話を聞くと、そのおばさんというのは婆姫でした。
長男も車があればすぐにわかったのでしょうが
婆姫は自分の勤める老人ホームの巡回車で来たようです。
老人の家を廻るついでに彼氏の所を訪問…。
なかなかやるじゃないか…
「倉庫の裏で何か言い合いしてたけど
おばさんが殴りかかって、父さんが突き飛ばしたら
おばさんが転んだ…」
わたしゃもう大喜び!
男の子というのは、こういう面白いことを断片的にしか
記憶しないし言わないので、詳しいことがわかりません。
根掘り葉掘り聞かれるのを面倒臭がるので骨が折れますが
つなぎ合わせると、どうやら夫の心変わりを責めているようでした。
「私より、あっちの女のほうがいいのか」
と叫んでいたそうです。
おばさんは再び立ち上がり
夫の服をつかんで相撲をとる格好になったので
もう一人の社員と笑わないように我慢しながら見ていたそうです。
身長差があるため
わんぱく相撲の子供と親方みたいな組み合わせでしたが
無抵抗の夫と、前に出るタイプのおばさんは
ちょうどがっぷり四つになり
なかなか良い勝負だったと言います。
しばらくそのままにらみ合い
またおばさんが転んで、泣きながら帰って行ったという話でした。
ゲラゲラ笑い転げた後…
「それだけ?」
「それだけ」
もっと、こう…
後々まで思い出し笑いが出来るしゃべり方はできんのか。
ふがいないヤツめ…
こういうことがあった時、子供たちは必ず言います。
「いいなぁ、母さん。あの男と血がつながってないんだもんなぁ」
「やれやれ、よかったよ、他人で…」
これは我が家の決まり文句です。
変なところを子供に見られて…
などと夫を非難するようなきれいごとの段階は
とうに過ぎ去っていました。
それに気を付けられる人間なら
こんなありさまにはなっていないのです。
子供は可愛い宝ですが
夫の呪われた「色」の血が半分流れているのも事実です。
私にもまた、そういう気配があるから
そんな男と結婚してしまったのでしょう。
ならば彼らはサラブレットです。
それを自覚し、醜い姿、恥ずかしい現実をしっかり焼き付けて
ぜひ自分の教訓にしてほしいものです。
心変わりと言うからには、新しい恋愛が始まったことは確かですが
私にはどうでもいいことでした。
もうどこまでも行って、いっそ極めてくれ…という心境でした。
昔は、夫の浮気に苦しむ私に
「操縦法がまずいのよ」
「自分の悪い所を少し振り返ってみては?」
相談した覚えも無いのに
わざわざ余計なことを言っては
傷口に塩をなすってくれる人もいました。
親戚の他は、義母に何か売りつける商売の人です。
デパートの外商、出入りの靴屋、宝石屋、洋服屋…。
彼らは善悪でなく支払額の大きい者の味方をします。
嫁を攻撃すれば義母は
「…そんな…嫁のことは言わないようにしてますのよ…」
などと言い、商売人たちは
「まぁ!さすが、奥さんは人間が出来ていらっしゃる」
と褒めそやすのです。
義母はその賞賛をことのほか喜び
元々ゆるい財布のヒモがいちだんとゆるむからです。
操縦と言われても、ハンドルの無い車を運転はできんわい。
やれるもんならやってみい!
と憤慨したものですが、そんな彼らが今どうなっているか…。
死亡、病気、倒産、痴呆、犯罪者…。
あからさまに義母に媚びていた人は、みんな見事にいなくなってしまいました。
うちでそういう態度をとるということは
よそでもやっているということです。
生き方は、年月を経て実生活に現われるのです。
商売は正直にやらなければいけません。
うるさい外野も減り、かなり生活しやすくなっていました。
毎日リストラの恐怖におののいていた妻は
ようやく一定の立ち位置を確保したのでした。
私は次の仕事を考えていました。
老人になっても役に立つ知識と技術が得られる仕事…。
できれば人様のお役に立つ、喜ばれる仕事…。
40でも雇ってくれる仕事…。
長男も車があればすぐにわかったのでしょうが
婆姫は自分の勤める老人ホームの巡回車で来たようです。
老人の家を廻るついでに彼氏の所を訪問…。
なかなかやるじゃないか…
「倉庫の裏で何か言い合いしてたけど
おばさんが殴りかかって、父さんが突き飛ばしたら
おばさんが転んだ…」
わたしゃもう大喜び!
