殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

人に振り回されない方法・6

2023年01月30日 09時39分04秒 | 前向き論
試着に行くよう催促した私を無視してYさん一行が帰った翌日

彼女の車の乗組員4人のうち2人が、自転車を連ねてうちへやって来た。

その来意は、私への抗議である。


「あなた、何てことをしてくれたの」

開口一番、乗組員その1は言った。

「Yさん、すごく怒ってるのよ」

その2も続く。

電話でなく、わざわざ来たところを見ると、よっぽど腹を立てているのだろう。

いきなり来て文句を言われたこっちもムッとしたが

前夜、他の人から事情を聞いたのは口止めされているので

先に彼女らの言い分を聞くしかない。


その内容は、こうだ。

「ユニフォームを作ることは確かにみんなで決めたけど

スポーツ店に注文するのは、みんなで決めたことじゃないでしょう。

Yさんは、ずっと反対だったのよ。

だから私らはデザインを決める時も試着に行く前も

“みんながいいと言うなら”って何回も言ったはずよ。

みんなというのはYさんを含めた全員のことだったのに

あなたはそれを無視して勝手に話を進めたのよ」


後出しジャンケンもはなはだしい。

こいつらは真っ先にカタログを開いて、はしゃぎながらデザインを決めた。

そして誰よりも先に試着に行きおったのは、スポーツ店が付けた日付けの記録に残っている。

Yさんの機嫌を損ねたことがわかると、慌てて私に責任を押し付けようとしているのだ。


「あ〜…みんながいいなら、みんながいいなら、と言ってらしたのは覚えてますよ」

私は言った。

「ほらね、私は何回も言ったんだから」

「ただの口癖かと思いました」

「違うわよ!Yさんのことを言ってたのよ!」

「はっきり言ってくれないと、わかりませんよ。

だけどユニフォームをスポーツ店で買うのはバレーボール協会の推奨だから

Yさんの意見は関係無いと思います」

「そりゃ、表向きはね。

だけどYさんは、自分の店でTシャツを注文してもらいたかったのよ」

「まさか、無理でしょ。

今の時代、背番号の大きさなんかの規定が厳しくなってるから

専門業者に任せるのは当たり前じゃないですか」

「それならそれで、あなたはYさんを説得しないといけなかったのよ」

「これぐらいのことでゴネて、人に迷惑をかける方が悪いと思います。

気に入らないなら、その場で言えばいいでしょ」

「あなたがどんどん話を進めるから、言えなかったのよ!」

オバさん、特に愚かなオバさんというのは身勝手なものである。

そして私も25才、若さを言い訳にしたくはないが

母親ぐらいの年齢のオバさんたちを相手にする根気をまだ持ち合わせていなかった。


不毛な議論に飽き飽きした私は、彼女らにたずねた。

「それで、私にどうしろとおっしゃるんですか?」

2人は顔を見合わせてから、言った。

「あなたがYさんに謝るのが、一番いいと思うの」


根気の無かった私はかなりカッとしたが、努めて平静を装う。

「嫌です」

「Yさんの機嫌を直してもらわないと、辞めるかもしれないのよ」

「かまいませんよ」

「Yさんが辞めたら私たちも続けられないし…」

今度は泣き落とし。


「かまいませんよ」

「あなた、それでいいの?

