殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

似て非なるもの

2018年06月28日 21時21分43秒 | みりこんばばの時事
偶然とは恐ろしいものです。

こんなことって、あるんですね。



似て非なるもの‥

『名前』


圭(けい)さん。



慧(けい)さん。




『三菱』


元、三菱UFJ銀行勤務‥1年弱で退社。



日本郵船勤務‥三菱系。




『海』


海の王子。


海運の貴公子。







おかしいなぁ‥貴公子は僕のはずだったんだけど‥?



ねぇ、お母さま?

そうよ、圭ちゃん、あなたが一番。
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手抜き料理・こんにゃく&焼き豆腐

2018年06月27日 14時26分55秒 | 手抜き料理
コメント欄で、すみ子はんからお題をいただいた。

「こんにゃくと焼き豆腐の美味しい煮方」。


こだわりというのをあまり持たない私だが

こんにゃくに関しては、ちょっとうるさい。

どううるさいかというと、地元に暮らす一つ年上の男子

「こんにゃく屋のてっちゃん」が作るこんにゃくしか買わないのだ。


てっちゃんは中学、高校と野球部のキャッチャー。

大人びた物静かな少年で、彫りの深いイケメンだった。

余談になるが、中学で彼とバッテリーを組んでいたのが

その昔、私に交際を申し込んで苦しめたゴリラ男子。

その子は教師になった。


ともあれ歳月は巡り、てっちゃんはサラリーマンを経て

こんにゃく屋を継いだ。

さらに歳月は巡り、いつの間にか、うちの夫と仲良しになっていた。

てっちゃんの作るこんにゃくを買うのは、ほぼ使命のようなもの。


このてっちゃんのこんにゃくが、うまい。

なぜなら、昔ながらのこんにゃくだから。

黒くて、柔らかくて、煮ると外壁が白く変色するこんにゃく。

伝統を受け継いだというより、いい加減でテキトーで

力の抜けた昭和のこんにゃく。

数年前、てっちゃんのこんにゃくに切り替えてから

我が家のこんにゃく料理は明らかにおいしくなった。


市販のこんにゃくは、大きく三種類に分けられる。

まず「山奥村産の蒟蒻芋を使った手作りの自然派で〜す!」のタイプ。

淡い灰色で、硬くて、値段は割高だ。

そのまま茹でて食べると、こんにゃく好きにはいいかもしれないが

料理に使うと味がしみにくく、煮てもコリコリと硬い。

本人に、いや本こんにゃくに

料理と一体化して盛り上げようという謙虚さが無いので

ボケた味に仕上がる。


次に「怪しいで〜す!でも安いで〜す!」のタイプ。

安くするために、こんにゃくの材料を充填してから固めるらしく

袋から出すと、こんにゃくが袋の形になっている。

妙につるんつるんで、生のまま切ろうとすると

滑って切りにくいのが特徴。

はしたないほどの弾力と、味の素っ気なさでは

他に並ぶ者とて見当たらない。


そして、てっちゃんが作るような古風な製法を守っているタイプ。

袋の中に少量の水が入っていて、こんにゃくの形はしっかり長方形。

昭和のこんにゃくは、煮物で本領を発揮するように作られているため

柔らかくて口触りが良く、味がよくしみる。


つまるところ、こんにゃく料理の良し悪しは

こんにゃく選びに尽きる言っても過言ではない。

あなたの町でも、てっちゃんの店のようなこんにゃくが

見つかることを祈っている。


また前置きが長くなってしまった。

こんにゃく料理といっても、誰でも知ってる煮物や

手間のかかる白和えなどを除くとレパートリーはあんまり無いのよ。


『こんにゃくの七味炒め』

①下ゆでしたこんにゃくの裏表に網目状の切り込みを入れ

3センチ角に切る。

②こんにゃくをごま油で軽く炒め

少量の砂糖と醤油を入れて水分を飛ばす。

③から炒りの状態になったら七味をふりかけ、火を止める。

以上。


もう一品欲しい時や、お弁当のおかずの一つに

短時間でできるので便利。

先に牛、豚、鶏のどれかを炒めて取りのけておき

同じフライパンでこんにゃくを炒めた後

肉を合わせて煮詰めると、ちょっと豪勢になる。

肉と一緒に白ネギやピーマンを炒めたり

仕上げにネギをふりかけてもおいしい。


『牛スジこんにゃく』

①下ゆでして3センチ角に切ったこんにゃくと

牛スジを柔らかくなるまでひたすら煮込む。

②柔らかくなったら、3センチ角に切った大根を入れ

酒、砂糖、醤油で薄めに味付けし

隠し味として、大さじ1杯程度の味噌を入れて再び煮込む。

③大根が柔らかくなり、ダシが煮詰まったら火を止め

フタをして数時間放置。

以上。


これは冬向きの料理だが、牛スジよりこんにゃくがおいしいので

紹介させていただいた。

大根は、牛スジを柔らかくするための酵素担当として利用するが

「野菜も入っている」という安心感は大きい。

大根は煮過ぎると崩れるので遅れて投入し

ほどほどの柔らかさになったら煮込むのを止めるのがコツ。


隠し味の味噌は、味噌汁に使う普通の味噌でいい。

味噌も牛スジを柔らかくする酵素担当だが、入れるとコクが増す。

食べる時、ネギや七味をかけると

味付けや仕上がりはどうあれ、とりあえず居酒屋風を装える。


牛スジから出る脂が気になる人は、一晩冷蔵庫に放置して

翌日、上に白く固まった脂をはがして取り除くといい。

牛スジでなく、アキレスを使ってもおいしい。



『味噌田楽』

①下ゆでしたこんにゃくを薄い三角形に切って、鍋に入れる。

②ダシをひたひたに入れ、煮えてきたら酒と砂糖を入れてさらに煮る。

③ダシが半分ぐらいになってきたら

好みの味噌を味噌汁より少し多めに溶き入れ、再び煮詰める。

④味噌を入れたダシがトロトロになってきたら火を止める。

以上。


通常は田楽といえば、こんにゃくに甘味噌を塗ったものだが

こうして煮ても、田楽と言い張れば田楽になる。

仕上げに柚子胡椒を入れたり、ぶつ切りの白ネギを一緒に煮てもおいしい。



次は焼き豆腐だが、私の住む地方では

すき焼きに入れる特別な豆腐という認識で

あまりポピュラーな食品ではない。

病院のメニューで唯一、焼き豆腐が登場するのは肉豆腐。


『肉豆腐』

①牛肉、玉ねぎ、白ネギ、糸こんにゃくを少量の油で炒め

酒、砂糖、醤油を加えてすき焼きのように煮る。

②煮えたら焼き豆腐と、5センチほどに切った青ネギを入れて少し煮る。

以上。


焼き豆腐は他にも、味噌を塗って焼いた豆腐田楽や

煮物の登場人物の一人として、豆腐や厚揚げの代わりに使うと

崩れにくい特徴が生きる。

また、先のこんにゃく料理で紹介した牛スジ煮込みや

味噌田楽に加えてもおいしいと思う。
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手抜き料理・きらきらパン&かき氷

