殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

嵐の予感

2008年12月30日 20時13分01秒 | 不倫…戦いの記録
また正月がやってきました。

年末から休みの夫は、誰も聞いてないのに

なんやかんや理由をつけてはお出かけ…。


私も仕事があるので、いちいちかまってはいられません。

元旦、早朝から午後までの勤務を終え

家でくつろいでいたところへ帰って来た夫は、なんと着物姿でした。


見覚えがあります。

何年か前に義母があつらえてくれ

そのまま両親の家に置いてあった大島です。


        「どうしたの~?珍しい!」

「ちょっと着てみたんだ」

        「お義母さんに着せてもらったの?」

「うん」


           ウソおっしゃい…


着物は死に装束と同じ…不吉な左前でした。

羽織のヒモも適当な蝶結びで

ひと目でどしろうとが着せたとわかります。

義母は着道楽で、着付けもうまかったので

こんなことになるわけがありません。


そこへ義母から電話。

「あら、もう帰っていたのね。

 どうかなぁと思ったけど、お正月だし、かけてみたのよ」

      「今日は午前勤務だったから」

「えっ?実家じゃなかったの?」

      「仕事、仕事」

「おかしいわねぇ。

 今朝、息子があんたの実家へ行くから着物を着せろって…」

            「ほぉ~」

「なんてこと?朝もはよから起こされて…着付けさせられて… 

 実家のご両親に見せると言うから…。 

 あの子、元旦からウソついてんの?」

   
     誰が中年男の着物姿を見たがるっちゅうねん…      


追求を怖れた夫は

その間に着物を脱皮して、こっそり出かけていました。


確かに「自分のシモのために、他人の名前を使うな」とは言いました。

        だから私の実家を使ったのね…


初詣にでも行ったのでしょう。

正月や成人式の時に、デートで晴れ着から裸になって

着られなくなる娘さんの話は昔からよく聞きます。

ホテルや彼氏の家で困ったというやつです。

「バカだ~」と笑っていましたが

まさか自分の夫もそのバカの一人になるとは思いませんでした。

        バカは元々だけど、もう一歩前進!


