殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

鹿女房

2014年09月20日 08時36分26秒 | 女房シリーズ
今、リエ子が熱い。

同級生の間で、話題沸騰中である。


50も半ばを過ぎると、親が弱ってくる。

そこで老人ホームに入所させたり

デイサービスやショートステイを利用したくなる。


私の生まれた町に、老人ホームは一つしか無い。

親も子も近くの方がいいので、ほとんどがその老人ホームを希望する。

利用するとなると、事前にケアマネージャーと面談する必要がある。

その時、ケアマネージャー兼、施設責任者として面談するのが

中学の同級生リエ子である。


リエ子は同窓会に入っておらず、なぜか町でも見かけないので

多くはこの時が40年ぶりの再会となる。

親の老化によって、図らずもリエ子と再会する者は

一人、また一人と増加中。


職員にかしづかれる様子は、まさに女帝そのものだという。

当たり前だ…リエ子は理事長の愛人である。

町では衆知の事実だ。

そんなことより、十人が十人「おかしい!」と頭をひねるのは

自分は確かにリエ子を知っているのに、向こうはまったく知らず

初対面として接する不思議な現象であった。


「目の前で向かい合って親しく話しても

同級生という認識は無いように見える」

「最初は立場上、馴れ合いを避けているのかと思ったけど

そうじゃないみたい」

「初めましての自己紹介で始まった以上、終わるまで言い出せない」

「だんだん、こっちの記憶の方が間違っているような気分になってくる」

「こっちも地雷を踏んで親に冷たくされるより

触れない安全を選ぶ方がいいような気がしてくるんだ」



リエ子は中2の時、隣町から転校してきた。

その頃から可愛く、スタイルが抜群に良かった。

卵のような小さい顔に大きな瞳、長い足…

それに生来の地黒と、持ち前の俊足があいまって

伸びやかに駆ける鹿のような印象だった。

しかし学業不振とホラ吹きの方が目立ち

周囲は少し距離を置いていたため

その美貌が日の目を見ることは無かった。


中3で同じクラスになり、一時期仲良くしていた。

結婚して町内に住むお姉さんのアパートへ

生まれたばかりの赤ちゃんを見に、付いて行ったこともあるが

受験が近づくと疎遠になった。

リエ子の成績では、同級生の大多数が行く地元の高校の

受験資格が得られなかったため

彼女は地元進学組との交流を自ら断ったのである。


「みんな敵」

リエ子は卒業文集にそう書いていた。

「自分のことしか考えない大勢の人達に、夢を邪魔された」

恨み言の羅列である。

要するにみんなが地元を受けるから

自分が受験できないと言いたいらしかった。

斬新な思考に驚いたと同時に、交流を断った理由にも納得した。


それから10年。

ママさんバレーの試合で、目の前にリエ子が立っていた。

私は前衛のレフト、対戦チームのリエ子は前衛のライト。

我々はネットを挟んだ30センチの距離で、再会したのだった。


「リエちゃん!」

手を振って名前を呼んだが、無反応。

もう一度呼んでも、無反応。

自分がうっかり死んで、霊になったのかと疑ったほどの

見事な徹底無視だ。

文集に書かれた「みんな敵」は、まだ有効なのだと思い

それ以後は試合で見かけても声をかけなかった。

みんな、今になってリエ子の態度に驚いているけど

私なんて25年前に、30センチ無視の不思議体験をしてるもんね…

と自慢する私である。


「色々言われることにウンザリしたんだろう」

いつも、この結論に落ち着く。

そう、彼女は色々言われやすい人なのだ。


その昔、お姉さんの旦那を略奪した女子高生として

狭い田舎町の噂を独占し、現在も語り継がれている。

高校生のリエ子は、大好きなお姉ちゃんのアパートに出入りするうち