私らが辞めたら人数が足りなくなって試合に出られないし、チームは解散するかもしれないのよ?」

次は脅しだ。


「かまいませんよ…いっそ解散した方がサッパリするんじゃないかしら」

これ以上、何を言っても無駄だと思ったのだろう、2人は諦めて帰った。

私はそのままスポーツ店へ行って謝り、ユニフォームをキャンセル。

店主の夫婦は「大丈夫」と言い、「大変だったねぇ」と同情してくれた。


そして次の練習日。

Yさん一行は、何ごとも無かったかのようにやって来て

私もまた、何ごとも無かったかのように練習した。

しかし2人がうちへ来たことは、すでに皆が知っているようで、しきりに私の顔色をうかがっている。

気の小さい人たちなので、その胸の内は嵐の中の小舟のように揺れているだろう。

ユニフォームがどうなったかをたずねる勇気のある者は、いなかった。


そのまま何ヶ月かが経って、私は二人目の子供の妊娠がわかり、チームを抜けた。

せいせいしたと思ったら、またあの2人がうちへ来た。

「みりこんさん、あの時はごめんなさいね」

「お産が終わったら、また戻って来てちょうだいね」


今さら何を言うか…と思いつつ、甘い言葉を聞き流す。

こいつらがしおらしいのは、反省したからではない。

その証拠にアレらは言った。

「あなたが戻らなかったら、私らのせいになるかもしれないのよ」

私に直接文句を言ったことをチームから責められ、「戻る」という確約を取りに来たのだ。


封建村のオバさんたちは、やっと気づいたらしい。

チームで唯一のアタッカーであり、唯一のブロッカーであり

唯一、サービスエースの取れる私に辞められたら困ることに、である。

相手のミスでしか点が取れず、抽選で当たった相手には

戦う前から一勝できると喜ばれてしまう、市内一弱いチームに逆戻りだ。

ゲームでも賭け事でも、勝つ喜びを一度でも味わったら、また負けっぱなしに戻るのは嫌なものよ。


私が「戻る」とはっきり言わないので

「みんな待ってるからね」

彼女らはそう言って帰ろうとした。

「…みんなって、Yさんも含めた全員ですか?」

意地悪く、“みんな”という言葉の定義を問い直す私。

アレらはその問いに答えなかった。


私は、二度と封建村のチームに戻らなかった。

この妊娠中に夫の浮気が始まり、バレーボールどころではなくなったのもあるが

チームカラーが自分に合わなかったと気づいたことが大きい。

いつも誰かの顔色を見てコソコソしているのに

何か不都合があったら急に強気になって筋違いをまくし立てる…

自分とあまりにも違いすぎる人たちの中に居続けるのは、面白くないと知った。


数年後、生まれた次男が幼稚園に行き始めたので

私は以前から熱心に誘われていた別のチームに入った。

このような移籍は掟破りとされ、やる人はほとんどいなかったが

新しいチームメイトの中にバレーボール協会の重鎮がいたのと

封建村チームの特異性は昔から知れ渡っていたため、騒ぎにはならなかった。


そうまでしてバレーをやりたかったわけではない。

器用貧乏の私はやればたいていのことはできるが、汗をかくのはむしろ嫌いだ。

が、次男の出産と同時に義理親との同居が始まり、我慢の多い日常を過ごしていた。

嫁の外出を嫌がる両親だったが、新しいチームには義父のゴルフ仲間の奥さんがいたので

彼らは私に行くなとか辞めろと言いたくても言えない。

だから反抗心で続けていたようなものだ。


バレーを続けるからには、相変わらずボロいユニフォームを着続ける封建村チームの面々とも

試合で顔を合わせる。

向こうは気まずそうでも、私は平気だ。

一人の私利私欲のために若手を逃した恥ずかしいチームとして、笑い者になればええんじゃ。

ともあれ高齢化いちじるしい封建村チームは、そのうち人数が足りなくなって消滅した。

《続く》
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人に振り回されない方法・5

2023年01月27日 09時45分35秒 | 前向き論
ママさんバレーボールのチームでキャプテンになった私に

さっそく大仕事が与えられた。

試合用のユニフォームの新調だ。


チームのユニフォームは、15年だか20年だか前に新調したきり。

古くて色褪せていて、デザインの方は流行遅れもはなはだしい。

こんなボロを着ているチームは他に無く、試合の時は着るのが恥ずかしいほどだった。

ユニフォームの新調は何年も前から口にのぼっていたものの

話は進まないままだったという。

そこで私が取り仕切ることになったのだが、逆に言えば私をキャプテンにして

ユニフォームの世話をさせるつもりだったらしい。


恥ずかしいユニフォームとお別れできるんだから、わたしゃ張り切ったわさ。

さっそく市内にただ一軒のスポーツ店で

アシックスやデサントなどスポーツメーカーが出している

バレーボール用のユニフォームばかりが載ったカタログを借りて来て、皆と検討。

スポーツメーカーのユニフォームって値段は似たり寄ったりだが

生地や色、デザインはそりゃもうたくさんの種類がある。

日頃はご主人に遠慮しながら活動に参加し

自分の趣味にお金を使うことに気兼ねをする封建村のマダムたちも

ユニフォームの新調には心浮き立つ様子だった。


迷いに迷ってかなりの日数がかかったが、どうにか決まり

次はサイズを決める試着の運びとなった。

試着の手順は、まずスポーツ店が様々なサイズの試着品をメーカーから取り寄せる。

それから何日かの期間を決めて、その期間中に各自がそれぞれ店へ行き

実際に着てみて自分にぴったりのサイズを注文するのだ。


とはいえ弱小チームの人数は10人、さほどの大作業ではない。

試着は順調に進み、3日間の期限を待たずしてほぼ全員の注文が決まった…

と思ったら、一人だけ試着に行ってない人がいた。

チームのボス的存在、当時40代後半だか50代だかのYさんである。

彼女は封建村で、ご主人と共によろず屋的ひなびた系の店舗を経営するかたわら

車に商品を積んで山奥や離島へ行商に出かけるのを生業としていた。


チームには彼女より年上の人もいたが、私を騙したUさん同様

先祖代々、現金を扱う商売をしているため、封建村マダムたちに尊重されていた。

この人もUさんと同じく、いかにも商売人の奥さん風のチャキチャキした人だ。

しかしUさんのように軽々しい所は無く

見た目が太めなのとズケズケものを言う所が、まさに地域のドンという感じ。


彼女に睨まれると封建村で生きていけないというのは

複数のチームメイトから、折に触れて遠回しに聞かされていた。

閉鎖的な村で唯一、人が出入りする彼女の店は

噂の発信元という役割も担っており、皆はそれを恐れている様子だ。


しかし彼女らが最も恐れていたのは、Yさんの車のことだと思われた。

チームには年配者が多いというのもあって、運転免許を持たない人が4人いて

いつもYさんが運転する行商用のライトバンに乗り合わせ

5人で試合や練習に来るのが習慣だった。

このように世話好きで親切なYさんだからこそ

彼女の機嫌を損ねて、車に乗せてもらえなくなったら困る…

それが本音のようで、4人は常にYさんの機嫌をうかがい、迎合していた。


村の住人でない私の目には、そんな4人の態度が卑屈に映ったが

練習のある夜間、町外れの村から徒歩や自転車で来るわけにもいかないので

仕方がないと思っていた。

そして私はYさんと、言いたいことを言い合って仲良くやっていた…

そう思っていたのは自分だけだったのかもしれない。


Yさんが試着をしないため、ユニフォームの新調は中断した。

スポーツ店には待って欲しいと頼み、ジリジリして待つ。

合間で彼女に電話をしてみるが、いつもご主人が出て留守だと言う。

居留守だと思った。


次の練習日、Yさんが来なければ家に行くつもりだったが

意外にも彼女が来たので、私は言った。

「Yさん、試着に行ってくださいね」

しかし彼女は、聞こえないふりをした。

「明日、行ってくださいね」

私はもう一度言った。

が、Yさんは黙ったまま帰り支度を始め、彼女の車に乗る人たちもそそくさとそれに続く。

つまり10人の参加者のうち、半分の5人が帰ってしまい

体育館には自分の車やバイクで来ている残りの4人と私が残された。


この4人、チームの中では若手の部類だ。

村の外で働いているため、自力の移動手段を持っているので

Yさんとは少し距離がある。

私は彼女らに、Yさんが試着に行かない真相をたずねた。

口ごもりながら、そして自分たちがしゃべったことは絶対に秘密と言いながら

聞いた答えは思いもよらないものだ。

「Yさんは、新しいユニフォームを自分の店で買って欲しいのよ…」


だって、よろず屋だよ?