蝶結びが出来ない不器用な夫ですから

着せ直したのは相手の女性でしょう。

本心はそんな着物、風に当てたり畳んだりしないで

まるごとゴミに出したい気分でしたが

義母がスポンサーなので、そうもいきません。

先々「あれはどうした…」と絶対言われます。


病院食用おせちの準備、厨房の大掃除

業者の正月休み分の納品…。

それらが通常業務と同時進行で年末から続き、疲れもあったのでしょう。

朝の6時から働いて帰って、自分の実家に行ったと言われ

デート着の後始末をする自分…。

          
          珍しく惨めな気持ち…


縁起をかつぐほうではありませんが

今年は荒れるかもしれない…とふと思いました。


病院での仕事は、少しずつでしたが、しのぎやすくなっていました。

自分が仕事を覚えてきたのと

早くも古参になって後輩ができたのと

院内外の行事になるべく参加し

他の部署、とくに看護師や介護士と懇意になったことが大きいように思います。


私はスポーツがあまり好きではありませんが

やればある程度の結果は出せるタイプです。

バレーボール、バスケット、ボーリング…

系列病院対抗のスポーツ大会や

職員旅行には、なるべく参加するようにしました。


泊まりがけで行って、同じ席で食事や宴会をすれば

各部署の参加者と、自然に仲良くなるものです。

媚びるつもりはありませんが

気楽に話をするようになれば、周囲が何を望んでいるかがわかります。

特に関係の近い看護は

患者別に、気管や歯がどういう状態だから

増粘剤の濃さ、きざみ方はどれくらいが食べさせやすい…

などと細かい話がしやすい関係が築けるので、対応が早くなります。

いわばホットラインです。


「わかってくれる」という信頼関係を結べば

少々のことは看護がカバーしてくれ

ミスがミスでなくなることも増えます。


今までは、そんな会話が全く無いまま

栄養士からの又聞きで仕事をしていたので

要望がや事情がうまく通じず

何かミスが起きる度にぎくしゃくして関係が悪化していました。


もちろん、そういうことをし始めると邪魔をする者もいます。

私より先輩は、他の部署の人間と会話すると激しく嫉妬します。

その役は、本当は自分がしたいのです。

だったら最初からやればいいのです。


しかしそれはせず

「中のことが知られるとまずいこともある」

「行事の経費は公務員共済から出ているから、パートは使わないのが礼儀」

と遠回しにけん制です。


   おまえらは、ショウノウ臭い古セーター引っ張り出して忘年会に出て

   すみっこでかたまっておれ!
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士農工商

2008年12月29日 08時45分42秒 | 不倫…戦いの記録
病院は、小さいですが国立でした。

厨房の人間の入れ替わりは激しく

1年もしないうちに、私は古株の一人になってしまいました。


この仕事はシフト制で、早朝から昼すぎまでの勤務か

午後から夜までの勤務を交互に繰り返します。

よって子供に手のかかる年代の人は働きにくい環境ですが

中には小中学生のいる人も入ってきました。


学校行事などは一ヶ月前に申し出れば休めるという触れ込みでしたが

病気や変更などで、計画的にはいかないのが子育てです。

急に「休ませてほしい」と言えば

手のひらを返したような冷たい言葉や視線に刺される運命になります。


ギリギリの人数でやっているので、急な対応が難しいのも事実ですが

「私は運動会すら一度も出たことは無い!」

と上司に言われては

「約束が違う…」

と辞めていきました。


同じ仕事をして、うなるほど給料がもらえる公務員は

後で子供にいかようにも埋め合わせがしてやれます。

安い賃金で都合良く使われるパートのカバーをするのが

高給取りの役目だと思っていましたが

ここでは、公務員の代わりに激務に耐えるのがパートの役目でした。


中でも気の毒だったのは

離婚したご主人が借金を苦に自殺してしまった人でした。

成人した子供に取り立てが来るのを防ぐために

家裁に相続放棄の手続きに行くから急遽休みが欲しい…

と上司に打ち明けたところ、許可を渋ったばかりか

それを病院中に言いふらし、彼女は退職しました。


その件に、私はまんざら無関係ではありませんでした。

自殺する前の夜、勤務が終わって一人駐車場に向かった私は

真っ暗な中、厨房の外壁にもたれてうずくまる男性を見ました。

気味が悪くて足早に通り過ぎた…と翌日話したのですが

あれは彼女のご主人だったのではないかと上司が言うのです。


「あなたが気付いて声をかけていれば、自殺しなかったかも」

上司は真顔でそんなぶっそうなことを言うのです。

腕の良かった彼女が辞めた原因をみんなから責められ

苦し紛れに私のせいにしたのでした。


もしそれが自殺した亭主だったとして

声をかけ、あんたの借金は私が肩代わりしてやるから死ななくていい…

と宮沢賢治のように言ってやればよかったのでしょうか。

とっさに人のせいに出来る鮮やかで強引な言い訳…

長年にわたる実践のたまものでしょう。


私が入ったのは、病院の経営が破綻寸前で

あらゆる経費の削減に取り組み始めた頃でした。

人件費削減のために、各部署の公務員以外の給料を半減させたところ

大半が辞めてしまい

その補充を募集している殺伐とした中に飛び込んでしまったのです。


節約意欲はとどまらず、ある日調理員が集められ

7時間だった勤務時間を6時間に変更することが言い渡されました。

庶務課長も厨房の上司も

「1時間減って、早く帰れます。良かったですね」

と信じられないことを言います。

しかもそれを聞いて喜んでいる同僚。


7時間を6時間にするということは

時給で働く我々は収入がダウンするということです。

そして一ヶ月の総勤務時間で決まる給与ランクが

一段階下がることによって、規定の寸志や有休の金額も下がるのです。

しかも7時間でやっていたことを6時間でやらなければならないので

大変しんどくなります。


こういうご時世だから、人件費削減に不満はない

しかし、みんなをだますようなことはせず

最初から真実を話していただきたい…

それを言うと、女性の庶務課長があからさまに嫌な顔をしました。


「だから数字にくわしい人は入れたくなかったのよ!」

面接の時、渋った意味がやっとわかりました。

「私たち公務員だって、削られているんだからねっ!」

捨て台詞です。


江戸時代はとっくに終わったのに

士農工商の歴史がここで脈々と受け継がれていたのは

少々感動的ですらありました。

おさむらいに逆らった私は、あの時代なら打ち首ですな。

   
厨房は他の部署から「炊事」と呼ばれていました。

「ちょっと、スイジ!」

最初はスーパーマリオの相棒かと思ってピンとこなかったほど

びっくりしました。

私はそれを差別語だと感じましたが

違和感を持っている者はいないようです。


「患者様の命をお預かりしていることを忘れず、自信と誇りを持って…」

言うことは立派ですが

自分の家の夕食にする天ぷらを厨房の粉と油で揚げて帰る上司に

言われたくないのも事実です。

食材こそ管理が厳しいので自前ですが

日常的にこんなことが出来るのですからたいしたものです。


今まではみんな一蓮托生の高給取りだったので

公然の秘密であっただろうし

パート制になってからは、気付く前にゾロゾロ辞めていくので

誰も知らなかったのでしょう。


他の部署でも、常習的なサボりなど似たようなことが日常でした。

彼らがこれまでどんな働き方をし、税金を無駄遣いしていたかは歴然です。


病院の公務員全員がそうではありません。

立派な人もいます…多分。

しかし、不況によって民間の人間と一緒に働く機会が増えると

仕事に対する意識のズレから

悪い印象を一般市民に与え、それが広まる結果となります。


口先で改革を叫びながら

弱い立場の者をおとしめることで自分の地位の安定をはかり

蛍光灯を消すことだけが節約だと思い込んでいるバカも多いです。

それらを仕事と信じる神経が、腹立ちを通過してむしろあわれでした。


本当に病院のためを思って節約をしたいなら

まず自分たちがともしている昼あんどんをすみやかに消灯し

給料の高い、遊んでいる年寄りからさっさと退職するべきです。


自分のいる間は楽しく働きたいと思い

まず呼び名を炊事から給食に換えるべく

ことごとくの備品に汚い字で書いてある「スイジ」の文字を

「給食」に書き換えました。


同僚に声をかけて「給食と名乗ろう運動」を始めました。

内線に出る時や、やはり入れ替わりの激しい他の部署の人と接触するたび

「給食」をアピールしていると、数ヶ月で浸透しました。

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被浮気家族

2008年12月28日 14時45分00秒 | 不倫…戦いの記録
幸福の形は似通っているが、不幸の形はさまざま…

といいますが、まったく本当だと思いました。


虎の穴で生きる7~8人の人々は

それぞれいろんな家庭の悩みを抱えていました。

夜討ち朝駆けの激しい労働…

入る時は気付きませんでしたが、よく考えると

しっかりした旦那がいれば、関わる必要のない仕事です。


不幸と仲良しの人は、自分の物差しで他人を計り

目を皿のようにして自分より不幸な人をいつも探しています。

「あの人よりはマシ」と思える存在を作り上げ

それを見てはホッとしたり

少しでも自分より上に上昇しないように

陰口や噂話で予防線を張っておきます。

忙しいことです。


一緒に入ってノイローゼになった人は

安定した職業のご主人と秀才の子供がいました。

入った理由…生活のためでなく、子供の学費。

虎の穴にふさわしくなかったわけです。


新入りは、着ている物、乗る車、何でも観察と妬みの対象になりました。

      こりゃ~、大変な所へ来ちまっただ…


仲居の時、先輩が「仲居は女の終着駅」と言っていましたが

ここは人間の終着駅だと思いました。


それでも虎の穴には、私にとって大事な条件が叶っていました。

「回りに男性がいない環境」

とても重要です。


私にはずっと以前から、すぐ結婚を申し込まれるという

困った癖?がつきまとっていました。

結婚でなければ愛人です。

けっして私が美しく魅力的なのではありません。

浮気者の妻と知れると

飢えていて、すぐ誘いに乗るように思われるのでしょう。

夫の庇護という見えないバリアが、私には無いのかもしれません。

しかも、イケメンならまだしも、絶対無理!という相手ばかりです。


「どこか南の島で、二人で小さな酒場でも開いて…」

夢物語として言われることもたいてい同じです。

      なんであんたと南の島へ行かにゃならんのじゃ…

      わたしゃカメハメハ大王の親戚か…


これまでに何回もあったので

絶対自分に何か原因があると感じていました。

オホホ…とうまくかわして蝶のように振る舞いたいのはやまやまですが

一緒に働いていると気まずいし

なにやら呪わしい血が、そんな状態になるのを誘っているような気がして

自分がとても情けないのです。


ガチガチの真面目人間ではありませんが

配偶者が軟派だと

もう片方は、自分も同じことを求めて痛みを和らげるか

私のように拒絶的な心境になるかのどちらかだと思います。

外界から遮断された女だけの密室は

そういった面での安心感をもたらしてくれました。


少し経つと、最初の頃の

鵜の目鷹の目であら探しの状況は軟化しました。

同じ穴のムジナと認められたのでしょうか。

               痛し痒し…



その頃から、夫は携帯の出会い系にハマッていました。

私の仕事が不規則なのもあり、やりたい放題です。

婆姫とも、だましだまし続いているようです。


地元で暮らすと、やはり雑音の聞こえ方が違います。

「婆さんを助手席に乗せて、山へ登るのとすれ違った」

…ホテル代が惜しかったのでしょう。


「若い女と食事に来た。気の毒なほど残念な女の子だった」

…出会い系で初めて会ったのでしょう。


「高速のパーキングで見た。女連れだった」

…遠征したのでしょう。


なぜそんなことがこっちの耳に入るのかというと

長男が仕事で使う業務用アマチュア無線です。


男性というのは、自分以外のことになると

007みたいな気持ちになるようで

息子の耳に入れることが親切と信じているらしいです。


社員に限らず、仕事関係者、その友達…

広域にわたり網羅している無線仲間はトラッカーが多いので

夫の動向はいたる所で目撃されました。


「了解。そのまま追突して殺害してください。どうぞ」

と言った後で「情けない…」とつぶやくという息子は不憫ですが

こうして笑われることも被浮気家族の宿命です。

笑ってもらって、酒の肴になることが我々の使命ならば

喜んでなりましょう。


それによって、無線を聞いた中のたとえ一人でも

「色に溺れるって、こんなに恥ずかしいコトなんだ…」

と思ってもらえれば、本望でございます。 
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虎の穴

2008年12月27日 08時02分23秒 | 不倫…戦いの記録
ほどなく、実家の近所…徒歩10秒の場所にある

小規模な病院の求人広告を目にしました。


「給食調理員募集」


実家の両親も60代後半…出来れば近くにいたい。

一番簡単に取れそうで、老人になっても役に立ちそうな資格…調理師もあり?

