我ら同級生は2週間後に迫った還暦旅行に向けて
現在、準備に余念がない。
同窓会で会計係をやっている私も、例外ではない。
先週末、同級生のルリコが経営する店で最後の打ち合わせが行われ
地元在住の13人が集まった。
ルリコの店を使うのは、約1年ぶり。
年末に亡くなったみーちゃんの弟、まーちゃんの店が断然安くておいしいため
会合はしばらくの間、そちらで開かれていた。
ちなみに会合の場所を決めるのは会長なので、私は関知しない。
つくづく思うが、食べ物屋さんというのは
店主が何を食べて育ったかで差が出るものだ。
吟味された料理の数々に、とびきりおいしいヒレステーキが一人1枚付いて
ルリコの店より総額2万円以上安いとなると、参加者の足取りは軽い。
最初は姉の同級生だから、まーちゃんがサービスしてくれていると思った。
その心意気も確かにある様子だが、それだけではないようだ。
なぜなら、いつ行ってもお客でいっぱい。
人口減少、高齢化がお約束の田舎町において
なかなかお目にかかれない若者も、ここで発見できる。
飲み会の大好きなルリコだが
まーちゃんの店で行われる会合にはことごとく来なかった。
気持ちはわかる。
自分の店は使ってくれず、よその店を使う同級生の措置が
面白いはずがない。
しかし、これではいけないと思ったのか
12月の始めにあった会合には珍しく参加。
「たまにはよその店で食べて、少しは勉強すりゃええんじゃ‥」
我々女子一同は、密かにそう言い合った。
はたして、ルリコに限っては参加の成果があった。
旅行前の最終打ち合わせをする会場は、その場でルリコの店に決まる。
彼女を前にしながら「次回もここで」とは
会長も言いにくかったらしい。
こうして久方ぶりにルリコの店へ集まった、地元メンバー。
男子の思いは知らないが、我々女子は行く前からやる気ゼロ。
小汚い店でまずい物を食べさせられ
勘定だけはいっぱしにふんだくられるのがわかっているので
着る物もいい加減だ。
その日は寒波が訪れていた。
店に足を踏み入れた途端、帰りたくなる。
酷寒。
安普請のルリコの店は床がコンクリートのため
ただでさえ冷えるのに暖房が入ってない。
いつもこうだ。
並べた料理が傷むという理由になっているが
暖房だけでなく、照明も最初のお客が来てから点灯されるので
節約と思われる。
テーブルには鍋がデン。
その周りには、所狭しと小鉢があれこれ。
前回行った、まーちゃんの店を意識したメニューであることは間違いない。
しかし器は裏の民宿で使われるダサい安物や、何かの景品。
相変わらずのひなびた光景だ。
お好み焼きを焼く鉄板には、ビニールカバーが掛けてある。
鉄板を使う気はさらさら無いという、ルリコの意思表示だ。
マズい料理から目をそらしつつ、店内を暖める目的もあって
お好み焼きを食べようという我々の魂胆はかき消えた。
ガックリとうなだれる女子一同。
付き出しはお決まりの冷凍枝豆が3房、買った卵焼きのスライス1枚。
他には冷凍タコと玉ねぎのマリネ、冷凍アサリと青菜のオリーブオイル和え
冷凍エビとアボカドのマヨネーズ和え
真空パックから出した、ローストビーフのコマ切れが一人1枚
サニーレタスとブロッコリーの目立つ大皿には
冷凍イカゲソと冷凍豚トロの天ぷらがチョロチョロ。
鍋には冷凍すり身団子と、冷凍鶏のブツ切りが入浴中。
本日は冷凍スペシャルだ。
そこへメンバーのエイジが、遅れてやって来た。
手にした一升瓶は、ネットで買った酒だそう。
「みんなで飲もうぜ!」
持ち込みに、ルリコは文句が言えない。
エイジはルリコの親戚である。
エイジの日本酒は「作(さく)」とかいう名前だったと思うが
フルーティーでおいしかったため、一同はそっちばかりを飲む。
酒が出ないので、ルリコは焦ったのか
「みりこんちゃんのために、ワインを用意していたのよ」
と言い出した。
料理がイマイチのために盛り上がらない宴もたけなわを過ぎ
