラボー!スナックR!

感謝しますっ!

長年、頭痛のタネだったガラクタは一掃され

涙が出そうなほどありがたかった。


次にやった時は、パチンコで勝ったと言ってお金をくれた。

本当かどうかは知らない。

とても嬉しい。


大掃除も手伝ってくれた。

本当にありがたい。

そんなどさくさにまぎれて、ライターはいつの間にか姿を消す。

でもまた、脱いだ服のポケットから

いくらでも出てくるのだ。


これを今、時々やっている。

そうねぇ…さりげなく、ひょっこりやるのがコツかしら。

なにしろ五十肩なもんで。
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貧者の一灯

2009年12月26日 12時08分12秒 | みりこんぐらし
クリスマス…皆さんいかがお過ごしでしたか?


うちはもう大人ばかりの所帯だし

クリスマスだから特別何かする…ということもないが

約1名、ケーキを食べないと気が済まないのがいる。

今年も「オレが用意する!」と張り切っていた。


当日、夫はデコレーションケーキの箱を抱えて帰宅した。

今年は「手作りケーキも売っている喫茶店」で買ったと言う。

我が町の誇り…人間でなく閑古鳥が闊歩するたそがれ地区…

あの“駅前薄情商店街”にある古い店だ。


わーい、わーい、パパありがとう…一応喜ぶ。

これも営業さ。

円滑な家庭生活は、女の機嫌で決まるのだ。

すでに円満ではないので、せめて円滑を目標にしている。

夫も嬉しそう。

「ごはんの後、みんなで食べようぜ!」


ここ数年、クリスマス・イブには家に居る夫。

独身女性に相手にしてもらえなくなった。

家庭のある女は、家族でパーティーなんぞするので

夫も手持ちぶさたでござる。


「イブは私のために…クリスマスはご家族と一緒にいてあげてね」

夫も昔は、こちらを憐れむ余裕を見せる勘違い女にそう言われ

忠実に実行していた頃もあったが

そういうイベント関係のいざこざがすっかり無くなってみると

私としても、いまひとつ盛り上がりに欠ける。


長男の帰りを待ってさっそくケーキの箱を開ける。

この子も彼女いない歴2年…去年に続き、家族で過ごすクリスマスだ。

「あっ…」

我々は息を飲む。

すごいケーキ。

生クリームを塗っていない裸のスポンジの上に

ただ缶詰のパインと桃が鎮座している。

昭和中期を彷彿とさせるシンプルかつ、めっぽういにしえなデザイン。


気を取り直して入刀。

「ねえ…このスポンジ、スーパーで売ってるやつじゃん」

家で飾り付けを楽しむ、真空パックに入ったスポンジだ。

菓子パンに似た食感と、あと口の悪さが証拠。


「ひどいねぇ…他に無かったの?」

ブツブツ言って、長男に厳しく注意される。

「せっかく父さんが買って来てくれたのに、そういう言い方はないだろ」

     「すいません…」

しょうがない。

同じ買うならあの商店街で…と日頃主張する私も悪いのだ。


しかしその長男も一口食べて、うっ…とうなる。

「あの店も終わったな」

ほれ!ごらん!