苗や種と一緒に、畑でかぶる帽子や衣類も置いてあるとはいえ

スポーツメーカーのユニフォームまで扱えるのか?

その疑問をぶつけると、さらに驚愕する回答が…。

「Yさんは、揃いのTシャツでいいと言ってるのよ。

Tシャツなら、自分の店で仕入れられるから…」

越後屋か!


市内のあらゆるスポーツチームはことごとく

例のスポーツ店でユニフォームを作るのが慣例。

特にバレーボールは年に一度、その店の名前を付けた“〇〇杯”という大会を開催していて

参加賞を始め、3位までのチームにはボールなどの賞品を提供してくれている。

いわばスポンサーなんだから、その店でユニフォームを作るのは常識中の常識だ。


わずかな儲けにこだわり、試着に行かないという実力行使で

スポンサーに迷惑をかけるなんて最低じゃないか…

こんなことをやらかすチームに在籍しているのを恥じると同時に

絶対Yさんの思い通りにしないと誓いつつ、さらにたずねた。

「じゃあ、背番号はどうするの?」

背番号が無ければ試合には出られない。

スポーツ店でメーカーに注文すればサービスで付けてくれるが

ただのTシャツだと、そうはいかんじゃないか。


「番号のアップリケを買って、自分で付けたらいいと…」

脱力。

「私たちも最初は新しいユニフォームに浮かれてたけど

Yさんがウンと言わないと…ねえ…」

「新しいのを作る話が出るたびに、YさんがTシャツのことを言い出すから

いつも立ち消えになっていたのよ」

「Tシャツはちょっとねぇ…」

「Yさんはみりこんさんを可愛がってるから

今度はうまく行くんじゃないかと思ったんだけど…」


顔を見合わせてうなづき合う4人に、私は最後の疑問をぶつけた。

「じゃあ、今のユニフォームはどうして作れたの?Yさんは反対しなかったの?」

その答えは、最も納得のいくものであった。

「あれを作った頃、私たちもいなかったけど、Yさんもまだチームに入ってなかったらしいわ」

その日はたまたま監督が来てなかったので、練習はやめにして解散した。

《続く》
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人に振り回されない方法・4

2023年01月25日 13時20分38秒 | 前向き論
学校の授業以外では、初めてのバレーボール。

長身の私は最初からアタッカーに抜擢され、おっかなびっくり取り組むようになったが

そこそこ楽しかった。

監督が親戚というのもあり、小さい子供を連れて行っても

迷惑がられないチームに入ることができたのは、私にとって最大の利点である。


週に一度の練習に3回ほど参加した頃、Uさんという当時40代前半の女性が来た。

例の封建村で牛乳店を営んでいるそうで、忙しくて練習は滅多に出られないが

その日は久しぶりに参加したという話だ。

いかにも商売人の奥さんといった感じの、チャキチャキした人だった。


練習が終わると、Uさんは私に話しかけた。

「うちの牛乳を取ってくれない?」

聞けばチームの皆も、以前から彼女の店の宅配牛乳を取っているそうだし

うちも子供に牛乳を飲ませていたので、彼女の店から宅配してもらうことを快諾した。


Uさんは、さらに続ける。

「それから明日の夕方、用事であなたの住んでいる地区に行くんだけど

あんまり行ったことの無い場所だから、よくわからないの。

行く前にお宅へ寄るから、教えてもらえないかしら」

家だか道だかを教えるぐらい、何であろう。

わからないと言いながら、私の住むアパートは知っている矛盾には気づかず

二つ返事で承諾。


翌日の夕方、彼女はうちにやって来た。

「ここに住んでいる人に用があるのよ。

悪いけど付いて来てくれない?」

このアパートだとわかっているのなら、私が案内するまでもない矛盾には気づかず

子供を抱いて付いて行った。


…と、彼女はアパートのチャイムを次々と鳴らして、片っ端から牛乳の勧誘を開始した。

断る人もいれば、すんなり取る人もいる。

あれれ?と思いながらも、事態が飲み込めぬままUさんに付いて歩く私。


「みりこんさんの紹介なら、取ります」

やがてそう言う老夫婦が出現したので、私はびっくりして言った。

「紹介じゃないです、付いて来てと言われただけで…」

Uさんは「シッ!」っと言って私を遮ると老夫婦にパンフレットを渡し

どの牛乳がいいかと営業のクロージングに入った。


ようやく事態が飲み込めた私。

Uさんは、アパートで牛乳の勧誘をしたかったのだ。

住人の私が紹介するという恰好を装えば、商売がうまく行くからである。

前夜、初対面だったにもかかわらず、いかにも親しげなそぶりだったのはこれが目的…

夕方に約束したのは、住民が家に居る時間を狙ってのこと…

騙された…

私は頭を殴られたような衝撃をおぼえた。

しかしその時は、もう全室回った後の祭り。

Uさんはニコニコ、私は忸怩たる思いにかられたまま解散した。


以後、Uさんはバレーの練習に来なくなった。

彼女はチームに新人が入ったのを聞き、商売になると思って

その日だけ顔を出したと思われる。

封建村以外の地区に住む新人が入ったら、またひょっこり練習に来るのだろうが

私の後、新人が入ることは無かった。

ほとんど退部状態のUさんに、新しく入った私の名前や住所などの

細かい情報をわざわざ伝える人間がチームに存在するなんて

そしてそれがオバさんという生き物の習性だなんて、その時は考えが及ばなかった。


騙されただけで終われば、まだマシよ。

問題は、その後に起きた。

U牛乳店は勧誘と配達には熱心だが、集金はおざなりという悪癖があったのだ。


集金を毎月やらず、3ヶ月か4ヶ月に一度しか来ないので

牛乳を取った人々から、私に苦情が来るようになった。

