殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

あの世の扉

2023年08月31日 09時12分17秒 | みりこん流
高齢化社会と言われる昨今、周りの老人たちを眺めていて

つくづく思うことがある。

語弊満載を承知で言うなら

彼ら彼女らは、ただの長生きではないのではないか…と。

長生きには二通りあって、まだこの世に必要な人と

あの世の扉が開かない人に分かれるのではないか…と。


“まだこの世に必要な人”という意味は、誰でもわかると思う。

人格卑しからず、誰かの精神的あるいは経済的な支えになっていたり

各分野で活躍していて、当面、いなくなったら困る人のことだ。

そして“あの世の扉が開かない人”の方は

「こんなのに来られたら困るから、そっちでもうちょっと修行せぇ」

ということで、あの世へ行く時期を先延ばしにされている人のことだ。


あの世で「いらん」と言われる人が、この世でいるわけないじゃんか。

どっちの世界にも歓迎されぬまま、不平不満を口にしながら生きながらえるのが

“あの世の扉が開かない人”である。

「ああ、あの世の扉を開いてもらえないのよね。

扉が開くまで、この世でのたうち回るしかないのよね」

周囲の年寄りに翻弄されっぱなしの私は、そう思うことにしているのさ。

そうでもしなきゃ、やっとられんのさ。


なんてひどいことを…明日は我が身じゃないか…

私の本心を知った人々は言うだろう。

しかしそれは、親と暮らしてないから言えるのだ。

いっぱしのことが言いたかったら、イメージではなく

まず老親と同居するという人生を棒に振る大チャレンジを

やらかしてからにしてもらおうではないか。


長生きをするとは、愛する家族や気の置けない友を

一人、また一人と見送る悲しみを重ねることだ。

それでなくても年を取ると孤独感が増し、大勢の中にいても寂しくなって

自分だけが取り残されているような気持ちになる。

自動的にそうなるらしいのは、自分の祖父で知っているつもりだ。

饒舌な彼から、そういう気持ちを日々延々と聞かされて成長した。


それでも健気に自身を鼓舞し、明るく楽しく生きたいと願うのが人間というもの。

しかし、周りがそうはさせてくれない。

「ささ、おじいちゃんは、おばあちゃんは、あっち」

「その話はもういいから、ね?」

愛想笑いの向こうに透けて見える、「邪魔なんだよ」。

年寄りの勘は、若い者の何倍も鋭いのでわかるのだ。


経験を重ねて勘が磨かれた人もいるだろうけど

あの世が近づく年齢になると、勘は自然に鋭くなっていくもの。

あの世は感覚の世界だからだ。


そのための準備として、勘を含む感覚が徐々に敏感になっていく。

道路標識や道しるべなんか無いのに

方向音痴でも漏れなくあの世に到達できるところをみると

そうとしか思えない。

昔、記事にしたことがあるが、40年以上前

家庭内のアクシデントによって

図らずもそういうことになった私はそう思っている。


今はナビがあるかもしれない。

携帯電話だって普及しているかもしれないので

現在地と目的地を調べることができるかもしれない。

その分、研ぎ澄まされるべき感覚は偏り

勘も敏感も必要な箇所には働かず、不要な箇所にはやたらと働いたりする。


特に自分が中心でない時、その感覚は過敏に働く。

そりゃ情けない。

腹が立つ。

我慢ならない。

文句を言いたくなる。

周囲の我慢によって細々と保たれていた上辺の平和は

一瞬で崩壊。

冷たい空気と置かれた距離に、寂しさはますますつのり

その気も無いのに「早く◯にたい」とまで口にする。


言い方を変えれば、自分がいつまでも中心でいたい人に

このような誤作動が起こるのではなかろうか。

あの世の扉が開かない人は、自分がいつまでも主役でいたい人ではないのか。

年を取っても脇役に回りたくない老女優…

周りを見回すと、そのような人ばかりである。

その根性は見上げたものだ。

長生きがしたければ、そうなればいい。

皆に愛され、尊重され、健康で、そこそこ幸せで…

そんな長寿はまず無いと思うことだ。


どうしてそんなことになるかというと

アレらの日常は「気が済まない」を軸に回っている。

行かなければ気が済まない、やらなければ気が済まない

言わなければ気が済まない…。


気が済まないという感情は、気持ちの中で最も強い。

強気はけっこうなことなのだが、問題はこの“気が済まない”が

周囲にとって不都合な場面で発動することだ。


家事をしなければ気が済まない、お小遣いを上げなければ気が済まないなど

良いところで発動するのであれば周囲は喜ぶ。

しかし、それは起きない。

“気が済まない”の発動は、必ず誰かの協力や忍耐を必要とする事柄に限定。

しかも急で頻繁。

そして言い出したらきかない。

これが老化というものなのである。


車でどこそこへ連れて行ってもらわなければ気が済まない。

気になった片付けや作業を人にやってもらわなければ気が済まない。

つまらぬことや言ってはいけないことを口に出さなければ気が済まない。

言うなれば我々子世代の生活は、老人の“気が済まない”に支配されているのだ。


そしてアレら自身もまた、この世の残留期間が長引くにつれて

“気が済まない”に支配される割合が増えていく。

肝心なところで発動せず、見当違いの場面で急に気が済まなくなるのだから

関わったらロクなことは無いということで、周囲から敬遠される。

それでも“気が済まない”の気持ちはおさまらない。

願いが叶って気が済む状況を身悶えしながら欲する。

その気持ちは辛くて苦しいと思う。

しかしこれが老化なので、どうしようもないのである。


その痛みを知りつつも、こっちは支配なんてされたくない。

せっかく生まれてきたんだもの、私も自分の人生を生きたいよ。

年取ったらなおさらだよ。

だけどその生は、そもそもアレらに授けられたもの。

諦めて支配される身の上に甘んじ、何とか折り合いをつけて

アレらにあの世の扉が開かれ、静かになるまでと歯を食いしばりながら

どうにか息をしているというのが、紛うことなき現実である。


これほど頑張ったんだから

扉のオープン後はさぞや幸せな晩年が待っているだろう…

なんて思ってない。

「親を大切にしてると、いいことあるよ」

そう言ってくれる人もいるけど、無責任なこと言うな…と思ってしまう。

いいことなんか、あるもんか。

長い長い同居や介護生活の果てに、待ち構えているのは自身か伴侶の病気だ。

同じ境遇の人々を観察してきたが、おしなべてそういうことになっている。


ここでもお馴染み、一回り年上の友人ヤエさんも半世紀以上に渡り

大舅、大姑、舅、姑を看取るという大仕事をやってのけたが

全てが終わるとすぐに精神を病んだ。

心だけでなく、身体の方もボロボロだ。

もう会っても私がわからない。


だからそうならないように、一生懸命をやめた。

真面目に取り組まない。

観察から、「我慢したら後でいいことがある」という考えこそ

自分の心身を追い詰めるとわかったので、絶対思わない。

アレらがキレて、「もう◯にたい」なんて口走ったら

「どの方法がお好み?」

「失敗したらどうするん?自◯は健康保険証きかんよ」

と言う。


そんな一生懸命を辞めた私と義母ヨシコが今、ハマってるのはミョウガの収穫。

庭の片隅に自生してるんよ。