数百円の材料費で手間いらず…これに3千いくらの値をつけ

クリスマス用の飾りとロウソクを添える根性がふてぶてしいではないか。


「変わってて、いいと思ったんだ」

と夫。

そりゃ、変わってるけどさ。

とうとうここまできたか…家族で商店街を案じる聖夜であった。


案じるといえば、私には悩みがある。

去年から月に一度、女ばかり数人で

友人の経営する小さな食堂を訪れ、飲食にいそしむようになった。

あの商店街ではないが、できるだけ地元で遊び

貧者の一灯なりにお金を落とそうという主旨である。


そこへ行けば、店で忙しい友人も参加できる。

今までなぜこのことに気づかなかったのか

開始当初は、悔しい気持ちになったものだ。


月に一度の「例会」は、最初は楽しかった。

しかし…私はだんだんこの集まりが苦になってきたのだ。


まず客層が良くない。

しつこく話しかけられるくらいで、たいしたことはないんだけど

店の雰囲気と出されるものに見合った客しか来ないということだ。

そうだ…これがあったから、ずっと避けていたのだ…

今さらながらに思い出すが、もう遅い。


次に、だんだん支払いが高くなる。

友人も気を使って、メニューに無い目新しいものを

食べきれないほど用意してくれるけど

駅の立ち食いそば屋でカニ会席を食べる気分かしらん。


一番うっとうしいのは、友人の旦那である。

年の離れた夫婦なので、すでにおじいさんだ。

おじいさんは、この集まりを楽しみにしている。


最初はヒマな店の隅で、おとなしく手伝う程度だったのが

近頃では完全に入会状態。

女同士の楽しいおしゃべりに口をはさみ

老人特有のマイペースで仕切りたがる。


妻の友人をもてなしているつもりだろうけど

セコい私としては

金を払いながら老人のおもりをさせられるのは

どうも割に合わないような気が…。


「不景気でお客さんは減るし

 年金生活の夫と学生の子供を抱えて大変なの。

 店があるから気晴らしにも出られないし…」

そう言われて「じゃあ、うちらが行けばいいじゃん!」

とひらめいた会であった。

不景気、不景気と言うが、客の厚情にあぐらをかくのも

閑古鳥の好物ではないのか。


この気持ちをまだ誰にも言ってない。

他の子がどう思っているかも不明だ。

本心を言って年寄りを傷つけるのは気が引ける。

ひそかに死を待ったところで、まだ先のような気がする。

黙って抜けるか、自然消滅を狙うしかないだろう。

つくづく自分はバカだと思う。
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毒さがし

2009年12月24日 10時43分59秒 | みりこんぐらし
最初に謝っておく。

ファンの人がいたら申し訳ない。


自己啓発本を読み漁った時期があるのは、以前お話した。

最初はあるお金持ちの本から始まる。

買った古本の中にたまたま紛れ込んでいたのだ。

情景を思い浮かべる必要がなく、話し言葉なので読みやすい。

病院給食の仕事がきつく、心身共にくたくただった時で

ついハマッてしまった。


しかしそのうち、違和感が芽生え始める。

本の中に、講演会の録音CDがくっついているのもあり

聞いてみたらガヤガヤうるさくて、何言ってんだかよくわからない。


通らない声の持ち主でありながら、人前で話したがる不可解…。

金持ちなのに、会場で適当に録音する「ついで」のセコさ…。

通勤の車で何回も聞けって、あんた…

この雑音の中から聞き取ろうと神経集中させたら、事故るで。


たいして面白くない所でも

取り巻きたちがバカウケして笑いまくるのにしらけるうち

本の内容と同じことをしゃべっているのに気づく。

な~んだ!講演を文字に起こしただけ…

ぼったくり感すらおぼえる。


本には、自分をいじめる身内に礼を言えと書いてある。

「それで何か変わるのでしょうか?」という問いに対し

「あなたがありがとうを言う名人になれます」


見返りを期待しないのが幸福への近道ということであろう。

自分は悟っているかもしれないが、たずねるほうは赤ちゃんと同じだ。

弱者を茶化してケムに巻く…

盲信され慣れた者の冷酷を感じ、ほくそ笑む私。


その弟子だか子分だかの人たちの本も一通り読んだ。

どれも、この商売をして良かった

信じてついてきて良かったという賛美で親分をサポート。

親分は親分で、子分の頑張りを賞賛。

持ちつ持たれつの楽しい仲間自慢を

お金払って読まされる我々一般人…なんだか変。


文中、地震発生時に出張中だった女性の著者はおっしゃる。

「早く帰って陣頭指揮とらなきゃ」

は…恥ずかしい…。


何が恥ずかしいのかと聞かれたら困るのだが

災害で社員が混乱している状況下、急いで帰るという

経営者として当たり前の行為を

戦国武将みたいにご大層な表現で行を埋める幼さが

私の脇腹をくすぐるのだ。

すごいだ立派だといっても、ま、このレベル。

黙ってさっさと帰れや。


目的は自己啓発でなく

文中に散る「毒さがし」の楽しみに変わっていった。


経営コンサルタントの人の本も読んでいた。

彼が言うには、どうやら地球は危ないらしい。

そんな大変な時に、よその経営相談に乗ってる場合じゃなかろうと思うが

余計なお世話であろう。


いいことも書いてあるけど

そのわりにはオフィスへ面会に来た人たちの実名をズラズラ挙げ

職業や功績などのプロフィールつきでご自慢。

ご芳名の中に「○○夫人」というのもある。

これ、旦那がエラいだけじゃん。

そこらへんの感覚のズレ、サイコー!


ありがとうと言えばすべて良し…のおじさんのもさんざん読んだ。

いつでもどこでもありがとう…そう逃げ道を作っておけば

「言ったとおりにしたけど、何もいいこと起きなかったぞ」

なんて文句を言われることもない。

口にするのは「ありがとう」だけだから安全だもんね~

キャッキャッ。


啓発、スピリチュアル、宗教、経済、それらの混合型…

たいていのものは読んだと思うが、突っ込みどころは満載。

何より不思議だったのは、まことしやかに心のありかたを説きながら

不倫全盛の現代において

「不倫は悪」という定義が滅多に出てこないことだった。


意地の悪い私としては「地獄へ落ちる」だの

「無残な死に方をする」くらいは言ってほしいわけ。

しかしほとんどが触れてないか、うわべだけ流す感じ。

修行させてもらっているのです…

つらい時は自分の悪いところを反省して、まず自分を変えましょう…

聞き飽きたおざなり語。

じゃかましいわい。


自我を殺し、そう考えるのが一番手っ取り早いという理屈はわかる。

しかし読者の中には、苦しんでいる最中の人もいる。

出血多量で泣き叫んでるところへ

「別の部分を切って、そっちに意識を持ってけ」

と言われてるのと同じだ。


よく考えてみれば当然なのだ。

不倫はすでに珍しいことではない。

人口の何割かはあこがれ、そして実行している日常行為なのだ。

それを真っ向から非難しては、本の売り上げが減る。


しかも著者の中には、された経験は無いけど

してる人はいるらしい。

取り巻きの中からよりどりみどりだという。

だからおおらかなのねん。


自分はとある不思議な世界から来た…

自分にはナントカ神がついている…

ある日私を光が包み…

な~んてこともたまに書いてあって、そこそこ驚けるオマケつき。


著者たちは、最初からある程度以上の位置にいる少数派である。

だからこそ多くの人々の憧れの存在となり得る。

ちょちょいと思想を小出しにし、働かずして得る高収入…

ステキなお仲間に囲まれ、人に感謝されて充実した楽しい毎日…

幸福を誇示し、僕も私もああなりたい!

とうらやましがらせることがお金になる。

世の中が暗くなるほど儲かる、これは新しい形のビジネスなのだ。


逆転の発想、突飛な考え方は

厳しい現実から目先を転換するには確かに便利だ。

しかし私の場合、問題は

転換した先に何も見あたらないことである。


その時は、買った金額に見合う効果を期待して

とりあえず納得したような気分になり、方向転換を試みる。

でも向いた方角が真っ暗なので、また元の地点に戻る…エンドレス。

さっさと悟ってもらっちゃ儲からんからだ…などと考える。

どこまでも腐っている私さ。


どんなに素晴らしいことが書かれていても、最終目的は仲間集め。

お客、会員、信者…つまり一人アタマなんぼの金。

最初に本で心をとらえておけば、商売は楽だ。

これ買えって言えば、喜んで買ってくれる。

講演会に来いって言えば、這ってでも来てくれる。

最高の固定客である。

不況には、これが強い。


厳しい世情の昨今

イエスマンに囲まれて高みの見物としゃれる著者より

実際に世間で揉まれている読者のほうがよっぽど経験豊富だ。

本当にエライのは、一般人のあんたたちだぞ!

