殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

老人対策・2

2022年10月31日 10時39分58秒 | みりこんぐらし
ナミさんからデイサービスの道を消去すると、諦めがついたのか

幾分落ち着いたようだった。

それでも彼女の心配は尽きない。

ガスの火を消し忘れる…

いつも探し物をしている…

さっきやっていたことを忘れて別のことをする…

機嫌がコロコロ変わる…

などと母親の症状を訴える。


「そんなこと、うちの義母は毎日よ」

「え?本当ですか?」

「それが普通の老人よ」

「そうなんですか?」

「トイレの失敗とかは無いんでしょ?」

「それはありません…そんなことになったら私、耐えられないです」

「あら、うちはしょっちゅうよ」

「ええっ?」

「手術で腸が15センチ短くなってて

脳からの命令と腸のやる気が一致せんけん、仕方がないんよ。

あんたのママなんて優秀じゃん」

「もしかして、うちの母より姐さんのお姑さんの方が重症…なんでしょうか…」

「まだ自分で後始末ができるけん、助かるけどね。

ママは風呂とトイレが自分でできるんなら、たいしたもんよ。

褒めてあげんさい」

「褒める…」

「怒るばっかりで、褒めたこと、あんまり無いじゃろ」

「無いです…」

「ガミガミ言ようたら、認知症はますますひどくなるんよ」

「そうなんですか…」


ナミさんの不安は、わかるつもり。

良くも悪くも家族を牽引する男手が無い心細さに加え

彼女の生活は母親の年金に頼っている部分がある。

普段はアルバイト、たまにウグイスをするだけでは

アパートの家賃を捻出して自活するのは厳しいだろう。

そんな彼女にとって、母親の衰えは最大の危機だ。

大切な母親が変わって行くことも恐ろしいが、施設入所や入院となれば現金が必要になってくる。

しかも、いずれ亡くなったら年金はパー。

物心両面において、簡単に受け入れられないのは当然である。


広島のアパートを引き払い、母親の世話をしながら

こっちで働く方がいいのではないかとも思うが、彼女にその選択肢は無い。

田舎に引っ込んでウグイスの師匠と離れたら、仕事が回って来なくなるからだ。

そのため、どうしても広島市内に住む必要があるという。

そんなに好きなのね、ウグイス。

だったらもっとしゃべってもらいたいぞ。


ともあれフワフワした子だから、一度にあれこれ言っても長時間は持たない。

電話やメールで数日に渡り、彼女の疑問に答える形で接触を続けた。

その話によると、デイサービスの次に問題なのは食事のことらしい。

「食べるのだけが楽しみみたいで、ものすごい食欲なんです。

母の食欲を満たすのが、すごく大変で…」


認知症の症状が、異常な食欲として現れるタイプがあるのは知っている。

義母ヨシコの祖母も、それだったと聞いた。

近所や親戚を回っては「ヨシコがごはんをくれん…」と訴え

行く先々で食事をご馳走になるが、何軒もハシゴをするので容量オーバーは必至だ。

あげくは、お腹を壊して大惨事。

祖母の訴えを真に受けた親戚から、ヨシコは「親不孝者!」とののしられ

殴られたこともあると言っていた。

あの人も苦労してんのよ。


で、その話をしたら、「そこまでひどくはないです」とキッパリ。

それからおもむろに、衝撃の告白めいておっしゃる。

「実は…私も妹も料理が得意じゃなくて…」

そんなこと、前からわかってますよ。

選挙事務所で弁当を食べた後、さらに自分と家族の分を持ち帰りたがるあたり

料理嫌いが如実に表れている。

帰っても何も無いからで、家族の方も土産をあてにしているからだ。

割り当て以上の食べ物を欲しがる人は、たいてい料理が得意じゃない。


「何か作っても、母はすぐ食べてしまって…

買った物ばかりじゃ家計に響くし、いつも料理に追われてる感じなんです」

どうやら彼女の悩みの根源は、ここにあるようだ。

母親の認知症を嘆くというより

やりたくない料理に取り組む羽目になったことを嘆いている。


困ったぞ…私の得意分野に接近しつつあるじゃないか。

聞かれたことは無いし言ったことも無いので、彼女は私が病院の調理師だったとは知らない。

彼女が注目するのは、今まで誰の選挙を手伝ったか…それのみだ。

料理が仕事だったなんて知られたら、甘えて寄りかかるのは目に見えている。

セーブ、セーブ。


「認知症って、便秘してる時に不思議ちゃんになることが多いんよ。

脳と大腸は連動しとるけん、人間は便秘したら不安になるようにできとるけんね。

好きじゃない料理でも作らんといけんのなら、食物繊維の多い食材を使うたらええよ」

「そういえば母がおかしくなるのは、便秘の時が多いです」

「不安がそうさせるんよ。

認知症の人が徘徊したり暴力的になるのも、便秘の時が多いんよ」

「そうなんですか…知りませんでした」

「便秘させんように気をつけることで、ある程度はコントロールできるけん」

「なるほど…」

ホッ…話題は料理から遠のきつつある。


が、そこへ鋭い質問。

「食物繊維の多い食材って、どんなのですか?」

「小松菜とか、コーンとか、ニンジンとか、ワカメとか、サツマイモとかよ」

「そんな普通の、安い物でいいんですか?」

「モロヘイヤだのキクイモだの、変わったモンを言うたって

あんたは買わんし作らんし、ママも食べんじゃろ?

ママは歯が悪いけん、固い物もいけんし、とりあえず親しみのある物で様子を見るんよ」


「わかりました!それなら私にもできそうです!」

喜ぶナミさんに、私もバカだから興に乗り

簡単に野菜が摂れるナムルのレシピを教えたり、具沢山の味噌汁や豚汁を提案。

「かったるいと思ったら、ドラッグストアで食物繊維の顆粒を買って

味噌汁やスープに仕込んだらええよ」

などと話す。

こんなことで母娘3人が楽になるなら、お安い御用じゃないか。


「姐さん、すごいです!

何でもよく知っておられるから頼りになるし、ありがたいです!