何ヶ月分かを一度に払うのは、負担になるから困るという内容である。

牛乳屋の手先になった覚えは無いが、契約した人たちにとって私は手先と同じだ。

「みりこんさんの紹介だから信用していたのに…」

そう言われた時は悲しかったが、謝るしかなかった。


Uさんに抗議の電話をしようかと思ったが、声を聞くのもシャクにさわる。

しばらく躊躇していたら、当のUさんが集金に来た。

苦情を伝えると

「あなたが毎月集金して、うちへまとめて持って来てくれてもいいのよ」

サラッと言うので驚いた。

詐欺に遭ったような気分だ。

牛乳の宅配はその場で断り、残金を清算。

他の住人も徐々に宅配をやめ、彼女は私の近辺に現れなくなった。


「あんな店、じきに潰れるわい!」

私は腹立ち紛れにずっと思っていたが、あれから40年、Uさんと彼女の店は今も健在だ。

律儀な封建村の人々が取り続ける宅配と、病院や学校給食のお陰で細々と営業している。

現在もたまにひょっこり、彼女の悪い噂は耳にする。

やはり些細な詐欺的行為だったり、あとは嫁いびりの方面だ。


ともあれ何事も無かったように、私はママさんバレーを続けた。

「Uさんに騙された!もう誰も信じられないから辞めます!」

とでも言えば自分の気は済んだかもしれないが、たかだか牛乳程度で騒ぐのも恥ずかしく

誰かに話したところで、どうにかなるとは思わなかった。


なにしろ封建村なのだ。

死人が出ると、レンガ造りの小屋で遺体を焼き

時々裏と表をひっくり返しながら焼き加減を見るような所だ。

村人の結束は私が思う以上に強く、その中で先祖代々

現金を扱う商売をするUさんのような人は一種の特別扱いになっていて

何をしても看過される風潮があるのは、日頃からチームメイトの言動で感じ取っていた。

下手に騒ぐとこっちが悪者にされると思い、このことはチームの誰にも言わずに黙っていた。


2年後、私はキャプテンになった。

「若いんだから」

それを理由に押し付けられたが、いつもそう言われては用事が回ってくるので

別に何とも思わなかった。

親戚の監督は多忙という理由でとっくに辞め、違う監督に変わっていたが

それも別段どうということはなかった。

しかしキャプテンになった途端、難題が待ち受けていようとは思いもよらなかった。

《続く》
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人に振り回されない方法・3

2023年01月24日 09時25分28秒 | 前向き論
人に振り回される自分がつまらんヤツなのではなく

人を振り回す人間こそが本当はつまらんヤツだったことわかると

階段を一段、登ることができる…

登ってみたら、今までの自分はまだ力量が足りなかったと納得…

前回の記事を要約すると、こういうことになる。


ほんの一段登るだけで視野が広がり、あれこれとわかってくるものだ。

自分はみんなと仲良くするのが正しいことだと信じていたが

世の中には仲良くしていい人と、距離を取った方がいい人がいること…

自分は人のために何かするのが正しいことだと信じていたが

世の中にはその善意を利用して、人をいいように使う人がいること…

つまり考え方が、大人っぽく冷めてくる。


そして前からそこに居た人々…

つまり、ある程度の力量を持っている人たちのこともわかるようになる。

この人たちは付き合ってもいい相手と、そうでない相手をしっかり選別していること…

付き合ってもいい相手には優しいが、そうでない相手とは口もきかないこと…

つまり誰にでもいい顔をしないのが、身を守るコツらしい。


結局のところ、通販のセールス電話と同じなのだ。

聞かせる値打ちの無い相手に個人情報や胸の内をベラベラしゃべったら

通りすがりの他人から知り合いへと距離が縮まる。

話すことで自分をさらけ出して距離を縮めてしまったら、買わざるを得なくなる。

「人に振り回されない人は、不必要なことを言わないことを徹底している」

前回の記事のコメント欄で、しおやさんがおっしゃったように

何でもかんでもしゃべり過ぎるのは危ない。

嫁ぎ先の家族とは仲良くしなければならないと信じ、何でも話して距離を縮めまくった挙句

振り回され人生を歩んできた私が言うのもナンだけどさ。



で、その振り回され方だけど、一体どのような状態を振り回されると表現するのか

人それぞれ千差万別なところがあって、今ひとつわからない。

身内の方は、もう手がつけられない状態なので、諦め一択だ。


その一人、身内Aは、こっちの予定も聞かずに美容院や病院の予約

友人宅の訪問日時を決めて送迎させるのは当たり前。

断ろうものなら、ふくれて怒り狂う。


出かける段になったら、服を取っ替え引っ替え見せに来るが

結局自分の着たい物に落ち着く。

ようやく出られると思えば、トイレ。

それが終わると靴選び、そして杖代わりの傘選びに入るが

時間がかかって、またトイレ。

やっと出かけたら、あっちもこっちも寄りたい所だらけ。

そもそもスタートから出遅れているため、1日がつぶれる。


出たら出たでこれだけど、家ではテレビの解説も必要だ。

テロップを見て理解するつもりが無いので、質問のしっぱなしの答えっぱなし。

本人は耳が遠いから聞こえにくいと主張するが、違うね。

私が今日も従順かどうかを確認しているのだ。

こんなのが日常だけど、どうなんだろう。


また別の身内Bは、年だから習い事を辞めると言い出し

先生やお仲間に渡すお別れのお菓子を買いに連れて行って配る。

しかし日が経つと、やっぱり寂しいから辞めるのをやめると言い出し

先生が車で迎えに来てくれたものの、辞めるのをやめるのやめたと言って

その日は行かなかった。