家で暮らす無能な私は、心からそう思う。
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外見主義

2009年12月22日 08時34分53秒 | みりこんぐらし
いつもおとなしいショートヘアでここに登場する私だが

描くのが面倒だからそういうことにしている。

本当の頭はちょっと違う。

逆立っている。


ワックスをつけて下から上に持ち上げると

一瞬で引力に逆らった頭になる。

人呼んでホストヘア。

またの名をスーパーサイヤ人。

技術を駆使して恐ろしくなるほど削(そ)ぎ

毛先が鳥の羽のようにフワフワしている。


「ステキねえ!“髪が”!」とよく言われる。

地味にしたい時は、ピタッとなでつける。

自分では、ニュースキャスターの安藤優子ふうと思いたい。

このツーウェイが非常に便利で気に入っている。


髪はイケてるものの、その下にくっついている顔は

オバチャンなのがはなはだ残念だ。

美容室のおっさん先生も

我が身を省みず派手好きな私をあわれに思い

慈悲の心で対処してくれているんだろうなぁ…と申し訳なく思う。


私はごく若い頃から、年を取るのが恐ろしかった。

大柄なので、それでなくても年齢より上に見られた。

これで本当に年を取ったらどうなるんじゃ!と心配になり

せめてこれ以上老けないように

年配の女性を観察して研究を重ねてきた。

そして月日は流れ、いよいよ“年寄り界”へと足を踏み入れようとしている。

ここでぜひとも研究の成果を出したいところだ。


先日、友人が「傘をプレゼントしてあげる」と言ってくれた。

「どんな色がいい?」

と聞かれ、即答。

     「白か水色かピンク!」

「その色が好きなの?」

いいえ!…私はきっぱり答える。   

     「顔映りのいい色よっ!」


この年になると、好きな色なんてワガママ言ってられないのよっ!

とにかく顔色が明るく見えるものよっ!