これからも色々聞いていいですか?」

危ない…いつものおだて作戦だ…と思った時には遅かった。

「姐さん、どんな物を食べさせたらいいのか

一回、見本を作ってくださったら嬉しいんですけど。

母のためにも、お願いしますぅ」


来た…

過去2回の選挙では、この手で過剰労働に陥った。

わたしゃ、おだてに弱いタイプじゃないけど

この子はタイミングを計るのが天才的にうまくて、いつも気がついたら働かされている。

候補もそれには気づいていて、ギャラには密かに差をつけているが

選挙だけかと思ったら日常生活でもそうなのね。


しかし、その手には乗るか。

隣のおばさんが引っ越し、そのまた隣の夫婦もいなくなった今

おかずの差し入れをする対象が減って手持ち無沙汰なので

ナミママに一度や二度の差し入れをするのは、まんざらやぶさかではない。

しかしこの子らの家は遠く、ナミさんはペーパードライバーだから

こっちが届けることになる。

そこまでしてやる義理は無い。

こっちは一生懸命でも、あっちは「一食もうかった」としか思わず

欲を出して次を期待する。

利用されて砂を噛むのは、お寺料理で学んだのじゃ。


「じゃあ選挙が始まってLINEが繋がったら、見本の写真を送るね」

だから、そう言った。

「え〜…写真だけですかぁ?」

最近、スマホに変えたナミさんとは、まだLINEの交換をしてないのだ。

よくやった…私。

《完》
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老人対策・1

2022年10月29日 08時40分28秒 | みりこんぐらし
三つ年下の知人、ナミさんから久しぶりに連絡があった。

85才のお母さんが認知症になり、色々大変だという。


彼女はバツイチの独身で、子供はいない。

平日は広島市内に借りているアパートから仕事に通い

週末はこちらの実家に帰る生活。

あと先は実家で母親と暮らす独身の妹が、仕事をしながら面倒を見ている。

母親の衰えを目の当たりにするたび、情けないやら悲しいやらで

姉妹共々、疲弊する日々だそう。



「お忙しいのに、愚痴を聞いてもらってすみません」

ナミさんが何度も言うので

「わたしゃ暇なんだから、気を遣わないで」

なんて言ったのが運の尽き。

「お暇でしたら、時々、母に電話をしてやってもらえませんか?」

と言われる。

そうだった…

久しぶりなので忘れていたが、この子は丁重な話し方で人を持ち上げつつ

相手の言葉尻をとらえて図々しく甘える子だったわい…。


名前でわかった方も、いらっしゃるかもしれない。

私のウグイスの相棒、あのナミ様である。

選挙が近づいてきたので、また私ばっかり働かせて楽をしようと

ご機嫌うかがいの電話をしてきたのだ。



「友だちや知り合いの顔と名前はおろか、約束したことも忘れてしまって

トラブルになることが多いんですけど

みりこんさんのことはちゃんと覚えているんです。

声を聞いたら元気が出ると思うので、ぜひお願いします」

なんて言いなさるけど、どうだかね。

頭の怪しげな老女の相手は家と近所で十分だが、知らない人じゃないので了解した。


翌日の夜、さっそくナミママに電話をかけてみる。

この手のおかたに電話をする際は、時間を長めに確保。

老人だけでなく、一人暮らしをする人が相手の時もそうだが

普段、人と話すことが少ないため、会話に飢えている。

しゃべり出したら止まらなくなって、どうしても長話になってしまうからだ。

それをこっちから切り上げようものなら、急激に淋しくなって

嫌われたのではないか…迷惑だったのではないか…

などの不安にさいなまれるだろうから、相手の気が済むまでしゃべらせるしかない。


家事が終わって寝るまでの1時間を電話タイムに充て、ナミママの携帯に電話をしてみる。

しばらく会ってなかったが、以前と変わらぬ明るい声だ。

認知症の程度は中の上、つまり重度の一歩手前と聞いていたので

どうなることやらと案じていたが、そんな気配は全く感じられない。

選挙にまつわる込み入った話も遜色無く、我々は大いに盛り上がるのだった。


うちの義母や近所のおばちゃんなんて、自分がしゃべりたいばっかりで

誰かが話している最中に自分の話をかぶせるので、二カ国同時中継みたいになるが

この人はちゃんと聞いて、ちゃんと話す理性がある。

私の周りの老人たちは、認知症のテストを受けてないから認知症じゃないというだけで

テストをさせたら全員、中度認定は確実ではなかろうか。


20分後、向こうの携帯の充電が切れて会話は終了。

「お母さん、すごいじゃん!楽しく話させてもらったよ。

しっかりしてるから、まだまだ大丈夫」

と、さっそくナミさんに連絡。


「ありがとうございます。

あんまりしっかりしてるから、そばで聞いていた妹もびっくりしたそうです。

だけど、話した内容は全然覚えてないみたいで

こうして電話してもらっても忘れてしまうから申し訳なくて…」

残念そうな彼女。

「覚えてもらおうなんて思っとりゃせんよ。

どんどん忘れたらええが」

「姐さんはそう言ってくれますけど、ダメな時は本当にダメで

私や妹の前では妄想みたいなこと言ったり、おかしなことをやるんです」


これは認知症の親を持つ人がよく言うことなので、気にしない。

他人の前では普通を装うことができても

家族にダメとかおかしいとか否定的なことを言われると不可思議な言動に走る…

それが認知症の老人だ。

ナミさんの話を聞いていると、元通りの母親に戻って欲しいという願望が強い。

血のかかった親子であれば、当然のことだろう。

しかし、それは無いものねだりだ。

姉妹は自分たちの願望から外れるたびに母親を責め

当惑した母親はますますネジが飛ぶという

“認知症の家族あるある”を繰り返しているように感じた。


これは、介護士でもない他人の私にどうにかできることではない。

が、母親をどうにかするより、娘たちの意識を変える方が

お互い楽に生活できそうなのは私にもわかる。

姉妹の気持ちをほぐすことなら、自分にもできるかもしれないので

ナミさんとは頻繁に連絡を取り合うことにした。


な〜に、永遠ではない。

この子の性格は知り尽くしている。

選挙が終われば、私の存在など忘れる予定だ。

それまでは、できるだけのことをしようと思った。


とりあえずナミさんの目下最大の悩みは、母親がデイサービスに行かないことだと言う。

「週に何回かデイサービスに来てもらえれば、娘さんたちも楽になるのに」

介護士にそう言われたナミ姉妹は、デイサービスに行きさえすれば

何もかも解決すると思い込み、行きたがらない母親を責めているのだった。


嫌がるのを無理に行かせても、続かないと思う。

嫌がっていたのに、一回行ったら喜んで通うようになった人もいるにはいるが

レアケースだ。

「不登校って、地獄よ」

私は、自分の子供が学校へ行きたがらなかった時期のことを話す。

迎えが来ても支度をしない、家族は焦って怒る、本人は泣く…

そりゃもう、身を切られるようにつらいものだ…

自分で自分のことができるうちは、無理強いしない方がいい…

行き始めたけど、物足りなくて辞めた人もけっこういる…

などと言って聞かせた。


それに大きな声では言えないが、デイサービスは儲かるらしい。

私の勤めていた病院がデイケアを始めた時、そう聞いた。

補助金の関係で、入院よりも利幅が大きいそうだ。

「デイケアに来られる方々は、患者でなくお客様です。

お客様をもてなすのと同様、失礼の無いように心して料理を提供してください」

開始にあたって上からのお達しがあり、献立の方も入院患者より品数が多くて

デザートや3時のおやつまで付いた。

ちなみにデイケアとは病院が運営するデイサービスのことで

老人施設が運営するものをデイサービスと呼ぶそうである。


つまり老人施設から訪れる介護士がデイサービスを勧めるのは、営業活動の一環。

それを聞いた我々しろうとがデイサービスにこだわって

行かない親を責めるのはかわいそう…

語弊はあろうが、そんなことを話すとデイサービスの呪縛は解かれた様子だった。

《続く》
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他人の夢・2

2022年10月22日 14時25分06秒 | みりこん流
東京からこの田舎町に移住して起業したい…

そうおっしゃる見知らぬ娘さんに、地元住民を紹介することとなった私。

こういう場合の人選は大事だ。

それは、各方面に精通している適任者を探すことではない。

