私の卑怯なウグイスぶりは、セリフだけではない。
暑いだの、遠いだの、あいつは落ちるだの嫌いだのとほざいて
仕事を選り好みする。
だから滅多にやらない。
滅多にやらないくせに、ウグイスと名乗る卑怯者である。
多くのウグイスさん達は、私と違って仕事を増やしたいらしいではないか。
候補や参謀といったクライアントに気に入られ
リピートや紹介を取りつけたいらしいではないか。
そのためには、叱られても我慢するというではないか。
卑怯ついでに言わせていただくと、仕事を増やしたいのであれば
セリフを磨くより、もっと確実な方法がある。
先に外見を磨いた方がいい。
聴覚より視覚に訴える方が早いのだ。
人間、最初に目が認めれば、耳や心は付いてくる。
まず目が美しいものを追い、次に美しいものがどんな言葉を発するか
耳を使って聞こうとする。
聞く気になっている人に対してなら、何を言っても印象深くて感動的だ。
マイクでナンかしゃべれるだけでなく
美が連れて来る華やかさ、明るさ、元気さ、気持ちよさ…
付加価値を加えてお得感を出すと、信頼を得やすい。
食品でもそうではないか。
ただ品物があるというだけでなく
安くて新鮮でおいしくて、パッケージや陳列に工夫がされており
店の内装や売っている人の感じが良ければ、買いたくなる。
ここで買って損は無い、絶対お得という信頼が生まれるからだ。
信頼すなわち人心をつかむということであり
人の心をつかみたいなら、美が最強なのである。
ただし候補や参謀のオンナ?とささやかれるような美はいけない。
それは美でなく、色である。
有権者の半分は女性だ。
同性に反感を持たれてはならない。
また、美はクライアントに対する最大のサービスである。
選挙は注目されてナンボ。
誰だって汚いものより美しいものに目が行く。
粒ぞろいを並べられるのも、候補の実力のうちだ。
美は、陣営の格上げに貢献する。
見た目はナンですけど、ウグイスやってます…
なんてのは、甘えである。
いや~、自分で書いてて耳が痛いぞ!
美は最強の武器…
人はしゃべれる鳥よりも、黙った美しい貝を選ぶ…
私がそれを知ったのは20年近く前
モトミヤさん(仮名)という候補の選挙に参加した時からである。
誰かの紹介で初めてウグイスをするという
私と同い年のその女性は、人が振り返るような美人だった。
子育てを終えて社会復帰する手始めに、参加したという話だ。
しかしそのベッピン、本番に臨むとどうしたことか
「モトミヤ~ン、モトミヤン」
と名前にフシをつけてしまう。
「モトミヤ~ン、モトミヤン…を…よろしくお願いします」
これを2回繰り返したら終わりなので、耐久時間は1分未満。
これではマイクを持たせられない…通常、誰でもそう思うだろう。
が、候補やドライバーは絶賛した。
「控えめな声が切なげで、つい聞き入ってしまう」
「葛城ユキの“ボヘミアン”を思い浮かべて、印象が強い」
ろくでもないヤツらと言えばそれまでだが
悲しいかな、これが男の本音であろう。
私が同じことをやったら、絶対クビだ。
この“貝”と2人で後部座席に座らされた私に
おのれの容貌を嘆く暇は無かった。
貝の代わりにしゃべらないといけないからだ。
時たまお出ましになる、弱々しい「ボヘミア~ン」の一声のために
長い長い前座をつとめる…それが私に与えられた仕事なのであった。
当時の私は、初心者に毛が生えた程度。
先輩の真似をして、ありきたりなセリフを言うのがウグイスだと信じ
仕事より事務所で出されるごはんが楽しみな
今よりもっとバカウグイスであったため
同じギャラでこき使われる理不尽を感じる余裕も無く、必死だった。
こんな毎日じゃあ、セリフは嫌でも増えていく。
路上の立ち位置なんかも考慮して
貝の美貌を有効活用するタイミングなど
プロデュースも心がけるようになった。
美は、実力にもゲタを履かせてくれる。
選挙カーの人間以外は、貝がしゃべっていると思い込んでいた。
私を含めた選挙カーの人間も、それを否定しなかった。
男達は、貝を現実からガードするためであり
私はやっているうちに、二人羽織の興行が面白くなってきたからである。
「あの人は何もしゃべらないんです!私ばっかり!ウワ~ン!」
なんて訴えたって、ブサイクの嫉妬としか思われない。
私に実力というものがついたならば、それはあの美しい貝のおかげである。
しゃべる仕事でしゃべらなくても優遇される…美さえあれば…
この選挙で、美の重要性と合理性を確信した私は
じゃあ、しゃべれる美鳥になれば無敵じゃんかと思った。
以後はセリフより美の研究に熱心となる。
さて、その貝。
モトミヤ氏の次の選挙でも、ぜひにと請われたが辞退した。
前回の選挙で、とある社長の目に止まり
秘書の仕事にありついていたからである。