…そして白い傘が届き、満足する私。


洋服も、暗い色はなるべく着ないよう努める。

できるだけ顔映りのいい白っぽいもの、淡いもの

そうでなければ赤やオレンジ。


これらの色は注意が必要だ。

汚れに対してもそうだが、印象の強い色だと

「また着てる」と思われる。

ああ…気を使う。

はからずも黒っぽいものを着た時は

明るい色のスカーフやインナーで差し色。

まったく…気を使う。

手帳や財布の色さえ、指映りのいい色を…と考えているのだ。

ほんとに…気を使う。


長年の研究の末?なぜ年寄りは年寄りの顔になるのかが判明した。

誰でもわかるシミ、シワ、タルミの老化三きょうだいは置いといて…

問題はマユであった。


額にシワが寄ってずり上がったり

視力低下で目を細める習慣にも関係するのであろうが

とにかく加齢と共に、マユが額を目指して上へ上へと上がっていく。

加えて、他の部品はたるんで下に、下にと大名行列。

顔の中に生まれるこの距離が老けを加速させる。


年を取ると、老眼が進んで化粧もおざなりになるという。

だもんで、何も考えず、ただマユ毛のあるところへマユを描く。

年月と共に目からどんどんかけ離れていくのを

無意識に毛を追って描いてしまう悪循環。


もしもいずれマユ上昇の事態に陥った場合

心して下のほうに描こうと決めている。

必要ならば、そり落とす覚悟である。


もうひとつは、目のフチ。

マツゲの内側にある、1ミリくらいの白いところ。

そこの下まぶたのほうが、加齢とともに黄または赤みを帯びていく。

白目も赤黄色く濁るが、連動してフチの色も濁るのだ。

若い頃のように、白いところが白いままではいられない。

こうなると、目が一気に年寄りっぽくなる。

しかも老化でマツゲの本数が減少するため、いっそう強調される。


この対策としては、アイラインで切り抜けるしかない。

マツゲの内側にインサイドラインを引いて、ごまかす予定。

黄やら赤になるなら、塗りつぶしてしまえ…という魂胆だ。

そこへマスカラの黒で白目とのコントラストを強調し

さらに隠蔽する作戦。


何も手を加えず軽やかに老いるのもよかろうが

私は今のところ、ケバく生々しい婆さんの路線を選ぶつもりだ。

サッチーあたりでどうだろう。

やがて手が震えるようになり

アイラインを引く元気も無くなった頃、お迎えが来る予定でいる。


これほど研究と努力を重ねているというのに

現時点ではあまり効果が出てないのが

残念といえば残念だ。
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婚活

2009年12月20日 09時53分48秒 | みりこんぐらし
夫の姉カンジワ・ルイーゼが副会長を務める「女性経営者の会」。

たまたま旦那や実家が自営だったというだけで

なにやら錯覚を起こした者ばかりが集い群れ

町の未来や経営を語り合う中高年・借り着・勘違い集団である。


基礎の無いところから自力で起業した人は入会しない。

そういう人は、現実逃避をしているヒマはないのだ。


来年のテーマは“婚活”だそうである。

少子化と人口流出に歯止めをかけるべく

イベントなど企画して、出会いの場を提供すると張り切っている。

今度はやり手婆の真似事をしたくなったらしい。

その根底には、家財道具、衣服など

結婚に必要なものを扱う商売人の思惑も隠されている。


都会ならいざしらず、この中途半端な田舎町で家に残り

嫁をもらいそびれている男の中味など知れている。

うちの子もその予備軍だ。

ヒマと好奇心にあかせて出会いをお世話したところで

かえって罪なことになるほうに一票。

婚活より清掃活動でもしたほうが、よっぽど人の役に立つと思うが

余計なお世話であろう。


さて、婚活と聞いて思い出すのは

夫の会社に入り込んだ未亡人、イサコである。

弁当を持って行って彼女が受け取った時は

そりゃもうぶったまげたずら。


イサコのいい所は、たまたま彼に妻がいただの

葛藤に揺れるおのれに酔うだの

「善人の事故」を装うようなケチくさいことをしなかったことだ。

目指すは妻の座。

欲しいもののためには手段を選ばない。

目的が明確なところが、過ぎてみればすがすがしい。


彼女は一時期、町のマドンナ的存在であった。

正統派とは少し違う、淫靡な香り漂う裏マドンナというところだろうか。

略奪愛の末、早々に未亡人になり

実家のあるこちらに戻ってからは

あまりガラのおよろしくないおかたのイロだった経歴から

一般の男からは相手にされなかったが、ワイルド系の男には人気があった。


携帯電話も早くから持っていたし

家の電話とは別に、自室に自分専用電話を引いているという。

連絡の取り方に手を抜かない…

まだメールの無かった時代

これは婚活の常識といえるのではあるまいか。


その留守電がすごいらしいと人から聞いた。

すごい留守電とはどんなのか…私は聞いてみたくなった。

イサコとその母親による執拗ないたずら電話に辟易していた時で

腹立ち紛れもあった。


事故死した旦那も、この手で奧さんをノイローゼにして

ゲットしたという。

玉突き式に前のを追っ払っておさまる…これも一応婚活と言えよう。


留守電を聞き、私は感動した。

「ハロー…あなたのイサコです。

 せっかくお電話いただきましたけれど

 ごめんなさい…今留守にしてま~す。

 ステキな声を吹き込んでね。

 3・2・1・Q!」

書いていて赤面しそうであるが、この通りだ。

これが恥ずかしいようでは、婚活なんぞやれんのだ。


松田聖子が彼女のヘアメイクの腕に惚れ込み

ここぞという時には、一回50万円で呼び出されるという。

もちろん本人の自己申告。

こういうことも、躊躇なくさらりと言ってのけなければならないのだ。

「私、本当は野口五郎の妹なの」

と告白する女の子が下の学年にいたが、その類であろう。


今はそうでもないけど

十何年前の田舎は「東京」という2文字にまだ敏感であった。

東京のどの部分でもいい…そこにいたというだけでステイタスであった。

憧れの都、東京で芸能界に出入りしていたなどと吹聴すれば

注目を浴びること間違いなし。

その上、芸能人のプライバシーを小出しに披露しておれば

田舎ではスターだ。

誰も知らないのだから、内容の真偽は重要ではない。


それにまんまと引っかかったのが、まぎれもない我が夫である。

華やかな美貌で人目は引いたが

まともな男なら眺めるだけにとどめておくものを

夫は手を出した。

彼女を手に入れて得意満面だったものの

今考えると、本当はライバルなどいなかったのかもしれない。


母親が熱心だったことも、婚活には重要であった。

娘の望みが叶うように協力を惜しまない。

ひいてはそれが、自身の老後の安定にもつながるのだ。


結果的に婚活は失敗した。

ターゲットが、見た目や外聞ほど裕福ではなかったからだ。

しかしその努力は評価してやりたいと思う。


夫と別れた後の彼女は

いつまで経っても松田聖子のところへは戻らなかった。

今でも母親と市内に住み、トラックの運転手をしている。

自称とはいえ、せっかくいい腕があるそうなのに

もったいないことである。
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特効薬

2009年12月17日 09時09分39秒 | みりこんぐらし
白状しよう…1ヶ月前から、左肩が五十肩になった。

五十も近いので病名に不足は無いが

痛いのなんのって…吐き気がするくらいだ。


原因はわかっている…アルトサックスさ。

慣れないので、左手の親指一本で総重量の半分近くを支える格好になる。

つい力が入ってしまい、どうにか吹けるようになった頃

発症してしまった。

年取ってから新しいことを始めるって大変なんだなぁ…

とつくづく思う。


泣きながらバンドリーダー…通称「モトジメ」に

回復するまで、軽いフルートに換えてくれ…と懇願する。

モトジメは「この根性無し!」とののしるが

背に腹は代えられない。


一緒にアルトサックスに挑戦しよう…そして夢はジャズ…

二人は確かに誓い合った。

彼の意気込みはすさまじく

吹いていると下唇の内側に下の歯が当たってズタズタになるとかで

歯医者へ走り、下歯を丸く削ってもらった。

モトジメは金管楽器出身なので、口元の力加減がつかみにくいのだ。

「慣れたら大丈夫なのに。バ~カで~!」

とさんざんあざ笑ったバチが当たった。


病院にも行ったし、色々やってみたがいっこうに良くならない。

しかたなくとうとう最後の手段…「アレ」を使うことにした。

アレとは、知人のおばあちゃんが開発した

民間療法の真っ黒い液体である。


脱脂綿に浸したものをナイロン袋に入れ

患部に当てれば、たちどころに痛みはおさまる。

おばあちゃんはもうずいぶん前に亡くなったので

これは言わば形見の品である。


効き目は強力が、ただひとつ問題が…。

ものすご~くクサい。

ニオイのほうも強力なのだ。

楽になるのはわかっていても

これをやると、通常の社会生活はまず送れない。

部屋にも服にも髪にもおぞましき香りが染みつく。

これさえあれば、村八分や嫌われ者の名は欲しいままである。


もはやこれまで…

予定と予定の合間を選んで

勇気を振り絞り、禁断の一升瓶を開ける。

ボンッ…と音がして、たちのぼるハゲしい香り…。

肥だめに酢とニンニクをぶち込んだ感じかしらん。


「クサい」

「あっちへ行け」

家族の迫害を受けながら耐える。

片袖を脱いで湿布してると…

あら?なんだか試合後に肩をアイシングしている甲子園投手

菊池クンみたいじゃない?

ハンカチ王子みたいじゃない?

などと見せびらかすが

「ハンカチ王子は右じゃ」

と冷たく言われる。


孤独とニオイに耐えた甲斐あって、かなり楽になった。

それに気をよくして義母のところへ行ったら

「こないだから太ももの付け根が痛い」

と言う。

義母はすでにこの液体の愛用者だ。

それで痛みが取れないとすると…私は考える。


「骨盤よ!骨盤が歪んでるのよっ!さあっ!ユカに寝て!」

自分のやっている体操を教える。

「痛い…できない…」

と言うのを

「歪んでる人は痛いのよっ!もう一回!イチ、ニ、イチ、二!」

と何回もやらせる。


「もうダメ…」

「なに言ってんの!これで若返るのよ!

 ワン、ツー、ワン、ツー!」

若返ると聞いて、歯を食いしばり頑張る義母。


数日後、夫が

「これからオフクロを病院に連れて行って来る」

と早めに帰って来た。

「どこか悪いの?」

「太ももの神経痛で、おとといから通ってる。

 歩くのもつらいらしいんだ」


骨盤の歪みではなかったのだ…。

神経痛患者に、無理な体操を強要。

すまん…ヨシコ…。
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人生案内

2009年12月14日 11時47分32秒 | 前向き論
昨日の日曜日。

朝食後、新聞を手に取る。

せわしくページをめくり、目指すは『人生案内』。

読者から寄せられた身の上相談に

各方面の先生がたが答えるコーナーである。

人の不幸は蜜の味というが、まったくさまざまな悩みがあり

さまざまな解答があるものだ。


今回のは、なかなか壮絶であった。

浮気を責めたら、1年前にご主人が自殺してしまったという

五十代後半の女性からの相談だ。


一度発覚した時には「もう会わない」と約束してくれた。

      (守るもんかい…

       そんな根性があったら最初に浮気を我慢しとるわい)

しかしそれから毎朝、ご主人の車に

相手の女性から手紙が差し込まれるようになった。

      (早起きなんだね…アナログなところが、かえって怖いぞ) 

奧さんは、それをいつも回収していた。

      (うわ~!)  