候補の一つとして、軽い気持ちで面接を申し込みました。


チョロいと思っていた面接が、実は難関でした。

私の前歴がネックとなりました。

面接をしたのは現場の人ではなく、事務長と庶務課長でしたが

「大手企業で経理と人事に携わっていた」というのが

どうもいけないらしいのです。

その時、理由はまったくわかりませんでした。

「ここは汚れ仕事だし、無理かと思いますよ…」

「給与とか、労働条件にも詳しいんですよね…ちょっと、うちでは…」

        あきらかに入れたくない素振り…


完全に断られると思い

他にもとりあえず宅建と介護の資格を取りたかったので

講習の準備などしていたら

2日後に採用決定の電話がありました。

あんなにもったいぶってたのに、なんで?…ですが

他に来る人がいなかったからでしょう。


その病院の面接を受けたことを人に話すと

「やめたほうがいい」と口を揃えて言われました。

「虎の穴と呼ばれている」

「鬼のような調理員と、悪魔のような栄養士がいると聞いた」

「人が続かないことで有名な恐ろしい所だから、いつも募集しているのだ」

しばらくよそで暮らしていたので

その悪名高き職場の噂を知らなかったのでした。


でも私は、承諾してしまったのです。

期待してくださったかた、すいませんでした。

私は給食のおばちゃんになることにしたのです。


調理師免許の受験資格が得られる2年をメドに

噂どおりつらくても頑張ろう…。

人の言う「恐ろしい、とんでもない所」というのを一度体験してみたい…。

自分の生まれたその病院に、魅入られたように入りました。


私と一緒に、50才の女性も採用されました。

結局2人しか面接に来ず、続くかどうかもわからないので

どちらも入れたらしいです。


給食調理員になることに対して、私にはひとつ打算がありました。

夫と色恋の関係になった後、相手が気になるのは妻のことだと思います。

「女房は給食のおばさん」と聞いて

それでも夫を自己申告どおりの

バリバリの青年実業家と思う女性がいるでしょうか。

一瞬で夫の嘘に疑いを持つのではないでしょうか。


長男に続いて、次男も家業への入社を希望するようになっていました。

二人とも、よそへ行くのが嫌なのではなく

業種と重機が好きでたまらないのですからどうにもなりません。

修行に出し、よそでもやって行ける確信を得てからですが

次男の夢もなんとか叶えてやりたいと思いました。


兄弟仲良く一緒に働くなんて、絵空事です。

夫がいい例です。

時期が来たら、私は適性を見てどちらか一人をふるい落とすつもりです。


          そんなに甘くないんじゃ



しかし、女性に無駄な夢を見せないこと…

それは精神的、金銭的平和を意味していました。

風が吹けば桶屋が儲かる…といった類の

はなはだ頼りない理論ではありますが

相手の野心から生じる余計な問題を最初から排除し

難しい年頃の次男を良い環境で成人させて当面の夢を叶えてやるには

私がユニーク?な仕事に就くことが

援護射撃になるのではないかと思いました。


パートなので、給料は見事に3分の1となりましたが

やってみると案外奥が深くて面白い仕事でした。

ちょうど、一般的な病院食から

個別対応のきめ細かい治療食への移行が始まった時期で

症状別の介護病食作りは、親や自分の将来にもかなり役立ちそうでした。


虎の穴は、私には思ったより過ごしやすい印象でしたが

浮気されるつらさに比べたら、地獄すら居心地がいいというところでしょうか。

「頑張りましょうね」と誓い合って一緒に入った人は

1ヶ月もたたないうちにノイローゼで退職しました。

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婆姫、相撲をとる

2008年12月25日 12時42分14秒 | 不倫…戦いの記録
話を聞くと、そのおばさんというのは婆姫でした。

長男も車があればすぐにわかったのでしょうが

婆姫は自分の勤める老人ホームの巡回車で来たようです。

老人の家を廻るついでに彼氏の所を訪問…。

           
          なかなかやるじゃないか…


「倉庫の裏で何か言い合いしてたけど

 おばさんが殴りかかって、父さんが突き飛ばしたら

 おばさんが転んだ…」


          わたしゃもう大喜び!


男の子というのは、こういう面白いことを断片的にしか

記憶しないし言わないので、詳しいことがわかりません。

根掘り葉掘り聞かれるのを面倒臭がるので骨が折れますが

つなぎ合わせると、どうやら夫の心変わりを責めているようでした。


「私より、あっちの女のほうがいいのか」

と叫んでいたそうです。


おばさんは再び立ち上がり

夫の服をつかんで相撲をとる格好になったので

もう一人の社員と笑わないように我慢しながら見ていたそうです。


身長差があるため

わんぱく相撲の子供と親方みたいな組み合わせでしたが

無抵抗の夫と、前に出るタイプのおばさんは

ちょうどがっぷり四つになり

なかなか良い勝負だったと言います。


しばらくそのままにらみ合い

またおばさんが転んで、泣きながら帰って行ったという話でした。

 
ゲラゲラ笑い転げた後…

          「それだけ?」


「それだけ」

      もっと、こう…

      後々まで思い出し笑いが出来るしゃべり方はできんのか。

      ふがいないヤツめ…



こういうことがあった時、子供たちは必ず言います。

「いいなぁ、母さん。あの男と血がつながってないんだもんなぁ」

         「やれやれ、よかったよ、他人で…」


これは我が家の決まり文句です。

変なところを子供に見られて…

などと夫を非難するようなきれいごとの段階は

とうに過ぎ去っていました。

それに気を付けられる人間なら

こんなありさまにはなっていないのです。


子供は可愛い宝ですが

夫の呪われた「色」の血が半分流れているのも事実です。

私にもまた、そういう気配があるから

そんな男と結婚してしまったのでしょう。

ならば彼らはサラブレットです。

それを自覚し、醜い姿、恥ずかしい現実をしっかり焼き付けて

ぜひ自分の教訓にしてほしいものです。



心変わりと言うからには、新しい恋愛が始まったことは確かですが

私にはどうでもいいことでした。

もうどこまでも行って、いっそ極めてくれ…という心境でした。


昔は、夫の浮気に苦しむ私に

「操縦法がまずいのよ」

「自分の悪い所を少し振り返ってみては?」

相談した覚えも無いのに

わざわざ余計なことを言っては

傷口に塩をなすってくれる人もいました。


親戚の他は、義母に何か売りつける商売の人です。

デパートの外商、出入りの靴屋、宝石屋、洋服屋…。

彼らは善悪でなく支払額の大きい者の味方をします。

嫁を攻撃すれば義母は

「…そんな…嫁のことは言わないようにしてますのよ…」

などと言い、商売人たちは

「まぁ!さすが、奥さんは人間が出来ていらっしゃる」

と褒めそやすのです。

義母はその賞賛をことのほか喜び

元々ゆるい財布のヒモがいちだんとゆるむからです。


     操縦と言われても、ハンドルの無い車を運転はできんわい。

     やれるもんならやってみい!


