先日、夫と市外のホームセンターへ買い物に行った。
愛犬パピのおやつを入手するためだ。
うちには13才のパピヨン、パピと
3才のダックスとセッターのミックス、リュウがいる。
犬種が違うので食の好みも違い
おやつはそれぞれ別の物を与えているが
近頃、パピが愛してやまないおやつ…
ドギーマンというメーカーの“きらり”が町内で品薄。
“きらり”にはプレーンやチーズ入り、野菜入りなど何種類かあって
パピの好きなプレーンタイプが売られてないことが増えた。
車で40分ほどかけて、大きな町のホームセンターに行けばある。
だから、その店へ行った時にはいつもたくさん買っておくのだが
町の人口が多いため、当然、車も多い。
週末なんか芋を洗うような賑わいで、ホームセンターの駐車場は無法地帯。
何かと消耗するため、比較的近くて人影まばらな田舎の店を開拓中なのだ。
しかし、どこへ行ってもきらりのプレーンタイプは見つからない。
ネットで買えばいいようなものの
きらりを買うと言えば義母がすんなり納得するので家を出やすいため
夫婦できらりを探す旅を楽しんでいるのである。
先日は、我々が以前住んでいた山間部のホームセンターへ
行ってみようということになった。
今から30年近く前の35才の時、夫の実家から九州へ出奔した私。
結局帰って来て夫や子供たちと合流し、5年ほど暮らしていた思い出深い町だ。
世話になった大家さん夫婦はすでに亡くなり
ほとんど行くことが無くなって久しい。
というわけで行ってみたが
やはりそこのホームセンターにもきらりは無かった。
仕方がないので同じ敷地にあるスーパーへ寄って帰ろうと
広い駐車場を歩いていたら、黒い喪服の集団と遭遇。
子供から年寄りまで10人ほどいるところを見ると
身内の葬式帰りらしい。
そうだった…この町の人々は閉鎖的で
かつ、ちょっと変わったところがある。
滅多に着ない喪服を着ると、すぐに脱ぐのがもったいないのか
あるいは娯楽が少ないからか、一族郎党が喪服のまま
スーパーなど人の多い所へ繰り出してゾロゾロと練り歩き
買い物をする習性があるのだ。
その中に、おそらく我々より少し年上の太ったおじさんが一人。
きつそうな喪服を着てポケットに手を突っ込み
一族と一緒に練り歩きながら、時々立ち止まってキョロキョロしている。
この行為も、この町の男性あるある。
たまに着た喪服姿を人に見て欲しいらしいのだ。
ついでになぜか肩をいからせて、ヤクザ映画さながらに
いかつい男を表現。
私が住んでいた頃から、この摩訶不思議な行為は続いていたみたい。
最初は意味不明だったが、何度も見かけるうちに彼らの意図がわかってきた。
今でこそ豊富な休耕田を活用してスーパーがたくさんできたが
元はそれほどすさまじい田舎だったということだ。
さて、田舎のショッピングモールは、やたらと広い。
ホームセンター寄りに停めた車から、遠くに見えるスーパーの入り口を目指して
我々夫婦は延々と歩いていた。
と、やがて“バッタン、バッタン”という
大きな音が聞こえてくるではないか。
「近所の人が布団で干していて、それがこだましているんだろう」
私は思った。
広い駐車場に響くバッタン、バッタンは
誰かが布団を叩く音だと信じて疑わなかったのだ。
しかし、そこで夫が笑いながら耳打ち。
「ワシと同じヤツがおる」
夫が指さす方角には、例のおじさんが一人で歩いている。
彼はいつの間にか一族と離れ、単独行動になっていた。
バッタン、バッタンは、そのおじさんの足元から発生しているようだ。
「おおっ!」
素晴らしい光景を目撃した感動で、私は思わず声をあげた。
彼の右足の靴と靴底は、離婚寸前。
かろうじて、爪先だけがくっついている。
古い劣化した靴で歩き回っているうちに
土踏まずとカカトの部分がペロリと決別したらしい。
その状態で歩くたび、離れた部分が大きく波打ち
反動が足の裏を太鼓のごとく、派手に打ち鳴らしている。
その大音響に、他の一族はさすがに恥ずかしく思ったのか
あっさり彼を見捨て、どこかへ散ったようだ。
バッタン、バッタンはショッピングモールの建物に反響し
高らかに響き渡る。
しかし、おじさんはどこ吹く風。
相変わらずヤクザ映画の主人公にでもなったかのように
肩をいからせて歩き回っている。
まさか自分の靴と靴底が離れかけているとは、夢にも思ってない様子。
呼吸困難になるほど笑った。
思い起こせば、何年か前にあった本社の新年会…
人並外れた甲高幅広足の夫は、履いて行く靴が無くて古いのを履き
パーティー会場で靴のカカトが落ちた。
それを次男が見つけ、近くに居た人と
「終わってるね」と話して笑ったが
終わってるのは自分の父親だったというてん末。
あの時も腹がよじれるほど笑ったが
今回は目の前で見たというのもあり、もっと笑った。
「きらりを探しに行って良かった!」
夫も私も心から、そう言い合った。
