彼女の手形のついたフロントガラスを拭いていると
義母が来たので、予定どおり
町内の病院へお見舞いに行きました。
帰り道、道ばたにたこ焼きの屋台が出ていました。
義母はそれをたくさん買って
「会社に持って行ってみんなに食べさせよう」
義母の気まぐれには慣れています。
いつも家に居るので、一度出たらなかなか帰りたくないのです。
会社に着くと、まぁ、なんということでしょう。
さっきの営業車が停まっていました。
そういえば、会社の玄関マットとモップは
長年そこのものを使っていたのでした。
ちょうど交換日だったのか、それとも私と会ったことを報告しに来たのか。
どちらにしても、営業関係の人がする横付けでなく
奥まった場所へ隠すように停めたことになんとなくムッとしました。
そこで、頭から突っ込んだ営業車が出られないように
後ろへピッタリと車をつけてやりました。
先に降りた義母は、たこ焼きを持って事務所に入って行きましたが
入れ違いにあの女性が出て来て、私とすれ違いました。
双方チラリと視線を交わし、値踏み。
へん!帰ろうとしたって、おまえの車は出られんわい…
義母は何やら夫に意見しているところでした。
「マットの交換に来た人にまで
応接セットに座らせてコーヒー飲ませるなんて間違っている」
という内容でした。
「お父さんがあんたを頼りないと言うのは
そういう甘さじゃない?」
たまには正論言うじゃんか…
そこへ夫の携帯が鳴りました。
メールをちらっと見た夫は
「車、動かしてやってくれ」
携帯を持たない義母は意味がわからずポカンとしていました。
ちなみに当時の私たち夫婦は
双方のアドレスどころか番号も知りませんでした。
必要なかったからです。
人違いをしておいて逃げ出すぶしつけなミスに
嫌がらせをしたつもりでしたが
結局自分で後始末…あぁ、馬鹿馬鹿しい。
営業車に乗り込み、前を向いたまま
まんじりともしなかった彼女は
車が出せるスペースが空いたとたん
バックで飛び出して行きました。
帰り道も、義母は納得していないようでした。
「長椅子に二人並んで座ってたのよ!
人に見られたら誤解されるじゃないの」
誤解じゃないって…
「最近の若い子は、立場ってものを知らないのね。
たかだかマットを換えに来たくらいで
いちいち勧められるままに座りこんで、コーヒーまで飲んで」
あんたの息子の女だからだよ…
その夜、夫は案の定帰って来ませんでした。
亭主持ちの上、親と同居だったE子と違い
今度は気楽に泊まれる相手らしく、確かに外泊は増えていました。
その日は特にいろいろあったのですから、無理もありません。
いつからでしょう。
子供たちは、日が暮れると必ず聞きます。
「今日、父さんは?」
夫は彼女が出来ると、たいてい同時に男性の親友が出来ます。
「今日は○○君と遊びに行くから遅くなる」
「○○君たちと徹夜で麻雀だから」
急に仲良くなった男の友達と交流、という形を取るのが
夫にとって話しやすい言い訳でした。
言い訳をしないと出してくれない奥さんならいざ知らず
我が家は野放しですが、それでもするわけです。
毎回あれこれ考えなくてもいいウソだし
うまく言い訳してやっと出て来た…
そんな障害が無いと、燃えないのかもしれません。
実在する人物の場合もあれば、架空の場合もあります。
最初は数人を使い分けますが
そのうち面倒になるらしく、最終的には1名にしぼられます。
子供たちはもう大きくなり
父親がどんな人間か、およそ理解していました。
頼みもしないのに、ご丁寧に教えてくれる人々もいました。
車やバイクで遠出をするようになった彼らが
自身で目撃したことも何度かありました。
「今日、父さんは?」
私は一応答えます。
「○○君のところだってさ」
「髪の長い、スカートをはいた○○君のところ?」
そしてみんなでアハハーと笑うのです。
行事みたいなものです。
知らない人が見たら、いびつに感じると思います。
夫にはすでに、友人と呼べる人はいませんでした。
行動を共にすると、どんな誤解を招くかも知れず
本人はもとより奥さんたちにも警戒されていました。
同級生や趣味の仲間だった人たちも離れて行きました。
自ら招いた孤独ですが
その代償は依然として手近の素人女性に求められます。
今度は出入りの営業レディというわけです。
コマーシャルを見て
○○コちゃんと○○○○う君のキャラクターが可愛いと言うと
夫はすぐにそのイラスト入りの布製バッグを
各種のモップと一緒に持ち帰ってくれたことがありました。
