彼女のアパートに着きました。
奥まった、わかりにくい場所でしたが
以前長男がそのあたりを通りかかった時
「親父の車が停めてあるのを見た」
と聞いていたので、すぐにたどり着けました。
玄関の前には、洗濯物がたくさん干してあり
子供服ののれんをかき分けるようにして、チャイムを押しました。
ドタドタ…。
子供特有の賑やかな足音がして
小学校3年生くらいの女の子が顔を出しました。
「どなたですか~?」
一応形式的にたずねはするものの
その声や表情は、心細さから解放されたようにはずんでいました。
「お母さんから電話があったでしょう。
着替えを取りに来たのよ」
「ママじゃなくて、パパから電話があった」
「ふ~ん…
じゃあ、そのパパが言ってたでしょ。
着替えを用意してって」
「うん!」
「おばちゃんに渡して」
「どれかわからない…」
「パンツとか、シャツよ。お母さんがいつも着てるものよ」
「…これ?」
いったん奥へ引っ込んで、持って来たものは
黒いラメ入りのTバックでした。
なるほど…
よその亭主と寝るには、こういうのをはいて
サービスせにゃならんのか…
「これでいいよ。もう一枚くらい無い?
あと、ブラジャーとか、Tシャツとか…ある?」
今度は、スパンコールの蝶がアクセントの
ピンクのスケスケおパンツ…。
その次の便では、くたびれてワイヤーが出かけたブラジャーと
色あせたTシャツを一つずつ持ってきました。
辛抱強く待っている私を蚊が狙います。
玄関の中へ入り、サビのきた重いドアを閉めました。
眠っていたらしい
幼稚園の年長くらいの男の子が出て来ました。
「おまえは誰だ!
俺が相手になってやる!」
ヒーローものの真似をしてポーズを取ります。
「アヤしいオンナめ!帰れ!」
ツバまで吐きやがります。
おお、勇ましいこと。
うちの子なら、たたきまわしています。
しかし、男児の扱いには慣れています。
「○○星から来た。地球を守ってくれてありがとう」
「うそだぁ~…」
照れて身をよじり、おとなしくなるのです。
騒がれて、近所に興味を持たれるのはごめんでした。
パパが出入りするのだから、すでに興味は持たれているでしょうが。
散らかった部屋の隅に置かれた
段ボールのおもちゃ箱から
ボロボロになったクリスマスのブーツの先がのぞいています。
買い換えた時、誰かにあげたと言っていた
古い電気釜と電子レンジもここでちゃんと使われています。
今度は洗濯機も買い換えようかしらん。
やっと、ご衣装が出そろいました。
床に落ちていた紙袋を持って来させて着替えを入れ
「じゃあね。お母さん、多分明日帰って来れると思うから
いい子でお留守番しててね」
「…おばちゃん、帰るの?」
あったりめぇよ…
「ママ、どこ…?」
二人はしくしく泣き出しました。
ママは仕事やデートに忙しく
留守番には慣れているはずですから
ずっと二人だけなら平気なのでしょうが
なまじ夜遅く人の顔を見たのが刺激になったようでした。
「ママに会いたい…」
「ママに会いたい…」
上の子が泣くと、下も心細くなるものです。
このまま置いておくのも酷な気がして
連れて行くことにしました。
玄関先に干された子供の衣類を端からブチブチっとはずし
それを抱えて子供たちと一緒に車に乗り込みました。
なんで私が…
どうしてこんなことに…
ここらあたりから
もうそういう無駄な問い合わせはしないようになりました。
奥まった、わかりにくい場所でしたが
以前長男がそのあたりを通りかかった時
「親父の車が停めてあるのを見た」
と聞いていたので、すぐにたどり着けました。
玄関の前には、洗濯物がたくさん干してあり
子供服ののれんをかき分けるようにして、チャイムを押しました。
ドタドタ…。
子供特有の賑やかな足音がして
小学校3年生くらいの女の子が顔を出しました。
「どなたですか~?」
一応形式的にたずねはするものの
その声や表情は、心細さから解放されたようにはずんでいました。
「お母さんから電話があったでしょう。
着替えを取りに来たのよ」
「ママじゃなくて、パパから電話があった」
「ふ~ん…
じゃあ、そのパパが言ってたでしょ。
着替えを用意してって」
「うん!」
「おばちゃんに渡して」
「どれかわからない…」
「パンツとか、シャツよ。お母さんがいつも着てるものよ」
「…これ?」
いったん奥へ引っ込んで、持って来たものは
黒いラメ入りのTバックでした。
なるほど…
よその亭主と寝るには、こういうのをはいて
サービスせにゃならんのか…
「これでいいよ。もう一枚くらい無い?
あと、ブラジャーとか、Tシャツとか…ある?」
今度は、スパンコールの蝶がアクセントの
ピンクのスケスケおパンツ…。
その次の便では、くたびれてワイヤーが出かけたブラジャーと
色あせたTシャツを一つずつ持ってきました。
辛抱強く待っている私を蚊が狙います。
玄関の中へ入り、サビのきた重いドアを閉めました。
眠っていたらしい
幼稚園の年長くらいの男の子が出て来ました。
「おまえは誰だ!
俺が相手になってやる!」
ヒーローものの真似をしてポーズを取ります。
「アヤしいオンナめ!帰れ!」
ツバまで吐きやがります。
おお、勇ましいこと。
うちの子なら、たたきまわしています。
しかし、男児の扱いには慣れています。
「○○星から来た。地球を守ってくれてありがとう」
「うそだぁ~…」
照れて身をよじり、おとなしくなるのです。
騒がれて、近所に興味を持たれるのはごめんでした。
パパが出入りするのだから、すでに興味は持たれているでしょうが。
散らかった部屋の隅に置かれた
段ボールのおもちゃ箱から
ボロボロになったクリスマスのブーツの先がのぞいています。
買い換えた時、誰かにあげたと言っていた
古い電気釜と電子レンジもここでちゃんと使われています。
今度は洗濯機も買い換えようかしらん。
やっと、ご衣装が出そろいました。
床に落ちていた紙袋を持って来させて着替えを入れ
「じゃあね。お母さん、多分明日帰って来れると思うから
いい子でお留守番しててね」
「…おばちゃん、帰るの?」
あったりめぇよ…
「ママ、どこ…?」
二人はしくしく泣き出しました。
ママは仕事やデートに忙しく
留守番には慣れているはずですから
ずっと二人だけなら平気なのでしょうが
なまじ夜遅く人の顔を見たのが刺激になったようでした。
「ママに会いたい…」
「ママに会いたい…」
上の子が泣くと、下も心細くなるものです。
このまま置いておくのも酷な気がして
連れて行くことにしました。
玄関先に干された子供の衣類を端からブチブチっとはずし
それを抱えて子供たちと一緒に車に乗り込みました。
なんで私が…
どうしてこんなことに…
ここらあたりから
もうそういう無駄な問い合わせはしないようになりました。