ちょっと顔が売れていれば、その人脈でたいていのことはまかり通るのが田舎なので

そんなのはゴロゴロいる。

一番大事なのは、この話がコケた時に「ゴメン」で済む人間だ。


殺風景なIT系であれば、青い海やのどかな田舎の風景が意欲をそそるかもしれないが

アパレルは、かなり夢ゆめしい世界である。

瀬戸の小魚、お年寄り、作業着と軽トラの似合う町でインスピレーションが刺激され

素敵なデザインが生まれるとはとても思えない。

私が田舎者で古いのかもしれないが、ファッションというのは

パリ、ミラノ、ニューヨークなど、洗練されたお洒落な人たちがたくさんいる都会で

発展するものではないのか。


また、ネット販売を手がけるということは、別にこの町でなくてもいいわけで

気候や風景が良くて家賃の安い空き家村なら、全国どこにでもあるじゃないか。

助成金の中には現地視察の旅費も含まれているため

それを使って旅行気分のヤカラもいないとは言えない。

事実、東京娘は、一緒にショップを運営する仲間と3人で視察に来ると言った。

私が今一つ熱心になれない理由は、ここにある。

自分がトップなら、一人で来て一人で決めればいいじゃないか。

一緒にミシンを踏むお友だちと田舎へ来て、何が決まるというのだ。


こちらに移住して商売をやりたいという人がいれば、もちろん歓迎するが

彼女がこの町で自活したいと真剣に思っているのか…

「それも有りかな」と思っているだけなのか…

それがわからないうちは、話が立ち消えることも考慮しておく必要がある。

田舎の人たちをさんざん振り回したあげく、やっぱりやめます…となった場合

ゴメンで済む人でないと、こっちが恨まれてしまうではないか。

私の役目は、移住希望者の夢を叶えるお手伝いをするというより

夢夫さんや夢子さんの思いつきを水際でふるいにかけることかもしれなかった。


そういうわけで、私の人選はKさん一択。

彼は夫の友だちで、奥さんは私の友だちだ。

前職の仕事柄、移住希望者の相談に乗った経験が豊富で

定年退職後は別の所に勤めているが、現役の頃より暇がある。

よって、海のものとも山のものともわからない遊び半分の用事を頼みやすいのだった。


東京娘は10月にこちらへ来ると言うので、Kさんには軽く下話をしたが

彼は立ち消えになる可能性が高いことを知っていた。

「アパレル関係は難しいよ。

その方面の人から移住の相談を受けたこともあるけど、僕の経験じゃあ全滅よ。

移住しても続かんと思う。

まあ、実際に来たら会うよ」


やっぱり…と思うが、余計なことは言わず

Kさんの返事だけを真知子さんに伝えると、彼女はとても喜んだ。

それを聞いた東京娘も、広島訪問を楽しみにしていると言ってきた。


そして10月になったが、東京娘は来ない。

私も「どうなってんの?」なんて催促はしない。

むしろ、興味本位で助成金を引き出そうとする人間を

水際で食い止めたような気になって満足している。

もはや私のテーマは、以下に絞られた。

移住を断念する理由が何になるか…である。


私はすっかり冷めてどうでもよくなったが

間に入っている年配女性、真知子さんは、東京娘が必ずこちらへ来ると信じている。

彼女らと私を引き合わせたいと燃えているので、ダメ押しをしておいた。

「その時は市長と議員に会ってもらって、応援してもらいましょう」


市長?夫は面識があるけど、わたしゃよう知らん。

議員?そんな親切な人はおらん。

が、そんなことはどうでもええんじゃ。

本気でない者は、話が大きくなったらひるむことを昔のヘリ事件で知った。

本気かどうかをはっきりさせたければ、第三者を引っ張り出して大風呂敷を広げればいいのだ。


心美しき真知子さんはこの話を大いに喜び、さっそく東京娘に伝えた。

そして数日後、真知子さんから、こちらへ来られない理由が発表される。

「東京のデパートで展示会をしたら大盛況で

予約が殺到して忙しくなり、しばらく東京を離れられない」

というものだ。

やんわりとした、良い理由である。

褒めてあげたい。



さて、この地で夢を叶えたい人はもう一人いる。

こっちはすでに移住を済ませた若い男の子。

やはり真知子さん経由で出会った。


そうよ、真知子さんはこのような若者のお世話をするのが趣味みたいなもの。

若者の方も、70代の彼女を慕って自然に集まってくるのだった。

ちなみに彼女は海外と東京の生活が長く、英語を始め何ヶ国語だかがペラペラの

多分イケてる独身女性である。

多分というのは、ダブダブした和洋折衷のお召し物に

地下足袋みたいな靴とか合わせてて、田舎の基準とはかけ離れているため

東京では普通かもしれないけど、こっちじゃ不思議な光景だから。


彼女はその奇抜なファッションを、温かくて上品な人柄で着こなす。

外国に東京と、生き馬の目を抜くような所でバリバリ働いていたにもかかわらず

緊張感を微塵も感じさせないホンワカした所が私にとっては好ましく

お役に立ちたいのは山々だけど…。


くだんの男の子は4年前の西日本豪雨の時に関東からボランティアで訪れ

海と山が隣接する瀬戸内の景色に魅了されて、そのまま定住を決めた。

年は30前後だろうか。

スラリとした彼は物静かで礼儀正しく、武士みたいな雰囲気。

一目でただ者でないことがわかる。


今は山仕事のアルバイトに精を出してお金を貯め、何らかの起業をしたいのだそう。

つまり前出の娘さんとは逆で、先に移住してから起業を考えるタイプ。

一人暮らしの父親もこっちに呼び寄せたというから、本気だ。


ついては地元のおばさんとして、彼のヒントになるような情報を提供して欲しい…

というのが真知子さんの希望。

が、あまりお役に立てそうもない。

こういう子は他人の手をわずらわさずとも、自分でやるからだ。


で、とりあえず瀬戸内の島巡りを勧める、いい加減な私よ。

「海の色が信じられないぐらい綺麗だし、移住者も増えてるから

きっと何かひらめくよ」

などと言ってお茶を濁したつもりだが、彼は違った。

スマホですぐフェリーの時間や港の場所を調べ

「行ってみます」。

この素直には、天が味方するだろう。

東京娘とは、えらい違い。

本当に応援したいのはこういう子なのに

こういう子には応援の必要が無いとは残念なことである。

《完》
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他人の夢・1

2022年10月21日 14時22分10秒 | みりこんぐらし
同級生のユリちゃん、けいちゃん、マミちゃん、モンちゃん

そして私の5人で結成している通称5人会。

結成して7〜8年ほどは女子会やレジャーに勤しんでいたが

一昨年、メンバーのけいちゃんが横浜へ引っ越すと、活動は一気にしぼんだ。

メンバー中、唯一の下戸であり、唯一の運転好きの彼女がいなくなったことで

お酒と遠出が封印されたからである。

友だちよ友情よと吹聴したって、結局のところ我々は

けいちゃんの善意にすがって友だちごっこをさせてもらっていただけであった。


けいちゃんを失って以降、5人会の主な活動は

ユリちゃんの実家のお寺で料理を作る程度に成り下がった。

が、5人会のLINEは相変わらず続いていて、時折楽しく盛り上がっている。


先日はけいちゃんから、おごそかに報告があった。

「私、ピアスをしました!」

いや、びっくり。

ピアスなんて単語、久しぶりに聞いたぞ。

私は20年ぐらい前に飽きてしなくなり

ちゃんと確認してないけど穴はもう潰れていると思う。


「63才になった記念です。

死ぬまでに叶えたい夢、一つ実現したよ!」

けいちゃんは嬉しそうだ。

死ぬまでに叶えたい夢が、ピアスだったなんて。


なぜピアスなのか。

けいちゃんはその理由に触れないが、昔気質の口うるさい両親がいたので

耳に穴なんて開けたら大目玉なのは確実。

存命中は、やりたくてもできなかっただろう。

長い介護の末に両親を見送り、身軽になった自分へのご褒美だったのかもしれない。

ピアスをあれこれ買って楽しんでも、娘がいるから無駄にならないしね。


ともあれ、けいちゃんは死ぬまでに叶えたい夢を幾つか準備している様子。

几帳面な子だから、一つ一つ着実に実行していくと思う。


ピアスという可愛らしい夢を叶えたけいちゃんに拍手を送りつつ、我が身を振り返る私。

死ぬまでにしたいことを急きょ考えてみたが、何も思い浮かばない。

行きたい所もやりたいことも、全然。

無理に考えようとしても、浮かぶのは“現状維持”の四文字だけ。

皆さん、死ぬまでにしたいことって、あります?


