殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

なごりのぶどう

2010年10月28日 09時29分40秒 | みりこんぐらし
これな~んだ♪












チラリ



キャ~!

やめて~!

ハズカシ~!



今年最後のぶどうです。

我が町生まれのぶどう…今年はこれで食べおさめ。

ありがとう。

また来年ね。
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月例会

2010年10月25日 12時27分28秒 | みりこんぐらし
3ヶ月前から、月に一度、同い年の竹馬の友モンちゃんと

2人だけで遊ぶことにしている。

ドライブしたり、噂の店を探したり…

こういうことをするのは、亭主より、断然女友達がいい。


モンちゃんと私は、同じ商店街に生まれ、同じ幼稚園から高校と

ほとんど姉妹のように育った。

文字通り竹馬もやったが、ままごともいたずらも一緒にやって大きくなり

同じ町の男と結婚して、同じ町内に住んでいる。


同級生の集まりやバンド活動で、会う機会はあるのだが

お互いに老い先短い身…忙しさにかまけて、失ってからでは遅い…

と、どちらからともなく言い出した。

“ついで”でなく、わざわざ会って、悔いのないように遊ぼうと決めたのだ。

たいした所へ行くのでもないけど

我々は月例会と呼んで、毎月楽しみにしている。








8月に行った山。








9月にたずねたカフェの景観。







ケーキとアイスと…鳥。







砂糖。










今月は、空港へ行った。

モンちゃんも私も、仕事や家の都合で、今は遠出ができないから

せめて旅のニオイを嗅ぐのじゃ。


正面の窓に白いものが見えるの、わかるかしら?

パイロットが手を振ってくれてるの。

こういうサービスが、単純にうれしい。







じゃあな、オレは行くぜ…飛行機は、飛び立ったのであった。




この3ヶ月の間に、モンちゃんの身辺は変化した。

まず老人介護施設の順番待ちだった姑が、入所をはたした。

翌月には、就職活動中だった大学生の娘が、希望の会社に内定し

今月は、リストラ後、働かない歴数年の旦那が、仕事に就いた。

彼女を支配していた三重苦が、1ヶ月ごとに解消したのだった。


彼女はこの数年、働いて家計を支えながら

認知症の姑の面倒を見、娘を大学へやった。

プータローの旦那は、あてにならないだけならまだいいけど

動けない母親をいじめるのだという。

会社から呼び戻されたり、パトカーが呼ばれたのも、一度や二度ではない。

介護施設入りは、モンちゃんが楽になるためというより

姑を旦那から隔離するために必要であった。


人一倍チャキチャキだった母親が

急に動けません、わかりません…という事態になった。

旦那にしてみれば、日中、二人きりで家に居て

歯がゆいような、哀しいような

自身の情けない現状もあいまって、さまざまな感情に襲われるのであろう。

複雑な思いに戸惑い、自己処理できずに、立場の弱い者に当たる。


このコモノ加減、私にはよくわかる。

彼女の旦那は、我が夫と同級生だ。

この年回りの男がつまらんのか、添ってるうちらがつまらんのか

とにかく相性が悪く、連れだって生きるには根性がいる。


モンちゃんの場合、自立してるんだから離婚すりゃいいようなものの

子供を姑に任せて働いてきた手前

今になって、ハイさよならとはいかない…

すべては姑を見送ってから考える…と言う。

この一見義理堅い、早い話が要領の悪さも、身につまされる。


ともあれモンちゃんは、当面の深刻な悩みから解放され

顔つきも明るくなった。

彼女は月例会のおかげだと、冗談めかして言うが

もちろん、たまたまだ。

姑は、たまたま順番が来ただけだし

娘は、たまたま就職が決まる時期であった。

旦那は、母親が家から居なくなったことで

コモノなりに気が楽になり、職探しの意欲が出たと思われる。


しかし、気をもんで心配ばかりするより

次はどこへ行こう?とワクワクするほうが、いい方へ作用するような気もする。

痩せ細ったモンちゃんと、これからもいろんな所へ出かけるのだ。

食べさせて太らせ、私と同類に至らしめる野望も、夢ではない。
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なんの山・2