と憤慨したものですが、そんな彼らが今どうなっているか…。

死亡、病気、倒産、痴呆、犯罪者…。

あからさまに義母に媚びていた人は、みんな見事にいなくなってしまいました。


うちでそういう態度をとるということは

よそでもやっているということです。

生き方は、年月を経て実生活に現われるのです。

商売は正直にやらなければいけません。


うるさい外野も減り、かなり生活しやすくなっていました。

毎日リストラの恐怖におののいていた妻は

ようやく一定の立ち位置を確保したのでした。


私は次の仕事を考えていました。

老人になっても役に立つ知識と技術が得られる仕事…。

できれば人様のお役に立つ、喜ばれる仕事…。

40でも雇ってくれる仕事…。

         
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枯れ木も山の…

2008年12月24日 15時48分06秒 | 不倫…戦いの記録
長男が家業に入社しました。

まだ修行中でしたが、急に欠員が出たので少し早まりました。

私にとって、待ち焦がれた日でした。

長男の夢が叶い、私の役目が一つ終わった日でもありました。


この瞬間が来さえすれば、安息の日々が始まると

目標にしていた私でしたが、どうやら甘かったようです。

義姉は、その時まだ大学生だった自分の一人息子を

入社させたがっていたため、何かと邪魔をしました。


事務手続きを忘れたふりをして正社員になるのを遅らせたり

仕事の連絡を忘れたふりをして恥をかかせたり

取引先へ挨拶に行く手土産に

腐ったミカンを厳重に包んで持たせようとしたり…。

ほんのケチで些細な、そして発覚すれば

「うっかりしていた」と言い訳できるいつもの手段を

次から次へとやってくれました。


そんなことでメゲるような生やさしい長男ではなく

叔母の言動を機転の訓練と受け止めていましたが

予想通りとはいえ、しばらくは目を光らせる必要がありました。


私はそれを期に仕事を辞め、家族で元いた町に再び引っ越しました。

夫だけでなく長男も30分かけて通勤し始め

次男のアルバイトもそちらです。

いっそ帰ったほうが良いのではないかと思いました。


好きな仕事、向いている仕事

人間関係も申し分なく高給優遇、制服もかわいい。

私が30分かけて通勤すればよかったのかもしれませんが

運転が嫌いなので、それは考えませんでした。


会社の人も、そうでない人も、みんな私をバカだと言いました。

しかし、40の声を聞いて老後が心配になったのも事実です。


当時の私は、10年以内に大恐慌が来ると予測し

なんとか体力のあるうちに進路を変えないと

もうチャンスが無いような気がしていました。


このまま働いて貯金を続け、定年後に備えることも考えましたが

会社自体がどうなるかわからない上

夫があてに出来ない1馬力生活ですから

食いつぶすのは時間の問題でしょう。

それより、70才、80才になっても働ける準備をしたいと思いました。


そして、これはほとんどの人には理解し難いことでしょうが

世話になり、本当に好きな会社だったからこそ

惜しまれるうちに去りたいと思いました。


会社というのは、仕事に慣れた年増より

何も出来なくても若い娘がいいものです。


欠員が出ると、人気のある事務職を求めて

たくさんの面接希望があります。

こんなに多くの若いカワイ子ちゃんが入りたがっているのに

私がこのまま居座っていいものだろうか…。


夜、疲れ果てて帰ってくる営業マンが見たいのは

多分おばちゃんでなく女の子の笑顔です。

もう長いから…というお情けにすがりつつ

誰がやってもたいした変わりはない仕事で先輩ヅラをするのは

私としては恥ずかしいことなのです。

いずれ制服の赤いスカーフやミニスカートに無理が生じ

やがて時間の問題で「枯れ木も山のにぎわい」になるのは嫌でした。


余談ですが、面接希望者が殺到すると

まず書類選考でおおかたの目星をつけます。

その時何を基準にするかというと、写真より印鑑が大事です。

まず三文判はダメです。

面接を軽く見ている、ケチでお金にうるさそう、常識がない…と思われます。


でももっと危険なのは、何かの占いか宗教系の印鑑屋さんで

「観てもらって作った」ふうの

一見して読めない、複雑でやたらと大きな印鑑です。

依存傾向が強く、バランス感覚に乏しく

うさん臭くて素直でないとあらかじめ通知しているようなものです。


偏見と言えばそれまでですが

そう思われても仕方がない印象を与えておきながら

気付かないことが問題なのです。

また、そんな人を思いきって入れてみたこともありますが

結果的には予想通りでした。

なにごとも、普通を普通と思える感性が大事なようです。


みんなから「アニキ」と呼ばれていた楽しい会社をおさらばし

私は何を考えていたのかというと、実は何も考えていませんでした。

そのうちヒラメくだろう…と思っていました。

なんとも気楽なことです。


楽しかったその町での暮らしに別れを告げ

懐かしい町にまた舞い戻ってきました。


夫と一緒に働くようになった長男は

父親と気まずくなるのを嫌ってか

以前ほど夫の行状をあからさまに批判したり

見聞きしたことをあまり言わなくなりましたが

これだけは我慢できなかったらしく、大笑いしながら私に報告しました。


「今日ね、オヤジとよそのおばさんが

 会社の倉庫の裏で取っ組み合いの喧嘩してた」
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地獄案内人

2008年12月23日 13時33分41秒 | 不倫…戦いの記録
その夜、夫はひどくうなされていました。

昔から深夜2時半を過ぎると、よくうなされます。

声が大きいので、こっちも目が覚めます。


いつもは、うるさい!と怒鳴りに行くか

機嫌の悪い時はキックか

調子のいい時は、胸の上に重たい本など重ねてさらに苦しめてあげますが

今夜は別の方法を試みることにしました。


             「○○○~…」

耳元に近づいて、低くかすれた声で夫の名前を呼びました。

             「○○○~…」


夫は「う~ん…う~ん…」とうなされ続けています。


       「来い~…来い~…こっちへ来い~…」


「うう~…うう~…」

うなり声はだんだん大きくなっていきます。


       「おまえは地獄に堕ちるんだ~…」

「うあ~!…○☆◎×★※~」

夫が無意識に唱えるのは、義母に仕込まれたいつもの新興宗教のお経です。


       「そんなものが効くものかぁ…」

「○☆◎×★※~…」


       「おまえは地獄へ行くのだ~…」
 
「いやだ…」

       「もう遅いのだ~…」

「許してください…」

       「だめだ~…」


子供たちも起きて来て、楽しそうにのぞき込んでいます。

目で合図して、夫の手足をそれぞれ軽く押さえさせます。

二人は吹きすさぶ風に似せた口笛を吹き、地獄のムードを演出。

     
「うわぁ~!」


夫は叫んで飛び起きました。

しかし、まだ完全には覚醒していません。

起き上がって正座し、手を合わせて

目を固く閉じたままお経を唱えています。

これもいつものことです。


義母は、自分の子供たちに信仰の強制はしませんでしたが

これさえ唱えていれば、すべてうまくいく魔法の呪文として教えていました。

オロナイン軟膏みたいに

困った時は早めに何でもこれなので

彼らは物事を深く考えることも無いまま育ってきたのです。


       そんなもん、役に立たんわいっ!


夫はそこでやっと目が覚めました。


      「大丈夫?すごくうなされてたよ」

「そうだよ。僕たちの部屋まで聞こえたよ」


「夢か…」
 
         「どんな夢?」


「おまえのおじいさんに…手を引っ張られた…」


      「あら~、今日はそっちへ出たのね」


「どこかに連れて行かれるところだった…」


       「行けばよかったのに」


「おじいさん、生きてる時もおっかなかったけど

 死ぬとなお怖いな…」


      「悪いことしてると、怖く見えるんだよね。
    
       きっとまた来るよ」

「もう来ないように頼んでくれよ…」

      「どうかなぁ~?怒ってたんでしょ?

       私、霊能者じゃないし~」

     

それから何回か、同じようなことがありました。

夫は毎晩のようにうなされていたようですが

私も毎回付き合うわけにはいかないので

気が向いた時だけ、祖父のもの真似をしていました。


このいたずらは効き目がありました。

やがてすっかり参ってしまった夫は

「何もかも白状するから、助けてくれ…」

と言い出し、私の仕置きはひとまず成功しました。


入院中に、介護士として老人につきそって来ていた婆姫と

喫煙室で知り合い

お互いの趣味がパチンコだとわかって

つきあうようになったそうです。

婆姫の夫はすでに老人で、夜のコトが無理なのだそうです。


そんなことはどうでもいいが

私は自分の車のことと、14万を欲しがった理由だけは

聞きたかったのでたずねました。


「妊娠したというから…。孫もいるし、生めないと言うから…」

     「ひ~!まだアガってないのけ?」

「結局、お前がくれなかったので金は渡さなかったけど

 本当かどうかは、わからない。

 それから機嫌が悪くなって、車を買えとうるさいから

 手切れ金代わりにおまえの車を…」

       「別れてないなら、手切れ金じゃないじゃん」


「別れるから…。

 あんな婆さんと、なんで…って、本当はいつも思っていたんだ」

   
       「いいえ。別れなくてけっこう。

        恵まれない人に愛の手を…って言うでしょ。
     
        でも、私の物をあげるのはもうやめてね」


言いたいことはもっとあったはずでしたが

夫を震え上がらせたことですっかり満足し

そのために感情を昂ぶらせることすら面倒臭くなりました。


    「生きてる身内より、死んだ身内のほうが本当は怖いんだからね。

     よ~く覚えておおき」


             
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○に気をつけて

2008年12月22日 16時11分56秒 | 不倫…戦いの記録
下取りに出したはずの私の車が

町を走っていると聞き始めたのは、それから少し経った頃でした。


夫の車は経費で買いますが、私の車は自分で買ったものでした。

以前は私の車も買ってもらっていたのですが

両親の家を出てから、義母の足になる頻度も大幅に減った上

財政難の昨今、そんなわがままも言いにくくなりました。


それで4年前に初めて自分で買い

それを初めて下取りに出して新車を買いましたが

車に関してはずっと夫や会社に任せきりだったので

あまり詳しくなく、お金だけ振り込みました。


もちろん、少し高いような気がしましたが

「最近は中古車が売れないらしくて、下取り価格が安いんだ。

 しかもあんた、バンパーのとこ、ぶつけてただろ」

と夫が言うので、そんなものか…と思いました。


それがナンバーもぶつけた箇所もそのままに

近くを走っているというのです。

しかもそれを運転しているのが

どうもあの「婆姫」らしいのです。


最初は友達が言いました。

「最近パチンコ始めたの?」

パチンコ店の駐車場で何度か車を見たので

ある日、中に入って探したが、いなかったと言うのです。

その時は、見間違いだろうということになりましたが

子供たちも何度か目撃していて

運転していたのは「お婆ちゃんに近いおばちゃん」だったと言います。


無害なら放置ですが

婆姫のボロ車のために買い換えたような気がして、腹が立ちました。

換えようかな…と言った時の夫の積極的な言動。

その場で販売店に連絡したことも思い出しました。


ヤツに与えるために、下取り無しで経済的負担を強いられたのです。

しかもパチンコに出入りしてくれたら

私がやっていると思われるではないか!