お姉ちゃんの旦那さんのことも大好きになってしまった。

すぐ妊娠し、やはり3人目を妊娠中だったお姉さんとかなりモメたが

最終的にはお姉さんが譲る形で、リエ子はお義兄さんと結婚した。


人は悪く言うが、私はそうは思わない。

だって、不倫だの略奪だのと言ったって

身内の中ですませているではないか。

よそのお宅に迷惑はかけていないのだ。

よその女の人にさんざん迷惑をかけられたり

よその女の人にさんざん迷惑をかけた夫のいる私はそう思う。

それより、お義兄さんの種馬ぶりに感心する。

鹿のようなリエ子と種馬は、相性がいいらしい。


ま、高校生の義妹に手をつけるような旦那だから

性格も収入も、たかが知れている。

リエ子は3人の子育てをしながら働き、結婚生活を続けながら

やがて愛人も営業するようになった。

なにしろ鹿のような女の子だから、体力だけはあるようだ。


15年ほど前、サラリーマンだった彼氏が配置転換で

たまたま老人ホームの雇われ理事長になった。

それを機にリエ子も介護の世界に飛び込み

理事長の愛人として権力を握った。

リエ子は勝ち馬に乗ったのだ。

やっぱり鹿には馬がいいらしい。


こうしてリエ子は、町のお年寄りのために頑張っている。

今や、リエ子無しでは老人稼業を張れないほどの勢いである。

頑張っているのに「理事長の愛人だから」とささやかれるのも

「お姉さんの旦那を取った」と、いつまでも後ろ指を指されるのも

事実だけに嫌なものだと思う。

そこでリエ子は過去を封印し、無かったことにした。

一掃した過去の中に、我々同級生も入っているのだ。


それはリエ子の甘えである。

いくら自分が過去を封印したつもりでも

相手がそうしてくれるとは限らない。

同級生だからこそ思いやりを持って

嫌なことには触れずに合わせてくれるのだ。


とはいえリエ子も甘えるばっかりではない。

切り札を持っている。

親という人質だ。

親を預けるからには、女帝の機嫌を損ねるわけにはいかない。

思いやりと人質…両者の持つそれぞれのカードによって

同級生の親達の介護は営まれているのだった。


葬りたい過去があるとする。

たいていの人は苦しみながらも乗り越える努力をするが

中には「人が自分を知っているのが悪い」と考える者もいるらしい。

それで楽しいのだろうか…不便ではないのだろうか…

という疑問はさておき、やたら苦しむよりも

いっそのこと開き直って、そこから始めてみるのも

一つの手だと思った次第である。
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過去女房

2011年02月15日 09時16分14秒 | 女房シリーズ
「私は親に夢をつぶされて、人生を狂わされたの…」

シノブさんは言う。

ずいぶん前からの顔見知りではあったが

人見知りが激しいタチらしく、最近やっと話すようになった。


シノブさんは、いい人だ。

タテにもヨコにも大きいのがいい。

二人でいると、私が小柄で華奢に見えるというヨコシマな利点がある。


      「え!虐待?」

「中学の時、バスケットやってて、来て欲しいという高校もあったのに

 親が行かせてくれなかったの」

      「ふ…ふ~ん」

「もしもその高校に行ってたら

今頃は、バスケで有名になっていたかもしれないでしょ?」

      「そりゃ…まあ…」

「未来の可能性をつぶされたのよ」

      「…」


「主人ともね…無理矢理結婚させられたの…

 どうしても私じゃなきゃダメと言われて

 さらわれるように連れて来られて、籍も勝手に入れられたの」

      「拉致?」

ちょっと前のしずちゃんみたいな彼女をさらうのは、大変だぞよ…。


シノブさんは、背丈と腹周りに漂う私の視線を察してか、急いで続ける。

「昔は細かったのよ!