長いこと気がつかなかったんだけど、今年、ひっそりと成っているのを発見。

二人で見つけるの、楽しい。



もう終わりで、花が咲き始めてる。

ミョウガは私の大好物、そしてヨシコの大嫌いな食品。

自分は嫌いなのに、私が喜ぶから探す…

その姿を見て、ありがたいと思う…

私に許されているのは、そんな小さな幸せ。

それでいいと思っている。

私には、小さな幸せがお似合いだ。


ミョウガの親というか葉っぱはこれ。

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デンジャラ・ストリート 老博打

2023年08月25日 13時47分51秒 | みりこんぐらし
義母ヨシコを相手に、1年がかりで取り組んでいたギャンブルがある。

先日、その結果が出て私が勝った。

勝利の美酒に酔いしれる。


ギャンブルの内容とは…

昨年の3月末、隣のおばさんが

広島市内に住む息子さんの家へ引き取られて行ったことに端を発する。

その息子さんは、私と同い年。

一流大学を出て一流企業に就職した、おばさんご自慢の子供である。


ご主人亡き後、おばさんは8年ほど一人暮らしを続けながら

息子夫婦が実家に戻ってきて同居する日を指折り数えて待った。

息子さんと両親は、どちらかが一人になったら夫婦で実家へ帰り

残された親の面倒を見る約束をしていたからだ。

20年ほど前、息子さんが広島市内に家を買うと言い出した時

おばさん夫婦はその約束を交わした上で、家の頭金を出していたのだった。


けれども息子さんは、何だかんだと理由をつけて帰らなかった。

仕事が忙しい、奥さんが仕事を始めた、子供が結婚した

孫が生まれた、自治会の役員が回ってきた…

奥さんが更年期障害という、わけわからん理由もあった。


親を理屈で説き伏せるのは、優秀な子供がよく使う手だ。

おばさんは息子さんが述べる同居できない理由を信じようと

努力している様子だったが

気持ちのコントロールに苦しんで、よく泣いていた。

辛くなるといつもうちへ来るか、こちらが呼ばれるので

私はその状況を逐一知っている。


合間で息子さんは、同居できない代わりに頻繁に実家へ通うと約束した。

しかしそのためには、今の車ではしんどいのだと言う。

おばさんはねだられるまま、ご主人の遺産で高級車レクサスを買い与えた。


彼は最初のうち、その新車で毎週帰って来た。

おばさんは来れば来たで喜んで泣き

帰れば帰ったで遠い帰り道が心配だと泣いた。

しかし3ヶ月もすると、仕事が忙しくなったということで

あまり帰って来なくなった。

なまじ頻繁に顔を見られる期間があったために、おばさんの苦しみは増した。


「大きな会社の責任ある立場だから、うちの息子がいないと困るらしいのよ」

おばさんは自分に言い聞かせるように、たびたび私にも言ったものだ。

が、本線を外れて枝葉の会社に飛ばされていることは

おじさんの葬式で見た献花の名札で察知できた。

ついでに、息子さんが絶対に帰って来ないのも知っていた。

優秀な彼が高校生の頃、下着泥棒の常習犯だったと聞いたことがあるからだ。

そのような過去を知られている町へ、帰って来るわけないじゃんか。

あれこれ方便を使って実家に帰るのを引き延ばしながら

おばさんがいなくなるのを待っているとしか、私には思えなかった。


息子を待ちわびるだけではいけないと思ったおばさんは

近所や老人会の集まりへ積極的に参加するようになった。

しかしご主人が厳しい人で、あまり外へ出してもらえなかった彼女は

人の集まりに慣れてない。

それでもいっぱしにセンターを獲りたい気持ちはあるらしく

大きな袋にアルバムを入れて来ては、会場で皆に見せるようになった。

孫たちの結婚写真や、次々に生まれたひ孫たちの写真だ。

「うちの幸せを見せびらかすみたいで申し訳ないんですけど

よろしかったら見てやってください」

行事の進行を無視して始まるアルバム披露には、必ずこの言葉を添える。


孫やひ孫どころか、子供すら結婚してない人はけっこういるし

司会進行を邪魔される世話人にも、この行為は大不評。

それまで隣同士として、おばさんに合わせていたうちのヨシコも腹を立て

おばさんは近所で孤立するようになった。


やがておばさんは、90才に近づいた。

息子さんがいよいよ帰る決心をしたそうで、有頂天だ。

しかし、それにはハードルが。

こちらへ帰るためには広島の家を手放すことになるが

ローンがまだ残っているので売れない…

息子さんに言われたおばさんは、残りのローンを一括で払ってやった。


しかし息子さんは帰って来ず

「そんなに一人が辛いなら、ひとまずこっちへ来たら?」

と言い出した。

息子さんの車と住宅ローンの完済でご主人の遺産を使い果たし

老後資金が尽きたおばさんは、毎日が不安でどうしようもなくなり

とうとう折れて、息子さんの家へ行くことに決めたのが去年の3月。

おばさんは着替えを入れたバッグ一つ持って、引き取られて行った。


それから3ヶ月後、夏服を取りに帰ったおばさんはうちに寄って

「息子夫婦にとても良くしてもらっている」

と嬉しそうに話していた。

家が売りに出されたのは、それからすぐのことだ。

時々、風を入れに帰って来ると言っていたが、とうとう諦めたのだ…

ヨシコと私はそう話した。


その時、私は言った。

「いつまで息子さんの家に居させてもらえるかね?」

するとヨシコが激高。

「最後までに決まっとるじゃないの!」

「どうだかね…」

うすら笑いで答える私に、ヨシコはなおも言う。

「あんたらみたいなのばっかりじゃないわっ!

息子さんはしっかりしとるけん、ちゃんと責任持って世話するよっ!」


聞き捨てならぬ暴言を吐いたヨシコに

「じゃあ賭けようや。

おばさんが最後まで家で面倒見てもらえるかどうか」

そう提案した私。

「いいわよ!受けて立つ!」

ヨシコも鼻息荒く同意し、負けた方が焼肉を奢ることに決まった。


私が息子さんを怪しむ理由は、はっきりしている。

引越しの時、ヨシコと一緒に餞別を持って挨拶に行った我々に

彼は言った。

「熱帯魚を持って帰れないから、水槽ごと、お宅で引き取ってもらえませんか」

最初のうちは彼が帰るたびにせっせと世話をしていた熱帯魚だが

何年か経つと飽きて放置され、ドロドロの水槽で生き残っているのは

2〜3匹の“コケ食い”と、水草から生まれた小汚いエビだけ。

何が熱帯魚じゃ…そんなモン、誰がいるっちゅうねん。


即座に断ると

「困ったなあ…お宅に引き取ってもらえないとなると

川へ放すしかない…」

いやらしい言い方は、おばさんに似ている。

「川へ放したら死んでしまいますよ。

広島で飼われるのが一番いいと思いますけど」

「うちの家内は魚が嫌いでね。

引き取ってもらえないんだったら、死なせるしかないんですよ」


膠着状態のところへ、昼休みで帰って来た長男が挨拶に訪れた。

息子さんはすぐにターゲットを変更。

長男に話を持ちかけ、長男は引き取ると言った。

この子がOKなら、私はかまわない。

世話をするのは彼だ。


さっそくドロドロをうちへ運ぶ。

運ぶのを手伝いながら、息子さんは念を押した。

「うちは水槽も機械も、かなり良い物を買ってますからね」

こっちはシブシブもらってやるというのに

向こうときたら、高価な品をうちへくれてやると言いたげな上から目線である。

さすが一流大卒の秀才、言うことが官僚めいて吐き気がするぞ!