         バカにしやがって…


早速夫にそのことをたずねてみました。

     「私の車が町を走ってるって度々聞くんだけど

      近くの人に売ったのかな?」


「さぁ、知らないよ。引き渡してから後のことは」


いつもながら、鮮やかなウソつきぶり。

絶対に本当のことは言いません。

昔はすぐ尻尾を出していましたが

最近は年の功か、ずいぶんしぶとくなってきています。


販売店に確認したところで、結局バカを見るのは私です。

名義変更などで、夫に頼まれて店も一枚噛んでいることは確かですから

「知らない」で通すでしょう。


商売人というのは、どちらに付いたほうが長い目で見て得か

瞬時に天秤にかけるものです。

いつ交換されるかもしれない妻より

会社ぐるみでつきあいがあり

お客を紹介してくれる可能性の高い夫に恩を売るほうが得です。

似たようなことを何度も体験していました。


夫はだんだん学習を重ね、どうしようもない部分を

ピンポイントで突いてはそこへ居直るような行為を

重ねるようになりました。


      なんとかギャフンと言わせる良い方法はないか…


そんな折、次男が高校生になり

ガソリンスタンドでアルバイトを始めました。

なんとそこへ、婆姫が私の車で給油に来たというのです。


カードを出したので、名前を見ておいたと言います。

「男の名前だったから、多分旦那さんのカードだよ」
         
        
           でかした!


その名字は、かなり変わっていました。

顔のある一部分と同じ名前で、思わず吹き出しました。

         
         さ~て、どうしてくれよう…


ある朝、私は夫に言いました。

      「ゆうべ、変な夢見ちゃった…」


夜中によくうなされるのが悩みの夫は、夢には敏感に反応します。


「どんな夢?」

愛用の夢占い辞典を持って来て、調べる気満々です。


      「あのねぇ、私の○が急に腫れたの。

       で、びっくりして顔さわってたら

       すっごく大きくなって困ってたら

       死んだおじいちゃんが出て来て~

       ○に気をつけなさいって言ったの…」


辞典をめくる夫の手が止まりました。

            フッフッフ…


「そ…それで?」

     「それだけ~」


こういう時は、ノってあれこれ言わないほうが効き目があるものです。
    
夫はあきらかに動揺していました。


    「ねぇ、何て書いてある?○の夢…」
 

「…」 

    「おじいちゃん…何が言いたかったのかなぁ…。

     霊感のある人だったから、何か怖いなぁ…」


夫はすっかり大人しくなって出勤して行きました。


急遽、霊感じいさんにされた亡き祖父には申し訳ないけど

ここは孫娘のためにひと肌脱いでもらいましょう。

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ばば姫さま

2008年12月20日 15時55分44秒 | 不倫…戦いの記録
50才過ぎというところでしょうか

太めで化粧気の無い

白髪まじりの茶髪を後ろで束ねた

混じりっけなしのおばさんでした。

唯一の華やぎといえば

くたびれたトレーナーが淡いピンク…。


助手席の窓からゴボウの先がのぞいていたので

結婚している人だと思いました。

一人暮らしなら、たいていゴボウは買いません。


でも…なんとなくわかるような気がしました。

夫は、綺麗な女性ももちろん好きなのでしょうが

いつもスッピンでサバサバした

気兼ねのない年上の女性も好みで

スーパーの鮮魚コーナーのおばちゃんや

町の名物的存在である、オナベっぽい女性とも仲良しでした。


「美人に綺麗と言うより、残念をほめそやすほうが楽…」

今回も夫のコンセプトが、いかんなく履行された模様です。

連れ歩いて見せびらかすのが目的ではなく

恋する自分が好きなのですから、いたって合理的な手段ではあります。


      しかし、今回はまたかなりの妥協…

 
もし彼女が妊娠したとしたら、そりゃあ生めないでしょう。

高齢出産どころではありません。

命が危ないです。
    


視線釘付けの私に気付き

婆姫さまはゴボウの先っぽ越しに

じろりとこちらを睨みました。


信号が変わり、そのまま併走することになったのですが   

婆姫さまのお車は、やがて道路沿いのパチンコ店に入って行きました。


そこは夫もよく行く店でした。

パチンコの前に買い物を済ませるのは

かなりのベテランでしょう。



         ここが恋の舞台なのね…


夫はここ数年、パチンコに夢中でした。

仕事の時間中でもお構いなしです。

義父も昔から好きで、ゴルフとともに

この父子の重要な趣味となっていました。


義母は、女性以外の趣味には寛大で

仕事を抜けてまでハマルる趣味ではないと主張する私に

この一族は、パチンコ発祥の地と言われる

名古屋に近い、本場の出身なんだから無理もない

息子にもその血が流れているから…とたしなめます。


じゃあ名古屋生まれの人はみんな

郷土発祥のパチンコをして暮らしているのか…

と突っ込みたいところですが

つまらぬ議論をしたところで

フィーリングのみで生きる義母にはかないません。

ヒステリーを起こして面倒臭いことになるので、引き下がります。


しかしこれだけは言いたい…。

義父の出身は、名古屋ではなく

         中部地方の他県だ~!



父子のパチンコ狂いは、仕事の減少と反比例していました。

業績不振のイライラや不安を解消したいのでしょうが

ギャンブルをすると本業がダメになると思っている私は

そんな彼らを精神が弱いと感じ、軽蔑していました。


長らくお目にかかってない夫の給料は

ほとんどパチンコとデート代に消えているのでしょう。


         まあ、いいさ。   

   おまえは子供たちが成長するまでの踏み台さ…

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西太后

2008年12月19日 10時17分30秒 | 不倫…戦いの記録
これは困った…とりあえず私は思案しました。

人並みに夫婦でメールをかわすようになり

ようやく我が家もアナログからデジタルへと進化した気でいましたが

こんなことが起きようとは、考えてもいなかったのです。


一応、間違っていることを知らせるべきか…(礼)

何か文句を言うのがいいんだろうか…(情)

見ないふりか…(諦)


       そうだ、見なかったことにしよう…



姫…という言葉には、聞き覚えがありました。

最初の相手、ナースのまゆみを

こう呼んでいたらしいです。


「姫と呼んでもらえて、嬉しかったの」

夫とのことが発覚して病院を辞めることになり

患者との不倫に苦言を呈した同僚に、まゆみが話したそうです。

何年も経って、その同僚から聞きました。

本題はそれではなく、まゆみが故郷で精神を病んでいるという話でした。

聞きたくもない話を教えてくれる人は多いものです。


          あの手を十何年、使っているのか…


ちなみに夫は時々私を「西太后」と呼ぶことがありました。

中国王朝末期のキツ~いおかたです。

旦那の愛人や邪魔な人間の手足をもいだり(痛いわな)

高い所からゴムでなく縄でバンジージャンプさせたり(死ぬわな)

むごい手口で殺したといわれる女性です。


テレビ映画を見た時に命名されました。

「これ、おまえじゃん!」

皇太后の地位をかさに着て、弱い者いじめをする悪女…。

そんなストーリーに、夫は迷わず

私を重ね合わせたようでした。


        姫と西太后…えらい違い…  

       
      
無視するつもりでいたのですが

そんなことを思い出すと、ムズムズしてきました。


         「キャー!私が姫?

          うれしいぴょ~ん」

        えいっ!送信!