2010年10月21日 11時21分09秒 | みりこんぐらし
笹野屋のお嬢様のお話は、止まらない。

世が世なら、私のような平民が

気やすく口をきけるご身分のおかたではないらしいので

こうしてお声を拝聴できるだけで、ありがたいと思わなければなるまい。


中元歳暮を送るたびに、旦那の所にお礼の電話があるという。

「文句は私に言って、お礼は主人なんですよ!

 考えて、選んで、送るのは私ですよ?」

   「いいじゃないですか~、嫌な電話が1本でも減って…」    

「それだけじゃないんですよ!

 必ず、おいしくなかったと、主人に言います!」

   「ズケズケおっしゃる姑さんですね」

「そうでしょ?ひどいでしょ?

 私はね、いいお店で、いいものを、吟味して吟味して送ってるのに!

 ただでさえ体調が悪いのに、今からお歳暮が気になって、もう憂鬱で憂鬱で…」

   「今から…

    1年の半分は盆暮れの心配となると、つらいですね。

    送らなければいいんでは…」

黙って聞いてりゃいいものを、ついイジりたくなるのは

私の悪い癖である。


「そんなわけにはいきませんよ!私の気がすみません!」

   「なるほど…じゃ、毎回同じものを

    もう勘弁してくださいと言われるまで送るとか…」

「そんなこと、できませんよ!

 これ以上言われたら、ますます体の具合が悪くなります!」

※さらに延々と続くので、早送り


誰が聞いても、わかると思う…悩みの根源は、贈り物ではない。

姑の言葉をダイレクトに伝えてしまう、アホな旦那だ。

黙って心に収めておくなり

「次はこういうものにしたらどうか」とさりげなくアドバイスするなり

中元歳暮は自分が担当するなり

もっと気を使えば、妻の悩みはひとつ減るのである。

あてにならない旦那への不満を、姑憎しにすり替えているとも言えよう。

しかし、今の彼女にそれを言っても、混乱するだけなので言わない。


話は、生い立ちに移っていく。

母親の死で大学進学をあきらめ、女将として旅館を切り盛りしたこと…

結婚で女将を退き、ふがいない弟に任せた途端、旅館が倒産したこと…

旦那の転勤で遠方に暮らしている時、父親を一人で死なせたこと…

悩みを多く、深くしている人は、人生の要所要所に、後悔という布石がある。


「私がこんなに体調が悪くて苦しいのは、父が成仏してないからだと思うんです。

 父の霊をなぐさめるために、毎晩、お風呂に入って

 1時間お経を唱えるのを日課にしています」

    「風呂で1時間!」

「はい。供養は大事でしょ?

 一人ぼっちで亡くなった父は、無念だったと思うんです」

    「死ぬときゃ、みんな一人ですからね~。

     私、死んだことがないので、よくわかりませんけど

     かわいい娘に、成仏してないと決めつけられて

     体調が悪いのも、そのせいにされたら

     そっちのほうが無念だと思いますよ」

「いけないんですか?」

    「供養や成仏なんて小難しいことより

     毎晩1時間も蒸されてちゃ、疲れます。

     疲れて、体調が悪いんですよ。
 
     やめなさい、やめなさい…ふろふき大根じゃあるまいし」

「ふろふき大根!」

    「ちょっとお休みして、体調をみたらどうですか?」

※また長くなるので、早送り


「そうですね…ちょっと、お風呂のお経はやめてみます。

 今受講している、スピリチュアル講座のほうを頑張ります」

    「そっちかい!」

「自分探しです」

    「よしなさい、よしなさい。

     自分探してるうちに、年寄りになって死んじゃいますよ」

「月に2回、車で3時間かけて通っているんです。

 大変ですけど、自分の経験を生かして、人の役に立てればと思って…」

    「は~あ、やめやめ!