そんな不甲斐ない私だが、他人の夢を実現するための

お手伝いらしきものに関わることは時々ある。

そう言ったら聞こえがいいけど、私の場合

親切ごかしに手を出しては、その人の夢を潰しているような気がする。


最初は20代の頃だった。

とあるマルチ系の店舗を運営する、ひと回りぐらい年上の女性が私に言った。

「今度、この町内で大きなイベントをするの。

東京本社の社長をお呼びして、近隣の支店の人たちをたくさん集めるんだけど

この際だから社長には映画みたいに、ヘリでドラマチックに登場してもらいたいと考えてるのよ。

でも、手続きが大変なんじゃないかしら」

時はバブル、こういう派手な演出が流行っていた頃である。


その女性と親しいわけではなかったが、私は親切にも実現してあげたくなった。

ヘリコプターと操縦士は社長の自前だと言うので、確保するのは着陸場所だけだ。

当時はヘリポートなんて、この辺には無かった。

そこでうちに出入りしている議員にたずねたところ、秘書が調べてくれて

安全できちんとした所…例えば町内にある広いグラウンドなんかだったら

こちらが思うよりも簡単に着陸許可を得られることがわかった。

昔はそういった庶民の疑問を調べてくれたり

コトと次第によっては手続きを代行してくれる議員がいたのである。


が、社長さんがヘリで登場する日は来なかった。

許可申請のことを話したら、相手の女性がビビッてしまったからだ。

彼女は単に夢を語っただけであり

社長が自前のヘリを所有していると聞かせたかっただけで

それを現実に行うつもりは無かったらしい。

こういう場合、私は「わあ!すごい〜!」と感激し

その女性や社長の大物ぶりを褒め称えて終わるべきだったようだ。


このように私は、人の夢と現実の区別がつかず

相手の気持ちをちっとも考えないで突き進む悪癖がある。

うっかり私の前で夢など語ろうものなら、かえって厄介なことになるのだ。


意地悪なご主人と別れて家を出たいと泣く人に、アパートと仕事の世話をしようとして迷惑がられたり

向かない仕事に悩んで転職したいと言う人に、向きそうな就職先を紹介して引かれたり

この悪癖のせいで、そりゃあ色々あった。

長年、この性格と付き合ってきたので、目の前の人が語るのが夢物語なのか

本当に実現したいのかをちゃんと見極めてから相手をしようと気を付けているつもり。


そんな危ない私の前に、最近、夢を語る人物が現れた。

東京在住の若い娘さんで、自分がデザインして縫った洋服をネット販売している。

このままでは趣味の域を出ないので、店舗を構えて本格にやりたいそう。

しかし東京は家賃が高いため、いっそ田舎への移住を検討中とか。

今どきは田舎の空き家を使って会社を興そうものなら、県の方から助成金が出るので

それを利用したいとおっしゃるのだ。


ついては移住に先駆け、よろしく引き回してもらえる地元住民を探しているという。

何も知らずにいきなり行っても、うまくいかないと思う…

商売や地元の情報などの各方面に詳しくて

色々と相談できる方を一人、紹介してもらえればありがたい…

そうおっしゃるあたり、なかなか堅実である。


田舎の座敷でうごめく私が、東京に住む若い娘さんと直接知り合う機会などありはしない。

間に一人、入っている。

知り合いの東京娘の夢を我が事のように思い

何とか実現させてあげたいと願う心の美しい年配の女性、真知子さんだ。

しかしその人も東京からUターンして年月が浅く

誰の所へ話を持ち込んでいいのか見当がつかないと言う。

そんなわけで、私の所へ話が回ってきたのだった。

《続く》
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危犬

2022年10月17日 13時24分40秒 | みりこんぐらし

『秋のチョウチョは羽が傷んで、はかなげよね。

うちの干からびた庭でも蜜があるのかしら…たくさん召し上がれ』



10月11日の夜。

早寝早起きの私は例のごとく、二階の寝室ですっかり寝入っていた。

…と、階下が何やら騒がしい。

ガヤガヤした人の声と足音に目を覚まし、尋常でない空気を感じる私。


最初は、強盗かと思った。

うちへ入ったって、盗る物なんて無いのに…

ボンヤリとそんなことを考え、護身用の金属バットは玄関の傘立てだと気づいて残念に思う。

敵は一階に居るんだから、丸腰で玄関まで行かれんじゃないか。

二階にも武器を用意しておくべきだった…。


ほどなく階下から、長男が叫んだ。

「母さん!起きて!」

この子が階下に居るのであれば、強盗ではなさそう。

私が寝ようとした時、彼は応接間でグローブの手入れをしていたが

そのまま下に居たらしい。

日頃は大きな声を出さない彼が叫ぶからには、よっぽどのことだ。


飛び起きて階段を駆け下りると、義母ヨシコが居間のテーブルに突っ伏して泣いていた。

あたりは血の海だ。

「リュウがばあちゃんを噛んだ!」

長男が言う。

「俺が応接間におったら、ばあちゃんの叫び声がして血だらけになっとった」


ヨシコは、愛犬リュウに額を噛まれていた。

額に当てた血染めのタオルを外して患部を見ると

彼女のおでこはリンゴをかじったような状態で皮がペロリとめくれ

そこから容赦なく出血している。

狭心症のために血液がサラサラになる薬を飲んでいるので、出血量が多くて血が止まりにくいのだ。


「あんた…これ、ゾウキンじゃん」

私は長男に小言を言った。

血染めのタオルと思ったのはゾウキンで、長男がヨシコに渡したものだった。


家で何とかできる傷ではないので、長男に近くの救急病院へ電話させ

その間に服を着替えていると夫も起きてきた。

病院がすぐ来いと言ったので、夫と二人でヨシコを連れて行くことにした。


救急には先客が無かったので、すぐ診てもらえることになったが

診察室へ入るとヨシコが言った。

「入れ歯忘れた、入れ歯、入れ歯」

みなまで言わずに相手が察して行動することを望み

叶うまで言い続ける、いつものペースだ。

家へ取りに帰って、持って来いと言いたいのである。

入れ歯が届くまで、医者を待たせる気満々。

その余裕にホッとしつつ