が、次の日、やっぱり辞めるのをやめたのをやめたけどやめて

また行きたいと先生に電話したが、連絡がつかなくなる。


そこで私に「携帯が壊れた」という連絡があり、先生に着信拒否されたのが判明。

以後、頻繁な、そして長い電話が始まる。

「私は悪くない」という主張を延々と繰り返したあげく

「家でおさんどんしてるあんたに話したって、ものを知らないから無駄よね」

とキレるパターン。

これが日に何回も、毎日続く。

着信拒否したいのはこっちじゃ。


やがて半月後、先生の機嫌が直って再び行くようになるとケロリ。

全ては無かったことになる。

昔から慣れているとはいえ、こういうの、振り回されるって言うんじゃないのか。


どちらも自分の子供には、絶対そういうことはしない。

怒らせて嫌われたら、おしまいだからだ。

その分、身近な他人にしわ寄せが行く。


しかし身内は絶縁するわけにいかない。

何かあったら結局こっちにかかってくるので、付いたり離れたりするだけ無駄。

よって、諦めるしかないのである。


他人部門でも、そりゃあ色々あった。

全ては私の浅い善意と重篤な無知が原因で

騙されたり、物をかすめ取られたり、恥をかいたりしてきた。

人に話したら、「何てバカなんだ!」と呆れられるだろう。


あまりのバカさ加減に、我ながら絶望する。

人に利用され、いいように使われ、振り回されるのが私の運命だったのかもしれない…

いっそのこと、そう思って思考停止してしまいたいほどだ。

この辺で厳かにシメの言葉など申し上げて終わろうと思っていたが

話したくなったので聞いてちょうだい。

私のバカぶりが、おわかりになるだろう。



私の振り回され歴の起源は、ごく若かりし頃…23才の時に遡る。

夫の従姉妹の旦那がママさんバレーの監督をしていたため、彼からチームに誘われた。

このことはずっと前、記事にしたことがある。


そこは市内のとある地区に暮らす、中高年の奥さんばかりで結成された弱小チームだった。

私らが暮らしているのは元々が田舎町だが、特にその地区は

時代から取り残された村のごとき一角。

いまだに村八分の習慣が存在し、選挙の時にはよそ者を寄せつけないよう

二ヶ所ある村の入り口で村人が一晩中、焚き火をして見張ったり

その頃はなぜか村専用の旧式な火葬場を所持していて

死人が出たら当番の村人が交代で遺体を裏返しながら焼いたりと

何につけ封建の香り漂う特殊な地区。

従姉妹の旦那はこの村の出身なので、頼まれて監督になったようだ。


が、この町の生まれではない私は、若いのもあって何も知らない。

チームには母親のような年齢の人ばかりだし、バレーボール経験者がいないので

同年代の女同士にありがちなライバル心やポジション争いが無く

自分としては楽に溶け込んだつもりだった。

《続く》
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人に振り回されない方法・1

2023年01月16日 13時26分34秒 | 前向き論
前記事のコメント欄で、まえこさんが言ってくださった。

「人に振り回されない人生を過ごすために必要な術を書いて頂けたらうれしいです」

内容への希望を言ってもらえるのは、とてもありがたい。

結婚して以来、義父母に振り回されっぱなしの私が

人に振り回されない術を語るなんてお笑い種だけど

長きに渡る振り回され生活で、会得したことは確かにある。

ちょうど似たようなことを記事にしようと考えている最中だったので

僭越ながらお話しすることにした。



さて、私が振り回されるのは、義父母の繰り出すワガママではない 。

そんなのをいちいち気にしていたら、頭がおかしくなってしまう。

振り回されぶりにも、程度というものがあるのだ。

ほんの一例を挙げると

「入院するから仕事を辞めて世話をしろ」の類い。

つまり私の場合、就職や退職は親の都合が関与することがあった。


言うことを聞かなければ、義母が勤め先に電話をかける。

「あんたが雇うから、うちは迷惑している」

雇い主に苦情を言い、辞めざるを得ない状況に持って行った。

子供たちが両親に迷惑をかけないよう、土日祝祭日が休みで短時間労働

さらに夏休みや冬休み、春休みは長期欠勤できる融通の利く職場を厳選したつもりだが

彼らは、嫁が外で働くことそのものが気に入らなかったのだ。


私が働くようになったのは、外の空気が吸いたいだの

生き甲斐を見つけたいだのという漠然とした理由ではない。

夫の給料が少ないからだ。

将来どころか現在すら不安なので、働くしかないではないか。


というのも両親との同居が始まって以来、私は義母の散財に悩まされていた。

食費は折半と決めて同居生活に入ったが、経済観念の希薄な彼女は

食品なら何をどれだけ買っても半額は息子夫婦が出すと思い込み

持ち前の無邪気さで、買い物三昧の贅沢三昧へと暴走。

何度も話し合おうと試みたが、本人は非を指摘されたと思っていきり立ち

義父と義姉、親戚まで参戦して騒ぎになるため、止めることはできなかった。

同居すると精神的には厳しくても、経済的には楽になるかもと踏んでいたが大間違い。

食費を捻出するために貯金を切り崩すありさまで、同居の方がよっぽど物入りと知った。


夫の薄給に関する両親の主張は、我々の車やガソリン代、夫のゴルフ代などが

義父の会社の経費から出ていたため、その分を現金に換算したら十分な額だろうというものだ。

それはいかにも正論めいて聞こえるが、私には詭弁に思えた。

家族で経営する小さい自営業にはありがちなことで

親がしっかり給料を取り、子供は小遣い程度という習慣が抜けないのだ。


ここは時代に沿ったべースアップを要求したいところだが、それも難しい。