バカ殿からの返信は、ありませんでした。



それからしばらく経ったある日

私は会社の宴会で、以前住んでいた町に来ていました。

たまには違う所で飲みたいという要望に応え

地元の料理屋を選んだのです。


何台かに分乗して来たのですが

駐車場が少ないので、同僚を降ろした後

私の車は店から離れた場所へ置きに行きました。

勝手知ったる我が町

義父が駅前に出た時のために借りてある駐車場です。


先客あり。

あちこち凹んだ古い軽自動車。

          んもう!誰さ…


時々義父の知り合いがだまって置くことはありますが

こんなひどい車に乗る人はいません。


ルームミラーにどこかの神社のお守りがぶら下がり

派手な彩りの毛糸の座布団が見えました。

ホルダーに、夫の好きな缶コーヒーが置いてあるのを見て

すべてがわかりました。

長い経験?から「たまたま×3以上」はクロです。


たまたま宴会でそこに行き

たまたま義父の駐車場に先客があり

たまたまその車に夫の好きな缶コーヒーが置かれていた。


たまたまの連立は、もはや偶然ではなく必然なのです。


               …デート中か…


ここで落ち合って、夫の車でどこかへしけ込んだのでしょう。


         これが姫のお車なのね…


後日、その姫のお車を再び拝見する運命とあいなりました。

信号待ちで横に並んだのです。

私のほうが後から来て停止したので、あの車だとわかりました。

昼間に見ると、その悲惨な状態がさらに際だちます。

凹みも多いですが、赤い色も無残にはげていました。


かわいそう系…いかにも夫好みです。

普段の夫なら、おそらく経費をごまかして

馴染みの修理屋に出してやるはずですが

ここまでになると、新車を買ってやるしか手立てがありません。

とてもそんな器量は無いので、見て見ぬふりをしているのです。


        どれ…姫のご尊顔を拝見…



長いこと被浮気妻を営業していますが

この時ほどショッキングなことはありませんでした。

 
         お婆さんじゃんっ!
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どこの姫やら

2008年12月18日 14時30分55秒 | 不倫…戦いの記録
その夜、夫はさも不機嫌そうに帰って来ました。

今日のように一大事?があっても

泊まったり遅くなったりしないところを見ると

今度はそれが出来ない環境の相手でしょう。


         「会社、つぶれなかった?」

「…ああ。なんとかね」


        「お金、見つかるといいね」


「警察にも届けたけど、無理だろうな」

     「お使いのお金、落とすなんて

      昔話に出て来る丁稚(でっち)みたいだね」


アカデミー主演男優賞を取り損ねた丁稚どんは

思い通りにコトが運ばなかった時にいつもする

これ見よがしの大きなため息をつきました。


九州の仲居時代、板前見習いで入って来た若者がいました。

ものすごいほら吹きで

この仕事に入る前は空港の麻薬取り締まり官をしていたと言います。


愛犬のシェパードと共に、手荷物の中から麻薬を発見した話…

暴力団との激しい攻防…

つらく厳しい訓練…

身振り手振りで臨場感たっぷり、見て来たように話すので

みんな信じきっていました。


そのうちエスカレートして

誕生日には、多忙なパイロットやアテンダントたちが万障繰り合わせて

自分のためにホテルでパーティーを開いてくれた…

というような話になっていき…。

           ありえん…


本当は、暴力事件で服役が終わり保護観察中で

大将が保護司に頼まれて店に入れた子でした。

麻薬取り締まり官どころか、10代からムショ暮らしなので

働いたことすら無いという話でした。


嘘を語る時の彼の目は、あらぬ空間を見つめ

その風貌からかけ離れ、現実から遠くなればなるほど

熱を帯びたように輝きました。


どこかで見たことがあると思えば

自分の夫とそっくりでした。


このタイプの人は、嘘がばれても平気です。

嘘をついた、人をだましたという意識はありません。

夢を語っただけです。

だまされたほうも、あまりに突拍子の無い話だと

怒る気にもなれないものです。

そして誰も相手にしなくなると、新しい人材を探すか

どこかに流れて行って、またつらつらと作り話をするのです。


大ボラを吹くのは、淋しくて注目を浴びたいためか

持って生まれた性格なのか

それとも両方なのか、わかりませんが

しかし上には上がいる…と感心した次第です。 



しばらくは何事もなく月日が流れました。

何も無いというのは、けっこうなことです。

こちらに被害さえなければ、誰と何をしようがいっこうにかまいません。


その頃、私たち夫婦はやっと

お互いの携帯番号とメールアドレスを交換しました。

遠出をするようになった子供たちの事故が心配になり

夫から言い出しました。


前々から、不器用で機械オンチの夫が

メールを使いこなすことすら不思議でしたが

人間その気になったら何でも出来るものだなぁ…と思います。


子供たちがまだ小さい頃

夏祭りで、商工会のメンバーが生ビールの夜店を出すことになり

夫も参加していました。


夫のいる店をのぞくと、ねじり鉢巻きをして

一生懸命ビニールパックに入った紙コップを

取り出そうとしていました。

          おうおう、やっとるな…


子供たちと夜店をめぐり、20分後にその前を通ると

夫はまだ同じビニールを開封しようと苦心さんたんしていました。

マジックで大きく番号が書いてあったので

同じ物とずっと格闘していたのだな…とわかりました。


それほどの猛者ですから、愛してるだへったくれだと

芋虫のように太い指でメールを打つのが

信じられませんでしたが

時折、天気がいいとか他愛のないことで

気まぐれに私にもメールをくれるようになったので

私も時折返していました。


時折…というのはくせ者です。

たくさんの送受信の中に、たまに私のアドレスが割り込むわけですから。


その日はとうとうやって来ました。

「姫♪ごきげんいかが?

 昨夜は楽しかったよ。 

 今日も愛してるよ。チュ!」

どうも朝のご挨拶らしいです。


            なにが姫ぢゃ…

    
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魔性転生?