いつか終わると我慢していたが

手紙には奧さんの中傷が書かれるようになった。

      (読んでたんかいっ!)

ご主人はその女性と再び連絡をとってしまった。

奧さんは激昂してご主人を無視するようになり、食事の支度もやめた。

そしたらご主人が自殺した。


「夫を追い詰めてしまったと自分を責め、むなしい毎日…

 どうすればいいのでしょう」


その日の解答者は精神科医だ。

誰が良くて、誰が悪いという話を越えた悲劇…

発覚後の奧さんの反応は理解出来る…

ご主人の性格や心の病気が絡んでいる可能性もあるので

自分を責めずに、供養をしながらしっかり生きて行きましょう…           

かいつまむと、このような内容であった。


浮気相手の行動に、あえて触れなかったのは優しさである。

この次から気をつけようという段階のものではないので

それに触れても解決にはならない。

とりあえず相談者の痛みを軽減しようと

限られた文字数の中で心をくだく解答者の誠意に感心する。

このために読売新聞を購読していると言っても過言ではない。


そこで終わればいいものを

いろいろと思ってしまう。

いつもながら身勝手で根性の腐っている私よ。


せっせと手紙を書いて、彼の家へ運ぶ浮気相手。

まことに勤勉である。

老後の生活がかかっていたのかもしれない。

いまどき自ら飛脚になるほどのレトロ主義ならば

ぜひとも古式ゆかしく彼の跡を追っていただきたいものだが

こんな時、こういう女性は素早くドライな現代人になる。


手紙を毎朝回収して読む奧さん。

こちらも勤勉である。

まあ、とても見て見ぬふりなど出来まい。

こうなってしまったのも、元はといえば浮気相手のせい…

それなのに向こうは口をぬぐって知らん顔を決め込んで…

介入したばっかりに

その思いは日を追うにつれて膨らむのではなかろうか。

苦しみの根っこは、そこではないかと私は思う。


放っておいて読ませていたらどうなっていただろう。

そのうち毎朝の手紙に不気味さを感じて

元々繊細で真面目なご主人は、気持ちが冷めたであろう。

そんな女、性格も文字も内容も程度は知れている。


しかし気持ちが冷めたとしても

ご主人は、この一途で執拗な浮気相手とうまく別れられそうにない。

どっちにしても苦悩して死を選んでしまうような気がする。


浮気に向いてなかったのだ…ご主人も、奧さんも、浮気相手も。

やはり避けることの難しい悲劇であった。

彼らは真面目すぎた。

ああ、私のいい加減さとだらしなさを分けてあげたかった。

夫の自信過剰と厚かましさを分けてあげたかった。

亡くなったご主人の冥福を祈ると共に

奧さんの心安かれと願わずにはいられない。


午後から友人に会う。

昔ながらの喫茶店で待ち合わせして、楽しくおしゃべり。

この子も亭主とうまくいってない歴が長い。


この亭主もうちの夫と同級生だ。

このところ続けて亡くなった夫の同級生の話になる。

「ツジモト君でしょ…ヤマモト君でしょ…ヨシモト君でしょ…」

あれ?みんな“モト”がつく!