2018年06月25日 11時32分53秒 | 手抜き料理
コメント欄で、くぢらさんからお題をいただいた。

「おやつとか」。


そこで思い浮かべてみたものの

私はおやつと名のつくものをほとんど作ったことがない。

新婚時代にクッキーとシュークリームを2回ずつ

その次が、これから紹介する“きらきらパン”である。



現在は37才の長男が、小学校に上がった年の夏休み。

児童に配布された冊子、“夏休みの友”に

『きらきらパン』というおやつが載っていた。

このきらきらパンなるものを家庭で作れということらしい。

宿題ではなかったが、ネーミングに魅せられた母子は

さっそく作業にとりかかった。



『きらきらパン』

①卵1個、牛乳200CC、砂糖大さじ2杯

バニラエッセンス2滴を混ぜ合わせた液体に

6枚切りの食パン2枚を浸ける。

②食パンに液体がしっかり染み込んだら

バターを溶かしたフライパンで両面をこんがりと焼く。

以上。


なんだ‥フレンチトーストのことだったのか‥

そう気がついたのは、食べた時。

呑気な母子である。


きらきらパン、今は長男がたまに作って家族にふるまう。

37才のおっさんが大真面目に

「きらきらパン」と言うのを聞くと笑ってしまうが

多分、懐かしいのだろう。



さて、きらきらパンを初めて作って数年後

次に作ったものはみたらし団子だった。

人から団子の粉というのをもらい、挑戦してみた。

レシピは無く、“ヤマザキ製菓のみたらし団子3本入り”を目標に

ヤマ勘のみで作ったが、団子もタレもわりとうまくできて

好評をはくしたのは奇跡としか思えない。


以後のおやつ作りといえば、さらにその数年後。

次男の子供会でスポンジケーキを作る必要にかられ

仕方なくインスタントの素で作った。



このように、おやつ方面の経験は乏しい私だが

もしや、かき氷もおやつと呼べるのなら、これはよく作る。

夏になると家族や来客にも作るが

植木屋さんのおやつに出すと、非常に喜ばれる。


中でもよく作るのは、氷ぜんざいとミルクセーキ。

高校生の時、友達のピンチヒッターで少しだけ行った

喫茶店のバイトで覚えた。

芸?は身を助けると言うが、私にきつくあたり続けた亡き義父も

これだけは大好きで、家庭には一瞬の平和が訪れたものだ。


『氷ぜんざい』

①かき氷を中型のボールいっぱいに作り

缶詰の甘いアズキとコンデンスミルクをドバッと入れる。

②泡立器で軽く混ぜ混ぜし、スプーンでおしゃれなグラスに入れる。

以上。



『ミルクセーキ』

①ボールに卵黄1個と、多めのコンデンスミルクを入れ

泡立器で混ぜ合わせ、バニラエッセンスを数滴たらしておく。

②かき氷を中型のボールいっぱいに作り、①に入れて混ぜ混ぜ。

③スプーンでおしゃれなグラスに入れ、缶詰のチェリーやミカン

ミントの葉っぱなんぞを飾る。

以上。


グラスの大きさにもよるが、これで3〜4人分はできる。

かき氷はアズキやコンデンスミルクを入れたらどんどん溶けるので

多めに用意する必要がある。


冷たいものは舌が甘さを感じにくいため

アズキやコンデンスミルクは、恐れず思い切って投入してもらいたい。

ゆっくり味見をしたり、つぎ足していたら溶けてしまうので

甘いものは最初にしっかり入れるのがコツ。

それでも甘さが足りなければ、砂糖を加えるといい。


こういうものって元々身体に悪いんだから、作る時は容赦なく。

諦めが肝心。

おいしいので、癖になったら困るかもしれない。

健康志向もいいけど、時にはこんな氷製品で

家族の笑顔を引き出してみてはいかがだろうか。



冷え冷えついでに、我が家伝統のミックスジュースもご紹介しよう。

最初の頃は私の得意技だったが、夫の方がうまくなったので

近年は準備から後片付けまで完全に任せている。


『ミックスジュース』

①バナナ半分、缶詰のミカン半分、缶詰の白桃半分を

汁も一緒に冷凍庫で凍らせる。

②ミキサーに①と砂糖大さじ1を入れる。

③牛乳と水を半分ずつ、ミキサーの八分目まで入れてスイッチオン。

④15秒くらいで凍らせた果物がシャーベット状になるので

ミキサーが回りにくくなったら止め、溶けないうちに手早くグラスに注ぐ。

以上。


これで4人分前後できる。

うちではいつでも作れるように

バナナや缶詰は半分ずつにして、常に冷凍庫にストックしてある。


喫茶店で飲む、古き良きミックスジュースは

家で作る黄色いのと違って、淡いオレンジ色だ。

この色は“グレナデンシロップ”という、イチジクの色素。

凝りたい人は、これを手に入れて使ってみるといい。


注意点として、缶詰の汁は味と香りを決める大事な脇役なので

必ず使っていただきたい。

また、白桃を使うのは、黄桃だと匂いがきついから。

バナナも香りとまろやかさを出すために必要な材料だが

家にあるからといって多く使うと、粘りと臭みと泡が出てまずくなる。

自制して半分にとどめていただきたい。


水を加えるのは、牛乳だけだとクドいから。

「ミルキーでありながらサッパリ」を目指すには、水が必要だ。

牛乳と水の割合は、好みで調節していただきたい。


また、水の代わりに氷を何個か入れると

よりシャーベットらしくなり、これはこれでおいしい。

凍ってないバナナや缶詰を使う時は、氷を多めに入れてミキサーにかけると

スタンダードなミックスジュースとなり、これもおいしい。

イチゴの季節には、イチゴを凍らせて同じように作ると

イチゴジュースになる。


とは言うものの、私は冷たいものをあんまり食べない。

嫌いではないが、たくさん食べられない。

市販のアイスクリームを1個、食べてしまう実力すら無く

頑張っても半分がやっと。


だから氷やミックスジュースも味見程度で、一人前をたいらげることは無い。

やっぱり小柄で華奢だから?