これが、その水槽。

長男がドロドロを綺麗にし、グッピーを飼って約1年半が経過している。


とまあ、そういうことを平気でやる人が

根気のいる親の世話なんか続くものか…というのが私の予測。

そして実際に私の住む高齢者密集地帯、名付けてデンジャラ・ストリートでは

子供に引き取られて行った親たちのほとんどが

さほど日をおかずに老人ホームへ入った。

ヨシコはヨシコで、親の世話は子供の義務だから

最後まで子供が面倒を見るのは当たり前だと言い張る。

嫁姑はお互いの威信をかけて、このギャンブルに臨んだのであった。




そして話は冒頭の先日に戻る。

その日は転居以来初めて、隣のおばさんから電話があった。

家がどうなっているかを知りたいらしい。


「あ〜ら、4月に若い一家が買って、もう住んでるわよ」

最後の頃はおばさんと決裂して仲が悪くなっていたヨシコが

嬉しそうに報告。

おばさんは家を売りに出したことも、家が売れたことも知らなかったので

かなりショックを受けていたそうだ。


それからおばさんは、現在の状況を話した。

今年の4月から、老人ホームで暮らしているという。

おばさんは目が少し悪かったので、そっちで介護認定を受け

全て息子さんの主導で、気がついたら入所の運びとなっていたそうだ。


今度はヨシコがショックを受ける番。

絶句するヨシコに、おばさんは泣きながら言った。

「老人ホームは良くしてくれるから不満は無いけど

年金も手持ちのお金も全部、息子が管理していて

お菓子を買ったり歯医者へ行くお金も無いの。

長生きなんて、するもんじゃないわね」

お金が必要な時は、私より二つ年下の娘さんに連絡して立て替えてもらい

後で娘さんはお兄さんから実費をもらうことになっているのだそう。


おばさんとの電話が終わった後も、しばらく立ち直れないヨシコ。

「あんたの言うた通りじゃったわ…」

素直に負けを認めた。

気の毒なので、焼肉を食べに連れて行った。
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手抜き料理・熱中症のその後

2023年08月21日 19時06分43秒 | 手抜き料理
前回の記事で、私がお寺料理の最中に

熱中症でダウンしたことをお話ししたら

5人の方から、優しいお見舞いのコメントをいただいた。

それぞれ表現は異なるものの、どなたもおっしゃっている。

「お寺料理なんか辞めてしまえ」

肉親であれば、きっと同じことを言うだろう。

温かい親心が嬉しかった。

本当にありがとうございました。


で、すっかり気を良くして元気になった私。

懲りもせずに後日談をお話ししたくなったので

胸クソ悪いだろうけど聞いてちょ。


一昨日、同級生5人で結成する通称5人会のLINEは

16日にあったお寺料理のことで盛り上がった。

まずマミちゃんが倒れた私の体調を問い、欠席したモンちゃんが心配し

横浜のけいちゃんが驚き…という順序。


私が「ありがとう、元気です、心配かけてごめんね」と返した時点で

ユリちゃんからお礼のLINEがある。

ここで連絡が行ったのだろう、しばらくしてユリちゃんの兄嫁さんからも

丁寧なお礼のLINEが届いた。

いつもは当日の夜か翌朝、ユリちゃんと兄嫁さんからお礼のLINEをもらうが

今回は3日ほど音沙汰なし。

別にお礼を言ってもらいたいわけではないので全くかまわないが

私の具合が悪くなったもんだから、二人は様子をうかがっていたらしい。


ともあれユリちゃんも兄嫁さんも言葉を尽くして礼は言うものの

体調を気遣うフレーズは無い。

うっかり体調の件に触れたら最後

「クーラーをつけてくれないと、もうやらない」

と言われたり、今後の体制について変更を提案される恐れがあるからだ。

これをブロックするため、義理の姉妹は連携している。


「お礼はいいから、料理の写真を送ってくれよ」

と思ったが、都合の悪い過去には触れたくない彼女ら。

こっちも蒸し返す気は起きず、そのままだ。


で、私が普段と変わらない様子なのを見て取ったユリちゃん…

「みんながいてくれなかったら、お盆行事はカレーしか作れなかったわ。

本当にいつも助かってます」

とたたみかけてくる。

彼女のプログラムでは、ここで私の謝罪と決意表明が述べられる予定。

「迷惑かけてごめんね。

次回から、また頑張ります」

「ありがとう、頼りにしてます」

これで全てが終わるはずだった。


が、私はプログラム通りにしなかった。

「カレーもええじゃん。

これがほんとのボン・カレー」

そう返したら、返事は無かった。



ところでこれ、何だと思う?


『オクラの花』という物体。

この夏、マミちゃんが時々くれる。

家庭菜園を始めた彼女、今のところ人にあげられるのは

これだけなんだって。


「成長を待って、オクラにしないの?」

私はたずねたわよ。

私だって、いつぞやオクラを育てようとしたことがあるもの。

途中まで調子良かったけど、毛虫に葉っぱを食べられて

茎だけになって終わったわ。


でも違うんだって。

この花が進化したらオクラになるわけじゃなくて

花そのものを食べる品種なんだって。

そういえば昔、料理屋で食べたことがあるのを思い出したわ。


調理法は超簡単。

洗って半分ぐらいに切ったらポン酢を付けて食べるだけで

火なんて使わない。

無味無臭なので、ポン酢の味しかしなくて

噛むとオクラみたいな粘りが少し出てくる。

マミちゃんは、サッと湯通ししてもいいと言ってたけど

湯をかけたら変色しちゃって汚くなったわ。


そうパクパク食べられる物じゃないし、美味しいわけでもない。

特に真ん中の雌しべ?だかは、食べるのに何だか勇気がいるから

最初に切り落としちゃう。

家では私しか手をつけないので夏の料理の参考にはならないけど

淡い黄色が美しくて、食べる時は森の妖精になったような気分なので

ご紹介してみました。


ついでに『キュウリの辛子漬け』


知人から教えてもらった漬物。

超簡単。

①キュウリ1キロ(10本ぐらい)を乱切りでも何でもテキトーに切る

②市販のカラシ粉(スーパーに売ってる)大さじ2杯

塩30グラム(大さじ2杯)

砂糖200グラム(計量カップ1杯)