男の子というのは、こういう面白いことを断片的にしか
記憶しないし言わないので、詳しいことがわかりません。
根掘り葉掘り聞かれるのを面倒臭がるので骨が折れますが
つなぎ合わせると、どうやら夫の心変わりを責めているようでした。
「私より、あっちの女のほうがいいのか」
と叫んでいたそうです。
おばさんは再び立ち上がり
夫の服をつかんで相撲をとる格好になったので
もう一人の社員と笑わないように我慢しながら見ていたそうです。
身長差があるため
わんぱく相撲の子供と親方みたいな組み合わせでしたが
無抵抗の夫と、前に出るタイプのおばさんは
ちょうどがっぷり四つになり
なかなか良い勝負だったと言います。
しばらくそのままにらみ合い
またおばさんが転んで、泣きながら帰って行ったという話でした。
ゲラゲラ笑い転げた後…
「それだけ?」
「それだけ」
もっと、こう…
後々まで思い出し笑いが出来るしゃべり方はできんのか。
ふがいないヤツめ…
こういうことがあった時、子供たちは必ず言います。
「いいなぁ、母さん。あの男と血がつながってないんだもんなぁ」
「やれやれ、よかったよ、他人で…」
これは我が家の決まり文句です。
変なところを子供に見られて…
などと夫を非難するようなきれいごとの段階は
とうに過ぎ去っていました。
それに気を付けられる人間なら
こんなありさまにはなっていないのです。
子供は可愛い宝ですが
夫の呪われた「色」の血が半分流れているのも事実です。
私にもまた、そういう気配があるから
そんな男と結婚してしまったのでしょう。
ならば彼らはサラブレットです。
それを自覚し、醜い姿、恥ずかしい現実をしっかり焼き付けて
ぜひ自分の教訓にしてほしいものです。
心変わりと言うからには、新しい恋愛が始まったことは確かですが
私にはどうでもいいことでした。
もうどこまでも行って、いっそ極めてくれ…という心境でした。
昔は、夫の浮気に苦しむ私に
「操縦法がまずいのよ」
「自分の悪い所を少し振り返ってみては?」
相談した覚えも無いのに
わざわざ余計なことを言っては
傷口に塩をなすってくれる人もいました。
親戚の他は、義母に何か売りつける商売の人です。
デパートの外商、出入りの靴屋、宝石屋、洋服屋…。
彼らは善悪でなく支払額の大きい者の味方をします。
嫁を攻撃すれば義母は
「…そんな…嫁のことは言わないようにしてますのよ…」
などと言い、商売人たちは
「まぁ!さすが、奥さんは人間が出来ていらっしゃる」
と褒めそやすのです。
義母はその賞賛をことのほか喜び
元々ゆるい財布のヒモがいちだんとゆるむからです。
操縦と言われても、ハンドルの無い車を運転はできんわい。
やれるもんならやってみい!
と憤慨したものですが、そんな彼らが今どうなっているか…。
死亡、病気、倒産、痴呆、犯罪者…。
あからさまに義母に媚びていた人は、みんな見事にいなくなってしまいました。
うちでそういう態度をとるということは
よそでもやっているということです。
生き方は、年月を経て実生活に現われるのです。
商売は正直にやらなければいけません。
うるさい外野も減り、かなり生活しやすくなっていました。
毎日リストラの恐怖におののいていた妻は
ようやく一定の立ち位置を確保したのでした。
私は次の仕事を考えていました。
老人になっても役に立つ知識と技術が得られる仕事…。
できれば人様のお役に立つ、喜ばれる仕事…。
40でも雇ってくれる仕事…。