すいません、冗談です。
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手抜き料理・冷しゃぶ

2018年06月23日 09時47分07秒 | 手抜き料理
冬‥忙しい主婦は、鍋物を味方に乗り切った。

材料を切って並べるだけで、あとは鍋が何とかしてくれる。

ものすごく忙しい時には、おでんという名の援軍もいた。

シチューと呼ばれる助っ人もいた。


が、夏はどうだ。

四季を問わず頑張ってくれるカレーの他に

思いつくのはそうめんと冷やしうどんぐらい。


しかし、彼らは真の味方ではない。

食べる者は涼しかろうが、作る者は暑い‥

家族はたいして喜ばず、栄養バランスも良いとは言えない‥

払う犠牲に見合った成果が得られないじゃないか。


麺類を茹でると暑いのは

大量の湯を沸かす時に発生する熱が原因である。

電磁調理器ならそうでもないが、ガスだと台所の室温は確実に上がる。

麺類に限らず、調理に使う湯の量を最小限にとどめるのは

夏の料理を楽しく行う基本である。


「野菜は、たっぷりのお湯でサッと茹でて色良くウンヌン‥」

料理本には、すべからくそう書いてあるが

たっぷりでなくても野菜は茹でられるし

よしんば多少色が悪くたって、それが何だというのだ。

煮物だってギリギリの水分で仕上げ、フタをして放置しておけば

材料の持ち味を生かしつつ、味はしっかりつく。



「下手の長糸(へたのながいと)」

裁縫の世界には、そんな言葉がある。

下手な人ほど、針に通した糸が長いという意味だ。


初心者は針穴に糸を通す作業を面倒がり

途中で補充しなくていいように糸を長く取る。

しかし長過ぎると、布の性質によっては糸がもつれたり切れたりして

かえって作業効率が下がる。


それに糸を長く取ると、ひと目縫うたびに

針を持った腕を右側へ大きく上げなければならない。

ひと針ごとに左側、つまり進行方向に向かって

斜め上に針を持ち上げるという裁縫の基本動作では

長い糸が引っ張りきれないのだ。


基本動作の逆を行えば、特に絹織物など上質な布だと

仕上がりに差が出るし、何よりその姿は見苦しい。

昔は皆、着物だった。

女が頻繁に脇を上げ、着物のたもとを揺らして針仕事をするのは

みっともない行為と嘲笑されていたのだ。


料理にも言えるのではなかろうか。

「下手の大鍋」

病院の厨房に勤めていた頃、つくづく感じて思いついたフレーズ。

初心者は適正な湯量がわからないため

大は小を兼ねるとばかりに、やたら大きな鍋で湯を沸かしたがる。

煮物なら、ザブザブのダシに材料を突っ込むところからスタートして

ひたすら煮詰めようとする。

こうして時間をかけ、光熱費を無駄にしながら暑がっているのだ。



前置きが長くなったが

そういうわけで麺類を信頼できない私にとり

夏の味方は冷しゃぶである。

湯を沸かして肉を茹でるのは確かに暑い。

が、湯の量は麺類の比ではない。

家庭なら、インスタントラーメン1個分の湯で十分だ。



『冷しゃぶ』

①鍋に湯を沸かし、すりおろしたショウガの絞り汁を入れる。

ショウガの量は3センチ角程度で十分。

②豚肉のロース、またはモモの薄切りを少量ずつ入れ

色が白く変わったらザルに取る作業を繰り返す。

③ザルに積み上げた肉を冷めるまで放置。

こだわる人は、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やすといい。

④食べやすい大きさに切り、レタスの千切り、キュウリ、オクラ

トマト、玉ねぎスライス、大葉、ミョウガ、茹でたモヤシ、ワカメなど

好きな野菜サラダの上に置いて、好みのタレでどうぞ。

以上。


「冷しゃぶって、茹でた肉を氷でしめるんじゃないの?」

これを教えた人は、たいてい聞き返す。

料理本で読んだ知識から、冷しゃぶは氷がたくさん必要で

ザルやボールをいくつも使う面倒メニューになっているのだ。


私も以前はそう思っていた。

しかし、病院の厨房で氷が不要なことを知った。

そもそも私の勤めた厨房には、製氷の習慣が無い。


病院のメニューはカロリーと予算の制約から、豚モモだったが

ショウガ汁が柔らかく仕上げてくれるので

「煮え過ぎて硬くなった」ということは無い。

入院患者は入れ歯の年寄りばっかりだ。

その年寄りに食べさせるのだから、柔らかくないわけがない。


牛肉でも大丈夫だが、安物は硬くなるのでロースが望ましい。

茹で時間はごく短めで、ピンク色になるかならないかのうちに

湯から上げる。

また、匂いが強いのでショウガ汁は多めに入れる。

が、そうまでして高い肉を食すより、いっそ別の料理で食べた方が賢明である。


冷しゃぶは、一皿で肉と野菜がたくさん食べられる上

ラップをして冷蔵しておけば、遅れて食べる者にもサッと出せる。

三世代同居で、家族の食事時間がまちまちという環境の私には

暑さという犠牲に見合うどころか、大きく上回る成果が得られる

信頼のメニューである。
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ドンファンに鬼姉

2018年06月21日 10時50分10秒 | みりこんばばの時事
『紀州のドンファン』

家に7億の現金があるとテレビで言っちゃったら

狙われるのは当たり前よ。

その割にセキュリティが甘かったら、もう必然ね。

だから犯人が誰だろうと、興味は無いわ。


だけどこのニュースを見て、何だか懐かしい気持ちになっちゃった。

今は亡き義父の友達に、こういう人、多かったのよ。