2008年12月17日 15時03分01秒 | 不倫…戦いの記録
夫の病状は、かなり深刻でしたが

1ヶ月の入院でケロリと全快しました。

原因がお酒ではないので

食事制限と投薬で劇的な成果があったようです。

というか、奇跡に近いのだそうです。

病院もあの手この手で入院患者を増やそうとする時代になったので

どこまで本当かわかりませんが。


退院して会社に復帰し

何事も無かったかのように元気そうな夫を見て、苦々しく思いました。


そう言えば、まだ子供が小さい頃にも

似たようなことがありました。

胸が苦しいと訴えて病院へ駆け込んだところ

心不全と診断されました。

検査をしたら、時々心臓が止まるらしいのです。


早速入院しましたが

翌日からは、いくら検査をしても異常が無く

本人もピンピンしているので

結局原因不明のまま、退院しました。


その時、医師から言われました。

「確かに来られた時には心不全の症状でした。

 誤診や検査機械の故障も疑ってみましたが、異常はありませんでした。

 珍しいケースです。

 しかし油断はできませんから、常に様子を見て

 何かあったらすぐ来てください」


おそらく長生きはできまい…そんな気配でした。

だからこそ、多少の無茶は我慢できたのかもしれません。

「どうせ早死にする…」

と思えば、許せるような気がしました。


当分の間、両親も私も

お別れの日が来るのを心配して

心臓に良いと言われる漢方薬をあれこれ飲ませたり

暑い寒いにまで気を使い、甘やかし続けました。

それに増長したまま、今日があります。


今でもふと思うのですが

夫は心臓が止まった時、本当は死んでいて

何か変なものが入れ替わったのではないか…

な~んて考えたら、けっこう楽しいのです。


またしても今回…その生命力の強さに驚きです。

よっぽど死にたくないのでしょう。


それから3ヶ月が経った頃

夫が私の勤務先に電話をしてきました。

「14万、すぐに何とかならないか…」

     「無い。会社に電話して来ないで。しかも金のことで」

「集金した金を落としたんだ。

 あれが無いと倒産する…」


    「たかが14万で倒産するような会社なんか

     さっさとつぶれりゃええんぢゃ!」

「頼むよ…」


         「落とすのが悪い」



夫は、気ままが言える身内の中で生きてきたので

勤め人の気持ちはわかりません。

私は経理を預かる者として

いつも間違いのないように細心の注意を払い

疑わしく見えるような行動をとらないよう

気をつけているつもりでした。


勤務先の上司も部下も、本当にいい人たちばかりで

のびのびと働かせてくれ

少々のことで私を疑ったり不信感を持つ者はいませんが

だからこそきちんとしていたいと考えていました。


日頃、こういうことだけはしないでくれと言っているのに

小遣い欲しさに会社にいる私の所まで来ることもありました。

会社へ来てねだれば

帰って欲しさに私からすんなり小遣いをもらえるからです。

まるで取り立て屋の嫌がらせです。


自分の給料はどうなっているんだろう…とは思いますが

本当のことを言わないのはわかっているので

もう何年も聞かないままでした。



「ケチ!もう頼まん!」

電話を切ってくれたのでホッとしましたが

14万という中途半端な金額が疑問です。

手形でなく現金での集金もたまにはありましたが

あの疑り深い義姉が、10万以上の金額をルーズな弟に任せるはずがない…。

落としたというのも、どうせまた嘘です。


              「14万ねぇ…」

いつも無心する数万からいきなり跳ね上がったので

ついつぶやきました。


「14万って、なんですか~?」

事務の女の子が言いました。

「どこかで聞いたような…

 あ、そうそう…この間、友達が中絶した時の金額だった~」

        「まぁ、大きな声で

         …今、それが相場なの?」


「はい。そうらしいですよ」

     「あんたも気をつけなさいよ~ん」
     

「キャ~!そんな人いません~」



           これ、有りかもな…

女の勘というのは、当たって欲しくない件に限って当たるものです。

全部当たっていないにしても

結局は面白くない出来事が起きるという意味では

まったくのあてはずれではありません。

これまでの経験から、それは立証済みでした。

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2枚目気取り

2008年12月16日 15時58分14秒 | 不倫…戦いの記録
夫は自分の顔にかなりの自信を持っています。

若い頃は、ある人気俳優によく似ていて

間違えられることも度々ありました。


男性でも女性でも

神様がことさら丁寧に作ってくれたような顔を持つ人は

体もコンパクトに出来ていることが多いものですが

夫は身長もあり、がっしりした体つきです。


その外見から、かの俳優の役どころである

男らしく爽やかな性格と思い込まれ

本人もそれふうに振る舞っていたので

何かとお得な人生を歩んでいたと思います。


しかし、40を過ぎてシワが増えてくると

歩んだ半生が表われてくるのか

俳優とは似ても似つかぬ

ただの、いたずらに濃い顔のおじさんになっていきました。


40過ぎたら自分の顔に責任を持て…

あれは本当です。

若さがもたらす輝きが失われると

やってきたこと、考えてきたことがそのまま表に出るので

生まれ持った美醜はもはや関係無くなるのです。

体調を崩すと、ますます衰えが目立ちます。


自分を美男だと信じて疑わない夫は、鏡を見るのが大好きです。

「なんか…顔の色が黒くなったような気がする…」

ようやく異変に気付いたようです。

 
        「日焼けよ、日焼け」

「そうかなぁ…」

真っ黒になり、血走った黄色い目の夫を見ていると

つくづく気の毒だなぁ…と思いました。


将来、夫婦の年金分割が可能になるだろうと言われていました。

あれは、無体な夫には警鐘であり、しいたげられた妻には朗報でした。

現在はすでに施行され、結局あんまり得ではないことが判明していますが

当時はまだ情報も少なく、夢のような法律に思えました。


そちらに賭けるか、遺族年金を狙うか…。

しかし一番安泰な老後は

夫婦共に長生きして二人で年金を受け取るコース。

残酷なようですが、妻という職業も自営の一種です。

どう経営していくか、常に考えておかなければなりません。


この頃になると、我々の親の世代を始め

年上の人たちが次々と鬼籍に入り始めます。

浮気者の最期は悲惨です。

たいてい厄介な病気になります。


知人のご主人が亡くなりました。

昔から浮気がひどく、癌に冒された死の床でも

浮気相手とメールをしたり

奥さんが帰れば入れ替わりに相手が来て看病していました。

相手は公務員の未亡人だったので

そのご主人と結婚する気はありませんでした。

国民年金の彼と一緒になると

自分のおいしい遺族年金がパーになるからです。


ご主人が苦しみ抜いて亡くなり、葬儀がすむと

奥さんは真っ先にリサイクルショップへ出かけ

ご主人の衣類や持ち物をすべて売り払ったのでした。


「スーツは売れなかったのよ。ネームが入っているから」

サバサバした表情が、本当に素敵でした。


家族思いの優しいご主人が亡くなったら

しばらくは涙と念仏で暮らすでしょう。

「晴れて」未亡人になり、残りの人生を謳歌できるのは

辛酸を舐めた者の特権かもしれません。


しかし他人をうらやんでいてもしかたがありません。

自分の体力を過信している夫に生き運があるかどうか

引き続き静観していました。


あったのです。

きっかけは大腸ポリープの検査でした。

例のK整形に義母を迎えに行った時

その機械を導入したので、やってみないかと誘われたのでした。

またしてもK病院め。


さすがヤブのK病院は、尻の穴しか見てなかったらしく

ポリープが見つかったので大きい病院で取ってもらうことになりました。


そこで、肝硬変がわかりました。

飲酒をしないので「非アルコール性肝炎」です。

放っておいたら、あと2~3週間で手遅れだったそうです。

即刻入院治療。

原因は、食べ過ぎと肥満でした。


風前の灯だった夫は、命拾いしました。

まだ生きて、この世で果たす役目があるのだろうか。

まだ生きて、回りを苦しめるのだろうか。

それとも、彼は私に与えられた試練そのものなのだろうか。


いい人は惜しまれて早くに亡くなるのに、どうでもいい人は…。

そのどうでもいい人は、入院中にまた新しい恋を見つることになります。

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いばらの原点

2008年12月15日 11時52分28秒 | 不倫…戦いの記録
夫は、その後も両親の家で暮らしました。

今回のことについて、夫を責めるような言葉は言いませんでしたが

ただ軽く一言…

    「そんなに手近のしろうとが好きなら、姉にしなさい。

     家の中だけですむから」

これが夫にはきつかったようです。


悪気はなかったのですが、夫にとってかなり痛い禁句だったからです。

恐怖で帰る気になれないのも無理はありません。

   