「もう間に合わんけん、あきらめんさい」

と答え、ヨシコを残して廊下に出る。


当直の外科医は、たまたまヨシコの主治医だった。

同じ日の午前中、ヨシコは定期検診で主治医に会っており

彼はそのまま当直に入ってヨシコの額を縫うことになったのだ。

この偶然にヨシコは上機嫌らしく、主治医と彼女の笑い声は廊下まで聞こえた。

病院慣れしているというのか、こんな時のヨシコは肝が座っていて頼もしい。


結局、ヨシコは17針縫った。

「化膿したらいけないので、大きめに縫っときました」

と説明があった。

犬の前歯はUの字になっているので、額の傷もUの字状で

縫い目が多くなるのは仕方のないことだった。


縫合が終わると化膿止めの点滴をしてもらい、帰宅したのが12時。

点滴中に30代後半らしき看護師が出てきて、我々夫婦に言った。

「お母さんとワンちゃんは、一緒に寝ておられるんですよね?」

額を縫われながら、ヨシコが話したらしい。

「はい」

…そうなのだ…

ヨシコとリュウはダブルベッドで一緒に寝ていた…

「男と寝られて、ええじゃんか」

私はよく、彼女をからかっていたものだ…。


「先週も噛まれたんですよね?」

「はい」

…そうなのだ…

ヨシコは先週、リュウに口の周りを噛まれた…

リュウが寝ているところを触って、いきなりガブリとやられた…。


今回も、先にヨシコのベッドで寝ていたリュウを動かそうとして噛まれた。

体調1メートル、体重30キロに育ったリュウは普段はおとなしいが

寝ているのを邪魔すると豹変する不良犬に成長していた。

機嫌が悪いと、首から尻尾の手間までの背中の毛が魚の背びれみたいに立ち上がる。


こやつは雑種とはいえ、親がダックスフンドとセッター。

父親だか母親だかはビーグルと聞いていたが、獣医師が判断したところ

セッターということになった。

いずれにしても猟犬だから、性質が戦闘的なのだ。


猟犬は、後ずさりができる。

後ずさりができるから、猟犬なんだそう。

前に進むだけでなく、後ろにも進めるということだ。

熊なんかの大物と遭遇した際、後ずさりができない犬だと、すぐやられてしまうからだ。

そこが愛玩犬との違いだと狩猟をする人が言っていたが、リュウも後ずさりがうまい。

つまり先天的に戦い方を知っている犬種だ。

そんなターミネーターみたいなのと、おばあさんを一緒に寝させていた

我々の罪は軽くないかもしれない。


「噛み癖が付いていると思うので、ワンちゃんとお母さんを離して生活してくださいね。

でないと、また噛まれると思います」

看護師は言う。

その話し方から、この人も犬を飼っているのかも、と思った。


我々夫婦も、リュウの身の振り方を考えていたところだった。

小型犬と違って攻撃力の強いリュウを今後、どう扱うかは

我ら一家にとって重大な問題である。

人を噛んだら相手がおとなしくなると知った犬は、タチが悪い。

この癖は、ちょっとやそっとでは治らないだろう。


人間の思いと犬の思いは真逆であることが多い。

ヨシコは自分のベッドへ、リュウを寝かせてやっていると思っていたが

リュウの方はベッドを自分の物と認識していて

そこへ侵入しようとしたヨシコを敵とみなしたのだ。


ともあれ縫合が終わり、化膿止めの点滴をして帰宅すると12時半。

が、やれやれ大変だった、さあ寝ようというわけにはいかない。

問題は髪だった。

ヨシコの髪には血が大量に流れていて、点滴の間に看護師が軽く洗い流してくれたが

綺麗にシャンプーするわけではないので髪がゴワゴワに固まり始めている。

血液は凝固する成分を持っているからだ。


ヨシコの心配は、翌日の診察にあった。

傷を診てもらうため、明日も病院へ行かなければならない。

病院へ行くからには人に会ってしまうから、こんな頭では行けないと言うのだ。

たとえ診察が無くても、このまま時間を経たらペッチャンコのゴワゴワは必至。

それはお洒落なヨシコにとって、耐え難い屈辱であろう。


濡れタオルを次々に交換しながら、ヨシコの薄くなった髪や地肌を拭い続けてみるが

ネバネバのゴワゴワはなかなか落ちない。

血液のすごさを改めて実感。


1時間後、私は妙案を思いつく。

「どうせ固まるんなら、カールしとけや」

ということで、拭き取りを諦めた箇所から順に手巻きでカール。

恐ろしいことに、ピンやカーラーを使わなくとも

巻いた髪はクルリとした形を保ったまま乾いていくのだった。


その夜から、リュウは夫と寝ることになった。

ダックスの雑種であるリュウは、足が短くて階段を上がれない。

重たいので、抱いて二階の寝室へ連れて行くこともできないため

夫が一階に降り、ヨシコの隣の部屋でリュウと一緒に寝ることになった。

ヨシコは自分の息子が近くなったので安心感が大きいらしく

リュウは大好きなパパを独占できてご満悦である。


翌朝、ヨシコの髪の仕上がりは満足のいくものであった。

さすが血液、そんじょそこらのセットローションよりカールのキープ力が強い。

ヨシコもまんざらではなさそうだが、顔の方はパンパンに腫れて、赤と紫のグラデーション。

見るも無残な姿となり、髪がどうこうの騒ぎではなくなった。


病院へ行き、人目を避けて順番を待つが、誰もヨシコだとは気づかない。

いっそ別人のように変わり果てたら、他人は案外、気がつかないものらしい。

傷の消毒後、ヨシコの頭には帽子のような網が被されたので

せっかくカールした髪は無駄になった。


魔の一夜から1週間。

ヨシコは病院へ消毒に通い、日に日に回復している。

そしてリュウは再び「危犬」、「魔犬」、「暗黒の貴公子」と

もらわれて来た当初と同じニックネームで呼ばれるようになったが

ヨシコを含めた家族の心にあまり変化は無く、普通に扱われている。

私はリュウを訓練学校へ入れてしつけ直すことを始め

もっと厳しい措置も考えていたが、かわいそうだとヨシコが反対するので現状維持のまま。

噛まれた人がそれでいいなら、いいか…と思っている。
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手抜き料理・品数豊富2