気さくでチャーミングで、不遜で、品が無くて、小さいお猿さんみたいな‥

簡単に言えば、豊臣秀吉ふうな人。

もちろん女性関係もお派手だったわ。


一緒にゴルフや旅行はもちろんのこと、困った時は相談に来たりして

義父もできるだけのことをしていたわ。

いい時はいいんだけど、長い年月の間には

波風の立つ経営者も出てくるものでしょ。

相談の内容は訴訟問題や相続問題、申告漏れなんかのヘビーなものが多かったわ。


それらを義父が解決できるわけじゃないの。

そんな力があれば、先に自分の会社をどうにかしてるわ。

だけど顔だけは広かったから、適任の人を紹介したり

詳しい人にたずねたり、あれこれ骨を折っていたものよ。


で、義父が寝付いた途端、彼らとの親交は途絶えたわ。

お見舞いはおろか、お葬式にも、どなたもお見えにならなかった。

そんなもんかもね。




『大阪で姉が弟を自殺に見せかけて殺害』

父親が創業した会社の役員をする姉が

やはり役員の弟を殺害したとされる事件。

建設系の業種に姉弟の確執‥他人事とは思えないわ。


この姉弟の父親は二つの会社を持っていて

本線の建設会社は40才の弟が

水道工事系の会社の方は44才の姉が、それぞれ社長をつとめていたみたい。

憶測だけど、業界の常識からすると姉の水道系は弟の建設系の下請けで

弟の会社より規模が小さかったんじゃないかしら。




決してよそ様のことは言えないんだけど

見たところ、あんまり羽振りが良さそうには見えないわね。


会社をきょうだいで分かち合うのは、モメる元なのよ。

骨肉の争いが普通で、平和な方がレアなんだから。

きょうだいなのに‥じゃないのよ。

きょうだいだから‥なのよ。

鬼の一匹や二匹、出てくるってもんよ。


こういう環境って、起業した父親は昭和のワンマン経営者で

子供は何不自由なく甘やかされて育ったと相場は決まってるわ。

そういう家の子が姉と弟だったら

きついお姉ちゃんと優しい弟の組み合わせもお決まり。

大人になって親が弱ってくると、当たり前のように子供が経営を引き継ぐけど

身についているのはプライドだけで

逆境の乗り越え方なんか、知るわけないじゃないの。


色々と問題が起き始めるのは、たいてい落ち目になってきた頃だわよ。

姉は考えると思うわ。

弟がしっかりしてないから、自分とこの仕事が減った‥

もしかして、嫁がセーブしているのかも‥

そうよ、あの嫁は前から気に入らなかった‥

弟の方に本線の会社を与えて、自分は下請けの貧乏くじ‥

お父さんはやっぱり弟の方が可愛いんだわ‥

悶々としながら、周りの人を憎むようになるものよ。


「もし自分とこだけ潰れたら‥」

そう考えると、居ても立っても居られないと思うわ。

お姉さんが独身だったら、死活問題よね。

弟に頭を下げて援助を頼むのは、姉として敗北。

弟だけならまだしも、嫌いな嫁に知られるのは耐えがたいはずよ。


いずれにしても不安を解消するためには

弟と入れ替わって、自分が本線に立つしかない。

年も年だし、いまさらよそで働くという発想は無いから

会社経営に執着してしまって

だんだん「弟さえいなければ」になっていく。


自分を無傷で残すなら、弟の自殺がベスト。

これ以外に無いわ。

そういうのを自己中って呼ぶんだけど

邪魔者を消して成り代わろうとするのは、韓流ドラマによくある筋書きね。


それにしても、練炭自殺を図ったとされるトイレのドアを

内側から密閉するために使った接着剤の容器が

トイレの中じゃなくて別の部屋から見つかったことや

火をつけなければ練炭自殺はできないのに

トイレにライターやマッチが無かったことから他殺と断定するなんて

刑事ドラマや探偵ドラマみたいだわ。

完全犯罪って難しいのね。
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5人組と寺

2018年06月17日 10時09分49秒 | みりこんぐらし
先日、同級生ユリちゃんの実家で行われたお祭の手伝いをした。

彼女の実家はお寺。

ユリ寺で催すこのお祭は、私たちが生まれた頃にはすでにあった。

仲良しの同級生マミちゃん、けいちゃん、モンちゃん、私の4人は

これまで祭を楽しむ側だったが

お手伝いの檀家が激減した今年から、楽しませる側に転向したのだった。


我ら4人の仕事は、主に台所仕事。

祭を手伝う人々の食事を作り、給仕を行う。

地元の商工会や観光協会の青年部に出す食事は

昼と夜とで、のべ100人分ほどだろうか。


メニューは鶏のから揚げ、マカロニサラダ、キュウリとワカメの酢の物

ヒジキの煮物、味噌汁など。

夕食は仕出しの弁当に、これらの残りを添える。

病院の厨房で働くけいちゃん、同僚だった私

それに旅館の娘モンちゃんにかかれば、これくらいは簡単だ。

ただし、自由にやらせてもらえればの話。


そう、お寺では檀家が一番偉い。

我らは初心者にして部外者という身の上であるから

シモジモとして、かしづかなければならない。

檀家様に失礼があってはならないのだ。

些細な食い違いで檀家の機嫌を損ねるのも怖いが

我々が気を悪くして、友情にヒビが入るのも困る‥

ユリちゃんはこの点を密かに心配していた。


けれども、それは杞憂であった。

当日の朝、ユリ寺の台所へ行ってみると

すでに仕事に取りかかっていた2人の檀家は、どちらもユリちゃんの伯母。

80代の彼女たちと私は、面識があった。

1人は中学のブラスバンドで後輩だった子のお母さんだ。

欠席の連絡が相次ぎ、残ったのがこの2人の身内らしい。