 でも、ストレスで食欲に走らされたの…」

      「だ…誰に…?」

「主人によっ!」

シノブさんは、私の反応が望ましいものでないことに

いら立ちを感じているようだった。


「私…結婚する前に、本当は好きな人がいたのよ…」

55歳の彼女の結婚前って、いつのことなんじゃ。

     「そっちと結婚すればよかったじゃん」

「キャッ!そんなこと…付き合ってなかったんだもん」

     「な~んだ」

「でも、私の心はずっとあの人のものなの」


シノブさんはおもむろに、財布から古びた写真を取り出した。

あどけない坊主頭の男子学生が写っている。

いろんな人にこれをやっているらしく

さんざん出し入れを繰り返した写真は、すり切れている。


     「告白すればよかったのに」

「どうしても無理だったの…事情があったのよ…」

その事情というのを言わないが、なんとな~くわかる。

詰め襟のダブつき加減や、つるりとした幼い顔立ちから見て

この男子、かなりの小柄だったと思われる。


「もし彼とつきあって、結婚してたら

 どうなってるかな~って、よく考えるのよ」

どうなるもこうなるも…セントバーナードとチワワ…。

言いたいけど、我慢した。
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信仰女房

2010年10月07日 08時38分31秒 | 女房シリーズ
            「この季節、我が家から見える一番星」


病院の厨房で働いていた頃に、同僚だった女性…

里美が、4年ぶりにうちへ来た。

選挙のお願いのためである。

市議選に、親戚が出るのだ。


里美は、ずっと以前に就職し、三ヶ月で退職した。

とある新興宗教の熱心な信者で

宗教活動のために、よく仮病を使っていたからだ。

ある日、七転八倒の熱演で首尾良く早退した日

布教に歩いて、たまたま休みだった同僚の家に行ってしまった。


里美は入って日が浅く、同僚の家も知らなかったし

表札と本人の名字が違う諸事情も、わかっていなかった。

やがて居づらくなって、退職の運びとなったのである。


4年前の市議選の時は

「他の人のうぐいすをしているから、ご希望には添えない…」

と断ったが、なんの、そんなことは気にしない。

明日何が起きるかわからないと言うのだ。


市議に何か起きて、出馬できなくなるかもしれないし

私に何か起きて、その市議を応援できなくなるかもしれないと

大まじめな顔で言う。

わずかな可能性に賭けるのだそうだ。

あくまで前向きなのはけっこうだが、こういうのを失礼と言うのではないか。


そういえば、病院で働き始めた初日

「昔、あなたのお父様にお世話になったのよ~」

と言ったことがあった。

里美は、私の生まれた町に嫁いでいるので

我が父サブローのことも知っているのだ。


里美の子供が小さい頃、電車で病院へ連れて行くのに

駅前まで来て、財布を忘れたことに気づいたという。

そこでサブローの所へ行き、1万円借りたそうだ。

「初対面なのに、ニコニコしながら、すぐ貸してくださったの。

 2~3日して返しに行ったら、子供さんの病気は良くなったの?