即刻廃棄
義母が来たので、予定どおり
町内の病院へお見舞いに行きました。
帰り道、道ばたにたこ焼きの屋台が出ていました。
義母はそれをたくさん買って
「会社に持って行ってみんなに食べさせよう」
義母の気まぐれには慣れています。
いつも家に居るので、一度出たらなかなか帰りたくないのです。
会社に着くと、まぁ、なんということでしょう。
さっきの営業車が停まっていました。
そういえば、会社の玄関マットとモップは
長年そこのものを使っていたのでした。
ちょうど交換日だったのか、それとも私と会ったことを報告しに来たのか。
どちらにしても、営業関係の人がする横付けでなく
奥まった場所へ隠すように停めたことになんとなくムッとしました。
そこで、頭から突っ込んだ営業車が出られないように
後ろへピッタリと車をつけてやりました。
先に降りた義母は、たこ焼きを持って事務所に入って行きましたが
入れ違いにあの女性が出て来て、私とすれ違いました。
双方チラリと視線を交わし、値踏み。
へん!帰ろうとしたって、おまえの車は出られんわい…
義母は何やら夫に意見しているところでした。
「マットの交換に来た人にまで
応接セットに座らせてコーヒー飲ませるなんて間違っている」
という内容でした。
「お父さんがあんたを頼りないと言うのは
そういう甘さじゃない?」
たまには正論言うじゃんか…
そこへ夫の携帯が鳴りました。
メールをちらっと見た夫は
「車、動かしてやってくれ」
携帯を持たない義母は意味がわからずポカンとしていました。
ちなみに当時の私たち夫婦は
双方のアドレスどころか番号も知りませんでした。
必要なかったからです。
人違いをしておいて逃げ出すぶしつけなミスに
嫌がらせをしたつもりでしたが
結局自分で後始末…あぁ、馬鹿馬鹿しい。
営業車に乗り込み、前を向いたまま
まんじりともしなかった彼女は
車が出せるスペースが空いたとたん
バックで飛び出して行きました。
帰り道も、義母は納得していないようでした。
「長椅子に二人並んで座ってたのよ!
人に見られたら誤解されるじゃないの」
誤解じゃないって…
「最近の若い子は、立場ってものを知らないのね。
たかだかマットを換えに来たくらいで
いちいち勧められるままに座りこんで、コーヒーまで飲んで」
あんたの息子の女だからだよ…
その夜、夫は案の定帰って来ませんでした。
亭主持ちの上、親と同居だったE子と違い
今度は気楽に泊まれる相手らしく、確かに外泊は増えていました。
その日は特にいろいろあったのですから、無理もありません。
いつからでしょう。
子供たちは、日が暮れると必ず聞きます。
「今日、父さんは?」
夫は彼女が出来ると、たいてい同時に男性の親友が出来ます。
「今日は○○君と遊びに行くから遅くなる」
「○○君たちと徹夜で麻雀だから」
急に仲良くなった男の友達と交流、という形を取るのが
夫にとって話しやすい言い訳でした。
言い訳をしないと出してくれない奥さんならいざ知らず
我が家は野放しですが、それでもするわけです。
毎回あれこれ考えなくてもいいウソだし
うまく言い訳してやっと出て来た…
そんな障害が無いと、燃えないのかもしれません。
実在する人物の場合もあれば、架空の場合もあります。
最初は数人を使い分けますが
そのうち面倒になるらしく、最終的には1名にしぼられます。
子供たちはもう大きくなり
父親がどんな人間か、およそ理解していました。
頼みもしないのに、ご丁寧に教えてくれる人々もいました。
車やバイクで遠出をするようになった彼らが
自身で目撃したことも何度かありました。
「今日、父さんは?」
私は一応答えます。
「○○君のところだってさ」
「髪の長い、スカートをはいた○○君のところ?」
そしてみんなでアハハーと笑うのです。
行事みたいなものです。
知らない人が見たら、いびつに感じると思います。
夫にはすでに、友人と呼べる人はいませんでした。
行動を共にすると、どんな誤解を招くかも知れず
本人はもとより奥さんたちにも警戒されていました。
同級生や趣味の仲間だった人たちも離れて行きました。
自ら招いた孤独ですが
その代償は依然として手近の素人女性に求められます。
今度は出入りの営業レディというわけです。
コマーシャルを見て
○○コちゃんと○○○○う君のキャラクターが可愛いと言うと
夫はすぐにそのイラスト入りの布製バッグを
各種のモップと一緒に持ち帰ってくれたことがありました。
即刻廃棄