   …長男が生まれるまで

   義姉と夫はとても仲の良い姉弟でした。

   私に内緒で二人で食事やドライブに出かけることもしょっちゅうでした。

   二人で…というより、無職で暇だった義姉が

   自由に操れる弟を引っ張り回します。

   そして帰ってから必ず言うのです。

   「ああ、楽しかった。他人が入らないから」 
    

   妊娠中の私に対する精一杯の嫌がらせだというのは知っていました。

   母親が、嫁や生まれてくる孫に夢中になることに嫉妬して

   大変苦しんでいたのがはた目からもわかりました。

   
   新婚当初、家族で鍋を囲んだ時

   義姉は私に菜箸を渡し

   「他人と同じ鍋をつつくのは不潔だから嫌なの。

    あなたの箸は鍋に入れないでちょうだい」

   と言い、まだ嫁に遠慮があった義母が

   怒って義姉を叩いたことがありました。

   それ以来、私をかなり逆恨みしていました。

   
   長男を出産し、産後を過ごすことになっていた夫の家に帰ると

   夫婦のベッドや枕に

   特徴的なロングヘアだった義姉の髪の毛がたくさん付いており

   私は逆上したものです。


         「近親相姦だ!」

   と夫を激しく責めました。
   
   若夫婦は、小姑の罠にまんまとはまったわけです。


   大騒ぎして二人を問い詰めたいのはやまやまでしたが

   その時の夫の態度から、そんな関係ではないのはわかりました。

   「姉ちゃんが婚約者のことで悩んでいて

    遅くまで話していたら寒くなったから…」

   と無邪気なもので

   妻がなぜ怒っているのかわからない…という表情です。 


   また、納得いくまで真偽を正しても

   倒錯の世界に嫁いだ我が身の不幸を嘆くか

   義姉がそこまで私の存在を憎んでいることを再認識するかの

   二つしかないのです。


   出産したばかりで身動きが取れず

   産後を夫の家で看てもらう気兼ねや

   反対を押し切り結婚して1年足らずの我が身…。

   初めての我が子のお七夜を

   こんな汚ならしいことでけがしたくない気持ちもありました。


        忘れよう、忘れよう…。


   それでも、23才の弟のベッドに25才の姉が潜り込んでも

   不自然を感じない夫…

   弟の妻の留守を狙って「相談」を持ちかける姉…
   

   摂食障害のある義姉が、時折尋常でない心境に陥るのは

   理解しているつもりでした。
   
   しかし、どうしても許せませんでした。   

  
   若く、思慮浅くヤキモチ焼きの新妻であり

   異性の兄弟がおらず、免疫の無い自分と

   産後の気の高ぶりを差し引いても

   腹が立って気分が悪くなりました。

   
   無理に押さえ込んだ怒りは

   長い間、夫に向かって小出しにあふれ出ました。

   以来ことあるごとに、私から「くされ姉弟」と呼ばれ

   「近親ちゃんと相姦君」と

   お坊さんのような名前で揶揄される身の上となった夫は

   理由なきいじめを受ける小学生のようにつらかったでしょう。

   その時から夫婦の間に埋められない大きなミゾができました。


   数ヶ月後、義姉は結婚してこの件も迷宮入り?となったのですが

   夫にしてみれば、悪事とは思ってなかったことを見とがめられ

   異常だ変態だとののしられてはたまらないだろうと思います。


   夫にもまだ誠意というものがあったのか

   私の怒りを怖れてか、義姉と距離をおくようになり

   義姉もまた、私の怒りが想像以上に激しいのを感じ取って   

   消化できない苛立ちを弟にぶつけるようになりました。         

   
   潔白だったにせよ   
  
   私にしゃべられて、婚約者に誤解されたくない…

   自分の親に知られたくない…    

  
   こうして臆病で感情表現の下手な姉弟は

   なすり合いを始め、憎しみ合う仲になっていきました。

           
   過去の恥ずかしい数々を知られてない

   さらっぴんの妻に取り替えたい…

   という夫の気持ちも、わからないではないです。


   いばらの道の原点とも言える苦い出来事でした。

   私の言葉で、夫はそれを蒸し返されたように思ったのです。

   

夫は3ヶ月ほど実家でおとなしく暮らしていましたが

近所の目を気にした義母が

「怒ってるだろうけど、帰らせてやってもらえないかしら…。

 お隣や友達に、“娘さんだけじゃなく息子さんも帰ってるの”

 ってイヤミ言われちゃって…」

と言ってきました。


娘かわいさのあまりに嫁をいびり出した家…

異常に好色な息子のことでしょっちゅうもめている家…

と言われ、好奇の的となって幾年月。


今さら近所の目を気にする段階ではありませんが

当事者というのは、案外自分の立ち位置に気付かないものです。

年を取ってからの息子の世話にもそろそろ飽きたのだろうと思いました。


           快適生活、終了


帰って来た夫を見て

白目が黄変しているのに気付きました。

             黄疸だ…


身内が輸血後、そうなっていたのを思い出しました。

顔だけが黒ずみ、首から下は黄色を帯びています。


一連の心労と、実家での気ままな食生活で

肝臓をやられたに違いありません。

本人は気付いていない様子です。

でも、とてもだるそうです。
       

           だまっとこうっと… 
    
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末路

2008年12月13日 11時46分16秒 | 不倫…戦いの記録
私は翌日、某国家権力…県○の暴○相談○に電話をしました。

面倒臭そうに出た、係の警○は

事情とEの名前を言うと

「あ~…」

とため息まじりに言いました。


「奥さん、これね、いくらかで済むんなら払って縁切ったほうがいいよ。

 タチが悪いから。

 たいした金額じゃないんでしょ?」

警○とは思えないお言葉。

警○って、タチの悪い人をなんとかしてくれる所だと思っていましたが

   
          勘違いっすか~

まあ、いいのです。

万一に備え、脅迫に怯えて○暴に相談したという録音さえ残れば。


次に、新聞記者をしている友人に依頼して

かの団体を調べてもらいました。


右ふうを装ってはいるが

はっきりした思想や大がかりな活動はなく

会費で運営しているこじんまりしたグループということでした。

入れ墨を施しており前科でハクの付いたEは、一応幹部の一人だそうです。

支部など無く、居住する県の違うWとEが

同じ団体の仲間を名乗るのは怪しい…と言います。

ということは、二人をつないだのはC子…。

C子とEとの関係を明らかにすれば…。


関係…というところで、ピンときました。

C子とEはデキているのではないか…。

そもそもWが母親の彼氏というのすら、怪しくなってきました。

何か証明になるものがあったわけではなく、自分で言っただけです。

最初から仲間の一人かもしれません。


C子が夫に母親や彼氏のことを話したのは、その布石でしょう。

夫は天秤にかけられていたのです。


           だまされた…


C子の母親の彼氏Wとダニ2匹…ではなく、ダニ3匹…。 


ひょっこりEだけが何か言ってくるより

身内に頼まれたという正義?があったほうが形になる…。

私がEでも、そのほうが呼び出しやすく攻めやすいと思いました。

Eの考えそうなことです。

おそらくこの勘は当たっていると思いました。


       ほっときゃよかった…もう遅いけど…


2ヶ月間の同棲のうちに、C子は夫を見切ったのでした。

「社長夫人」もいいけど

「幹部の姐さん」もよくなったのだと思います。

身分にこだわるC子の考えそうなことです。


Eは一応、ダニ類からは「アニキ」と呼ばれているのですから

くっつけば自動的に「姐さん」です。

しかもEは検挙前に離婚していたので、今は独り身で実家暮らしでした。

再婚を目指すなら、こっちのほうが簡単です。


だとしたら、解決策はただひとつ。

これ以上何もしないのが一番です。

噂を立てられたくない…

お金が無いと思われたくない…

外見、外聞を取り繕う気持ちが

自分を見失い、脅迫や恐喝に屈する要因です。

うちには、取り繕うものはありません。


次にEから私のアパートに電話があった時

迷いましたがこのことは言いませんでした。

やりこめたくて暴き立てれば、向こうも燃えます。

カッカさせて次の手を打たれるより

のらりくらりの根比べのほうが結局は得策だと考えました。

浮気と同じです。


         「うちは貧乏だから金は無い」

         「命が欲しいなら夫をやる」

そう繰り返すだけでした。


C子を殴ったことを言われると思っていましたが、スルーでした。

すでに日が経って、診断書を取れないからだろうと思います。


      やっぱりもっと殴っとくんだった…


最初は毎晩かかってうんざりだった電話の回数は

だんだん減っていきました。

金欲しさに息巻いていたEですが

日を追うにしたがって、その情熱は薄れてきたようです。

看板やプライドを守るためにすぐ出ると思っていた金が

なかなか出ないので、そのイライラをぶつけてきているだけのようでした。


鼻のきく彼らが考えているよりも

こちらの経済状態は地べたに堕ちており

恐喝に揺らぐような足場すら失っていたのです。


1ヶ月ほど後、C子がEと再婚したことがわかりました。

披露宴は居酒屋を借り切って、会費一人5万円。

青少年の面倒見のようなことをしていたEは

これでそこそこの収入があったようです。

ぱったり電話がかからなくなりました。



そこへ信じられないニュースが飛び込んで来ました。

Eが死んだというのです。


            「うっそ~」


両親、夫、子供たちとEの実家の前まで見に行きました。

「ほんとだ!Eだ!」

入り口に「○村E雄儀」と、確かに書いてありました。


お通夜は終わっていましたが

長男の知り合いがうろついていたので、聞きに行かせました。


「事故だって。追突されたらしいよ」

例の仕事をやり損なったのでしょう。


「私が一生懸命祈ったからよ!天罰よ!」 

義母はとても興奮していました。


「俺の人脈に恐れをなしていたと思う」

義父も得意満面です。


「頑張ったのは母さんだろ…」

無口な長男が、いつになく反論しました。

「そうだ!」

次男も言いました。

そして

「一番ダメなのは、キミ」

と夫を指さすのでした。


Eは、新妻や子供たちのために命を張ったのでしょうか…。

多くの人々に「死んでくれて町が良くなる」と喜ばれるのは

どんな気持ちでしょうか…。

死んだら、何もわからないのでしょうか…。


C子はこれからどうするのでしょうか…。

愛人に浮気された夫は、どんな気持ちなのでしょうか…。


              ま、いいか!



                合掌
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