     そりゃ疲れるわ。

     人の役に立つ前にヨボヨボになって、使い物になりゃしませんよ」

「アハハハ!」


お嬢様は、やっと明るくなり、世間話をする余裕も出始める。

話が今度の市議選のことになり

私がうぐいすをしている市議の、熱烈な支持者だと言う。

今回鞍替えして、別の選挙に立つ話で、盛り上がる。

「じゃあ、その時に、お会いできますね!

 先のことが楽しみになるなんて、久しぶりだわ!」


ここで、よせばいいのに余計なことを言う私。

   「もしよかったら、選挙カーに、ご一緒にどうですか?

    気晴らしになるかもしれませんよ」

「まっ!私が選挙カーに?

 この私が?

 ホホホ!と~んでもない…そんな恥知らずな…ホホホ!」


すっかり元気になったお嬢様。

そのまま笑い転げながら「それじゃあ!」と電話を切った。

すいませ~ん…恥知らずで。      


                    

                     完     
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なんの山・1

2010年10月17日 17時19分22秒 | みりこんぐらし
先日、私の携帯に、一本の電話がかかった。

知らない番号だったが、選挙が近いこともあり、なんぞ連絡かと思って出た。


「みりこんさんですかっ?」

知らない人の声だ。

妙に甲高い、ちょっと鼻にかかった声に、しまった…と直感。

みりこん辞書によれば、とっても危険な声。

聞くのは耳がキンキンしてつらいし

話も、たいていろくな内容ではないと書いてある。


「私、山岡なんです!」

う…やっぱり…。

「なんです」の“なん”は、なんなんだよ…。


夫の姉カンジワ・ルイーゼも、電話をかけたら必ず同じこと言う。

「土建屋なんですけれど」

他にも、何人か知っている。

共通するのは、借りる虎の威がある生い立ちや環境。

借りてる威が、人から見て虎のものとは限らないのだが

とにかく、本人は虎だと思い込んでいるかたがた。


多分こういう人達って、リズム感みたいなもんが無いんだ。

だから、名前の後に“なん”を添えて、間(ま)を取っているだけなんだ。

音楽のじゃなくて、心のリズム感。

次々と流れくる人生の機微に合わせ、リズムに乗って楽しむことができない。


悪い人達じゃないのはわかる。

真面目で、誠実で、几帳面という、私に無い長所をたくさん持っている。

尊敬すべきところである。

しかし“なん”の2文字を刻んでそびえ立つ

根拠なき大いなるプライド山の標高に、げんなりしてしまう。

ナンが好きなら、インドへ行け…なんて、思ってしまうのである。

 
「私の話を、奥様に聞いていただきたいんです。

 ヒロシさんにお願いして、お電話番号うかがいました」

…私の当惑を、おわかりいただけるだろうか。


少し前から、夫が時々話していたのを思い出した。

小、中と同級生だった女性が、このところ毎日、会社に来るのだと。

「ちょっとおかしくなって、同級生の所をあちこち回ってるんだ」


その悩みというのが、嫁姑だそうで

「男が聞いても、わからんし…」と言っていた。

自分の好みのタイプなら、相談に乗るだの、話を聞くだのと誘い出し

とっくに手ゴメにしていようが

そうじゃないもんだから、困って私に押しつけたのだ。

やりやがったな!ヒロシ!


「ヒロシさんがね、言ってくださいましたの。

 うちの奧さんなら、そういう話もわかるって。

 専業主婦で、お暇なんでしょ?そう言ってらしたので」

ヒロシめ…。


「ご存知でしょうかしら?私、笹野屋の娘なんです」

出た…自分のことより、実家のこと言うんだよ。

   「まあ!あの、笹野屋の!」

夫から聞いてはいたが、初めてのように驚いてサービス。

笹野屋は昔、市内で一番大きくて、格式のある旅館だった。

だった…というのは、言葉どおり。

ずいぶん前に倒産したので、今はもう無い。


彼女、このリアクションには満足なされたようで

いよいよお話が始まるのであった。

「話といいますのはね、姑のことなんですよ!