2022年10月13日 10時05分01秒 | 手抜き料理
足の痛みに耐えながら片付けを続けたが、キリが無いので見切った。

流し台、ガス台、調理台、配膳台…

それぞれ台と名のつく物の上からガラクタを取り除き

表面が現れて元が何だったかわかり、本来の目的を実行できれば良しとするしかない。


こんなに散らかしながら、ユリちゃんお得意の生け花だけは

ただでさえ狭い配膳台の上にドカンと置いてあるのもいまいましい。

今回は大量の菊じゃ。


料理をする者にとって、台所の生け花は迷惑以外のなにものでもない。

スペースの問題だけでなく、花粉、花びら、匂い。

不注意で花瓶が倒れることもある。

しかも小柄なユリちゃんが生けた花の先端は、長身の私の目の位置だ。

花に注意しながら作業をすること自体が厄介。

春先に梅の枝なんて生けられた日にゃあ、目ぇ突かれそうだったぞ。


けれどもユリちゃんには、他に良い所がたくさんある。

細やかな気配りも、その一つだ。

数年前に私がお腹を壊して寝込んだ時

檀家の店に頼んで作らせた大量の巻き寿司や惣菜をダンボール箱に入れて、うちに運び込んだ。

「これで2日は寝ていられるでしょ」

つまり彼女は、私が起きられるようになるまで食事の支度をしなくていいように

家族全員分の食事を持ち込んでくれたのだ。

そしてそれは、この辺りでは食べられない珍しい物でなければならない。

年寄りが、その手の食品を尊び喜ぶことを知っているのだった。


一食だけのサポートなら、誰でもできる。

が、全快するまでを引き受けるなんて、なかなかできることではない。

料理が苦手だからこそ思いつくのかもしれないが、その時の感動は忘れられない。

それ以来、巻き寿司が好きになり、作るようになった。

選民意識の高い彼女には腹の立つこともあるが、そんな時は当時の気持ちを思い出し

友だちとして役に立つべく決意を新たにするのだ。


ともあれ菊を束ねてゴミ箱に捨てたい衝動を抑えつつ、いよいよ調理に入った。

今回は、すでに出来上がった物を持ち込む形が多かったので

料理らしいことといえばクリームコロッケを揚げるのと、いなり寿司の米を炊いて詰めるだけだ。

この日は総勢15人の会食。

人数はいつも会食の直前にならないとわからないが、私は気にもしてない。

多くてせいぜいこれぐらい、少なくて7〜8人。

それがユリ寺の集客力さ。



『マミちゃん作・シイタケの肉詰めエスニック風』


マミちゃん作のこの料理、お寺では3回目か4回目。

私が好きなので作ってくれるそうだが、豚ミンチのハンバーグをシイタケに詰めただけなのに

確かに美味しい。

形がコロンとして可愛らしく、大皿に盛ると映えて客受けが良いので、ほぼ定番化している。

この人、シイタケとミンチを合体させる時に小麦粉や片栗粉など

糊の役割をする粉を使わないと言う。

シイタケとミンチをギューギュー丸めたら、いらないそうだ。

だから硬めでコロコロ丸いのね、と納得。

シイタケの裏に粉を振るのはけっこう手間なので、今後は私もこの方式にしようと思った。



『みりこん作・海老クリームコロッケとうどん』


クリームコロッケは昔の得意料理。

今は高カロリーの物や乳臭い物があんまり好きでなくなり、滅多に作らなくなったが

マミちゃんが食べたいと言い、ユリちゃんも好物と言うので久しぶりに作った。


中には冷凍小海老、タマネギ、生のマッシュルームが入っている。

ギンギンに冷やしたタネを手早く丸めて揚げるのが、破裂しないコツ。


クリームコロッケには、タルタルソースとケチャップを添える。

理由…派手に見えるから。

タルタルソースにはタマネギ、茹でた赤パプリカ、茹で卵、パセリ、ラッキョウの

それぞれみじん切りが入っている。

あとはマヨネーズとコショウ、あればレモン汁少々。



うどんは、吸い物代わりに作った。

トッピングのカマボコと天かす、茹でた水菜がけっこう良い仕事をする。

豚バラと白ネギを、ヒガシマルうどんスープの素で煮る簡単なものだけど

これはどこで出しても好評だ。

いつも誰かに出汁の内容を聞かれるので、昆布とカツオだと言い張っている。



『マミちゃん作・さつま芋のレモン煮』

『マミちゃんの妹作・貧乏袋煮』


季節柄、さつま芋は大人気だった。

妹さんは、前回私が作った貧乏巻き寿司のネーミングをたいそう気に入り

おんみずから、鶏ミンチとモヤシを入れたこのきんちゃく煮を“貧乏袋煮”と命名したという。

数が足りなくて私は食べなかったので味はわからないが、美味しそうだった。



『マミちゃんの妹作・春雨の中華サラダ』


マミちゃんに負けず劣らず、妹さんも酒好きらしい。

ピリ辛の味付けが後を引く一品。


『マミちゃんの妹作・おから』


このおからを作るため、地元の豆腐店にわざわざ予約したそうだ。

そこの豆腐より、おからの方が美味しいと評判の店である。

味加減がちょうど良くて、ホッとする味。



『マミちゃんの妹作・甘栗と干し芋のカップケーキ』


本人は自信が無いと心配していたけど、干し芋の意外性が楽しい一品。

ベースはホットケーキの素、甘栗と干し芋は百均のお菓子売り場で買ったそうだ。



『みりこん作・いなり寿司』


いなり寿司は一口タイプの小さいもので、200個作成。

食べ切れない分は、炊き込みごはんと共にお土産にするつもりで作った。

私と梶田さん以外はいなり寿司を作った経験が無いため

クリームコロッケを揚げ終えた梶田さんが手早く詰めてくれて、何とか間に合った。



四角でなく、三角の油揚げを使う場合は

下の両端を折って寿司飯を包むのが美しい仕上がりのコツ。




写真がダブるが、カボチャのアズキ煮が写っているので載せた。


カボチャのアズキ煮は小さい小鉢に品良く盛り付けたかったが

人に任せたのでジャブジャブのシチューみたいになった。

他には例のごとく鮎の甘露煮を作って持ち込み、希望者にお土産として渡した。


マミちゃんの妹さんが参戦してくれたお陰で、品数が豊富になったお寺料理。

この日はたまたま政治の方面では地元じゃ有名な夫妻が、檀家として会食に参加していた。

彼らは品数の多さに目を見張り、「どれもすごく美味しい!」と喜んで

熱心に作り方を聞いたりするので、ユリちゃんのご主人モクネン君は大変な上機嫌。

彼には飯炊きAとしか見られてない私が、その政治家夫婦と古い知り合いと知った途端

うるさいぐらい私に話しかけていた。


別人のような旦那に驚いたユリちゃん。

「うちらの忘年会の会費はモクネンに出させよう」

後で我々にこっそり言った。

《完》
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手抜き料理・品数豊富1

