「M美…おなかすいた…」
テーブルの上にあったパンを見ながら
少女がつぶやきました。
「Kの介も…」
午前1時…。
夜更かしすると、お腹が減るものです。
私も食べたくなりました。
パンで釣っている間に急いでうどんを作り、三人で食べました。
昔、子供たちが使っていた
熱くならないドンブリなど出して来て、久かたぶりの子育て気分です。
「いつも二人で留守番してるの?」
「うん!」
「すごいね」
「M美、おねえちゃんだから、がんばらないといけないの」
「Kの介もがんばるー」
「えらいねぇ」
「がんばったらシアワセがくるって、ママが言ってた」
「ふ~ん」
「それでね、大きくなったらね
M美はシャチョウレイジョウになれるんだって」
「ほぅ…そりゃすごいね」
「パパのお父さんが死んだら~、パパがシャチョウサンになって~
そしたらM美はシャチョウレイジョウなんだって」
「へぇ~」
「それでね、Kの介は大きくなったら
シャチョウサンになれるんだって」
「…じゃあ、ママは?ママは大きくなったら何になるのかな?」
「シャチョウフジン~!」
「ほぉ~」
「だから、おるすばんをがんばるの」
「がんばってね」
C子みたいなのがいるから、世の中は面白いのかもしれません。
なかなか楽しい計画ですが、平成以降の零細企業は悲惨です。
それに…長男の入社が決まっていました。
サラリーマンになったほうがまだ安全だと思っていましたが
生涯いち従業員でいいとまで言うので
翌年から、ひとまずよその会社へ修行に出すのを決めたところでした。
悪いが…多分君たちの計画は白紙だよ…
幼い子供の口から出た話…半分に聞いても
それを日々彼らにインプットしているC子の気持ちは容易に想像できます。
寄生という手段で幸せをつかもうとするC子。
我が子のために、どうしても引きたくない私。
綱引きするほどの値打ちもない、つぶれかけた会社と
資金繰りの厳しさや家族の確執を受け止めきれないまま、恋に走る夫。
風呂に入り、寝てしまった二人の顔を見ながら
複雑な思いにかられる私でした。
こういう気分の時は
目の前の今できることをひたすらやるのが良策です。
寝ること、そしてこの子たちを無事C子の元に返してやることでした。
翌日の昼過ぎ、夫は子供たちを連れに来ました。
窓から見えない離れた場所に車を置いたところをみると
C子も退院して一緒に来たのかもしれません。
「おばちゃん、さよなら~」
パパの後について、二人は帰って行きました。
手がかからず、かわいらしい子供たちでした。
淋しい子供というのは、どこでももの怖じせず
スッと入り込めるようです。
M美の話によると、C子はM美たちの父親の転勤で
…小学校に入る前と言うから…
3年ほど前に四国からこの県に来たようです。
ほどなく離婚して父親は自分の郷里に帰りました。
「それから今のパパじゃないパパと遊園地に行った」
と、ややこしいことを言います。
夫の前に彼氏がいたため
その住まいから離れなかったのかもしれません。
「ママが、今のパパのほうがショウライがいいんだって。
遊園地行けないけど」
将来ねぇ…
確かに夫はそういう場所が苦手でした。
C子の実家も四国ですが
母親も独り身で働いている上に
一緒に住んでいる男性がいるらしく
あまり行き来は無いようでした。
あの子たちが幸せになれますように。
あ、それには私が邪魔なのか…
へへへ
テーブルの上にあったパンを見ながら
少女がつぶやきました。
「Kの介も…」
午前1時…。
夜更かしすると、お腹が減るものです。
私も食べたくなりました。
パンで釣っている間に急いでうどんを作り、三人で食べました。
昔、子供たちが使っていた
熱くならないドンブリなど出して来て、久かたぶりの子育て気分です。
「いつも二人で留守番してるの?」
「うん!」
「すごいね」
「M美、おねえちゃんだから、がんばらないといけないの」
「Kの介もがんばるー」
「えらいねぇ」
「がんばったらシアワセがくるって、ママが言ってた」
「ふ~ん」
「それでね、大きくなったらね
M美はシャチョウレイジョウになれるんだって」
「ほぅ…そりゃすごいね」
「パパのお父さんが死んだら~、パパがシャチョウサンになって~
そしたらM美はシャチョウレイジョウなんだって」
「へぇ~」
「それでね、Kの介は大きくなったら
シャチョウサンになれるんだって」
「…じゃあ、ママは?ママは大きくなったら何になるのかな?」
「シャチョウフジン~!」
「ほぉ~」
「だから、おるすばんをがんばるの」
「がんばってね」
C子みたいなのがいるから、世の中は面白いのかもしれません。
なかなか楽しい計画ですが、平成以降の零細企業は悲惨です。
それに…長男の入社が決まっていました。
サラリーマンになったほうがまだ安全だと思っていましたが
生涯いち従業員でいいとまで言うので
翌年から、ひとまずよその会社へ修行に出すのを決めたところでした。
悪いが…多分君たちの計画は白紙だよ…
幼い子供の口から出た話…半分に聞いても
それを日々彼らにインプットしているC子の気持ちは容易に想像できます。
寄生という手段で幸せをつかもうとするC子。
我が子のために、どうしても引きたくない私。
綱引きするほどの値打ちもない、つぶれかけた会社と
資金繰りの厳しさや家族の確執を受け止めきれないまま、恋に走る夫。
風呂に入り、寝てしまった二人の顔を見ながら
複雑な思いにかられる私でした。
こういう気分の時は
目の前の今できることをひたすらやるのが良策です。
寝ること、そしてこの子たちを無事C子の元に返してやることでした。
翌日の昼過ぎ、夫は子供たちを連れに来ました。
窓から見えない離れた場所に車を置いたところをみると
C子も退院して一緒に来たのかもしれません。
「おばちゃん、さよなら~」
パパの後について、二人は帰って行きました。
手がかからず、かわいらしい子供たちでした。
淋しい子供というのは、どこでももの怖じせず
スッと入り込めるようです。
M美の話によると、C子はM美たちの父親の転勤で
…小学校に入る前と言うから…
3年ほど前に四国からこの県に来たようです。
ほどなく離婚して父親は自分の郷里に帰りました。
「それから今のパパじゃないパパと遊園地に行った」
と、ややこしいことを言います。
夫の前に彼氏がいたため
その住まいから離れなかったのかもしれません。
「ママが、今のパパのほうがショウライがいいんだって。
遊園地行けないけど」
将来ねぇ…
確かに夫はそういう場所が苦手でした。
C子の実家も四国ですが
母親も独り身で働いている上に
一緒に住んでいる男性がいるらしく
あまり行き来は無いようでした。
あの子たちが幸せになれますように。
あ、それには私が邪魔なのか…
へへへ