ホワイトリカー(果実酒を作るお酒で、酒屋に売ってる)100CC

以上を大きめのジプロックに入れ、そこに切ったキュウリを入れて

一昼夜、冷蔵庫に放置したら出来上がり


けっこう水分が出るから、ジプロックの口はしっかり閉めてね。

食べる時は、水分を捨ててください。


これ、甘くて冷たくて美味しくて、後を引く。

初めてもらった時、うちの義母ヨシコがすごく気に入って

また食べたいと言うのでレシピを聞いた。

キュウリを10本も食べられないから5本でいいわ…

とおっしゃる方は、全ての分量を半分にしてください。


ホワイトリカーは1.8リットル入りが多いから

他に使い道が無いと思って買うのを躊躇するかもしれないけど

お酒なので腐りにくいし

美味しくて何回もリピートするようになると思うので大丈夫。

できあがったら、人に分けてあげても喜ばれる。

ホワイトリカーを使うと言ったら、何やら特別な感じが漂うものよ。

卑怯者の私にとって、その満足感はプライスレス。



さらについでに『糸コンニャクの明太子炒め』


冷たい料理に飽きたら、たまにはどうぞ。

①糸コンニャクはサッと茹で、明太子は中身を出す

②フライパンに油を小さじ1杯入れ

糸コンニャク、明太子、酒少々を入れてサッと炒めたら

仕上げに薄口醤油を好みで適当にかけて出来上がり


油は、天ぷら油でもゴマ油でもオリーブオイルでも何でもいい。

どうってことない一品だけど、箸休めやお弁当のおかずにおすすめ。

食欲が出るかもよ。
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手抜き料理・今年も寺で地獄を見る

2023年08月17日 13時55分28秒 | 手抜き料理
昨日は、恒例のお寺料理があった。

お盆の施餓鬼供養という行事だ。

日本列島に被害をもたらした台風7号の置き土産により

(こちらは少し雨が降った程度でしたが、皆さんの地域は大丈夫でしたか?)

すっごい猛暑。 

クーラーの無い寺の台所で働くには、かなりの覚悟が必要だ。


そこで服装は冷感スポーツシャツに半ズボン

エプロンは薄手のコットンで背中の開いている物を選択。

持参品は氷のう各種、塩飴に塩タブレット

ウィーダーインゼリー、それから空調ベストも持参。

どれもコメント欄で教えていただいた暑さ対策のグッズである。

皆さん、ありがとう。


体力勝負なので、朝ごはんもたっぷり食べた。

ヤクルト1000も飲んだ。

そして献立は、この日のために万全を期している。

とにかく室温を上げない…

この大前提のもと、準備は3日前から始めた。


寺の台所で極力煮炊きをしたくないので

献立は昨年と同じく巻き寿司と、鮎の甘露煮。

どちらも作りたいわけではない。

しかし、家で作って持って行ける特典は大きい。


巻き寿司…去年は卵、カニカマ、キュウリ、タクアン、ゴマの入った

名付けて「貧乏寿司」を作ったが、今年はこれに焼肉をプラス。

炒めた牛肉に焼肉のタレをたっぷりぶっかけ

汁気が無くなるまで煮た佃煮状のものだ。

先日、牛ロースを使って家で作ったら

手間は貧乏寿司とあまり変わらず、美味しかったので決めた。


牛肉を使うと高いので、ユリちゃんは機嫌が悪いが、構うもんか。

もう予算のことは考えない。

あいつらに作らせたら金がかかってかなわん!と思われるぐらいで丁度ええんじゃ。

そう言いながら、お寺用には安いコマ切れ肉を買っちゃう根性無しの私よ。


それから、これも昨年と同じく鯛ソウメン。

鯛は家で焼いて持って行くので、寺で火を使うのはソウメンを茹でる時だけだ。

できればソウメンなんか茹でたくないけど、高齢の檀家に人気なのではずせない。


マミちゃんは、生春巻きを作ると言う。

おお!よくぞ言ってくれた!

生野菜や茹でた海老などの材料を持ち込んで寺で巻くだけなので

煮炊きは必要無い!ラッキー!


それから、もらったカボチャで煮物

ジャガイモもたくさんもらったそうで

ポテトサラダを作って来てくれることになっている。

あと、彼女の妹がゴーヤとツナのマヨネーズ和えと

オカラを作って持たせてくれるという。

フフ…完璧…ほくそ笑む私だった。



が、甘かった。

圧力鍋を使う鮎の甘露煮は、前日までに仕上げればいいけど

傷みやすい巻き寿司はそうはいかん。

中の具は全て当日の朝、作らないといけないので午前3時半から作業開始だ。

20本の巻き寿司を巻き終えると、9時。

この時点で、すでに疲れ果てた。

去年より、明らかに体力が違う。


そして10時、マミちゃんが迎えに来てくれたので寺へゴー。

この日はモンちゃんが仕事で欠席だったので

公務員OGの梶田さんが手伝いに来てくれた。

料理に詳しくて、よく動く梶田さんが来てくれると楽なのでホッとした。


さっそく支度を始めると、マミちゃんの荷物から何やら怪しき物体が…。

「ジャガイモ、まだたくさんあって無くしたかったから

コロッケとジャーマンポテト揚げる〜」

大きなタッパーから出てきたのはパン粉をまぶしたコロッケと

丸めたジャーマンポテトの生の姿。

消費したいジャガイモをありったけ使ったらしく、大量だ。

ガ〜ン!


かくして延々と揚げ物が始まった。

室温は容赦なく上がり続ける。

マミちゃんは体力作りのためにジムへ通い始めたそうで

今回はものすごく元気だ。


品数を増やすと食べる人は喜ぶだろうが

室内温度だけでなく、調理器具や皿の片付け、食べ残しも増えて

我々の負担はどんどん増していく。

料理は共生…作り手と食べ手がお互いに笑顔でいられ

同時に次回の楽しみへと繋がるように

ほどほどの所でセーブするのも技術のうちなのだが

善人のマミちゃんにそれを理解しろというのは難しいのかもしれない。


やがて11時半、ソウメンを茹でる頃には、室温も私の疲労もマックスだ。

こうならないように、早くから巻き寿司を作ったというのに

何もかも水の泡よ。

私は密かにマミちゃんの善意を恨んだ。


今年は初盆の檀家が二組あったので、会食をするのは我々を含めて22人。

あの寺にしては大盛況、一昨年の記録21人を超えたニューレコードだ。

座る場所が足りないため、先にお客様に食べていただくことになり

食事を出したところで本格的に気分が悪くなった。


頭痛、目まい、吐き気に耐えかね

台所の奥にある三畳ほどの小座敷で横になってみるが

寝たって起きたって暑いのは同じ。

しかもこの寺は掃除が行き届いてないので

畳に何か怪しい虫が棲息していそうで落ち着かない。


で、力なく横たわる脱落者を発見したユリちゃんの第一声がこれ。

「台所にクーラーをつける経済力は、うちのお寺にはありません!」

普通は「大丈夫?」だろうが。

身体の方はともかく、お陰で心は冷えたわ。


日頃は優しい兄嫁さんも

「熱中症じゃないのぉ?暑さに弱いのね」

だとよ。

正真正銘の熱中症に決まっとろうが!