 私にひどいことばっかり言うんです。

 先日も、甥が海外で結婚式を挙げるのに

 列席者の旅費が自腹だと言うんですよ。

 主人だけ行かせると言いましたら、姑が怒りましてね…

 あ、娘はね、一応進学校に通っていますので

 当然、先で学費もかかりますでしょ。

 今、そんなことで散財するわけにいかないんですよ!」

※長くなるので、早送り


「…何でもそんな調子で、私、もう疲れてしまって…。

 主人はまあ、一応名の通った企業に勤めているんですけどね

 この人なら、と思って結婚しましたのに、姑があんなでは、困ります!」

   「はあ…それは大変ですね…。

    同居されてるんですか?」

「いえ、姑は、北海道に住んでます」

   「ほ…北海道…離れているんなら、別にいいのでは…」

「主人は長男なのでね、姑は、北海道で一緒に暮らして欲しいんですよ。

 離れて暮らしているのが気に入らないから、意地悪をするんですよ!

 私、北海道なんて遠い所、行けません!

 生まれ育ったこの町で暮らしたいんです!」 

   「姑さん、一人暮らし?」

「いえ、次男夫婦と二世帯住宅を建てて、同居してます」

   「じゃあ心配ないじゃないですか」

「次男夫婦も、私達だけ楽をしていると思ってるんです。

 それで姑と一緒になって、色々言ってくるんです。

 今度の結婚式の旅費だって、嫌がらせですよ!

 そういう人達なんです!
 
 私、ずっと以前から悩んで、カウンセリングにも通ってますし

 お薬もいただいて、毎日飲んでるんです!」



笹野屋のお嬢様の話は、延々と続くのである。

長くなったので、今日はこのへんで。
                 

                 続く
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ゴーヤ

2010年10月12日 23時03分30秒 | みりこんぐらし
義母ヨシコが、眼科から帰って来て言う。

「みどり先生が、血糖値を下げるには、ゴーヤがいいんだって!」

このところ、ヨシコが崇拝してやまない眼科の女医

みどり先生に、ゴーヤをすすめられたそうなのだ。


「私なんて、ゴーヤを食べると低血糖になっちゃうのよ

 それでも好きでね、食べてしまうの」

と、みどり先生はのたまわれたそうで

糖尿病のヨシコは、ゴーヤを心から欲していた。

「そういえばリョウ子さんも、庭に植えて毎日食べてたわ。

 あの人も糖尿だったから、ゴーヤがいいと知っていたのね」

リョウ子さんというのは、親戚である。


      「死んだじゃん。

       糖尿から肺炎になって」

「…」


卑怯者かつ怠け者である私は、ゴーヤを料理するのが面倒臭かった。

男どもは絶対食べないので、料理として一品にならず

ヨシコが特別に所望した嗜好品の扱いとなる。

しかも、そのために他のカロリーや塩分を調整する必要が出る。

余計な仕事が増えるだけなのだ。

ゴーヤ先生、いや、みどり先生…余計なこと言うな~!


その場では「もうシーズンオフだから、多分売ってないよ~」とごまかしたが

スーパーに行ったら…あるではないか…チッ。

ここで、しばし葛藤。

見て見ぬふりをしてヨシコをだまし通すか、それとも買い求めるか。


ゴーヤ処女のヨシコは、大嫌いな大葉よりも三つ葉よりも

ゴーヤのほうが強烈だというのを知らない。

血糖値を下げてくれる夢の食べ物だと、思い込んでいる。

じゃあ、沖縄には糖尿病患者はいないのか?み~んな低血糖なのか?