 って心配してくださってねえ」

里美は言い、私もその時は「なかなか、ええ話や…」と思った。


駅前で商売をしていれば、駅の周辺で困っている人に

わずかな金を貸すのは、珍しいことではない。

人のいいサブローであるから、そういう出来事はよくあった。

彼女はそれを“縁”と言い、私も異存はなかったので

幾星霜の歳月を経て、同僚として巡り会ったことを喜び合った。


しかしである。

後でよく考えてみれば、緊急でない場合、母親としては

保険証とお金を家で真っ先に確認するんではねえのか。

それでも、もし財布を忘れていたとしたら

他人に迷惑をかけるよりは、家に取りに帰るのが普通だと思う。

里美の家は、駅から5分だ。


確信犯じゃないのか…。

それとも筋金入りのノンキ者なのか…。

その後の彼女の仕事ぶりや言動を見るにつけ

美談に疑いの目を持つ、根性曲がりの私であった。


しかしこの子、なぜか憎めない得なタイプ。

人と会い慣れているので、角が無くて、こなれている。

日頃の布教活動で、鍛えられているのだ。

職場で布教をもくろむのには閉口したが、離れるといい子だ。


しかも小柄で色白なので、私と同い年でありながら

ずいぶん若く見える。

美しいものには、甘い私。

すぐ宗教めいた方面へ持って行くのに目をつむれば

話すのは、なかなか楽しい。


この日も、のけぞるようなことをさらりと言ってのける。

「ご家族の皆さんは、お元気?」と聞いたら

「ええ!主人は先月亡くなったけど、あとの者は元気よ!」

と、ついでのように言う。


彼女のご主人が、前から病弱だったのは知っていた。

急に悪化したのだと言う。

びっくりしてお悔やみを言うと

「ありがとう。主人は救われたのでね、悲しまないことにしてるの」

なにしろ信仰心があるので、メンタル面が強いと言ったらいいのか。

厚い信仰にて送ってもらい、ご主人も満足であろう。


里美は病院を辞めてから、食品工場に勤めていたが

先週から、観光関連会社の切符売り場に転職したそうだ。

ここは私の知人も働いているけど、けっこう待遇がいい。

しかも正社員。

「ええ~?!すごいじゃん!良かったねえ!」

私は興奮した。


食品工場で同僚だった人が先に転職し

空きが出たので、声をかけてくれたという。

何人かに言ったらしいが、工場を二つ返事ですぐ辞めさせてもらえたのは

里美1人だったそうだ。

「私だけ、運良くそういうことになってねえ」

工場でも、仮病の女王だったのではないか…などと

いらぬことを考えるのは、私の根性が腐っているからであろうか。


ともあれ、休日が選べない不自由はあるが

ぜいたくを言わなければ、仕事はまだ転がっているのだ。

50歳で正社員は、一種の快挙である。

里美は、我ら年増の希望の星なのだ。


その幸運を、里美は信仰のおかげにしたがる。

「やっぱりね~、日々の祈りに勝る開運は無いわ!」

私は私で、また仮病を使って周囲の厚意を台無しにしないよう

日々、祈るばかりである。
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純粋女房

2009年08月17日 11時08分57秒 | 女房シリーズ
ふたつ年上の知り合い…ウラさん。

ふくよかで色白の、ごく普通の奥さんなんだけど、とても純粋な人だ。

毒のかたまりのような私には、いつも新鮮な驚きがあって楽しい。


数年前、まだ顔見知りというだけだった頃

共通の用が出来て、一緒に新幹線で出かけることになった。

窓口で回数券を求め、振り返ると

ウラさんは不安そうに言う。

「…私は…どこに連れて行かれるとですか?」

     「え…○○市じゃん?」


ウラさんの大きな目に、見る見る涙が溜まってくる。

「自動販売機でなくて、なんで窓口で買うとですか…

 それ、切符じゃなかとよ…」

     「いや…これは…」

「あの…私には主人も子供もいるし…知らない所へ行くわけには…」

ウラさんの白い頬を大粒の涙がつたう。

私にも一応主人と子供がいるので

ウラさんと知らない所へ行くわけにはいかんのだが…。


「帰らしてください…お願いします…」

     「ウ…ウラさん…ちょ…ちょっと待って…」

“安寿と厨子王”に出てくる“人買い”になった気分。

しかもウラさん、あんまり売り物になりそうでは…。


…二人分なら切符を往復で2枚買うより、回数券を4枚買えば安くなる…

回数券を見せて、噛んで含めるように説明すると

やっと納得してくれた。

新幹線に乗ったのは修学旅行以来だと言う。

事前の説明が必要であったと深く反省。


以来、人買いと安寿は親しくなり

時折会って、おしゃべりをするようになった。

優しくて穏やかなウラさんだが

たま~にぽつりとビックリするようなことを言うので面白い。


パート先でさんざん仕事を教えた新人が、3ヶ月で辞めたと言う。

ウラさんはその人の家を探し出し、文句を言いに行った…とさらりと言う。

     「なんで?!」

「腹が立ったとですよ」

     「どうして腹が?!」

「人の世話になっといて、途中で辞めたらいけんです」

     「…」

とまあ、こんな感じ…笑うしかねぇだろ。


ウラさんはご主人に愛され、守られて生きてきた。

ご主人を心から尊敬し、優秀で親思いの子供たちと

絵に描いたような「まっとうな結婚生活」を営んでいる。

つまり私と正反対。


時々、ズレみたいなものは確かに感じる。

家庭が安らかだと、外がより困難に感じるのかもしれない。

ズレ加減がちょっとなら、たぶんムッとするんだろうけど

大幅だと、いっそ刺激になって楽しい。


ある日の朝早く、突然ウラさんがやって来る。

「遊びに来たとです」

饅頭を2つ差し出す。


礼を言うと

「人様の家へお邪魔する時は手ぶらで行ってはならんと

 親からしつけられとります」

と胸を張って言う。

朝から人の家に行くな…とは、教わらなかったらしい。


昼になったが帰る気配もないので

     「昼ごはん、どうする?何か食べに行きましょうか」

と聞くと、ウラさんは大きなバッグから

おもむろに惣菜のパックをひとつ取り出した。

       「わ…わぁ…用意がいい…」


ウラさん、誇らしげにのたまう。

「よその家に行くときは自分の食いぶち用意して行けと

 親に厳しく言われて育ちましたけん」

ウラさんはラップをはがしながら言う。

食事どきになったら帰れ…とは教わらなかったらしい。


夕方になっても帰らないので、一緒に晩ご飯を食べた。

時計が夜7時を回ると

ウラさん、いきなり「じゃあ帰ります」と立ち上がる。

「今日は社宅の修理があって、朝から7時まで家におられんかったとです」

     「それを早く言ってよ。二人でどこかへ遊びに行けば良かったね」

「暑いから、よかとです」

ウラさんは、さっさと帰って行った。


そのうちウラさんは、ご主人の転勤でどこかへ行ってしまった。

時々刺激が欲しくなり、とても会いたくなる。   
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シルク・ドゥ・女房