お前らみたいに、ノークーラーに慣れてないんだよっ!


しかし彼女らが、安易にいたわりの言葉を口にできないのはわかる。

病人を病人と認めてしまったら、猛暑の中で料理をさせた寺に責任が生じるじゃんか。

万が一、人命にかかわる事態になれば、うちの家族も黙ってはいまい。

業務上の過失を問われる恐れが出てくるため

あくまで倒れた本人の落ち度という方針を貫くしかなかろう。

すげない態度は、お寺にとって危機管理の一端なのだ。


こっちも、心配してもらおうとは露ほども思っていない。

継子道、嫁道の長い私は、同じ状況に慣れている。

私を気遣いながら洗い物を続けるマミちゃんと梶田さんに

申し訳ない気持ちだけだ。


塩飴を舐め舐め、しばらく休んだら回復したので

また前線に復帰。

歯を食いしばって片付けを終え、何とか地獄からの生還をはたした。

やれやれ、手抜き料理どころか、魂が抜けるところだったわい。


『焼肉巻き寿司20本』


巻き寿司の断面



『鯛ソウメンの鯛』



『鮎の甘露煮』



これらは家で撮影した。

お寺では撮影する時間が無かったので、料理の写真は無い。

檀家さんが次々に料理を運んでくれるため、仕上がりを撮影する暇が無いのだ。

先に檀家さんたちと食事をした兄嫁さんに撮影してもらい

後でユリちゃんを介して送信してくれる手はずになっていたが

未だに送られてこない。

前から知ってるけど、お寺にとって

うちらも、料理も、その程度なのよ。


今回、私がお寺料理のために立て替えた買い物は8千円弱。

米や卵は自分ちのを使った。

清算の時、いつもユリちゃんは言う。

「お返しできるお金があるかしら?」

これを聞いて最初の頃は申し訳ない気持ちになり

時には寄付ということにして、もらわなかったりしたものだが

手の内がわかった今は、何が何でももらう。

そしたらユリちゃん、1万円札を出したので

「おっ?太っ腹じゃん」と思ったら、「2千円、お釣りちょうだい」だって。


とまあ、後味の悪さが増していく一方のお寺料理。

とりあえず来年のお盆行事は断るかも。

理由はできたじゃないか。

「また倒れて迷惑をかけたらいけないから。

ほら、私って暑さに弱いじゃん」

ホ〜ホッホ!
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里帰り

2023年08月12日 15時00分07秒 | みりこんぐらし
お盆ですね!

昨日からお盆休みの方も多いのではないでしょうか?