2人は檀家というよりも、ユリちゃんの伯母として我々を歓迎してくれ

和気あいあいとした雰囲気で、料理や給仕は進んだ。

が、ユリちゃんはまだ心配な様子で

会場セッティングの合間に、たびたび台所をのぞきに来る。

何がそんなに心配なのか、私にはわからなかった。


そのうち檀家のおばさんの娘や

手の空いたユリちゃんの兄嫁とその娘も手伝い始めた。

どんな場面の台所でも、人数が増えてくると出現するのは「かまど女」。

火のそばを離れない妖怪である。

煮炊きにかかわっていると、動かなくていいからだ。


ただしこの役は身体が楽な分、難しい。

味付けの責任も生じるが、的確かつ和やかな指示で

台所の司令塔となる経験と実力もさることながら

主催者により近いという高度な身分が必要。

これらの条件が揃わず、かといってやるべきことを見つける気働きも無いまま

とりあえず火のそばに立つことで

いっぱし働いたような気になっているのが妖怪かまど女である。


集まって料理をしたところ、何だかずっとゴタゴタ、バタバタして疲れちゃた‥

という場合は、たいてい妖怪かまど女が出現している。

善意の人間に食材を集めさせ、洗わせ、切らせて下ごしらえをさせ

ご当人は火のそばで待つだけなので、周りが忙しくなるのだ。

機会があったら観察してみるといい。

面白くもない集まりが、多少楽しくなる。


今回は残念ながら、我々の一味であるマミちゃんが、かまど女に変身。

どちらかといえばトロいので仕方のない面もあるが

遅く来たマミちゃんが変身する頃には、料理はほぼ出来上がりつつあったので

どうということもなかった。


そのうち私は手の足りない本堂の掃除に回る。

ユリちゃん、本当はお掃除係が欲しかったのだ。

料理は頼みやすいが掃除となると、下働き臭が漂って言い出しにくいものだ。


サッシを外して祭仕様にした本堂の掃除は、ものすごくしんどかった。

お手伝いの女性たちは台所に張り付いて誰も来ないので

私一人だったからだ。

これに備え、汗をかいたら次々と脱皮できる服装で臨んだものの

アセモができて、後から少し後悔した。


やがて夕方になり、祭が始まった。

町民が続々と集まってお寺は賑やかになり、台所は俄然忙しくなった。

ユリちゃんの心配は、さらに増している様子だ。


理由をたずねようとしたところで、ふと思い当たる。

さっきから、何で急に忙しくなったのか、疑問に思っていた。

忙しくなったのは、一人の女性が台所に出入りするようになってからだ。

その人の名は美和子ちゃん。

江戸時代から、ユリ寺の総代をつとめる旧家の長女である。


美和子ちゃんは二つ年上で、中学のブラスバンドの先輩。

しかも彼女の弟は我々の同級生。

お互いにまんざら知らない仲ではないという間柄だ。

しかし中学で見ていた、おっとり美人の美和子ちゃんと

その日、何十年ぶりにお寺で会った美和子ちゃんは別人のようだった。


彼女は総代の娘として、夕食に配る弁当を受け持っていた。

台所脇の座敷に置かれた弁当と、名簿を照らし合わせ

一個でもミスが生じないようにしたいらしかった。

が、ご自分は名簿を片手に名前を叫ぶのみで

一個一個、宛て名が書かれた弁当を探し出して運ぶのは台所の人たち。

美和子ちゃんは弁当の受け渡しが終わると、名簿に赤ペンでチェックを入れる。


美和子ちゃん、そこまで綿密にやりながら

やっぱりおトシなのか、名簿と弁当の数がどんどん合わなくなる。

すると美和子ちゃんは、キーキー怒るのだった。

キーキー言いながら、他の仕事にも口を挟んで引っかき回す。

それが彼女の癖らしかった。


ついにラスボス、登場。

ユリちゃんが本当に心配していたのは、これだった。


弁当に振り回されるうち

クジ引きの受付を交代してほしいと要請があったのでホイホイと抜ける。

面倒くさくなるとすぐ別の所へ逃げてしまう

私のような「フケ女」も、かまど女といい勝負だ。


ちなみにクジ引きは、この祭の名物。

祭が近づくと、500円の寄付につき1枚のクジがもらえる。

景品は電化製品や自転車を始め、雑貨や食品など多種多様。

町民はそのクジを引きに、祭を訪れるのだ。


私は水を得た魚のごとく、受付に没頭。

お手伝いのご褒美に、私もクジを1枚もらって引いた。

この間、さんざん悪口を言った天罰なのか、当たったのは日清製粉の小麦粉。

ガビ〜ン!!


祭は終わり、後片付けの後は打ち上げ。

台所に戻ると、何やらいや〜な雰囲気が漂っている。

「間に合わないじゃないのっ!」

打ち上げのモツ鍋に使う湯が沸いてないことを

ラスボスから厳しく責められている台所要員一同。

祭の主催者はユリちゃん夫婦だが、打ち上げの主催者は美和子ちゃんなのだ。


家庭用のコンロなので、何十人分もの大量の湯はなかなか沸かない。

マミちゃんをかまど女にしたまま放置したからだ。

「モツ鍋用の湯を早めに沸かしておこう」

なんて、思いつくわけがない。


深夜11時、解放された我々は家路につく。

私がクジ引きへ逃げている間に色々あったらしく、皆は口を揃えて言った。

「何?あの美和子さんて人!」

「命令ばっかりして、勝手にヒステリー起こして!」

「人をアゴで使って、腹立つわ〜!」

皆は口々に怒りをぶちまける。


ラスボス美和子のような女性

私の生活圏内にはゴロゴロいるので珍しくもないが

いち早く逃げた身で、余計なことは言わないに限る。

「ごめんね〜、大変だったね」とねぎらう私だった。
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近時事二題