浮気と駆け落ちを繰り返す夫が、昇給に見合う仕事をこなしているわけがないじゃないか。

「給料がもらえるだけでもありがたいと思え」

義父に厳しく言われたら、それもそうよと思い、何も言い返せなかった。


そもそも両親は、息子の薄給と嫁の就職との関連性を認めるわけにはいかなかったのだ。

嫁が外で働くのを他人に知られると、「会社があるのに何で?」という疑問が湧くのは必然で

さんざん詮索した挙句、「会社には娘がいる」という結論に落ち着くものだ。

するとどうしても、娘の実家帰りが人の口にのぼってしまう。

昔の田舎は、そういうことに敏感だった。

嫁が他人の目に触れることは、そのまま娘の噂に繋がる。

彼らはそのことを非常に恐れていた。

そのため夫婦で入れ替わり立ち替わりの入院は

嫁に仕事を辞めさせて世間との繋がりを断ち切る、良い機会だったのである。


雇い主にしてみれば、子供が幼稚園や学校に行っている間だけ働く私は

あまり良い働き手ではない。

最初はそれで構わないと言われても、賃金を出していれば気持ちは変わってくるものだ。

親を敵に回してまで確保したい人材ではないので、私は簡単にお払い箱になった。


強制的な退職は過去、2回あった。

古い話だし回数は少ないが、仕事と人生には深い関わりがあるため

それを否定されるのは、人生を否定されるのと同じ気持ちになる。

よって振り回され度がディープだと思い、ご紹介した。



しかし振り回されるのが家族であれば、それは仕方の無いことなのだ。

結婚する時、相手のことは色々考えるが、親のことまではあまり考えない。

考えたってわからないし、相手の家族の皆が皆、良い人ばかりというわけにはいかないものだ。

気に入らなければ離婚するしかない。

義理親との関係が原因で離婚する人は、振り回されることに疲れ果てたからだと思う。


だったら家族は処置無しか…と絶望しなくてもいい。

これには時間という、確実な解決策がある。

向こうが先にいなくなるとわかっているのだから、それを待てばいいのだ。

ただし何もせず待つという簡単な方法だけに、解決の時期は明確でない。

何年後の何月何日に終了します…といった目標設定があれば

その後の計画も立てられようし、指折り数えて待つ楽しみもあろうが

そこまで細やかなサービスは付いていないのが残念なところよ。



そのように家で振り回されっぱなしの生活を送っていた頃

私は他人からも大いに振り回されていたものだ。

子供繋がりや趣味繋がり、物売りの仲介などで新しく知り合った人たちである。

私だけかもしれないが、若い頃って付き合って大丈夫な人とそうでない人の区別がつきにくい。

質より量といおうか、とりあえず付き合っておけ…という適当路線まっしぐら。

新しい刺激に有頂天となり、親しく交流するうちに嫌な目に遭って何度も砂を噛んだものだ。


今思えば、親しくなる相手のレベルが低かった。

ということは、私も同様のレベルだったわけよ。

見るからに賢い人と遊んでも、自分のアホを思い知るだけであんまり面白くなかった。

家で振り回されて疲弊していると、自分と同等か、幼稚な相手の方が気が張らなくて楽なのだ。

しかし、その人たちとは親しくなるのも早いが、疎遠になるのも早い。

家でも外でも振り回されて、忙しい時代だった。


その経験をふまえてわかったが、人付き合いには幾重もの目に見えない層があるようだ。

人間は同じ層の人としか出会わないようになっていて

その層が下の方だと、当たり前だが同じ下層としか付き合えない。

下というのは、一方的に悪いということではない。

若かったり経験不足だと、下の1年生からスタートするしかないらしい。


ともあれ下の層に在籍する限り、同じ層の人間としか親しくなれない。

下層は人間初心者ばかりの層なので、嫉妬深い人や愚か者もたくさんいて

いつもゴタゴタしている。

若ければ、そのゴタゴタも青春の1ページになるかもしれないが

マトモな人間であれば、やがてそのようなお仲間と交流するのがしんどくなるものだ。

その時は、上の層に行く時期が来た…そう思うといい。

普通に言えば人格、風格…

スピリチュアルな言葉で言えば霊格…

そういう格みたいなものをグレードアップを図るチャンスである。

《続く》
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一年の計…のはずだった

2023年01月10日 10時05分38秒 | みりこんぐらし
あ〜あ…

今年こそはブログの更新頻度を上げたい…

できれば毎日!と言いたいところだけど

できそうもないことに挑戦するわけにいかないから、せめて1日おきにでも…

毎年そうだけど、年頭にそう決意したのもつかの間

ズルズルと日は経って、これまでと変わらないペース。

早くも挫折だわ。



今年は年頭にあたり、もう一つ決意したことがある。

エレクトーンの処分。

これまで、何度も考えていたことだ。

しかしエレクトーンは2階にあり、これを下まで降ろすのは困難な作業。

男どもは手伝うのを嫌がるし、これは義父アツシが買ってくれた物なので

捨てるとなったら 義母ヨシコは逆上するに違いない。

面倒くさいので、先送りにしていたのだった。


話は一旦飛ぶが、先日、仲良し同級生5人で結成している通称5人会のLINEで

年末に記事にした街ピアノの変なおばさんのことを話した。

一緒に目撃したことのあるモンちゃんも参戦して、そりゃあ盛り上がり

マミちゃんは「これが初笑い!元気が出た!」と言う。

次に遭遇した時は動画を撮って送ることを約束したり

見学会の予定を立てたりと、楽しいやり取りは続いた。


こうなると、気に入らないのはユリちゃん。

「みりこんちゃん、もう9時だから、おねむの時間じゃない?