彼女は“スギモト”だ。 

     「次はあんたのとこかもよ!」

「ええっ?」

どうしよう…と言いながら、口元がゆるむスギモト夫人。


でもね…いざ死なれたら淋しいかもしれない…

彼女は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
     
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泥沼の作り方

2009年12月11日 16時36分51秒 | 前向き論
私は昔、面食いだった。

好きな俳優にそっくりな、夫の顔が好きだった。

私は今もバカだが、当時も相当バカであった。


夫の顔が実際どの程度かというと

男性がしみじみ

「しかし、いい男だな~…」

とため息をつく部類である。

どこへ行っても一回で顔を記憶されるので

便利なこともあれば不都合なこともある。


新婚旅行(国内)では、現地の運転手に別の意味で気に入られ

私は常に敵対視されて、実に面白くない数日を過ごした。

なぜ私が、夫と彼のツーショットを撮ってやらねばならんのだ。

帰ったら必ず写真を送ってくれ…と言われたが

腹が立ったので、送ってやらなかった。

今なら写真に本人を添付して送る。


女性は、好き嫌いが真っ二つに分かれるようだ。

両極というのは、好きでも嫌いでも

それだけ気持ちが濃厚になる。

そこでおかしなことになっていく。


ちなみに私の子供は似ていない。

夫の姉、カンジワ・ルイーゼも似ていない。

夫は突然変異だったようである。


こんなことをなぜ今書くかというと

それらはすべて過去の栄光となり果てたからだ。

今、目の前にいるのは

濃い顔のごついおじいさん…フッフッフ。


そして思うのだ。

夫は庶民として生まれたので顔が威力を発揮したが

もしもセレブに生まれていたら、多少違っていたのではないかと。


いいとこに生まれていれば、周囲にいるのは

しかるべき教育を受けた、しかるべき家庭の女性ということになる。

しかるべき女性は、誠実と安定性を重要視する傾向にある。

容貌なんぞ、着る物その他のアイテムでどうにでもなるからだ。

顔で男を選ぶようなことはしないだろうし

夫もまた、顔で世間が渡って行けるという女のような甘い考えは持たず

人格や頭脳を磨いたであろう。


そしてセレブならば、不倫とて泥沼とならずにすむような気がする。

セレブになったことがないのでわからないが

たいていのことはお金でカタがつくため

同じ不倫でも、もちっとスマートに泳げるのではなかろうか。


…以下は我が家のことだと思っていただきたい。

庶民だから、出会う相手も庶民だ。

双方とも裕福ではないので

できれば少ない元手で効率良く盛り上がりたい。

これもエコといえよう。


消費活動で交際に華を添えることが出来ないため

マンネリは早めに訪れる。

そこで打開策として、結婚だの将来だのと口走る。

お金を使わずにつなぎ止めるには、それしか無いからだ。


相手もまた、現状から抜け出したい願望を持つ庶民であるから

すぐその気になる。

行き先がどこであろうと、今よりはマシに思える。


なにしろ庶民だから、やることもあまり上品とはいえない。

本妻の命を狙ったり、子供にちょっかい出したり

先に男の親に取り入って味方につけようと

思い切った姑息な手段を思いつく。

庶民というのはおっとりしておらず、現状に満足していないため

性急に結果を見たがる特徴がある。

とりあえず破壊してスカッとするほう…

しかもタダですむほうを優先してしまうのだ。


女房(私ね)も、もちろん庶民だ。

亭主の稼ぎが稼ぎなもんで

気晴らしに買物三昧、お出かけ三昧というわけにもいかない。

パートから帰ったら洗濯物をたたんで

粗末な夕食を作り、歯ぎしりしながら待つしかない。


庶民は損得に敏感だ。

女房は、相手がそうまでして欲しがる亭主に

まだ自分の知らないお得な部分が隠されているのでは…と錯覚し

女もまた、女房がそこまで手放すまいとするからには

一緒になればさぞいいことが待っているに違いない…

という思い込みに燃える。

男はそれを眺めて「オレって罪な男…」

などと安い満足感に酔う。


三者の打算と欲が、最初は恋だった清水を濁らせていく。

泥沼は庶民が作ると言っても過言ではないように思う。


さて、タイガー・ウッズのとこも大変らしいが

彼の場合、色々とコンプレックスが強いのか

白人・下女陰(シモボボ…自分より下っ端の女…下品ですまん)

限定であるところが興味深い。

やはり泥沼は庶民が作るらしい。
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いちご大福

2009年12月09日 11時38分37秒 | みりこんぐらし
オケ屋(仮名)のいちご大福が好きだ。

ここのは白あんである。

トロトロに柔らかいお餅の中に

さっぱりした白あんを薄~くまとった

とびきり甘くて大きないちご様がおられる。

私が死んだら、ぜひ供えてもらいたい。


オケ屋は、家から車で1時間くらいの所にある。

しかも、行ったついでに買物…なんていうしゃれた町ではない。

だからそこへ行くには、いちご大福のためだけ…という

強い情熱が必要だ。


先日買いに行った。

お世話になっている人にも食べてもらいたいと思い

6個入りを7箱買った。

だが、この日はひとつ問題があった。

夫が一緒だったのだ。


この男、自分のやってることがやってることなので

普段は私の言動に寛大だ。

何をしようと、口をはさむことはない。

ま、それだけ妻に興味が無いからとも言えるがね。


しかし、豹変することが2つだけある。

家具を買うのと、人にものをあげることだ。

女以外のことで喧嘩になったケースを思い出すと

たいていこの2つが原因。


たとえば去年…モダンなチェストを衝動買いした。

小さいので車で持ち帰ることにしたはいいが

帰り道でヤツの怒るまいことか!