そしてお盆もお仕事の方、お疲れ様です。



さて我が家も昨日から、6日間のお盆休みが始まった。

男どもは休むけど、主婦の私は通常営業。

姑仕えをする身で一番きついのは、年中無休の勤務形態かもね。


町内のアパートで暮らす新婚の次男夫婦は

お盆だからといって、わざわざうちへ泊まりには来ない。

いつも会っているので、来させるほどのこともないのだ。


「盆正月に夫婦でお互いの実家へ泊まる習慣は、無しね」

帰省したければ、それぞれが自分の実家へ分散するように…

もちろん、嫁がこちらへ来たいと希望すれば歓迎する…

アレらの結婚にあたり、私の伝えた要望がこれ。

姑として、唯一の願いと言っていいだろう。

夫婦が盆正月に、お互いの実家へ帰省して泊まり合うのは

日本の悪習慣と思っているからだ。


「いいえ、僕は、私は、配偶者の実家で過ごす休暇を楽しみにしている」

そう言う人もいるだろうが、迎える人や泊まる人の性質によっては

きつい修行になる場合も少なくない。

離れて暮らす家族が合流して楽しいのは自分の実家だけで

配偶者の実家に泊まるのは辛いものよ。

考え方も生活習慣も違うし、メンバーだって仲良くできる人ばかりではない。

その中で我慢するのは、新参者と決まっている。

夫と結婚した頃は私も嫌だったし

盆正月に妻子と泊まりに来る夫の姉カンジワ・ルイーゼの旦那キクオも

見るからに辛そうだった。


ルイーゼは、結婚しても毎日欠かさず実家に帰って来るという

40年前にしては斬新な生活習慣を実行していた。

しかし盆正月になると急に古式ゆかしくなって

“盆泊まり”、“正月泊まり”と称し、家族で長逗留をした。

ルイーゼに放っておかれ、仏頂面でテレビを見る義父アツシと一緒に

狭い居間で過ごすしかないキクオ…

時折、おずおずとアツシに話しかけるが

返事は返ったり返らなかったりで、あと先は気まずい沈黙が続く…

気の小さいキクオには、ちょっとした拷問よ。


数年が経つとキクオにも知恵がつき

「友だちと約束が…」、「用事があって…」

などと理由をつけて、泊まらずに一人で帰るようになった。

そして翌日の夕方、再び訪れて夕食を済ませると

また「友だちと飲みに行く約束が…」と言い出し

妻子を残して帰る繰り返しだった。


けれどもある年、普段は口をきかない義理親に

どうしても伝えなければならない用ができたルイーゼは

珍しく自宅に電話した。

しかし電話に出たのが、友だちと釣りに行ったはずのキクオだったから

さあ大変。

嘘をついて家に帰っていたことが、ここで露見。

ルイーゼは怒り狂い、ひと悶着あった。

それっきり、盆正月にキクオが泊まる習慣は終わった。


このように、最初はうっかり配偶者に従っても

やがては嘘をついて逃げるようになったり

お泊まりが近づくと憂鬱になるなんて、あまりにもザンネンではないか。

だったら最初からやめておこうというのが、私の考えだ。


そういうわけで嫁のアサリ、いや、アリサはお盆を実家で過ごし

次男はその間、うちに預けられることになった。

彼は日中、趣味の鮎釣りに出かけるので、夜間の託児所みたいなもんだ。


しかし前日になって、ハタと気がついた。

結婚後、初めて泊まりがけで里帰りをするアリサを

手ぶらで行かせるわけにはいかんじゃないか。

何か持たせなければ。

子供が結婚するって、こんな贈り物の習慣が始まることなのね。


何がよかろうか…と思案した結果

酒豪のお父さんにはビール、甘党のお母さんはブドウに決定。

ビールは、長男のソフトボール仲間の酒屋から

ブドウは、夫が毎日通ってタムロしている青果店で調達する。

贈答品は、お世話になっている町内の店で買うことにしているのだ。


長男がビールを買いに行くと、酒屋の友だちはいつも言うそうだ。

「近くに激安店があるのに、いつもうちで買ってくれてありがとう」

長男も恐縮しつつ答える。

「こちらこそ酒を飲まないから、普段付き合えなくてごめんね」


これが大事。

確かに量販店で買えば、数百円だか千円だか安く買える。

しかし、この気持ちのやり取りはプライスレス。

折に触れ、息子たちに生き金の使い方を教えるのは

私のライフワークみたいなものだ。


青果店のほうは、夫にとって第二の家みたいなもの。

アリサの里帰りの手土産にすると言ったら、とっとと買いに行ってくれた。

便利じゃ。


この便利は、4月から入社したパート事務員アイジンガー・ゼットに由来する。

夫は彼女の入社以来、私が青果店の夫婦と接触しないように

ものすごく気をつけているのだ。

彼らの店で何かを買う必要にかられた時

私が行かなくてもいいように素早く立ち回るのである。


なぜってアイジンガー・ゼットは一時期

うちの夫や店主の妻、京子さんとバドミントン仲間だった。

どこでどうなったかは知らないが、彼女は京子さんの紹介で

クラブへ入会したことになっているのだ。


高齢者ばかりのクラブに40代の若手が入ったということで

メンバーは皆、喜んでいたらしい。

が、1ヶ月ほど来て、夫の会社へ入社した途端に辞めてしまったので

京子さんは彼女に腹を立てていると、別のバドミントン仲間から聞いた。


夫は、そんな彼女と私が顔を合わせるのを恐れている。

二人の話がアイジンガー・ゼットに及ばない保証は無いからだ。

夫がアイジンガー・ゼットを京子さんの親戚だと私に説明したことや

京子さんの愛するバドミントンを色恋の舞台に使ったことを知ったら

彼女は怒りでぶっ倒れるだろう。

同時に夫の信用は地に落ち、出禁になると思われる。


もちろん私は、そんな話なんかしない。

夫の嘘を暴露するのは、そのまま京子さんを傷つけることになるからだ。

不倫には必ず嘘が付いて回る。

嘘をつかなければ成立しないのが不倫だ。

その嘘をつくためには、必ず無関係の誰かを利用しなければならない。

利用された人が、それを知ったらどんな気持ちか。

不倫が罪深いのは、こういう面なのよ。

亭主の病気は女房一人で受け止めることであり

他者を巻き込んではならないと思っている。


しかし夫にしてみれば、気が気でない。

必死でガードしている様子だ。

そういえば毎年、京子さん夫婦が招待してくれていたビヤガーデンも

今年は無かった。

年に一度、7月の末に商工会議所が主催するもので

彼らは友だち夫婦や我々夫婦を呼んでくれていたのだが、夫は断ったのだ。

慌ただしい店と違い、ゆったりと飲み食いしながらおしゃべりに興じる数時間…

彼にとって、これほど危険な集まりは無かろう。


ビアガーデンは暑いのでどうでもいいが

思い起こせば昔から、夫はこうして無言のうちに

私の行動範囲を狭めてきた。

嘘がバレないようにするには、私を人に会わせない手段しか無いのだ。


しかし生活に支障は無いため、夫を恨む気は無い。

元気に稼いで口うるさくなく、しかも便利とくれば

それが私にとって最高の夫である。


というわけで昨日、アリサは車にビールとブドウを積み込み

「行って来ます!」と手を振って、島の実家へ帰って行った。

一人で帰らせるのはかわいそうな気がしたが

長い目で見たら、うちの場合はこの方がいいと思い直す私だった。
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近時事・高校野球とフランス視察

2023年08月09日 09時50分07秒 | みりこんばばの時事
夏の高校野球が始まって、嬉しいワタクシ。

プロ野球には興味が無いのに、高校野球は大好きなのよ。

可愛らしい高校球児たちの一生懸命な姿に感動するのもだけど

子供のやることだから、何が起こるかわからないでしょ。

そのハラハラドキドキがまた、いいんだわ。

おまけに応援のブラスバンドを鑑賞できるとくりゃ、こたえられんわよ。


テレビにかぶりついて見守るような暇は無いけど

期間中は番組選びに困らない。

それが嬉しい。

最近のテレビは番宣で俳優が小出しに現れるか

あとは芸人任せでロクな番組が無いもの。


野球に詳しいわけじゃないけど

その高校野球がこの数年で変わった所といえば

点がよく入るようになったことかしら。

相手チームを塁に出さない投手戦じゃなくて

ホームランやヒットの打ち合いになったみたい。

押しも押されぬエースピッチャーを一人か二人、大事に育てるより

よく打つ子をたくさん育てた方が勝てるもんね。


あと、笑顔でプレーするチームが増えたわね。

口角を上げるとリラックスできて

プレーやチームワークに良い結果が生まれるという教育が

広がってきたみたい。

野球部出身の夫は「信じられん…」とつぶやいてるけど。

ほら、あの人たちは「歯を見せるな」と言われてて

練習中や試合中に笑おうものなら、ぶん殴られてた旧石器時代だから。

他にも「途中で水を飲むな」、「水泳禁止」などの厳しい制約があって

律儀に守ってたそうよ。

まるで“おしん”だわ。


それから変わったのは、スパイク…靴ね。

スパイクといえば黒がお決まりだったけど

近年は白いスパイクを履くチームの方が多くなったわ。

あれは、暑さ対策ですってね。

黒だと熱を吸収するでしょ。

だから白。

スニーカーみたいに見えて可愛らしいわ。


ユニフォームも変わった。

チームによるけど、脇の下が開いてるのが増えた。

何年前だったか、脇の下が開いてるユニフォームを着て

バッターボックスに立つ子を初めて見た時

「かわいそうに…破れて…」

と同情したものよ。

息子から「暑さ対策」と聞いて、なるほどと思った。

着物もそうだけど、脇の下が開いてると涼しいのよね。


ブラスバンドも変わったね。

以前はトランペットの自己主張が強くて、上手い下手は関係なく

「俺様の演奏を聞け!」とばかりに

割れた音で力任せに吹きまくる学校が多かった。

だけど今は応援団全体のパフォーマンスを重視するようになって

曲も新しいものに変わってきて、楽しい応援合戦を繰り広げてるわ。


いまだに“サウスポー”や“さくらんぼ”

トランペット1本に頼る“必殺仕事人”なんかの古い曲を

延々とリピート演奏してる所は、わりと早めに負けるわね。

資金の差かしらね。


だって、楽譜って高いのよ。

新しい楽譜を買って、練習して、甲子園でお披露目となると

お金とブラスバンド部員の実力が必要になる。

学校によってはブラスバンド部員の人数が足りなくて

OBに来てもらうこともあるから

慣れた古い曲をやって「伝統」ということにする方が無難。

そういう資金不足は、良い選手の獲得や練習環境の整備にも

多少は影響するんじゃないかしら?

などと思いながら見るのも一興よ。


野球に詳しい人に怒られるかもしれないけど

オバさんはこんなことを考えながら見てるんです。

どのチームも頑張れ!