2018年06月12日 13時11分04秒 | みりこんばばの時事
《東海道新幹線殺傷事件》

新幹線にも安心して乗れない時代になっちゃった。

私は出不精だけどね。

年寄りを抱えていると、なかなか出かけられないものよ。

お仕事やご旅行に忙しい方は、気をつけていただきたいわ。


こういう通り魔的犯行があると、いつも思うのよ。

逮捕された直後の犯人って、たいていホッとしたような

落ち着いた表情をしてるのよね。


何かが取り憑くんだと思うわ。

そいつはずっと耳元でささやき続け、そそのかすの。

もう、やらなきゃどうにもならなくなるまで。

人はそれを狂気と呼ぶ。


で、やらかしちゃったらパッと離れる。

離れた後だから、普通の顔に戻ってんのよ。

でもそれは自己責任。

何でも人が悪いという考えで、不平不満で暮らしていると

似つかわしい物体が寄ってくるのよ。

犯人自らが招き入れたのよ。


「ムシャクシャしていた」「誰でもよかった」

こういうことをした犯人は、後でそう言う。

だけど誰でもよかったと言うわりに

被害者は必ずいい人、ちゃんとしてる人、これからの人。

凶刃に倒れるにはあまりにも惜しい人が、犠牲になる。

犯人の責任能力が問われて、罪が軽減されたら腹立つわ。



《幼女虐待殺人》

もうね、胸が痛いわよ。

被害者の女の子がかわいそうとか、悲しい事件とか

そんなんで片付けないでよ!と思ってるわ。


わずか5才で、あれだけの反省文が書けるのよ。

頭のいいお子さんだったと思うわ。

一方で、生命がかかっていたから

あそこまで書けるようになったとも言えるわ。

書かなければ、ひどい目に遭わされるからよ。


5才の女の子が、それほどの目に遭っていたと思うと

悔しくて残念で仕方がないわ。

虐待死と一口に言うけど、これは継父と実母によるいじめ殺人よ。

子供が親に殺される事件が起きたら

私はまず継父かどうかを見るんだけど、残念ながら確率高いわ。

心から、女の子のご冥福を祈ります。


最初に「例外もある」と、一応お断りしてから本題に入るけど

子連れの再婚って難しいのよ。

再婚相手との間に子供が産まれたら、なおさらよ。

誰だって、自分の子供がかわいいに決まってるじゃないの。

自分の子供が可愛ければ可愛いほど

配偶者が他人とこしらえた連れ子が邪魔に思えるものよ。


男性は特に、この気持ちが強いの。

女性ほど人目や評判を気にしないのもあるけど

本能だからどうしようもないのよ。

異分子を排除しようとする本能よ。


コトの重軽にかかわらず、身近な例はたくさんあるわ。

その中の一人、以前義父の会社で働いていたA君は

優しくて穏やかな、どちらかと言えば女性的な中年男性。

15年ほど前に女の子が一人いる女性と、お互いに二度目の結婚。


A君は奥さんの両親と同居してマスオさんになり

二人の間には女の子が生まれたけど

A君は連れ子も我が子も分け隔てなく、平穏に生活している‥

ように見えたわ。

でも彼から話を聞くと、実は違ってた。


自分の子供より奥さんの連れ子の方が8才年上なんだけど

A君はその子が髪を伸ばしてるのが苦痛だと言う。

落ちている髪の毛1本が気にさわる‥

洗面台で髪の毛の付いたブラシを見ると、虫酸が走る‥

長い髪を毎日シャンプーするガス代が惜しくて

シャワーの音が聞こえるとイライラする‥

「切ればいいのに」

A君は連れ子を憎むことはできなくて、髪を憎む。

私の知る限りでは、唯一の例外だと思っていたA君の本心を知って

密かに驚いたものよ。


何を細かいことを‥A君は異常なんだ‥

おおかたの人はそう思うでしょうね。

でも私にはわかるのよ。

髪の毛って、嫌悪のきっかけになりやすいの。


髪だけじゃないわ。

継子の食べるご飯の一粒一粒、継子の踏む畳の減り具合が気になる。

果ては継子の吸う空気まで惜しい。

まさかと思う事柄で、いきなり嫌悪感が湧いてしまう‥

それが義理の関係というものなのよ。


嫁舅の関係も似たようなものね。

異分子排除の本能には個人差があるので

それが強い家庭に入ってしまったら悲惨よ。

誰でも自分のやってることをイジメとは思いたくない。

そこで「教育」だの「仕込む」だの、もっともらしい理由を付けるものよ。


もっともらしい理由を付けて萎縮させ、失敗を待つ。

そしたらしめたもんよ。

言いつけに背いた、反抗したなどの、またもやもっともらしい理由で

思いっきりいたぶることができる。

だから仕打ちが残酷になるのよ。

こういうことを知らないままに生きて来られた人は、幸運ね。

その幸運を大切にしていただきたいわ。


それでもお互いに大人同士なら戦えるし、自分の意思で関係を解消できる。

だけど片方が幼い子供だったら、一方的にやられ放題よ。

配偶者を愛しているだけではどうにもならないことって、本当にあるのよ。

何をきっかけに変わるかわからない、非常に危うい立場‥

語弊を承知で言うけど、それが継父だと思うわ。


A君の場合、優しくて我慢強いという資質があったし

マスオさんなので、周囲に家族の目があった。

奥さんがしっかりしていて、確実な収入があるのも幸いしたわ。

だけど核家族の密室だったら

「髪の毛が嫌」ぐらいで済んでいたかどうか。


児童相談所、甘いわ。

幼稚園や学校も甘いわ。

警察と連動しなければ、こういう事件は増えるばかりよ。

対象になってる子供に会えない時点で、すでに異変は起きているんだから。

普通の家庭で育っている人には、わからないでしょうけどね。

途中で本能が出てきて変わるなんて、本人すらわからないもの。


私は予防が大切だと思ってる。

再婚して子供が生まれるのはけっこうなことだけど

それで家族の絆が深まるなんて思ったら大間違い。

継父の本能が発動するきっかけかもしれないことを

母親は肝に銘じていただきたいわ。


A君?