2009年07月07日 16時25分48秒 | 女房シリーズ
「あら、いいシャツ!」

ミエは、まずそう言ってほめてくれる。

「よく似合うわ!」

ここまではいい。


「…シルク?」

ミエは必ず聞く。

いまどきシルクのシャツなんか着るモンがいるものか。

「ううん、化繊よ」


ここからがミエならではのリアクション。

「ええ~っ?」

この世の終わりのように、おおげさに驚く。

「ごめんなさいっ!失礼なこと聞いて!」

てっきりシルクだと思った…

私はいつもシルクだから、あなたもそうだと思った…

ミエの中では、シルクでないシャツを着ている者は恥ずかしいらしい。


また、別の日。

スーパーで、子供の好きなアイス…ガリガリ君をカゴに入れていた私。

ハーゲンダッツを手にしたミエとばったり。

お互いに、子供の好物だと話す。


「え…!」

ミエは、口に手を当てて立ち尽くす。

「ごめんなさい…目の前でこんなもの買って、恥をかかせてしまって…」

本当に申し訳なさそうに言う。

ま、こんなふうにミエと会うと

誰もがたちどころに「貧乏」「あわれ」の方角へ誘導されるのであった。


悪い子ではないのだ…悪い子では。

優しくて気の利く、4つ年下の知人は

つきあうのにちょっとした心の準備が必要なだけだ。


お互いがまだ若い頃、夫の職場と彼女の家が近所だったので

顔見知りになった。

かわいい「腰かけ事務員」だったミエから

交際中の彼と、最近交際を申し込まれた男性2人のうち

どっちにしようか…と相談された。


どっちも知らないので、金持ちで兄妹が少ないほう…と適当に答えたら

本当にその通りにして、じきに結婚してしまった。

以来、その責任?から、付かず離れずの関係である。


結婚して、旦那は普通だが親戚が金持ちという一族に

仲間入りしたミエは、どんどん変貌していった。


自称「ええとこ」へ嫁いだ自負から

両親二人で、職人系の家内工業を営む実家のことも

いつしか「事業」と形容するようになった。

「実家の事業が忙しくて…」

「やっぱり実家が事業をしている関係上…」


やがてその「事業」に、ミエも参画することとあいなる。

同居の嫁姑関係が深刻なので、見かねた実家の親が

「昼間だけでも息抜きに…」と招き入れたのであった。

以来、小遣いをもらいながら実家を手伝うという

どこかの娘さんと同じ生活を続けた。


「みりこんさん、まだパートに行ってらっしゃるの?パートに」

「パートは大変よねぇ…私には無理だわ…人に使われるパートは。

 体、気をつけてくださいね」

そんないたわりの言葉も忘れない。

気配りの人なのだ…ミエは。


嫁いだ娘が実家の商売を手伝う…この形態は

我が町においては、夫の姉…うちのカンジワ・ルイーゼが草分けだと思う。


30年近く前の昭和、それは田舎ではタブーであった。

朝から晩まで滞在するルイーゼの車が見えないように

父親はガレージのシャッターを閉める係…

来客に見つかった時は「今、たまたまちょこっと来たところ」と

全力で隠蔽するのは母親の係であった。


苦節二十有余年…

彼らの努力は実を結び、嫁いだ娘が実家で働く行為は

晴れてメジャーとなった。

雨の日も風の日もコツコツと実家に通い続け

その道を切り拓いたルイーゼは努力の人であり、先駆者なのだ。


「あの家もやってるんだから」という安心感は

幾多の事業主に、嫁いだ娘や外孫を手元に置く喜びをもたらしたであろう。

給料を他人にやるより、娘にやったほうがよっぽどいいし

娘のほうもよそで働くよりずっと楽で、子守りとごはんもついてくる。

有るものは、利用するべきだ。


ミエもまた、その一人であった。

それを容認した最初の嫁として

私までもが少々誇らしい気分である(冗談だよ)。


さて、やがてミエの弟が結婚。

娘もかわいいが、しょせん他家の嫁…

息子夫婦もそばに置きたくなったミエの両親は

再三にわたって、自分たちとの同居をうながした。

しかし、嫁いだ娘が入り浸る家へ、誰がのこのこ戻るというのだ。

そんなことをするバカは、私くらいのもんじゃ。


嫁がどうしても首を縦にふらなかったので

母娘して「ボロ嫁」「バカ嫁」とさんざんであった。

言われるままに同居していたら

「クソ嫁」くらいには昇格できたかもしれない。


やがて弟夫婦に子供が生まれた。

母娘は、さっそく産院へ駆けつける。

嫁は、母娘が部屋に入ってからお祝いを置いて出て行くまで

何を話しかけてもひと言も答えず

背中を向けて、ずっと窓の外を見たままだったと言う。


この話をミエから聞いて、その場に居合わせた者たちは大爆笑。

ミエはなぜ笑われるのか意味がわからず、ポカンとしていた。

私にこの嫁さんほどの根性があれば

人生はもっと違ったものになっていたかもしれない。

しかしながら、実家の手助けがあったとはいえ

姑を最期まで看取ったミエを尊敬もしている。


先日、久しぶりにミエ母娘と会った。

「バカ嫁が弟をそそのかして、自分の実家のそばに家を建てやがったから

 これからお祝いを持って行く」

のだそうだ。


「あれほどこっちへ帰って来るように言ったのに

 実家にばっかりくっついて!」

と母娘で怒っている。

「私のように、事業を手伝っているならいざ知らず!」


これで2~3日は笑える…と喜んだ私であった。
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すけきよ女房