お開きと勘定のタイミングを見計らっている頃なので、今さら感が漂う。
「お!ワイン!ええのぅ!」
断ろうとした私より先に、男子の誰かが言う。
チッと思ったが、ルリコはいそいそとワインボトルを持って来た。
赤も白も、コルク栓じゃない。
ひねって開封するタイプ。
この安ワインが、勘定の時には何千円にもなるのだ。
ワイングラスは20年ぐらい前、キリンレモンの景品だったやつ。
持つ所に、ガラスのミッキーマウスが付いている。
ため息が漏れてしまう女子一同。
ところで、ここでも小室圭氏の話題になった。
彼の公開した文書に、非難ごうごうだ。
「あれで通ると思うたんじゃろか」
「国民をバカにしとる」
今回の件は、興味の無かった者にもインパクトが強かったらしい。
私の皇室好きは知られているため、意見を求められる。
しかし圭氏が現れた頃、私が「ロクでもないやつ」と言ったら
「何で?きちんとしてるじゃん」と反論し
「今に大ごとになる」と言ったら
「皇室にそんなこと、起こるわけない」とせせら笑ったやつらだ。
真面目に取り組む気は無く、「今後が楽しみ」とだけ言った。
小室問題に限らず、どんなことでも不安や心配を煽れば
週刊誌は部数が伸びるし、テレビは視聴率が上がる。
だから報道は信用しない。
庶民がワーワー騒いだって、あのおうちの皆様は
結局ご自分たちの思う通りになさるのだ。
それが、どなたの“思う通り”となるのかを見届けたいと思っている。
こうしている間にも、ルリコのラストスパートは続く。
「ロールケーキがあるんだけど食べない?」
「コーヒーは?果物はどう?」
酒が売れないとなると、ターゲットを女子に絞ってスイーツ系に路線変更。
が、時すでに遅し。
皆の食は進まず、雪がちらつき始めたので、かなり早めのお開きとなった。
勘定は5万円ちょっと。
やったわ!いつもより3万円安い!
大喜びで帰途についた。
しかし翌朝、その代償が訪れる。
珍しく二日酔いだ。
安ワインがいけなかったらしい。
現在、準備に余念がない。
同窓会で会計係をやっている私も、例外ではない。
先週末、同級生のルリコが経営する店で最後の打ち合わせが行われ
地元在住の13人が集まった。
ルリコの店を使うのは、約1年ぶり。
年末に亡くなったみーちゃんの弟、まーちゃんの店が断然安くておいしいため
会合はしばらくの間、そちらで開かれていた。
ちなみに会合の場所を決めるのは会長なので、私は関知しない。
つくづく思うが、食べ物屋さんというのは
店主が何を食べて育ったかで差が出るものだ。
吟味された料理の数々に、とびきりおいしいヒレステーキが一人1枚付いて
ルリコの店より総額2万円以上安いとなると、参加者の足取りは軽い。
最初は姉の同級生だから、まーちゃんがサービスしてくれていると思った。
その心意気も確かにある様子だが、それだけではないようだ。
なぜなら、いつ行ってもお客でいっぱい。
人口減少、高齢化がお約束の田舎町において
なかなかお目にかかれない若者も、ここで発見できる。
飲み会の大好きなルリコだが
まーちゃんの店で行われる会合にはことごとく来なかった。
気持ちはわかる。
自分の店は使ってくれず、よその店を使う同級生の措置が
面白いはずがない。
しかし、これではいけないと思ったのか
12月の始めにあった会合には珍しく参加。
「たまにはよその店で食べて、少しは勉強すりゃええんじゃ‥」
我々女子一同は、密かにそう言い合った。
はたして、ルリコに限っては参加の成果があった。
旅行前の最終打ち合わせをする会場は、その場でルリコの店に決まる。
彼女を前にしながら「次回もここで」とは
会長も言いにくかったらしい。
こうして久方ぶりにルリコの店へ集まった、地元メンバー。
男子の思いは知らないが、我々女子は行く前からやる気ゼロ。
小汚い店でまずい物を食べさせられ
勘定だけはいっぱしにふんだくられるのがわかっているので
着る物もいい加減だ。