という話になるが、今は耳に入らないだろう。


一回食べれば、わかるだろうよ…ということで、買いました。

続くとは思わないので、1本だけ。

ゴーヤチャンプルー(みたいなもん)作りましたよ。





ヨシコ、食べていわく

「あら?案外食べられるわ!」

ええ、ええ、あの苦みがいいんでしょうけど

あんまり苦かったら、かわいそうと思い

洗濯するぐらい塩もみをしてから洗いまくり、さらにゆでましたとも。


「これなら毎日食べられるわ!お願いね!」

かくして、毎日ゴーヤ料理を作ることになった。

ヨシコが喜んでくれるのを見ると、まんざらでもない。

♪1日1本、3日で3本♪…「365歩のマーチ」でお願いします…

マヨネーズ炒めや和え物など、色々作ってみる日々。


そして2週間…ヨシコはそろそろゴーヤに飽きてきた。

「みどり先生が、血圧が下がるって言うからね」

自分に言い聞かせるようにして、頑張って食べる。


ありゃ?いつの間にか、血糖値じゃなくて、血圧になっておるではないか。

      「糖尿にいいんじゃないの?」

「ううん、血圧」

      「食べたら低血糖になるって言ったんじゃん」

「ううん、みどり先生はね、低血圧になるって言ったのよ」

     「…」


おかしい…絶対おかしい。

血糖値が血圧にすり替わっているのもだけど

食べたら低血糖だか低血圧だかになるなんて

発想が危険すぎるような気が…。

じゃあ低血糖や低血圧の人が食べたらどうなるというのだ。


そんなに威力のある食べ物ならば

学会で発表して、世界中の患者を救うべきだ…

なんて意地悪くゴネたいけど、我慢。

しょうもないことで喧嘩を売ったって、ゴーヤの義務から逃れられないのだ。


「毎日食べてるから、次の検査が楽しみだわ!」

      「血糖値が?血圧が?」

「血糖値よ!決まってるじゃない」

これは、日によって変わる。

血圧の時もある。

ヨシコは、ボケているのではない。

昔から、こうなのだ。


そのうちに、ヨシコの友人が

手作りしたゴーヤの砂糖漬けをどっさりくれた。

「しばらく、これがあるからいいわ。甘くて食べやすいもの」

ゴーヤの砂糖漬けというより

大量のグラニュー糖の中に、ゴーヤもちょっと入っているシロモノだ。

ヨシコ…死ぬ気か…とも思うが

ゴーヤから解放された喜びのほうが、大きかった。


ゴーヤの効果?

数値の改善は、現在のところ、認められない。
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信仰女房

2010年10月07日 08時38分31秒 | 女房シリーズ
            「この季節、我が家から見える一番星」


病院の厨房で働いていた頃に、同僚だった女性…

里美が、4年ぶりにうちへ来た。

選挙のお願いのためである。

市議選に、親戚が出るのだ。


里美は、ずっと以前に就職し、三ヶ月で退職した。

とある新興宗教の熱心な信者で

宗教活動のために、よく仮病を使っていたからだ。

ある日、七転八倒の熱演で首尾良く早退した日

布教に歩いて、たまたま休みだった同僚の家に行ってしまった。


里美は入って日が浅く、同僚の家も知らなかったし

表札と本人の名字が違う諸事情も、わかっていなかった。

やがて居づらくなって、退職の運びとなったのである。


4年前の市議選の時は

「他の人のうぐいすをしているから、ご希望には添えない…」

と断ったが、なんの、そんなことは気にしない。

明日何が起きるかわからないと言うのだ。


市議に何か起きて、出馬できなくなるかもしれないし

私に何か起きて、その市議を応援できなくなるかもしれないと

大まじめな顔で言う。

わずかな可能性に賭けるのだそうだ。

あくまで前向きなのはけっこうだが、こういうのを失礼と言うのではないか。


そういえば、病院で働き始めた初日

「昔、あなたのお父様にお世話になったのよ~」

と言ったことがあった。

里美は、私の生まれた町に嫁いでいるので

我が父サブローのことも知っているのだ。


里美の子供が小さい頃、電車で病院へ連れて行くのに

駅前まで来て、財布を忘れたことに気づいたという。

そこでサブローの所へ行き、1万円借りたそうだ。

「初対面なのに、ニコニコしながら、すぐ貸してくださったの。

 2~3日して返しに行ったら、子供さんの病気は良くなったの?