2009年06月30日 11時55分52秒 | 女房シリーズ
病院に勤めていた時のバイト栄養士。

40前で、中学生のお母さんなんだが、この人がすごい。

根性もすごく腐っているが

もっとすごいのは、夏のお姿。

紫外線防御の装備がすごいんじゃわ。


黒い帽子…常識。

黒いサングラス…常識。

黒い長手袋…常識。

黒いマフラー…常識。

そして黒いスカーフで、鼻と口を覆い隠す。

さらに駐車場から職場のドアまで10メートルの距離を

黒い日傘をさして移動。

見る度に、わかってはいてもギョッとする。


最初の1年は、センエツながら

「夏の太陽に当たったら良くない、深刻な体の事情があるのだろう」

と思っていた。

わけを聞いてはならぬと気を使い、よっぽどのことだと気を回した。


しかし翌年、たまたま耳にしたところによると

ただの美白の一端だと言うではないか。

性格が悪いのも、仕事ができないのも

体が弱いからだと思い込み

何かとかばって我慢したことを一同後悔する。


しかも「なぜそこまで?」とたずねた同僚に、ヤツはこう言い放った。

「あなたたちとは違うから」

その「なぜ?」は

“そこまでの美肌でもなかろうに…”のニュアンスを含んだものであるが

彼女にはそう聞こえなかったらしい。


ご自慢の、某有名通信会社勤務の旦那様と

習い事のスケジュールでいっぱいの優秀なお子様たちに囲まれた

セレブな暮らしの自分とおまえらは、はなからスタンスが違うのだ…

とおっしゃられたのであった。


心で思うのは自由だが、口や態度に出したら

とたんにお里が知れてしまう。

ま、思うから日々の言動に出てしまうのであろうが

その程度で鼻にかけると

かえってハングリーな育ちを連想させるものだ。


以来、ひそかに「すけきよ」と命名。

“犬神家の一族”に出て来る登場人物だ。

そんなに白いのがよけりゃ、すけきよの名をくれてやる。


その形状から「マイケル」でもいいようなもんだが

ヤツにこの名前はもったいない。


すけきよの夏は、出勤時の脱皮と、退勤時の装着で忙しい。

その情熱を少しでいいから仕事に向けてほしいものである。


思うに、そうまでして守るほどのご器量でもないおかたに限って

紫外線対策が激しいような気がする。

元々浅黒いあんたの肌が少々黒くなったって、誰も気づきゃせんわいね…。

ちょっと焦げたくらいが

黒い腹とマッチして、ちょうどいいんじゃないかしら?


本当に日焼けが怖いなら

金欲しさに、のこのこ仕事に出て他人に迷惑をかけるより

家で静かに隠れておればいいのだ。


あの心境はもしや、気を付けている自分が好きなのかもしれない。

守るに値する肌であり、器量であると世間にアピールし

おのれの価値を自力で上昇させようとたくらむ。

ご苦労なことじゃ。
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エコ女房

2009年06月28日 16時23分08秒 | 女房シリーズ
病院の厨房に勤めていた頃の話。


そこの医師は、たいてい1~2年で転勤する。

行きずりの医師たちは、おしなべて人柄が良かった。

田舎の小さな公立病院に流れてくるのは、派閥でうまく立ち回れない人だ。

独身もいたが、妻が医師の娘でないというのも共通点であった。

医者ってたいへんなんだなぁ…と思う。


そんな医師の中に、若いイケメン…Y先生がいた。

俳優にしてもおかしくない。

性格も明るく穏やかで、患者や職員に大人気。

本人は自分の外見に気付いてないふしがあり、そこがまたかわいらしい。

食堂で救急搬送の電話を受ける姿は、ドラマのワンシーンのようであった。


院長を始め、医師はたいていそうだが

彼もまた、我々と気さくにおしゃべりをして行く。

病院内では見下された扱いを受けることの多い給食科だが

まことに勉強した人、まことに収入のある人は

妙な差別意識がないのもまことであった。

偏見は、いつの時代も中途半端な者が作り出す。


自分はサラリーマンの子供で、苦学して医者になったと話す。

若い奥さんと乳児を連れて、病院の敷地内にある官舎に住んでいた。

見た目も性格も良い医師は、早くからツバがついているものだ。


それだけなら“素敵なお医者様”ですんだであろう。

しかし我々は、生きとし生けるものとして最も本能的な部分…

“食”を預かる身の上である。


医師というのは、食に対して強い関心があるか

反対に、全く興味がないかの両極だ。

関心の有無だけならよいが

見なければよかった…知らなければよかった…

ということも、ままあるのが悲しいサダメよ…。


夜間警備員や、夜勤の看護師から「食堂のジャーにごはんが無い」

と苦情が出たのは、Y先生着任後、初めての当直の夜だった。


公立病院は、米粒ひとつまでうるさい。

厳密に計量された米を人数分炊くのだ。

Y先生は食事を一番に取りに来て、ありったけのごはんを持ち去ってしまった。

他の職員には待ってもらって、急いで炊き直す。


Y先生は、おそらく大食漢なのだろう…ということになる。

対策として3日に1度のY先生が当直の時は、米を多めに炊くと決定。


これで万全…と思った我々が甘かった。

ごはんは残るようになったが、どうも雰囲気が違う…

考えた末、やっと判明。

まだ来てない職員の皿の、一人4コずつ乗せた鶏の唐揚げが

3コになっとるっ!