いやがらせに猛スピードで蛇行運転を始める。

後部座席に乗せたチェストの角が

車のリアウィンドに何度も激しく当たり

チェストと車のガラスは大きな傷を負った。

運ばされるのがイヤなのかもしれないが

配達してもらう時も、類似の反応を示す。


人に物をあげる時も厄介だ。

全力で阻止しようとする。

誰かにしてもらうばかりの人生を送ってきたため

たとえわずかなものでも、あげることに慣れていないのだ。


何年前だったろうか、私の真珠のネックレスを盗み

女の厄年にプレゼントしておきながら

肉体関係の無い他人にはこれである。


余談であるが、この事実をずいぶん後になって偶然知った。

消えた時期、ブランド、玉のサイズからいって間違いない。

どこかの葬式で「彼がくれた」と自慢していたというものを

奪還する気にはなれなかった。

真珠はすでに穢(けが)れたのだ。

女房のお古と知らずに喜ぶのが、なんとなくあわれに思えたし

指輪のほうでなくて良かった…という気持ちもあった。


この時の夫の心情は

女の欲しがっている物がたまたまそこにあった…

というごくライトな感覚だったと察する。

飽き始めている心に自分でも気づかず

タダで済みながら女の機嫌のとれる方法を模索したに過ぎない。

当然であるが、そこに妻の人権は無い。


まだのぼせているなら宝石店へ連れて行く。

金持ちならいざ知らず、気持ちの離れ始めた一般庶民の男としては

そこでもっと高価な物に目移りされたら困るのだ。


オスの不可解な行動というのは、たいていこのような時期に起こる。

ちょっとうざいかも…でも会えばかわいいし…

蜜月が終焉に向かって揺さぶられるブランコ期。

突飛で残酷に映る行為は、その混乱から生じたものである。

自分でもわかってないのだから、他者に理解できるはずがない。


そしてブランコ期は、のぼせ期より何倍も長い。

だからその間に色々なことが起きてしまう。

ここらへんのメカニズムに気づいていなければ

夫の愚行を鬼畜の仕打ちと、不必要に恨んだであろう。


ま、女には心も体も物も、気前良く何でもやるくせに

人にはうるさい。

憎たらしいのは同じだ。


しかし、最近は私も考えるのだ。

今までは争いを避け、だましだましやり過ごしてきたが

年を取ると一緒に出かける機会も増えて、そうも言っていられない。

そこで慣れさせたいという衝動が働き

その足で各方面へ配達する暴挙に出た。

生ものというのが、私の決心を促した。


四軒回った頃には、夫はもう息も絶え絶え。

脂汗まで流してものも言わず、顔が鬼。

今日はこれくらいで勘弁してやろう…と帰宅する。


    「明日会社に2箱持って行ってね」

そこで夫はとうとうキレた。

「おまえ!さっき行った誰かとデキてるんじゃないのかっ!」

    「お~ほほほ!妬ける~?」

…そんな男がいたら、いちご大福ぐらいじゃすまんわい。


翌日、やっと機嫌を直した夫は

いちご大福2箱をシブシブ会社に持って行った。

「今日中に食べないと腐るよ!」が効いたらしい。


その日、仕事から帰るなり嬉しそうに言う。

「みんな喜んで食べてくれたよ。

 こんなうまいもん初めてという子もいた。

 お客さんにも出したら、すごく喜んだ」

     「人の喜ぶ顔って、嬉しいでしょ」

「うん!」


夫、半世紀余り生きて、初めて人様に何かさしあげる喜びを知る。

つらい戦いであった。
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写真クイズ

2009年12月07日 18時21分35秒 | みりこんぐらし
忘年会のシーズンである。

宴会で何か盛り上がるゲームをしたい…とお考えの幹事さん。

写真クイズはいかがだろう。


病院の忘年会。

ある年、子供の頃の写真を一枚ずつスライドで皆に見せ

それが誰だか当てるクイズがあった。

当てた人にはタオルやお菓子などの賞品が出る。

私は今でも、これを思いついた人を表彰したい気持ちになる。


写真の提供者は、エラい人が対象だ。

皆が知っている人でなければ、盛り上がらないからである。

詰め襟でかしこまる幼少時代の老医師

髪があった頃の部長など、なんてことない写真もあるが

なんといっても面白いのは

昭和20年代から30年代にかけて生まれた

古めの女たちのもの。


相手によって態度を変える女…

立場に乗じて威張り散らす女…

どうしたことか、悪い女ほど写真が見事なのだ。


「どこの難民?」

「本当に日本?」

「戦前?」

照明を落とした会場で、失礼なささやきに見守られ

白黒写真が披露される。

並みの水準ではない。

「火垂るの墓」の世界と申しましょうか…

皆が息を飲み、一瞬シーンとなるランク。


揃いも揃って、うす汚れた大判なお顔に

つんつるてんのカーディガンやズボン…

栄養の行き届かないバサバサの寝癖頭…。

“見てはいけないもの”が映し出される。


「ハイ!ハイ!」と手を挙げて解答する皆の衆。

しかし、今とのギャップが大きすぎて

たいてい一発では当たらない。


写真を人前にさらすからには、一応吟味したはずである。

これを選び抜いた一枚として、人に見せられる神経…

しかも得意満面で「かわいい!」の褒め言葉を期待しながら

周囲を見回す本人…

なるほどねぇ!