2年前、義理の娘さんが結婚して孫が生まれたの。

当初は「ちっとも可愛いと思えない」なんて言ってたけど

近頃は孫のおもりや保育園の送迎を買って出て、忙しそう。

すっかり孫にメロメロのじいじになりきってるわ。

何がどう変わるか、本当にわからないわね。
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神風・3

2018年06月09日 07時32分49秒 | みりこんぐらし
夫の絶望を知るよしもなく、藤村は着任した。

彼は昇進に張り切っていたが

さりとて何をしていいのか、わからない様子。


夫の方は渋々ながら相手をしているうちに

腐った嘘つきの松木氏より

純正の昼あんどん、藤村の方がずいぶんマシだと感じたらしく

じきに自ら歩み寄った。

藤村に土建業の経験があるのも幸いした。

生コン会社出身で、生コン以上に頭の固いの松木氏より

土建を知る藤村の方が話が通じるからだ。



そのうち5月が終わり、問題の6月に入った。

いよいよ今月は入信しなければならない。

教団の会館へ連れて行かれ、入会金の4万円と引き換えに

チャチな御守りをしたり顔で授けられ

聞くのも恥ずかしいお経だか祝詞だかを唱和させられる夫‥

ああ、想像するだけでもフ・ビ・ン。


が、考えても仕方がない。

自分が身代わりになる気はさらさら無いのだ。

まかり間違って夫が熱心な信者となり

教団の方針に添って、ワシも無農薬の米や野菜を作るだの

教団が推奨する生け花をワシも習うだのと言いだしたら

見ものかもしれない。

そして教団の教え通り、家庭第一の男になったら笑わせるではないか。


ただ、金持ちにはなれそうもない。

以前、ダイちゃんに言われて会館へ赴いた時

豪華絢爛な建物とは裏腹に、ズラリと並んだ信者たちの車は

見事に古いポンコツばかりだった。

皆さん献金に忙しいのか、車どころではなさそう。


会館に入る時は、あらかじめ持参するように言われていた靴下を

老いも若きも重ね履きしてスリッパ代わり。

高そうな木張りの床に、傷が付くのが惜しいらしい。

その貧乏くさい発案に、頭がクラクラした記憶がある。


まあ、考えたってどうにもならないことは考えないに限る。

こだわって考えるほど、事態が悪化するのは何度も経験してきた。

ダイちゃんから「そろそろ‥」と言われるまで、忘れていようと決めた。



それから数日後、神風は吹いた。

本社の若い社員A君から夫に電話がある。

「ヒロシさん、大ニュースです!」


A君の話によると‥

ダイちゃんはこの春に新卒入社したB君の家へ行き、宗教の勧誘をした。

驚いたB君は会社を辞めると言いだし

それを聞いた親が怒って、本社へ抗議に行った。

社長はダイちゃんを呼んで

勧誘をやめるか、会社をやめるかの二者択一を迫った。

息子がまだ大学生のダイちゃんは前者を選び

二度と社内で勧誘しないことを社長に誓った。

‥ということであった。


後日、ダイちゃんは担当していた支社や支店の管理から外された。

この中には我が社も含まれている。

彼がそれらを回って、息抜きや勧誘をする機会は無くなったのだ。

つまりダイちゃんは、もう来ない。

この措置は、宗教勧誘のペナルティーだと格好がつかないため

「今後は若手中心で行う」という名目上の理由が付けられた。


社則には、OBを含めた社員同士の宗教勧誘を

全面禁止する項目が追加された。

OBと付いたのは、ダイちゃんの定年が来年に迫っているからだ。

彼の勧誘活動は未来永劫、封じられたのである。


それにしてもダイちゃん、新入社員の家に行くなんて

やはり狂ったとしか言いようがない。

これが宗教の恐ろしさだ。

神風というより、自滅かも。


彼が去年あたりから、おかしくなってきたのは知っていた。

我々がなかなか首を縦にふらないので、イライラしたのだろうが

全く別のことで急に興奮して怒り出し、本をテーブルに叩きつけたり

書類を投げたりした。


怒号を発しながら暴れる光景は、見苦しいものだった。

が、我々は義父の激昂で慣れているため

壊れたダイちゃんを冷ややかに眺めていた。

あの時、怖いと言って嘘泣きでもしてやればよかったと

後で残念に思った。



ダイちゃんが社長に呼ばれた時、河野常務は彼をかばったという。

「教団では女房の方が身分が上だから、焦っていたんですよ」

その話を聞いた我々一家は、口を揃えた。

「やっぱり‥」

これには二つの意味があった。

以前から感じていた通り、河野常務は何もかも知っていた「やっぱり」と

必ずダイちゃんを擁護するに違いない「やっぱり」である。


うっかり告げ口しなかったのは正解だった。

深読みになるが、もしや常務が我々の困難までも知っていたとなると

夫がダイちゃんの悪口を言いつける人間かどうか

試していたのかもしれない。

一方で、何も知らない第三者の藤村を常駐させ

ダイちゃんを勧誘しにくい状況にしたのかもしれなかったが

常務は今までも沈黙を守ったし、これからも何も言わないだろうから

真相はわからない。


いずれにしても「困ったことよ」と思いつつ、目をそむけていた事柄を

人の口によってほじくり返されるのは、誰しもいい気持ちではない。

常務がどんなにいい人でも

ダイちゃんのやっていることが明らかに悪いことでも

究極の選択になった場合、付き合いの長い方が勝ち

常務は我々の敵に回っただろう。


社長への抗議も、新入社員の親だったから進展したのだ。

人材育成がマイブームの社長は

会社の未来を担う若者に手を出したから動いた。

年寄りの我々がやったところで

「善処します」とあしらわれて終わったはずである。


「よそから来て、さんざん世話になっておきながら

何をえらそうに揉め事を持ち込むのだ」

正邪に関係なく、人の心は必ずこうなり

我々はトラブルメーカーの扱いになったはずだ。

継子創業47年、嫁の営業38年

私はこの心理を思い知っている。

義父の会社を本社に救ってもらった恩義がある我々には

やはり神風を待つ以外、方法は無かったと思っている。


変なのばっかり雇って、どうなっとるんじゃ‥

人はそう思うかもしれない。

けれども会社組織というのは、こういうものである。

1割のまあまあと、3割のお人好し

あとの6割は勘違いの昼あんどんで構成されている。

この割合に変化が起きれば、急成長か倒産だ。


これから先がどうなるかわからない。

このままかもしれないし

ダイちゃんは早々に許されて元通りになるかもしれない。

やれやれ、やっとダイちゃん問題が片付いたと思っていたら

今度は還暦を過ぎた夫の肩叩きが始まるかもしれない。

が、どうなってもかまわない。

夫を宗教の人身御供に捧げなくて済んだのだから

贅沢は言わずにおこうと思う。


そんな私のさしあたっての興味は、藤村の結婚。

フィリピーナのテレサと無事ゴールインできるのか。

この物見高さは治りそうもない。

《完》
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神風・2

2018年06月06日 13時16分29秒 | みりこんぐらし
「6月に入信します」

夫がそう言ったら、ダイちゃんは大喜びで帰ったという。

根性なしに耐えさせるのは、やはり無理だったのだ。


しかしそれについて、怒る気はしなかった。

このことを報告する夫が、肩の荷を下ろしたような

ホッとした表情をしていたからだ。

ゆっくり話を聞いてみると、夫には夫なりの考えがあった。

「入会金の4万が欲しいんじゃ。

払えば満足するんなら、くれてやる」


入ってしまったら、そんなわけにはいかない。

頻繁な集会や勉強会、その度に生じる献金

初夏と年末には泊まりがけで滋賀県の本部へ集合

それに我々がやられたのと同じ、信者の勧誘義務が待っている。

これらを説明したが、夫は軽く言う。

「集まりには行かん。

面倒臭かったら、付いて行かれん言うて辞める。

4万捨てて楽になるんなら、その方がええ。

ワシ一人で入って、後は食い止める」

その発言の裏に、次男への心配が多く含まれているのが伝わってきた。


ずっと事務所にいる夫と違い、次男は現場で実働している。

父子がダイちゃんから同じ嫌がらせを受けても

精神的負担は次男の方が大きい。

経理一筋、机が仕事場のダイちゃんには