おやすみなさい」

突然水を差し、強制終了を試みる。

いつもそうだけど、自分が中心でないと許せないのだ。


皆、ユリちゃんがLINE下手なのは知っていて、慣れているので腹は立たない。

人からもらったり、人に作らせたり、人と外食で食べた料理や

嫁ぎ先の寺の行事なんかの自慢案件をしょっちゅう送信してくるが

素敵…すごいね…という反応が前提なので、しらけるのが定番。


しかも食べ物の方は、ライバル心をあおってお寺料理へのやる気を出させる目的であり

行事の方は、ユリ寺だけでなく嫁ぎ先のモクネン寺にも誘導して

料理をさせる目的とわかっている。

うっかり反応したら罠にかかるのは学習済みだ。

すぐに返信する者は誰もいなくなり、半日ぐらい経過した後

心あるマミちゃんかモンちゃん

あるいは横浜に住んで料理を作らされる心配の無いけいちゃんが

「ウンウン」や「へ〜」の絵文字をポツンと送信するのみになっている。


ともあれピアノおばさんにまつわる楽しいLINEが強制終了となり

寝る体勢に入ったその時、鍵盤つながりでエレクトーンのことを思い出した私。

音楽を理解しない家に嫁いだので、音の調節がしにくいピアノではなく

うちには消音のできるエレクトーンしか無い。

今年こそ、あれを捨てるんじゃ…私は誓った。


問題のエレクトーンがやって来たのは、40年近く前のこと。

株でボロ儲けしたアツシは義母と義姉に宝石、夫にはゴルフセットを気前よく買ってやった。

もちろん私には何も無い。

が、私には、アツシにとって目に入れても痛くない初孫という武器があった。

長男がヤマハ音楽教室に通い始めた頃で、家で練習する鍵盤楽器が必要だとアピール。

かくして、ヤマハのエレクトーンは届けられた。


長男がそれを弾いたかどうか、記憶は定かではない。

ごく短期間、私のおもちゃにはなった。

が、長年やっていたピアノと違い、エレクトーンは鍵盤を叩く手ごたえが無いので

じきに飽きて放置されたまま、現在に至る。


何としても、今年は処分する…

翌日、その決意を胸にエレクトーンのある部屋へ行き

これが最後と思って骨董品の電源を恐る恐る入れてみた。

楽器といえど、分類上は古い電化製品。

何十年ぶりかの通電は、怖いぞ。


点灯しないランプも幾つかあったが、一応、音は出た。

音の出る箇所と出ない箇所はあるものの

完全に壊れていないことは確認できたので、感電しないかヒヤヒヤしながら弾いてみる。


曲はミーシャの『逢いたくていま…』と、桑田佳祐の『SMILE・晴れ渡る空のように』。

この2曲、もちろん弾くのは初めて。

ミーシャの方は、幕末の江戸にタイムスリップした医者が活躍するドラマ『仁』の主題歌で

桑田佳祐の方は、東京オリンピックのテーマ曲の一つ。

どちらも歌詞、メロディ共に私の好みだったので、何度か聞いたら覚えてしまった。


何がいいって、好きな曲というのもあるが、転調が無いため意外に簡単なのだ。

その上、サビがゴージャスで迫力がある。

つまり最低限の労力にもかかわらず成果は大きめというところが

卑怯かつ横着な私にピッタリだ。

この2曲はぜひともレパートリーに加えておきたい。

どこかで弾くことはもう無いだろうから、レパートリーなんておこがましいけど

昔のポップスや映画音楽だけでなく、最後に少し新しめの曲が欲しいところよ。

そこでエレクトーンを捨てる前に、コードの確認をしたかったのだ。


あ、ちなみに映画音楽では『慕情』を弾くのが好き。


(主演のジェニファー・ジョーンズ…すいません、画像の出典ベースを忘れました)