 って心配してくださってねえ」

里美は言い、私もその時は「なかなか、ええ話や…」と思った。


駅前で商売をしていれば、駅の周辺で困っている人に

わずかな金を貸すのは、珍しいことではない。

人のいいサブローであるから、そういう出来事はよくあった。

彼女はそれを“縁”と言い、私も異存はなかったので

幾星霜の歳月を経て、同僚として巡り会ったことを喜び合った。


しかしである。

後でよく考えてみれば、緊急でない場合、母親としては

保険証とお金を家で真っ先に確認するんではねえのか。

それでも、もし財布を忘れていたとしたら

他人に迷惑をかけるよりは、家に取りに帰るのが普通だと思う。

里美の家は、駅から5分だ。


確信犯じゃないのか…。

それとも筋金入りのノンキ者なのか…。

その後の彼女の仕事ぶりや言動を見るにつけ

美談に疑いの目を持つ、根性曲がりの私であった。


しかしこの子、なぜか憎めない得なタイプ。

人と会い慣れているので、角が無くて、こなれている。

日頃の布教活動で、鍛えられているのだ。

職場で布教をもくろむのには閉口したが、離れるといい子だ。


しかも小柄で色白なので、私と同い年でありながら

ずいぶん若く見える。

美しいものには、甘い私。

すぐ宗教めいた方面へ持って行くのに目をつむれば

話すのは、なかなか楽しい。


この日も、のけぞるようなことをさらりと言ってのける。

「ご家族の皆さんは、お元気?」と聞いたら

「ええ!主人は先月亡くなったけど、あとの者は元気よ!」

と、ついでのように言う。


彼女のご主人が、前から病弱だったのは知っていた。

急に悪化したのだと言う。

びっくりしてお悔やみを言うと

「ありがとう。主人は救われたのでね、悲しまないことにしてるの」

なにしろ信仰心があるので、メンタル面が強いと言ったらいいのか。

厚い信仰にて送ってもらい、ご主人も満足であろう。


里美は病院を辞めてから、食品工場に勤めていたが

先週から、観光関連会社の切符売り場に転職したそうだ。

ここは私の知人も働いているけど、けっこう待遇がいい。

しかも正社員。

「ええ~?!すごいじゃん!良かったねえ!」

私は興奮した。


食品工場で同僚だった人が先に転職し

空きが出たので、声をかけてくれたという。

何人かに言ったらしいが、工場を二つ返事ですぐ辞めさせてもらえたのは

里美1人だったそうだ。

「私だけ、運良くそういうことになってねえ」

工場でも、仮病の女王だったのではないか…などと

いらぬことを考えるのは、私の根性が腐っているからであろうか。


ともあれ、休日が選べない不自由はあるが

ぜいたくを言わなければ、仕事はまだ転がっているのだ。

50歳で正社員は、一種の快挙である。

里美は、我ら年増の希望の星なのだ。


その幸運を、里美は信仰のおかげにしたがる。

「やっぱりね~、日々の祈りに勝る開運は無いわ!」

私は私で、また仮病を使って周囲の厚意を台無しにしないよう

日々、祈るばかりである。
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餅太郎

2010年10月02日 09時24分54秒 | みりこんぐらし


パッケージに魅せられ、買ってしまった餅太郎。






猿がおり…






キジと犬がおり…






おじいさんとおばあさんがおり…






妙に若々しい花咲じいさんまで、なぜかいるのに…



             「餅太郎がいない!餅太郎はどこじゃ!」







餅太郎、このウス?






餅太郎、中味?


味は、横綱あられのちょっとライトな感じかしらん。

パッケージとは裏腹に、お地味な餅太郎でした。
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