(続く)
暑いだの、遠いだの、あいつは落ちるだの嫌いだのとほざいて
仕事を選り好みする。
だから滅多にやらない。
滅多にやらないくせに、ウグイスと名乗る卑怯者である。
多くのウグイスさん達は、私と違って仕事を増やしたいらしいではないか。
候補や参謀といったクライアントに気に入られ
リピートや紹介を取りつけたいらしいではないか。
そのためには、叱られても我慢するというではないか。
卑怯ついでに言わせていただくと、仕事を増やしたいのであれば
セリフを磨くより、もっと確実な方法がある。
先に外見を磨いた方がいい。
聴覚より視覚に訴える方が早いのだ。
人間、最初に目が認めれば、耳や心は付いてくる。
まず目が美しいものを追い、次に美しいものがどんな言葉を発するか
耳を使って聞こうとする。
聞く気になっている人に対してなら、何を言っても印象深くて感動的だ。
マイクでナンかしゃべれるだけでなく
美が連れて来る華やかさ、明るさ、元気さ、気持ちよさ…
付加価値を加えてお得感を出すと、信頼を得やすい。
食品でもそうではないか。
ただ品物があるというだけでなく
安くて新鮮でおいしくて、パッケージや陳列に工夫がされており
店の内装や売っている人の感じが良ければ、買いたくなる。
ここで買って損は無い、絶対お得という信頼が生まれるからだ。
信頼すなわち人心をつかむということであり
人の心をつかみたいなら、美が最強なのである。
ただし候補や参謀のオンナ?とささやかれるような美はいけない。
それは美でなく、色である。
有権者の半分は女性だ。
同性に反感を持たれてはならない。
また、美はクライアントに対する最大のサービスである。
選挙は注目されてナンボ。
誰だって汚いものより美しいものに目が行く。
粒ぞろいを並べられるのも、候補の実力のうちだ。
美は、陣営の格上げに貢献する。
見た目はナンですけど、ウグイスやってます…
なんてのは、甘えである。
いや~、自分で書いてて耳が痛いぞ!
美は最強の武器…
人はしゃべれる鳥よりも、黙った美しい貝を選ぶ…
私がそれを知ったのは20年近く前
モトミヤさん(仮名)という候補の選挙に参加した時からである。
誰かの紹介で初めてウグイスをするという
私と同い年のその女性は、人が振り返るような美人だった。
子育てを終えて社会復帰する手始めに、参加したという話だ。
しかしそのベッピン、本番に臨むとどうしたことか
「モトミヤ~ン、モトミヤン」
と名前にフシをつけてしまう。
「モトミヤ~ン、モトミヤン…を…よろしくお願いします」
これを2回繰り返したら終わりなので、耐久時間は1分未満。
これではマイクを持たせられない…通常、誰でもそう思うだろう。
が、候補やドライバーは絶賛した。
「控えめな声が切なげで、つい聞き入ってしまう」
「葛城ユキの“ボヘミアン”を思い浮かべて、印象が強い」
ろくでもないヤツらと言えばそれまでだが
悲しいかな、これが男の本音であろう。
私が同じことをやったら、絶対クビだ。
この“貝”と2人で後部座席に座らされた私に
おのれの容貌を嘆く暇は無かった。
貝の代わりにしゃべらないといけないからだ。
時たまお出ましになる、弱々しい「ボヘミア~ン」の一声のために
長い長い前座をつとめる…それが私に与えられた仕事なのであった。
当時の私は、初心者に毛が生えた程度。
先輩の真似をして、ありきたりなセリフを言うのがウグイスだと信じ
仕事より事務所で出されるごはんが楽しみな
今よりもっとバカウグイスであったため
同じギャラでこき使われる理不尽を感じる余裕も無く、必死だった。
こんな毎日じゃあ、セリフは嫌でも増えていく。
路上の立ち位置なんかも考慮して
貝の美貌を有効活用するタイミングなど
プロデュースも心がけるようになった。
美は、実力にもゲタを履かせてくれる。
選挙カーの人間以外は、貝がしゃべっていると思い込んでいた。
私を含めた選挙カーの人間も、それを否定しなかった。
男達は、貝を現実からガードするためであり
私はやっているうちに、二人羽織の興行が面白くなってきたからである。
「あの人は何もしゃべらないんです!私ばっかり!ウワ~ン!」
なんて訴えたって、ブサイクの嫉妬としか思われない。
私に実力というものがついたならば、それはあの美しい貝のおかげである。
しゃべる仕事でしゃべらなくても優遇される…美さえあれば…
この選挙で、美の重要性と合理性を確信した私は
じゃあ、しゃべれる美鳥になれば無敵じゃんかと思った。
以後はセリフより美の研究に熱心となる。
さて、その貝。
モトミヤ氏の次の選挙でも、ぜひにと請われたが辞退した。
前回の選挙で、とある社長の目に止まり
秘書の仕事にありついていたからである。
(続く)