映画は香港を舞台にした女医の不倫もので

ウィリアム・ホールデンが演じる相手の記者の男は朝鮮戦争で亡くなり

恋は強制終了という単純なストーリー。

私が生まれる前の古典だけど、ジェニファー・ジョーンズの上品な美しさと

テーマ音楽の流れるような優雅さがマッチして、こたえられんね。


新型の2曲は、考えていた通りうまくいった。

そうなると欲が出るもので、「今年は時々、エレクトーンを弾こう」と思う。

捨てる決意はどこへやら、またまた挫折よ。

こんな私ですけど、今年もよろしくお願いします。




僕たちもよろしくお願いします。
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手抜き料理・お雑煮

2023年01月05日 10時46分38秒 | 手抜き料理
明けましておめでとうございます。

旧年中は大変お世話になりました。

このブログを訪れてくださる皆様の温かいお気持ちをたくさんいただいて

とても幸せな一年でした。

ありがとうございました。

引き続きまして、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



さて、昨年12月。

いつものように同級生ユリちゃんのお寺で料理をした際

彼女のご主人モクネン君が、会食中の一同にたずねた。

「皆さんのおうちは、どんなお雑煮ですか?」


「うちは鶏です」

「うちは焼きアナゴ」

皆は順番に答える。

牡蠣とかブリとか出てくると思ったが、ほとんどこの二種類に落ち着いた。


変わったところでは、鶏の雑煮にあんころ餅を入れる人もあった。

香川県だか、お雑煮にあんころ餅を使う土地があるそうだけど

この人は地元の人。

一度やったら癖になり、今ではあんころ餅でないと物足りないそうだ。

面白そうなので、私も一度やってみたい。


他に珍しかったのは、料理番仲間のマミちゃん。

人参、大根、里芋、ゴボウなどの野菜だけだそう。

さすが、天才野菜料理人だ。


やがて、私が答える順番がきた。

「牛肉です」

ええっ?!…一同は驚く。

そうなのだ。

雑煮の話になると、たいてい何を入れるか聞かれる。

聞かれるから、答える。

で、驚かれる。

このパターン、もう慣れっこさ。


私の好みで牛肉を入れているのではない。

結婚した家では、牛肉だっただけ。

夫の祖父が三重県の人だったので、松坂に近いからか

雑煮は牛肉ということになっていたのだ。


最初は私もびっくりした。

実家では祖父の好みによって元旦がハマグリ、2日がブリ

3日が焼きアナゴと決まっていたので、肉を使うことが信じられなかった。

しかし大衆食堂の汁物みたいにカジュアルな味は

海うみしい実家の雑煮より食べやすく感じて、すぐに馴染んだ。


「牛肉?!」

モクネン君も細い釣り目を見開いて驚いていたが、祖父が三重県…と言ったら

「あ、松坂がありますからね」と納得し、「食べてみたいなぁ」と言った。

「いいですよ…寒いうちに、こちらで作りましょうか」

私は答えた。


牛肉の雑煮は簡単なので、以前から作りたい献立の一つだった。

しかし一度、ユリちゃんに打診したら顔色が変わった。

「牛肉はダメッ!予算がかかり過ぎる!」

その鬼のような形相とみみっちい発言に、私はかなり鼻白んだものである。

焼肉やステーキをやらせろと言うのではなく、たかが雑煮の具だ。

他の献立と支出のバランスを取って、予算内に収めるのは常識でねぇか。


が、モクネン君の許可があれば大丈夫だ。

しめしめ、これで2月のお寺料理は安泰じゃ…と思っていたら、彼は言った。

「お正月のお雑煮会はどうですか?」


ユリ寺では正月の3日、お寺で行う初勤行(はつごんぎょう)の後

檀家さんたちとお雑煮を食べる習慣がある。

お雑煮といっても豚肉団子と白菜の鍋物に、お餅も一緒に入れるカジュアルな形。


我々夫婦は毎年、このお雑煮会に参加している。

料理番のメンバー、マミちゃんとモンちゃんはお布施が必要と聞いて近づかないので

檀家さん以外はうちら夫婦だけだ。


始めの数年は、お経とお雑煮会に参加して帰るお客だった。

が、一昨年だかその前からか、作る側に回った。

記事にしたけど、「本場のチヂミを食べさせる」と言い出した韓国人の檀家さんがいて

その人と料理番の檀家さんとの調整をすることになり、早めに行ったのが運のつき。


以後、どうせやらされると思って早めに行くと

八百屋でも開くのかと思うほど大量の白菜や白ネギ、キノコ、大根なんかが

買って来たままの姿で山と積まれていた。

鍋のダシと豚肉団子はユリちゃんの兄嫁さんが下ごしらえをしてくれているし

後片付けは檀家さんが手伝ってくれるものの、夫や皆が初勤行のお経に参加している間に

一人で洗って切って盛り付けるのはけっこうな大仕事。

病院の厨房を彷彿とさせる重労働に正月早々、腹が立った。

大量に余るのを見越した野菜は今後の数日間

お寺人が個人的に食す鍋物の材料になるとわかっているからだ。

「どうせやらされるんなら、気持ちよくやりたい」

私は思ったものである。


だから正月のお雑煮会で牛肉雑煮を作れというモクネン君の提案を、私は快諾した。

4玉だか5玉だかの白菜を始め、大量の野菜をひたすら洗って切り続けるのと

牛肉雑煮を作る労働量はさほど変わらない。

いや、冷たい台所で冷たい水を使って延々と野菜の処理をするより

家であらかたの下ごしらえをして持ち込める後者の方が楽だ。


そういうわけで、私はお雑煮会の雑煮を作ることになった。

この近辺では異端らしき牛肉雑煮が皆の口に合うか否かは不明だが、かまうものか。

野菜洗いが無いだけマシじゃ。



そして当日がやってきた。

この日、なぜか長男とその彼女が手伝ってくれると言い出して、料理番は3人になった。

彼女はエプロンを持って来て、「何でも言いつけてください!」と張り切っている。

二人で準備や片付けを手伝ってくれたので、助かった。


会食の人数は総勢13名。

うちの一家4人とユリちゃん夫婦、兄嫁さん母娘、いつもの兄貴に

檀家さんはわずか4人。

年々、順調な衰退ぶりである。



問題の牛肉は、我が家と同じ物。


安いバラ肉やコマ切れでは雑煮の味が変わってしまうので、牛ロース一択。

グラム900円のをうちは3キロ、寺には別に領収を書いてもらって1キロ

年末に買って冷凍しておいた。



台所が寒いので、真っ先にダシを沸かして火の気を確保。


液体の昆布ダシとカツオ節でダシを取り、牛肉を入れてアクを取ったら

酒と薄口醤油をドバドバ、塩とミリンを少々。



参加者が何人であろうと、土鍋は三つと決まっている。


家で下ゆでした大根、金時人参、里芋をあらかじめ鍋に入れておく。

初勤行が終わったら、熱々のダシをこの土鍋に張って会食の席に運ぶのだ。

うちでは個別のお椀に注ぐので、鍋の場合、どうやろうかと考えたが

この方式以外に無さそう。



《トッピングのゆでた水菜とカマボコ》


彩りや味のバランスから、牛肉雑煮にこのトッピングは欠かせない。

これも家では個別のお椀に雑煮を入れてから飾るが、寺は鍋なのでそうはいかない。

そこで最初の一杯はカラのお椀に水菜とカマボコを入れておき、その上から雑煮を注いで

二杯目からは各自で好きなようにトッピングしてもらう方式を取った。



《牛肉雑煮・鍋バージョン》

ここにお餅を入れる。

お餅は毎年、個別のナイロン袋に入った餅もどき。

プラスチックの鏡餅の中に入っている、長持ちするやつだ。

あのプラスチックの鏡餅をバラして、中身を使う。

本当のお餅だったらもっと美味しいと思うが、予算もあろうから余計なことは言わない。



《ブリの照り焼き》


雑煮だけではナンだと思い、朝、作って持参。



《焼き芋》


主食兼おやつのつもり。

長男の彼女様がお切りになられた。

これも朝、アルミホイルに包んでストーブで焼き、持参。

肉を買った問屋さんは、超甘いサツマイモも分けてくれるのだ。

私には甘過ぎて、あんまり食べられない。

品種は紅はるか。



牛肉雑煮は大好評で、いつもはあまり食べないモクネン君を始め

ほとんどの人がお代わりをした。

来年も作ることになるかも。

ブリの照り焼きと焼き芋も、争奪戦。

他に食べる物が無いから、当たり前か。



食後の片付けが終わり、帰ることに。

ユリちゃんはいつものように、最後まで私が立て替えた材料費の清算を言い出さないので

こっちから領収書を出して、「お金くださいな」と言う。

息子たちも食事をいただいたので、請求するのは肉代だけにした。


ともあれ、こういうところ一つを見ても

彼女が口でありがたがるほど感謝してないのはわかる。

払わなくていいかも状態を狙っていると受け取られても、これでは仕方がないわね。


が、それはそれ、これはこれ。

感謝されたくてやっているわけではない。

自己満足、それでいいと思っている。
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