2022年10月12日 14時18分22秒 | 手抜き料理
10日は、恒例のお寺料理だった。

この日は、宗派の開祖の命日を記念する行事。

お盆の施餓鬼供養と並ぶ、お寺の大きなイベントである。


先月、つまり9月はお寺料理が無かった。

10月にある今回の行事に備えて、掃除や紙製の飾りを作る作業に

檀家の参加者がほとんどいなかったためだ。

よってお寺料理は、お盆以来の1ヶ月半ぶり。

久しぶりだし涼しくなったし、それに今回は

お寺料理で知り合った公務員OGの梶田さんが手伝ってくれることになり

いつもの同級生マミちゃん、モンちゃん、私の3人は張り切っていた。


梶田さんが来るとは、単に人手が増えるだけではない。

料理が好きな人はたくさんいるけど、性格がきつくて鼻持ちならない人も多い。

事実、私の知り合いにもお寺料理に参加したい人が複数いるが

人手が足りないからといって、うっかりそんなのに声をかけたら

料理も人間関係もメチャクチャにされてしまうため、気軽に誘うわけにはいかないのだ。

が、梶田さんは料理だけでなく、現場の動きがわかっているので頼りになり

明るく楽しい雰囲気をキープできる希少な人物。

彼女ほど安心できるメンバーは、他にいない。

我々は、この幸運を噛み締めた。


幸運はさらに続く。

マミちゃんの妹さんが、何品か差し入れてくれるという。

我々より3才下の彼女は、独身の銀行員。

55才で定年した後は、嘱託職員として緩く勤め続けている。

連休で暇だから何か作りたいと自ら申し出てくれ、我々は狂喜乱舞した。


仕事で来られないこともあるモンちゃんが来てくれるし

3人分の働きをする梶田さんもいるということで、楽勝の予感に酔う我々。

マミちゃんは得意料理、シイタケの肉詰めエスニック風と

もらい物のサツマ芋でレモン煮を作って持ち込むと言うので

私はマミちゃんの強い要望でクリームコロッケと

それからイベントらしく、いなり寿司を作ることにした。



と…お寺料理の数日前、ユリちゃんから連絡が。

「お供えのカボチャがたくさんあるの。

届けるから、当日、煮物にして持って来てくれない?」


お盆の会食の時、私は檀家のおばあちゃんと話していた。

「◯◯さんにカボチャの美味しい煮方を教わったから

お陰で上手に煮られるようになったのよ」

私は確かに言った。

元料理番だったおばあちゃんへのお上手もあった。

ユリちゃんは、その会話を聞いていたらしい。

「みりこんちゃんがああ言ってたから、きっと美味しく煮てくれると思って電話したの」

やられた…と思ったが、あとの祭り。

お寺で滅多なことは言えんわ。


翌日、大きなカボチャが3個、うちへ届けられた。

ユリちゃんが、嫌いなカボチャを持て余しているのはよくわかったが

これをどうやって煮ろと…。

お寺にあるようなでっかい鍋なんか、うちには無いじゃんか。

しかもカボチャの煮物なんて、誰も喜ばんぞ。

そうなのよ…会食ってね、お金のかかっていそうな物と珍しい物から召し上がるものなの。

どこにでも転がってるカボチャなんて見向きもしないから、大量に残るものなのよ。


が、届いたものは仕方がない。

行事の前日、ちょっとでも珍しげに装うためにアズキと煮るべ。




煮たべ。


カボチャとアズキは別炊きにして、仕上げで合わせて少し煮る。

アズキのかすかな渋みが甘いカボチャとマッチして、けっこう美味しくなるんよ。


鍋には2個分しか入らず、残りの1個は着服。

煮えたカボチャは翌日まで放置しておき、鍋ごと寺へ持ち込む。

重たかった。



前日には、いなり寿司の具も作成。



マミちゃんの妹さんが、油揚げに鶏ミンチとモヤシを詰めた

きんちゃく煮を作ってくれると聞いていたため

油揚げがカブるのはやめようかと迷った。

しかし、お祭的な行事なので華やかさが欲しいと思って決行した。


カボチャのカットと面取りも骨が折れたが

ゴボウ8本、人参4本をささがきにするのもけっこうな大仕事。

くたびれた。

あとは現地で、たっぷりの炒り胡麻を加え

寿司飯に合わせると、いなり寿司の中身ができる。

油揚げは市販の味付け済みのを使えば、いなり寿司は簡単だ。



さて当日の我々は、いつもより30分早い10時前に行った。

この日、お寺では早朝から精進の炊き込みごはんを作り、檀家さんに配る習わし。

加えて行事の時は仏前に供える精進料理も作るため、台所はいつもメチャクチャで

片付ける時間を取らなければ料理どころではないからだ。


そういえば炊き込みごはん、いつぞやユリちゃんから

今後は我々に任せたいと言われた。

うっかりイエスと言ったら大ごとだ。

前日に行って出汁を取ったり具を刻んだりすることになるし

当日も早くから行って、大量の炊き込みごはんを作ったら

何十個ものパック詰めと包装が待っている。


働くことを惜しむのではない。

炊き込みごはんにかまけていたら、昼の会食が作れないではないか。

カレーだけでいいなら作るが、行事なのでそうはいくまい。

これ以上の負担を増やすと、ただでさえ引き際を模索中のマミちゃんとモンちゃんは

いい機会だと思って逃げ出す。

ユリちゃんたちはこういう甘えを繰り返し、後生大事なはずの寺を

人もまばらな廃寺予備軍にしてしまったのだ。


ともかく、私はその場で答えた。

「炊き込みごはんを朝作るのではなく、昼の主食として作ってもいいのならやる。

考えといて」

これが精一杯の譲歩だ。

ユリちゃんは返事を保留し、私もそれっきり炊き込みごはんには触れなかった。


そして当日の朝、お寺に到着したら、問題の炊き込みごはんは出来あがっていた。

ユリちゃんと兄嫁さんは、現状維持を選択したようだ。

ただし、持ち帰りパックのサイズは一回り小さくなっており

数もかなり減らしているところに工夫が見られた。

そうよ…伝統を絶やしたくなければ人に頼らず、量を減らして細々と続けりゃいいのよ。

やればできるじゃないの。


そのまま台所に回ったら、やっぱり安定の地獄絵図。

床も流し台もガスコンロも調理台もテーブルの上も

調理用具やガラクタで埋まっていて、平面の部分が見えない。

テレビの断捨離番組もタジタジだ。

とにかく物を置けるスペースと動線を確保しなければ、料理どころではない。


早目に来て良かったと思いつつ片付けていたら

ガラクタ山から大きなお盆が数枚崩れ落ち、私の足の指を直撃。

人手がたっぷりということで、油断があったようだ。


泣き叫びたかったが、このような場で騒いだら皆のテンションは一気に下がる。

歯を食いしばって痛みを我慢よ。

く〜!

ちったあ片付けろってんだ!