その日は寒波が訪れていた。
店に足を踏み入れた途端、帰りたくなる。
酷寒。
安普請のルリコの店は床がコンクリートのため
ただでさえ冷えるのに暖房が入ってない。
いつもこうだ。
並べた料理が傷むという理由になっているが
暖房だけでなく、照明も最初のお客が来てから点灯されるので
節約と思われる。
テーブルには鍋がデン。
その周りには、所狭しと小鉢があれこれ。
前回行った、まーちゃんの店を意識したメニューであることは間違いない。
しかし器は裏の民宿で使われるダサい安物や、何かの景品。
相変わらずのひなびた光景だ。
お好み焼きを焼く鉄板には、ビニールカバーが掛けてある。
鉄板を使う気はさらさら無いという、ルリコの意思表示だ。
マズい料理から目をそらしつつ、店内を暖める目的もあって
お好み焼きを食べようという我々の魂胆はかき消えた。
ガックリとうなだれる女子一同。
付き出しはお決まりの冷凍枝豆が3房、買った卵焼きのスライス1枚。
他には冷凍タコと玉ねぎのマリネ、冷凍アサリと青菜のオリーブオイル和え
冷凍エビとアボカドのマヨネーズ和え
真空パックから出した、ローストビーフのコマ切れが一人1枚
サニーレタスとブロッコリーの目立つ大皿には
冷凍イカゲソと冷凍豚トロの天ぷらがチョロチョロ。
鍋には冷凍すり身団子と、冷凍鶏のブツ切りが入浴中。
本日は冷凍スペシャルだ。
そこへメンバーのエイジが、遅れてやって来た。
手にした一升瓶は、ネットで買った酒だそう。
「みんなで飲もうぜ!」
持ち込みに、ルリコは文句が言えない。
エイジはルリコの親戚である。
エイジの日本酒は「作(さく)」とかいう名前だったと思うが
フルーティーでおいしかったため、一同はそっちばかりを飲む。
酒が出ないので、ルリコは焦ったのか
「みりこんちゃんのために、ワインを用意していたのよ」
と言い出した。
料理がイマイチのために盛り上がらない宴もたけなわを過ぎ
お開きと勘定のタイミングを見計らっている頃なので、今さら感が漂う。
「お!ワイン!ええのぅ!」
断ろうとした私より先に、男子の誰かが言う。
チッと思ったが、ルリコはいそいそとワインボトルを持って来た。
赤も白も、コルク栓じゃない。
ひねって開封するタイプ。
この安ワインが、勘定の時には何千円にもなるのだ。
ワイングラスは20年ぐらい前、キリンレモンの景品だったやつ。
持つ所に、ガラスのミッキーマウスが付いている。
ため息が漏れてしまう女子一同。
ところで、ここでも小室圭氏の話題になった。
彼の公開した文書に、非難ごうごうだ。
「あれで通ると思うたんじゃろか」
「国民をバカにしとる」
今回の件は、興味の無かった者にもインパクトが強かったらしい。
私の皇室好きは知られているため、意見を求められる。
しかし圭氏が現れた頃、私が「ロクでもないやつ」と言ったら
「何で?きちんとしてるじゃん」と反論し
「今に大ごとになる」と言ったら
「皇室にそんなこと、起こるわけない」とせせら笑ったやつらだ。
真面目に取り組む気は無く、「今後が楽しみ」とだけ言った。
小室問題に限らず、どんなことでも不安や心配を煽れば
週刊誌は部数が伸びるし、テレビは視聴率が上がる。
だから報道は信用しない。
庶民がワーワー騒いだって、あのおうちの皆様は
結局ご自分たちの思う通りになさるのだ。
それが、どなたの“思う通り”となるのかを見届けたいと思っている。
こうしている間にも、ルリコのラストスパートは続く。
「ロールケーキがあるんだけど食べない?」
「コーヒーは?果物はどう?」
酒が売れないとなると、ターゲットを女子に絞ってスイーツ系に路線変更。
が、時すでに遅し。
皆の食は進まず、雪がちらつき始めたので、かなり早めのお開きとなった。
勘定は5万円ちょっと。
やったわ!いつもより3万円安い!
大喜びで帰途についた。
しかし翌朝、その代償が訪れる。
珍しく二日酔いだ。
安ワインがいけなかったらしい。