しばらくは、このネタで笑えそうだ。
愛犬パピのおやつを入手するためだ。
うちには13才のパピヨン、パピと
3才のダックスとセッターのミックス、リュウがいる。
犬種が違うので食の好みも違い
おやつはそれぞれ別の物を与えているが
近頃、パピが愛してやまないおやつ…
ドギーマンというメーカーの“きらり”が町内で品薄。
“きらり”にはプレーンやチーズ入り、野菜入りなど何種類かあって
パピの好きなプレーンタイプが売られてないことが増えた。
車で40分ほどかけて、大きな町のホームセンターに行けばある。
だから、その店へ行った時にはいつもたくさん買っておくのだが
町の人口が多いため、当然、車も多い。
週末なんか芋を洗うような賑わいで、ホームセンターの駐車場は無法地帯。
何かと消耗するため、比較的近くて人影まばらな田舎の店を開拓中なのだ。
しかし、どこへ行ってもきらりのプレーンタイプは見つからない。
ネットで買えばいいようなものの
きらりを買うと言えば義母がすんなり納得するので家を出やすいため
夫婦できらりを探す旅を楽しんでいるのである。
先日は、我々が以前住んでいた山間部のホームセンターへ
行ってみようということになった。
今から30年近く前の35才の時、夫の実家から九州へ出奔した私。
結局帰って来て夫や子供たちと合流し、5年ほど暮らしていた思い出深い町だ。
世話になった大家さん夫婦はすでに亡くなり
ほとんど行くことが無くなって久しい。
というわけで行ってみたが
やはりそこのホームセンターにもきらりは無かった。
仕方がないので同じ敷地にあるスーパーへ寄って帰ろうと
広い駐車場を歩いていたら、黒い喪服の集団と遭遇。
子供から年寄りまで10人ほどいるところを見ると
身内の葬式帰りらしい。
そうだった…この町の人々は閉鎖的で
かつ、ちょっと変わったところがある。
滅多に着ない喪服を着ると、すぐに脱ぐのがもったいないのか
あるいは娯楽が少ないからか、一族郎党が喪服のまま
スーパーなど人の多い所へ繰り出してゾロゾロと練り歩き
買い物をする習性があるのだ。
その中に、おそらく我々より少し年上の太ったおじさんが一人。
きつそうな喪服を着てポケットに手を突っ込み
一族と一緒に練り歩きながら、時々立ち止まってキョロキョロしている。
この行為も、この町の男性あるある。
たまに着た喪服姿を人に見て欲しいらしいのだ。
ついでになぜか肩をいからせて、ヤクザ映画さながらに
いかつい男を表現。
私が住んでいた頃から、この摩訶不思議な行為は続いていたみたい。
最初は意味不明だったが、何度も見かけるうちに彼らの意図がわかってきた。
今でこそ豊富な休耕田を活用してスーパーがたくさんできたが
元はそれほどすさまじい田舎だったということだ。
さて、田舎のショッピングモールは、やたらと広い。
ホームセンター寄りに停めた車から、遠くに見えるスーパーの入り口を目指して
我々夫婦は延々と歩いていた。
と、やがて“バッタン、バッタン”という
大きな音が聞こえてくるではないか。
「近所の人が布団で干していて、それがこだましているんだろう」
私は思った。
広い駐車場に響くバッタン、バッタンは
誰かが布団を叩く音だと信じて疑わなかったのだ。
しかし、そこで夫が笑いながら耳打ち。
「ワシと同じヤツがおる」
夫が指さす方角には、例のおじさんが一人で歩いている。
彼はいつの間にか一族と離れ、単独行動になっていた。
バッタン、バッタンは、そのおじさんの足元から発生しているようだ。
「おおっ!」
素晴らしい光景を目撃した感動で、私は思わず声をあげた。
彼の右足の靴と靴底は、離婚寸前。
かろうじて、爪先だけがくっついている。
古い劣化した靴で歩き回っているうちに
土踏まずとカカトの部分がペロリと決別したらしい。
その状態で歩くたび、離れた部分が大きく波打ち
反動が足の裏を太鼓のごとく、派手に打ち鳴らしている。
その大音響に、他の一族はさすがに恥ずかしく思ったのか
あっさり彼を見捨て、どこかへ散ったようだ。
バッタン、バッタンはショッピングモールの建物に反響し
高らかに響き渡る。
しかし、おじさんはどこ吹く風。
相変わらずヤクザ映画の主人公にでもなったかのように
肩をいからせて歩き回っている。
まさか自分の靴と靴底が離れかけているとは、夢にも思ってない様子。
呼吸困難になるほど笑った。
思い起こせば、何年か前にあった本社の新年会…
人並外れた甲高幅広足の夫は、履いて行く靴が無くて古いのを履き
パーティー会場で靴のカカトが落ちた。
それを次男が見つけ、近くに居た人と
「終わってるね」と話して笑ったが
終わってるのは自分の父親だったというてん末。
あの時も腹がよじれるほど笑ったが
今回は目の前で見たというのもあり、もっと笑った。
「きらりを探しに行って良かった!」
夫も私も心から、そう言い合った。
しばらくは、このネタで笑えそうだ。