《続く》
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同居論・狙われる男たち

2022年10月06日 15時23分31秒 | 前向き論

『雷が怖くてヘルメットをかぶり、たそがれる愛犬リュウ』


北朝鮮からミサイルが飛んで来ても、こちらは相変わらず家庭内で悪戦苦闘中だ。

2回に渡って同居の問題を語らせていただいたが

あれだけ長々としゃべっておきながら、肝心なことは話してないので

もう少しお付き合い願いたい。


初回は、二階建て家屋で発生する水洗トイレの騒音を中心にお話しした。

老齢の義理親と同居するのであれば、この問題は避けて通れない。


我々の敗因は、増築にあった。

一階のトイレの真上に二階のトイレを新しく作り、一階と二階の配管を共有したからだ。

夫の実家は鉄筋構造なので工事の性質上、そうするしか無かった。

実家も一階と二階にトイレがあったが、一階は玄関の近く、二階は奥の方にあり

配管は別々だったので水洗の騒音が二階に響くなんて知らなかったのだ。

同居以前に、増築して親の家に住むことそのものが無謀だったように思う。


しかし、今さらそんなことを言ったってどうにもならん。

解消するには家を建て替えるしか無いが

ゼニカネの問題以前に、改築中は老人を連れてアパートかどこかへ引っ越さなければならない。

誰も手伝わないであろう荷造り荷ほどき…

義母と至近距離で寝起きする不自由…

その艱難辛苦たるや考えただけでも恐ろしいから、我慢した方がよっぽどマシだ。


二階建て家屋のみならず、マンションや平屋

つまり平坦な造りにトイレが一ヶ所であれば、もっと厄介なことになる。

部屋の構造にもよるが、水洗の騒音を家族全員が共有する可能性は高く

トイレにたどり着くまでの距離が長いため、道中にある戸の開け閉めや足音にも悩まされるだろう。

同居を決行して初めて、万年睡眠不足の苦しみを知るのでは手遅れなので

老婆心ながら、せめてもの注意喚起をしたつもりである。


毎日来る小姑の方は、滅多にあるものではないので気にしないでいただきたい。

実家に帰りたい娘はたくさんいるが

既婚の男兄弟と同居する親元を毎日訪問したい娘なんて、そうはいない。

本人の資質はもとより、通える近距離に嫁ぐこと、女房の実家通いを黙認できる旦那

親が途中で亡くならないことなど、複数の条件が揃わなければ実現は不可能だ。


我が物顔で出入りするのは小姑だけでなく、親戚もだ。

挨拶も無く上がり込み、お茶やお菓子を運ばせて長居をしたあげく

「お義母さんにもしものことがあって形見分けをする時は、服と宝石を最初に見せて」

なんて、私に耳打ちするようなのもいるが、どっちの形見分けが先になるやらわかったもんじゃない。



ともあれ、一人になった高齢の母親と暮らそうなんて言い出す息子はえてして優しい。

けれどもその優しさの中に、強さと賢さが含まれているという保証は無い。

母親と妻、双方の関係をうまく取り持ちながら

和やかに立ち回れる器用な男はそうゴロゴロいないものだ。

板挟みに疲れて仕事やギャンブルへと逃げ、帰宅時間を遅らせる男も出てくる。

うちは女に逃げた。

これで妻が面白いはずもなく、家庭不和、家庭崩壊は欲しいままだ。


同居がきついのは、なにも子世代だけではない。

母親もまた、厳しい日々を強いられる。

子世代が同居しても、母の孤独は埋まりはしない。

むしろ若夫婦を眺めていると、伴侶を失った孤独はつのる。

休日、息子夫婦が楽しそうに出かけ、一人で家に残されるとますます孤独になる。

伴侶を亡くして一人になった寂しさは、子世代と同居したって埋まるものではない。

ただ、伴侶がいなくなって半減した年金の心細さは幾分解消される。

嫌いな嫁でも我慢するのは、そのためだ。


彼女たちが本当に必要としているのは、息子夫婦と送る賑やかな生活ではない。

無給で病院や買い物に連れて行ってくれる運転手であり

無給で家事をしてくれる家政婦であり、いざという時の出費代行。

同居に親孝行や安心といった精神世界を求める息子夫婦と

足、もてなし、おアシの“三し”という現実的サポートを求める母親との間には

大きなギャップがある。

中には例外もあろうが、お互いに同居がしんどくなるのはこのギャップによるものだと思う。



とまあ、同居のデメリットばかりをお話ししたが、もちろんメリットもある。

家族の人数が多いと、おしゃべりの幅が広がるので時々楽しい。

義母は長年、天秤座の長男をペンギン座だと思い込んでいたことが先日発覚。

ワロた。


それから、義母と二人で他人の悪口。

大変盛り上がるので、楽しい。


これらの楽しさが同居の苦しみと相殺されるかといえば、はなはだ疑問だが

小さな楽しみを大きく膨らませ、他のゴチャゴチャしたものを包み込む技術は発達するように思う。

同居する嫁は忙しいため、細かいことを気にしていられないし、長く覚えていられないのである。

最初からそれができる人は同居をうまくこなすのだろうが、私は時間がかかった。

冷酷で怠け者、人に厳しく自分に甘い私の性分に、同居は合わないらしい。

いやむしろ、私のようなのに同居された義母の方が気の毒かもしれない。



というわけで義母と私の同居話はひとまず終わらせていただくが

近年、周囲では逆バージョンの同居問題が勃発している。

30代から40代の若夫婦の家に、妻の母親が転がり込むケース。

子供を伸び伸び育てたいと考えて家を建てたはずが

いつの間にか妻の母親と同居していたというのだ。

最初は引越しを手伝うだの孫のお守りだので頻発に訪れ、じきに泊まるようになって

ある日、仕事から帰ったら母親の引越しが済んでいたという悲劇を複数、確認している。


妻は母親がいてくれると家事や子守りをしてくれるので楽で助かるが

男性にとってこの現象はものすごく辛いらしい。

妻の母親なんて、たいていの男にとっては面倒くさいオバさんという存在でしかないのだ。


「屁も自由にできん」

「疲れて帰って女房の母親がいるとゲンナリする」

「ローン払ってるのは僕なのに」

彼らは口を揃えて憤慨するが、子供はお祖母ちゃんに懐いているし嫁は機嫌がいいしで

本人たちに異議を唱えるのは気が引けるらしい。


こんな事態になってしまう男性は皆、おとなしくて優しく子煩悩。

そして両親がすでに他界しているか、複雑系で交流が無い。

優しくて実家が無いに等しいからナメられ、子煩悩ゆえに我慢する。

それらが悪循環となって、地獄が訪れるのである。


苦しんだあげく、彼らの一人は家を出て、会社に寝泊まりしながら離婚調停中。

しかし離婚しても家のローンは消えず、養育費まで発生する。

何より可愛い子供には会えなくなるので、彼に真の夜明けは来ない。


また、もう一人は精神を病んで通院中。

夫の窮状を目の当たりにしても、妻は便利な母親を手放さないし

母親も出て行くつもりは無い。

悩んでいる他の数人も、これに続くのかもしれない。


男性は女性よりもハートが繊細だから

仕事から帰って安らげる空間が無くなったのはこたえるだろう。

テリトリー意識も女性より強いため、きちんとした話し合いや承諾が無いまま

自身の縄張りに無断で踏み込まれた悔しさは、かなりのものと想像する。

サザエさんに出てくるマスオさんは、妻の実家で生活しているので文句は言えないが

このケースは自分名義の家なので、逆マスオの無念は筆舌に尽くし難いと思われる。


もちろん妻の母親と仲良く生活できる男性もいるだろうが

適応できなかった場合は聞くも涙、語るも涙の残酷な話になってしまう。

我々よりひと世代下になると、姑の魔手は手強い嫁でなく

若い男性に伸び始めたようだ。

結婚する時や家を建てる時はこんなことにならないよう

夫婦間で厳正な契約書を交わす時代になってきたのかもしれない。

くわばら、くわばら。
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