選ぼうにも、こんなのしか無いんだ…

それが普通と思って成長したんだ…

だから今の収入と地位に固執するんだ…

自分のことは棚に上げ、イロイロ納得して喜ぶワタクシ。

いいのさ…シモジモは写真持って来いなんて言われないもんね~♪


若手のものか、カラー写真も一枚あった。

ゴミだらけの土間にたたずむ、ボロをまとった

そりゃもう気の毒な少女…

さんざん爆笑したあげく、我らがドンである栄養士のものと判明。

…めちゃくちゃ気まずいやんけ。


彼女は私より一回り年下である。

やはり強きを助け、弱きをくじく病院精神にのっとって勤務している。

自他共に認める病院一のだてこき(おしゃれさん)も

昔はこうだったのねぇ。

意地悪く微笑むワタクシ。


子供時代の写真というのは、家庭環境が如実に表われる。

田舎だとか、貧富の差と言ってしまえばそれまでだが

たとえ貧しくとも、親が気をつけていれば

どうにか格好はつくはずだ。


普段はどうであれ、写真を撮る時くらい

どこの親でもツバをつけて頭をなでつけてやったり

こざっぱりしたものに着替えさせたりしたもんだ。

それとも、あの病院で写真を要請された人が

たまたま気の利かない親の子供ばかりだったのであろうか。


この結果をかんがみるに、社会的性格と生い立ちは

深い関係があると思うのだが

これは我が病院だけの現象であろうか。

どなたか、機会があったら職場で検証してみていただけないだろうか。

あなたの職場では喜ばれないかもしれないが

少なくとも私は喜ぶ。
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一日一善

2009年12月05日 11時50分26秒 | みりこんぐらし
意外かもしれないが、我々夫婦は

お互いに予定が無い夜、二人で1時間ほどのドライブに出かける。

子供が小さい頃は、いつもみんなで行った。


よそのオネエちゃんに夢中な時は途切れるが

晩酌の習慣が無いから可能な、我が家の夜のイベントである。

この時間は口数の少ない夫が率先して話す貴重な場。

地球温暖化には良くないけど、我が家の温暖化には必要だ。


サウナで火照った体を冷やしたい…

明日の現場の下見がしたい…

誘うのはいつも夫だが、このところ理由が少し変わった。

会社周辺の見廻りである。


先週、車両の一台からウィンカーがはずされて消えていた。

時々嫌がらせで盗まれるバックミラーと違い

車体に埋め込まれているものを盗られると腹が立つらしく

今回は警察を呼んだ。


警察の話によると、最近多いそうだ。

経営難から、部品が壊れたら運転者の責任として

給料から引く会社が増えた。

不注意も劣化も同じ扱いだ。

いやなら辞めてもらってけっこう…という方針。

そこで、発覚する前によそにある同じ車種から失敬する。

バレたら給料引きどころの騒ぎじゃなかろうが

それだけ困窮しているのであろう。


先日、いつものようにパトロール?して帰る途中

大型トレーラーが立ち往生していた。

古い歴史だけが自慢の我が町の道路は

トレーラーが進入できる形状を成していない。

よってこれはとても珍しい光景。


国道から小さい生活道へ迷い込んで

にっちもさっちもいかなくなっている。

ナンバーは、はるか宮崎だ。


「あ~あ…こりゃどうにもならんな」

夫はそう言って通り過ぎようとする。

    「なんとかしてあげてよ」

「なんでオレが?」

    「夜中に知らない所で、どれだけ不安か…」

「これ、○○工場へ来たやつだな。

 初めてで迷ったんだよ」

風向きが悪くなると、話をそらしやがる。


目的地は、夫の会社の向かいにあるその工場しか無い。

遠方の大型車両を受け入れるのは、町内でそこだけだ。

しかし道路事情があるので、さすがにトレーラーはありえない。


私にはわかる…

不況を生き残るため、運送会社は手持ちの車両に合わない仕事を

安値で叩かれて引き受ける。

道路が何だろうと知ったこっちゃない。

実際そこに行くのは従業員だから、どうでもいいのだ。

…などと勝手に思って勝手に腹を立てる。


    「早く行きなさいよっ!」

夫はしぶしぶ後戻りし、車を降りてトレーラーに近付く。

私はぬくぬくと車中からそれを眺めている。


トレーラーの誘導は難しいのだ。

ガソリンスタンドに勤めていた息子の友達も

仕事で誘導中、車体と壁の間にはさまれて亡くなった。

ここは、大型特殊とけん引免許を持つ夫こそふさわしい。

私は!死ぬわけにはいかんのだ。


夫は合図をしながらトレーラーの横を後ろを走り回り

長いことかかって、やっと窮地を脱した。

その後工場まで先導して、搬入口を教える。


翌朝の納品時間まで仮眠をとるそうなので

夫の会社の敷地まで案内した。

靜かだし目の前が海なので、ここなら安心して眠れる。


トレーラーのお兄ちゃんは、本当に嬉しそうだった。

車からそれを見て、私も嬉しかった。

私までノコノコしゃしゃり出たりしない。

礼を言う人数を増やすことはないのだ。


「いいことをすると気持ちがいいもんだなあ」

帰り道、夫は女以外の他人に

初めて打算無き親切をして満足げ。

    「よくやった。いい子だ、いい子だ」

「これからはもっと率先してやろうかな…一日一善を目標に」

    「それがいいわよ。頑張ってね!」


ところであんた…私は言う。

    「明日会ったら、これからは毎回ここで仮眠を取れと

     言っときなさいよ」

「なんでそこまで?!」

    「盗っ人の番人になるじゃんけ」

「おまえ…こないだの時代劇に出て来た

 悪~い女金貸しみたい…」

    「あら?ほめ言葉と受け取っていいかしらん?」

夜の町に、私の笑い声はカカと響くのであった。
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隠れ家ランチ

2009年12月03日 10時04分26秒 | みりこん胃袋物語
一日一組限定…

自宅を開放した隠れ家のようなお店…

素材を生かしたおまかせランチ…

そう聞いて訪ねたのは、とある晩秋であった。


ご一緒したのは、食べ歩きが趣味の上品な奥様たち4人。

その名も「冒険の会」。

私は上品じゃないので会員資格は無いが、時々参加する。


木は森に隠せ…の言葉どおり

住宅街の木造モルタル二階建て、普通のドア、普通の玄関。

腹立たしいほどの隠れ家ぶりだ。


しかし、現われた初老のマダムが普通じゃなかった。

どえりゃ~ベッピンなのだ。

まるで女優。

雰囲気としては草笛光子系。

でもちょっと悪い予感が…作務衣を着ていたからだ。


私は僧職以外で作務衣を着る人間を信用しない。

深い意味は無い。

そっちの方面へ行くか…みたいな所が気にくわないだけ。


「わかりにくかったでしょう」

こぼれるような笑顔でマダムに言われ

「はい。でも探す楽しみもございました」

と答える私。


返事は無かった。

いたずらに美しい人種の多くはそういうものだ。

そこに居るだけで喜ばれる、お得な人生を送ってきたので

機転がきかない。


普通の客間の普通のテーブルに通される。

変わっているところをあげるとすれば

衣紋掛(えもんかけ)に着物を掛けて間仕切りにしているのと

間接照明に竹カゴが使ってある程度であろうか。


「食前酒でございます」

マダムより少し年配の女性が、うやうやしく運んでくる。


さすが、引き立て役として選ばれただけのことはある。

年かさなのが第一条件…

とびきり美しくはないが、さりとて醜くもなく

一般人より水準は高くて、自分より少し落ちる…

美人は、無意識にこういう人をそばに置いて

相乗効果を発揮する才能がある。


「ちっさ!」

私は思わず口走る。

ミニチュアのワイングラスに、濃いめの梅酒が5㏄くらい入っている。

惜しいなら出さないでもらいたいぞよ…などと思いながら

厚手のグラスの舌触りが妙に気に入って

いつまでもなめ回すイヤしい私。


陶器の小さなスプーンに乗せられた牡蠣がひとつ…

葉っぱに包まれたサイコロキャラメル大の胡麻豆腐…

食べるというより、器やしつらえの意外性を楽しむという感じ。


千代紙で折られた小さな箱を

マトリョーシカみたいに次々開けていく。

短気な私は、タマネギをむく猿のようにキーッとうなる。

最後の箱に転がるギンナン。


ここは空腹を満たすお食事処ではなく

美人マダムのままごとに付き合わされるゴザの上なのであった。


チマチマ、チョロチョロが終わると

メインはいきなり野趣を帯びる。

蒸したモズク蟹。

もはやちゃぶ台をひっくり返す星一徹の心境。


モズク蟹は、あの美味なる上海蟹の親戚と言われ

都会なら珍味かもしれないけど

うちらにとっては町内の川で捕れるショボい川蟹。

ここらへんじゃ「ガゾウ」と小汚い名前で呼ばれる

チープな印象の食材なのだ。


以前息子が捕まえて来たのが、すごい早足で逃げて

タンスの裏でミイラ化していたことがある。

あの早さは尋常ではなかった…と思い出す。


同行した奥様がたも、上品ぶっているとはいえ田舎のご婦人。

動揺は隠せなかった。

「これで6千円は無いわよね…」

などとヒソヒソ言ってる。


リーダー格のK夫人が気を取り直して言う。

「デザートの前に、何か趣向があるそうだから

 それを楽しみにしましょう」

我々はうなづき合って、それに望みをつないだ。


そこへ琴の音のBGMが…

料理を運んでいた女性を露払いに、しずしずとマダム登場。

作務衣から、古くさい振り袖に着替えている。


「マダムがどこそこで手に入れた

 アンティークの着物でございます…」

女性の解説に、ゆったりと回転して見せるマダム。

趣向とは、マダムの趣味であるアンティーク着物の

お披露目であった。


「ぶっとばしたる…」

低くつぶやく私。

皆、呆然とショーを見ていたが

心は同じだったと確信している。


小さいデザートを食べ終え、我々は怪しの家を後にした。

変な所ほど、後で思い出深い。

「冒険の会」としては、ひとまずの成功をおさめたと言えよう。
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