またY先生対策会議が開かれる。

食事は毎回「検食」といって、試食みたいなものをひとつ用意する。

当直の医師はこれを食して、固いだの柔らかいだの、色がどうの味がどうのと

アンケートみたいなのを書くのが決まりだが、試食なので無料である。

そのついでにおかずをかすめ取られては

給食代金を支払っている他の職員が気の毒というものだ。


Y先生に直接言おう…という意見も出たが、これは上から止められた。

基本、医師は何をしてもいいのだそうだ。

それがこの病院の伝統、すべては転勤するまでの辛抱だという。

結果Y先生が当直の夜は、他の職員食を厨房に隠しておくことに決定。


そのうち、だんだん事情が明らかになってくる。

Y先生の奥さんは、エコライフに大変関心があるらしい。

地球温暖化を食い止めるため、食事の皿には全てラップを敷く。

その上に食べ物を盛って汚さないように心がけ、台所洗剤を使わない。

すべてにおいてこういう方針なので、食事の支度じたい

「しないのが一番エコ」ということになる。


「当直の食事を持って家に帰ったら

“なんで私たちの分は無いの?”と嫁さんに言われて…」

と何気なく話したY先生のひと言で判明した。


この一家は、当直の夜に確保したおかずを家族3人で食べ

ごはんの残りを冷凍して、次の当直まで持たせていたのだった。

徹底したエコライフの中で、ごはんを解凍する電力は許されるらしい。

とんでもねぇ“エコ女房”である。


土、日の朝、Y先生は

小さい娘を抱いて、厨房にやってくるようになった。

「この子に何か食べさせるもの、ありませんかね」


奥さんは、休日の朝は起きないことになっているそうだ。

日々の育児とエコライフで疲れているのだろう…ということにしておく。

赤ちゃんがお腹をすかせて泣くので、やむなく連れて来た様子であった。

ま、うちらも鬼ではないので、みつくろって離乳食を差し上げる。


なにしろエコな赤ちゃんなので、洗濯に合成洗剤は使わない。

パジャマがわりなのか、いつも同じピンクのタオル地のつなぎ。

靴下の部分もオールインワンになってるやつだ。

元の色はピンクだが、よく汚れる足元や手首の末端にかけて灰色に変色。

このボカシ、あのやんごとないおかたのお洋服みたいではないか。


…上品な淡いピンクから、末端にかけてグレーのグラデーション。

 落ち着きのある高貴なイメージが、とてもお似合い…

○○子皇○…とひそかに呼ぶ。


もうここらへんになると、Y先生の美しさもかえってあざとい。

どんなに“ええオトコさん”でも、幻滅を通り越す。

人の親切心や我慢の上に、女房まであぐらをかきだした

ハイエナ一家の世帯主…というだけだ。


さて食堂には、温かいおかずを入れておく保温器がある。

人数によっては入らない小型なので、たまに伝統の技を使う。

カラの小鉢をふせて台座を組み立て、絶妙なバランスで皿を重ねるのだ。


Y先生、その小鉢を手に、すごい形相で厨房に来た。

「この小鉢、何が入ってたんですかっ?僕のは無いんですかっ?」

毎回こうなるので、小鉢の台座はやめた。


2年後、Y先生の転勤が決まった。

荷物を早めに送ってしまって食器が無いので

毎日3食「多めに」作って欲しいと言う。

家族も困っていると言うが、我々は確信犯と察する。

離任の朝まで数週間、Y先生一家の食事の面倒を見る羽目になるが

これでお別れ…と思うと、苦にはならなかった。


あの赤ちゃんが成長して、もしも会うことがあったら

絶対言ってやろうと思う。

「あんたを育てたのは、うちらだよっ!」

会うことはないと思うけど。
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焼きそば女房

2009年06月26日 11時38分42秒 | 女房シリーズ
友人のカズミが来た。

ものすごく怒っている。


先週、知人の新築祝いに招かれたのだと言う。

カズミは数年前に、念願だった雑貨の店を始めた。

ほとんど趣味みたいなもんだが、楽しんでやっている。

そこへ時々来て、ささやかな物を買っていく若い奥さんから

家の新築パーティーに招待されたのだ。


「手作りの招待状くれて、おばちゃん、来て…と言うのよ。 

 私もお客さんから家族みたいに思ってもらえるようになったんだわ…

 って、嬉しかったわよ」


ここで説明しておかねばなるまい。

いずこもたいした違いはないかもしれないが、私の住む地方では

家を新築したら、ごく近しい親類縁者を招いてお祝いの宴会を開く。


「披露」といって、新しい家を見てもらい

好事の厄落としと、日頃の感謝をこめて

料理屋の折り詰めなどを手配し、精一杯のご馳走を振る舞う慣習だ。