この残酷と危険性が実感としてわからないのだ。

嫌がらせを早急に止めるため

夫にはこの方法しか思いつかなかったのである。

私は夫の決断を尊重することにした。


入信すると聞いたらゲンキンなもので

ダイちゃんはそれきり、4月中には来なかった。

夫と次男への嫌がらせも途端に止み、会社には平和が訪れた。


5月になった。

4月に夫が入信の約束をした時、あえて飛ばした5月。

なぜ翌月の5月を飛ばして6月と言ってしまったのか

夫に聞いてみたが、本人もわからないと言う。

そこで私はこの5月に、何かあるような予感を持っていた。


初旬はゴールデン・ウィークとその名残りで、会社は静かなものだった。

連休明けに請求書の作成日があり、ダイちゃんは我が社を訪れたが

上機嫌この上ない。

来客が多かったこともあって、宗教のことには触れなかった。


中旬になって、河野常務から夫へ連絡があった。

「明日の10時、そっちへ行くからな。

人事の打ち合わせがあるんだ」

いつもひょっこりやって来る常務が、時間や内容をわざわざ言うのは珍しい。

それを聞いた夫は、緊張している様子だった。


そして当日。

常務の話は思いも寄らぬものだった。

「ここに藤村を常駐させることになった」


藤村氏を覚えておいでだろうか。

昨年、夫に焼肉屋での忘年会をセッティングさせておきながら

前日になってドタキャンした、でくの坊である。


彼は自営していた土建業を倒産させ

次に始めたペットショップも早々に潰し

53才になって本社の中途採用に応募した。

幸運にも採用されたが、配属された勤務先で使い物にならず

本社は彼を持て余していた。


あれから彼のプロフィールが、本人の口によって徐々に明らかとなった。

そのいにしえ、高校球児だったのが自慢で

体だけがやたら大きいスポーツ馬鹿。

現在、彼にとっての最重要課題は仕事ではない。

交際中のフィリピン人ホステスとの結婚である。

ちなみに結婚したら、これで4回目。

こんな男がまともに仕事をこなせるはずもなく

業を煮やした本社は、彼の勤務先に一番近い我が社へ配属して

とりあえず様子を見ようと決めた。


藤村の行き先に我が社が選ばれたのは、仕事がユルいからだ。

創業50年で廃業した義父の会社の取引がいまだに続いており

大口顧客のいくつかには、夫の親戚が絡んでいる。

古風な田舎という地域性もあって

営業をかければ売り上げが伸びるという可能性がほとんど無い

静けさ、のどかさ。

昼あんどんの居場所といったら、うちしか無いではないか。


藤村はこの時点で、本社営業部付きの営業課長に昇進した。

これは、以前うちにいた営業のできない営業課長

松木氏と同じ立場である。

営業ができない松木氏は、遠くの生コン工場へ

工場長として飛ばされて久しい。


藤村は給与その他の待遇はそのままで、名刺の肩書きだけが変わった。

ヒラの名刺に『長』を付けたら、何かと動きやすい‥

この手法は昔から行われている本社の方針だが

藤村は次の給料日に失望することも知らず、紙上の昇進を喜んでいた。


浮かれる藤村とは逆に、夫はショックに打ちひしがれた。

焼肉屋のドタキャンで自分に大恥をかかせた憎い藤村と

何が悲しゅうて一緒に仕事をせにゃならん。

あまりのザンネンに夫は連夜、夢にうなされるのであった。

《続く》
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神風・1

2018年06月05日 07時46分59秒 | みりこんぐらし
本社の経理部長ダイちゃんは、我が社の経理を見てくれている。

そして我々は、彼が信じる新興宗教の勧誘対象。

この関係は、倒産しかけた義父の会社をたたみ

本社と合併した6年前から続いている。


最初のうちこそ色々と教えてもらったが

この数年、ダイちゃんが来なくても請求書の作成に支障は無い。

けれどもダイちゃんは来る。

会社を離れての息抜きと、宗教の勧誘‥

一粒で二度おいしいのだから、この習慣を手放すわけがない。

昨年の10月、本社がパワハラ撲滅運動を始めて以来

我々への勧誘は少しおとなしくなったが、今年に入ってまた復活した。

休止期間があった分、以前より執拗だ。


が、我々一家はこれに耐えると決めていた。

私と長男、次男はそれぞれ、神風が吹く予感を持っていたからだ。

根拠はダイちゃんの言動。

どんどん過激になってきた。

教団から人数を増やせと言われているのか、焦っているようだ。


焦る敵は、じらせば自滅するケースが多い。

「今は動かず、とにかく耐えよう」

我々一家は、そう励まし合うのだった。


社長以下、社内の誰かに言いつけたってダメなのはわかっている。

組織というのは勤続の長い方をかばうものだ。


他には労基に訴える、訴訟を起こすという手もある。

これをやって、一家でクビになってもいっこうにかまわないけど

外部に漏らして本社に恥をかかせるのは本意ではない。


大のオトナとして納得できる、何か別の道があるなら‥

その思いが高じての神風気分かもしれないが

物見高い我々は、神風見たさに穏便策を選択した。

神風が吹く直前、状況がさらに悪化するのはお決まりなので

それに耐えることも誓い合った。



暦は4月に入った。

「さんざん人の世話になっておいて、恩返しをしないのはおかしい」

その頃のダイちゃんは、我々にそんな屁理屈を言うようになっていた。

焦りはいちだんと進んだようだ。


「ねえ、奥さん、そう思わない?

ちょっと仕事の手を止めて、ちゃんと話そうよ」

ダイちゃん、いつもにも増して真剣だ。

どうあっても今日、入信を決めて帰りたい様子である。


「奥さん、どう思う?

奥さんは人の世話になったら恩返ししたいと思うでしょ?」

ダイちゃんが改めて問うので、私は答えた。

「お世話になったのは確かですが、入信が恩返しになるとは思いません」


「家族で会社の繁栄を祈ることが、君たちにできる恩返しじゃないか」

そう主張するダイちゃん。

「働いて数字を上げることが、恩返しだと思っています」

「それもだね、入信すれば一気に上がるよ。

今は僕だけだから弱いけど、人数がまとまれば必ず良くなると思うよ」

スイミーか。


「そうは思えませんけど」

「せめて陰ながら、自分たちにできることをやろうという気持ちは持てないの?」

「持てません」


「謙虚さが無いっ!」

ダイちゃんはついに怒鳴った。

何が謙虚さだ‥笑わせるんじゃねえわ‥

と言いたいが、言わない。

こういう時こそ、静かに対応。

相手が乗ってこなければ、怒鳴ったことが恥ずかしくなるものだ。

オバハンとはいえ、一応は女性に向かって激昂したことを

後で存分に恥じるがいい。


「じゃあ奥さんは、入る気が無いわけっ?」

「最初から言ってるじゃないですか‥入りませんよ」

ダイちゃんはよっぽど頭にきたらしく、無言で立ち上がると帰って行った。


以後のダイちゃんは懲らしめのつもりか

小さな事柄を持ち出しては夫をネチネチと追求するようになった。

早い話が嫌がらせ。

嫌がらせなら反論した私にすればいいのだが、とにかく夫を集中攻撃。

なぜなら、おとなしいからだ。


夫が持ちこたえられるか心配していたが、ここで思わぬ事態が起きた。

夫でなく、次男が円形脱毛症になったのだ。

この子はストレスが髪に来るタイプ。

彼も人知れず、ダイちゃんにネチネチやられていた。

長男は私に似てキツい性格なので明らかに避けられ

人懐こい次男に被害が及んだのだった。


次男は依然として明るく、神風を待つと言う。

「こうなったからには神風は近い」

と自信たっぷりだ。

とりあえず神風より髪なので、長男の親友、理髪師トンジによって

ハゲた部分が目立たない特別アレンジのソフトモヒカンに整えられた。

夫は、次男の髪の異変とダイちゃんの意地悪が

かなりこたえている様子だった。


そのうちダイちゃんが、私のいない時を狙って

たびたび会社を訪れていることを知った。

今までは家族ぐるみの入信を狙っていたが

気の弱い夫を単独で攻める作戦に変更したらしい。


が、聞いた時にはすでに手遅れ。

夫はダイちゃんに約束した後だった。

「6月に入信します」

ギャ〜!!

《続く》
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