ところで自民党女性議員のフランス視察旅行、炎上してるわね。

議員にもSNSやってる人が多いから

楽しげな所を載せたくなっちゃうんでしょうね。


今井絵理子議員なんて、炎上しているフランス仲間を擁護するために

「公費だけでなく自費も出したし、ちゃんと視察もした」

なんて言い訳して、ますます炎上したようだけど。

自分が介入したら、「あ、そうだったんですか」

と納得してもらえるって本気で思ってたのかしら。

傲慢の上塗りね。

いつぞやの不倫騒ぎもそうだけど、他人事ながら恥ずかしいわ。


ともあれこのご時世に、嬉しげにフランスなんか行くからよ。

風光明媚で買い物天国、美食天国の先進国へ行ったら

反感を買うのは当たり前だわ。

行き先がフランスだから、人数がたくさん集まったんじゃないの?

自腹が30万、あとは税金で出してくれるとなれば

私だって行きたくなるもんね。


そうだ、アフリカ行きなさいよ。

日本の資金援助がどのように役立っているか

見ていらっしゃいよ。

フランスで1日だけ少子化対策を視察するより

よっぽど大事な公務じゃないかしら。

サバンナで野獣とたわむれたり

現地のお食事をSNSにアップしたら喜ばれるわよ。

フォロワーはあまりの楽しさに、今回の炎上も忘れると思うわ。

アフリカ視察の人数が集まるかどうか、わからないけど。


あ〜あ、今日も勝手なこと言っちゃった〜。

ごめんなさいね〜!
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手抜き料理・男メシ女メシ

2023年08月07日 09時12分28秒 | 手抜き料理
夏になると、野菜の頂き物が増える。

特にキュウリ、トマト、ナス…そして私の敵、ズッキーニ。

一度にたくさん実が成るので、家庭菜園を楽しむ人々から

お裾分けが押し寄せるのだ。


そんな野菜たちがダブついてきたため

ガッツリした男メシが主流の我が家でも

チマチマした女メシを作らざるを得なくなった。

我が家で言う男メシとは、男にわかりやすくて取り組みやすく

腹にドカンとおさまる“おかず”のこと…

女メシとは、味が微妙でおかずにならならいが

彩りだけは良い“ままごと”的な料理のことである。


『女メシ・貰い物サラダ』


①貰い物のミニトマトどんぶり1杯を半分にカットし

砂糖小さじ1杯、塩少々をまぶして下味をつけておく

②貰い物のタマネギ1個、貰い物のミョウガ数本

貰い物の大葉数枚をみじん切りにしてトマトに混ぜる

③オリーブオイル、酢、砂糖、醤油、塩コショウを

テキトーにかけて全体を混ぜる


夏野菜がたくさん食べられる、目にも美しいサラダである。

酸っぱいのがお好きなら、トマトの下味は不要。

味付けがかったるければ、オリーブオイルと調味済みのカンタン酢だけ

あるいは市販のドレッシングを使ってもいい。



『女メシ・貰い物スパゲティ』


①貰い物のニンニク、貰い物のトマト、貰い物のタマネギ

貰い物のズッキーニ、貰い物のピーマンをそれぞれみじん切りにし

オリーブオイルで炒める

②粉末のスープの素かコンソメ、あとは塩コショウで味付け

③そこへ茹でたスパゲティを入れ

野菜から出た水分に絡めるように軽く炒めたら出来上がり


男どもの怪しむズッキーニがたんまり入っているが、秘密だ。

炒める時、ピーマンの一部を色が変わらないうちに取り出しておき

仕上げに粉チーズと共に飾ると美しい。



『男メシ・焼きおむすび』


①塩むすびに味付けのりを巻く

②フライパンにバター大さじ1杯程度を入れ

溶けきらないうちに、おむすびを入れる

③弱火でおむすびの全面、あるいは面積の大きい二面をじっくり焼く

④醤油をおむすびにかからないよう(かかったら崩れやすい)

フライパンの端に回しかけ、おむすびの一面だけに醤油が少し付いたら出来上がり


以前、ここでご紹介したことがあるけど

写真は載せなかったので再度ご紹介したい。

写真では醤油が付いた面を表にしてあり、裏は白い。

箸でつついたり、ひっくり返す回数を最小限にとどめるのが綺麗に焼くコツ。

食欲が無い時でも食べられる一品なので、夏の昼ごはんにいかが?