ていねいな家では、引き出物も用意する。


招かれたほうは、もちろん手ぶらでは行けない。

しかしながら、娯楽の少ない田舎のこと…

新築披露におよばれすることは

結婚式の次くらいに光栄で、特別な行事なのだ。

カズミがお祝いを包み、喜んで参上した気持ちはわかる。

 
行ったら…あんた…と、カズミはいっそう険しい表情になる。

「町内の商売人ばっかりなのよ!」

        「…どういうこと…?」

「車屋さんでしょ、電器屋さんに保険屋さん、ガソリンスタンド

 居酒屋のママ…それから…肉屋さんに美容師さん…」

とにかく、若夫婦が日頃買物をする個人商店の人たちばかりが

招かれていたという。


「電話で話してるのをチラッと聞いたら

 “今日は業者さんの日”なんて言ってるじゃない?

 親族の部は先月すませて、この前の日曜日は友達呼んだって…」

     「なんじゃ?そりゃ…」

「私達は、お客さんの祝い事に駆けつけた業者というわけよ。  

 招いたほうは、無邪気そのもの! 

 割り切れない自分が情けない!」


その子はスシ屋の一人娘なので、料理のほうも少しは期待感があった…

と告白するのがカズミらしい。               

「…何が出て来たと思う?ねぇ、何だと思う?」

      「知らねぇよ…」

「…焼きそばよっ!」


大爆笑。

「何とも言えない空気の中で、ホットプレートの焼きそば食べて

 みんな早々に帰ったわよ…」

      「食べたんかいっ!」


袖すり合うも多生の縁…とばかりに

片っ端から招待すれば、もれなくお祝い金が付いて来る。

親の目と援助のある親族の部でも、焼きそばを出したなら見上げたものだが

そこは慣習にのっとり、ちゃんとやったと思われる。


ザコの部でお出しするのは、ゴチソウでなくテキトウ。

人の気持ちや後々のことを考えなければ

ローリスク・ハイリターンのやったモン勝ち。

やるのぉ!焼きそば女房!


実は去年、ちょっと似たようなことがあった。

社員で焼き肉をすることになり、家を新築したばかりの男の子が

「新築披露も兼ねて、うちでしよう」と言い出した。


肉やビールは、あらかじめ招かれる者たちで用意した。

もちろん、各自お祝いを入れたのし袋も持参する。

土地と頭金は女房の実家から出たということであったが

彼の幸運も含めて、めでたいことである。

我々夫婦からも、心ばかりの金一封を息子にことづけた。


さて帰り際、彼の奥さんから

野菜とウィンナーの分を割り勘で請求されたという。

一同、一瞬複雑な心境だったらしい。


その男の子は、その後すぐに退職した。

女房の親のコネで、どこか大きい会社に入ったそうである。

辞める会社の者を呼んだのは、行きがけの駄賃。

私はその話に感動?し、ひそかに「ぼったくり女房」と名付けて喜んだ…。


無邪気と非常識が紙一重のこういう問題は

言えばセコい、ウツワが小さいと思われやすいので

人の口にのぼることは少ない。

どうでもよさげなことだけに、男は気が付きにくいので

女のほうが気を回さなければ笑われる…と相場が決まっていた。


しかし最近はどうも、その通念が崩れつつあるようだ。

焼きそば女房も、ぼったくり女房も

可愛がられて大きくなり、運良く地元で結婚した。

結婚後も亭主と孫の3点セットで、金銭面と子育てにおいて

親の庇護を受け続ける。


百人の他人より、しっかり者の親が一組そばにいれば

たいていのことは乗り越えられるものだ。

娘が何か失礼をしたって、被害者は親に免じて口をつぐむ。


親がいなくなったら困るだろう…と人は言う。

しかし親…死なない。

娘が老いても、たいていまだ生きている。

しかも娘一家から絶え間なく刺激を受け続けるため

いつまでも若々しくて、ボケにくい。

よって、他人が心配する必要なし。

親が死んだら、ぜひ法事でも同じことをしてもらいたい…と期待している。


また、そのような女と結婚する男も、だいたい似かよったタイプ。

友達が少なく、実家が遠方…またはしっかりしておらず

性質は、裏はどうあれ、表向きおとなしくて従順だ。

心ではどう思っていようと、とりあえず得なほうへ身を寄せることが

本能的にうまい。


気がきかないので出世は望めないが

それゆえ転勤の心配も無いので、女房一家はご満足。

生まれつき運が強い…というのは、こういう無敵の女の子たちのことを

言うのではなかろうか。


カズミと私は

「ついて行けないうちらが悪い」

という結論に達した。
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