料理とは関係ないけど、最近の驚きはこのコットン。


私にとってコットンは、化粧前に拭き取り化粧水を使う時や

化粧水を付ける時に欠かせないアイテム。

化粧用のコットンは、いつも同級生のマミちゃんの店で

資生堂のを買っていた。


しかしこのほど、コットンの在庫が切れる。

先月の末、彼女の店に行ってあれこれ買い物をしたというのに

買うのを忘れた。

次に彼女と会うのはお盆のお寺料理なので、完全に間に合わない。


「コットンが無いわ〜」

そうつぶやいたのを聞いていたらしく

夜、ドラッグストアへアイスクリームを買いに行った夫が

ついでにコットンも買って来てくれた。

それがこれ。

化粧水をあんまり吸い込まない新種らしい。


化粧水を付ける時、手よりコットンを使った方が

肌の調子は断然いい。

コットンに化粧水をたっぷり含ませ、顔が冷たくなるまでパタパタしたら

年寄りの肌でも明るくなり、化粧乗りが良いのだ。


が、コットン使いの難点は、化粧水が早く無くなること。

最初の2プッシュは、完全にコットン様への貢ぎ物。

しっかり吸っていただいて、ご満足なされたら

3プッシュ目からようやく人間に回してもらえる。


が、それも束の間、コットン様はすぐに喉がお乾きになり

パサパサになって追加を要求なされるので

何度も容器をプッシュし、化粧水を補充してはパタパタ。

つまり化粧水を1本買っても、半分はコットン様の獲物になるので

何だかボッタクリ商法に引っかかっているような気分になるのである。


不況や値上げの影響か、この製品はそこに目をつけたらしい。

コットンが謙虚で遠慮深いため、化粧水の吸収量が少ない。

コットン様のご機嫌をうかがうことなく

そのまんま肌に供給できる明朗会計だ。

化粧水の使用量は確実に減った。

みずみずしい使用感もさることながら、気持ち的にも感じが良い。


夫が、それを知っているわけがない。

たまたま手に取った物を買ったのは明白。

もしも私が自らコットンを買いに行っていれば

年寄りにありがちな保守的心理によって

「化粧水、半分いただきます」の従来タイプを買っていただろう。

夫の大手柄だ。
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タイミング

2023年08月01日 08時40分37秒 | みりこんぐらし
『夏の俺』


先月下旬、うちの愛犬13才のパピは災難に見舞われた。

大量のマダニに寄生されたのだ。

マダニとは草むらに潜んで動物の血を吸う、とっても悪い虫。

悪くすると寄生した動物だけでなく、人間の生命も危うくなってしまう。


もちろん、そうならないように

動物病院で処方された薬を月に一回与えて予防している。

しかし今回は、タイミングが悪かった。

先月から薬が変わったのだ。


今まではずっと、首の付け根にポトっと垂らす目薬みたいな格好の薬で

安全に過ごしていた。

しかし高齢になった彼の負担を考えてなのか、飲み薬になった。

飲ませて3週間ほど経った頃、彼の全身に大量のマダニが取り憑く羽目に。


身体が弱ると、こういう害虫に襲われやすくなると

愛犬家の知人から聞いたことがある。

その知人はご主人が入院した時、愛犬に大量のノミが発生したという。


「世話はいつもと変わらずやってたけど

忙しくて気持ちが主人の方にばっかり向いてしまってたと思う」

彼女はそう自省したものだ。

毎月の健康診断を欠かさず、食事に気を使い

その辺の誰よりも可愛がっていたというのに

それでもノミにやられると聞いて、私は震え上がった。


彼女の犬は、ペットサロンへ毎日通ってシャンプーを続け

じきに元通りになったが、それからすぐ亡くなってしまった。

弱っていたからノミにやられたのか、ノミにやられたから弱ったのか

その辺は定かでないが、そういうこともあるらしい。


ともあれ自分の身に何が起こったのかわからず

キョトンとしているパピを長男が風呂に入れ、動物病院に連行。

獣医師の話だと、この飲み薬は身体への負担は少ない分

20日を過ぎると効力が弱まるということだった。

飲ませてから3週間、ちょうど梅雨が明けて急に暑くなったので

こんなことになったらしい。

大丈夫と言われたので、家族一同ホッとした次第である。

以来、パピは長男から新しいニックネームを授けられた。

『ダニエル』。



話は変わって、同級生のマミちゃんは大学の夏休みに

数人の同級生と地元の観光施設でアルバイトをしていた。

先日、そのアルバイト仲間の一人で、今は茨城在住のS君が

「墓参りに帰省するから、皆で会おう」

と言い出したが、急なことで他の子は都合がつかなかったため

女子はマミちゃん一人、男子はそのS君だけになった。

二人ではナンだということで、S君は同級生で仲の良かった光彦を呼び

気の進まないマミちゃんと三人で居酒屋へ行ったという。


光彦のことは以前、記事にしたことがある。

小学校1年の時、私の社会の教科書を隠した根性腐れだ。


誰かがこっそり自分の持ち物を奪うなんて、6才の私は考えもしなかった。

何日も母と必死になって探し歩いたが見つからず

大事な教科書を無くすダメ子として

私は家でも学校でも肩身の狭い思いをしたものだ。


やがて捜索を諦めた母は、東京の出版社に連絡して教科書を取り寄せた。

それを学校へ持って行った日、無くなったはずの教科書が男子トイレから出てきた。

光彦が、おしっこまみれのそれを火バサミでつまみ上げて

教室へ持ち込んだのだ。


彼が盗難の犯人であり、第一発言者を装ったことは小さい私にもわかった。

その日の帰りの会で、新しい教科書でなく

おしっこで変色している前の物を使うよう仕向けたのも彼。

4年生で母が入院した時も、6年生で他界した時も

彼は私に近寄り、ささやいたものである。

「これで勉強どころじゃなくなったな」

男雛のように白く美しい顔で残酷をやってのける…

それが光彦だった。


成績優秀な彼は高校から進学校へ進み、有名大学を経てNTTに入社。

出世して、そこそこの地位まで行ったらしい。

同級生の中にいた、もう一人の悪魔…

女子に残酷な悪事をはたらくのがライフワークで

中3になる直前に転校して行ったUも

海上自衛隊で偉い人になったところを見ると

ああいった道徳心の無い人物の方が、出世するのかもしれない。

自分が頑張るだけでなく、ライバルを平気で引きずり落とせれば

昇進の効率が良いではないか。

いくら収入が良かろうと、地位名誉があろうと

あんな悪魔になるくらいなら、名も無く貧しく生きる方がずっと幸せである。



話は戻り、居酒屋でS君と光彦に会ったマミちゃんは

その席で光彦の告白を聞かされた。

数ヶ月前、離婚を言い出した奥さんに家を追い出され

賃貸のアパートで一人暮らしをしているというのだ。

今は退職金で買ったマンションを売却し、財産分与の話し合いをしているそう。


「先日、妻の父が亡くなりました。

同窓会から香典は出ないのでしょうか?

僕にも娘婿という立場があるので、善処していただければ幸いです」

彼がこのようなメールを同窓会に送りつけ

図々しく香典をねだったのは10年近く年前だったか。


同窓会からの香典は親と子供、つまり一親等までで

義理親や兄弟には出ないと決めてある。

このような前例は無かったため

男子たちの心は彼の願いを叶える方向へ向きかけていたが

会計係として通帳を握っていた私は、即座に却下したものだ。

規約を曲げてまで香典をせしめようとする光彦に安定の汚さを感じながら

一方でメールの文面から、妻の実家に媚びようと必死な様子も見受けられ

何やら解せないものを感じた、当時の私だった。


さらにその数年後、同窓会で還暦旅行で城崎温泉へ行った際…

そうよ、真冬にカニのメッカへ行きながら

宿の夕食にカニが無かった、あの間抜け旅行よ…

これに参加した彼は、どこへ行っても妻への土産を求めて走り回っていた。

事前にリサーチし過ぎると、それが見つかるまで探し回ってしまう…

土産あるあるだ。

狭い土産物屋の通路で我々女子とすれ違う時

彼は「どけ!」と小さくつぶやいて、我々を乱暴にかき分けた。

見下している者にだけ見せる横柄は、子供時代から変わっていなかった。


最後に立ち寄った出石(いずし)では

洗顔する時に使うと肌がツルツルになるという

繭(まゆ)でできた玉まで買い込んで、バスの出発時間ギリギリになった。

「繭のシルクは肌にいいと聞いたから、妻に買って帰ろうと思って…」

そう言い訳しながらバスに乗り込んだ彼を見て

他の女子たちは「奥さん思いなのね」と感心していたが

私はピンときた。

「こいつ、浮気したんじゃわ〜」


その根拠は香典のおねだりや土産の調達もだが

ヤツは昔から、筋金入りの伊達こきだ。

久しぶりに会った旅行でも、派手なベストに粋なジャケットを着込み

渋いチェックのパンツ。

足元は、真新しいアイボリーのスウェード…高そうな靴だ。

白っぽいスウェードの靴はカッコいいけど、すぐ汚れてしまうので

かなりのおしゃれさんでなければ買えない。

整った顔立ちにスラリとしたプロポーション、芸能人みたいなファッションは

ビール腹を突き出して地味なダウンを羽織る他の同級生男子の中で

目立ちまくっていた。


ファッション関係以外の職業に就きながら、この伊達こきぶりとなると

非常にこまめなのは一目瞭然。

見た目が良くてこまめな男が妻に気を使うとなれば

浮気しかないではないか。

香典の前から、ヤツの結婚生活は黄信号だったのかもしれない。


子供が巣立ち、退職金を手にしたタイミングで

妻から離婚を切り出されたのは彼だけではない。

もう一人の悪魔、Uもだ。


性格の悪い男は、最後にこうなるのか。

それとも退職金が太いから、妻は積年の恨みを晴らすべく

思い切った行動に出られるのか。

退職金の無い我が家では確認のしようも無いが

マミちゃんからの報告をきいて、多少胸がすいたのは確かである。
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