C子のアパートに向かうわずかな時間
私たちは打ち合わせをしました。
名刺を求められても渡さない
絶対にイエスと言わない
その場の雰囲気に流されて謝罪しない…などです。
他愛のないことですが
ビビリの夫にはきちんと言っておかないと
恐怖でどんな行動に出るかわかりません。
今夜はまず相手を見て
いったん帰れる方向に持ち込んでから
ゆっくり対策を考えることにしました。
あ~あ、これが全部夢か、夫の勘違いだったらな~
と心から願いましたが、チャイムを押すと
やっぱりC子でなく、おっさんが出て来ました。残念!
部屋に、C子や子供たちはいませんでした。
玄関に出たのが、C子の母親の彼氏という人でしょう。
50代半ばくらいの、ガッチリした体つきの男です。
精一杯派手なトレーナーの上下をお召しですが
安物感と洗濯でのくたびれ感が漂っていました。
奥へ…と勧められましたが、すぐ逃げられる玄関近くに夫と座りました。
なにしろ狭いので並んでは座れず
私は「控えめな妻」を装い、しおらしく夫の斜め背後に…。
いざとなったら敵に夫を与え、私だけ逃走するつもり満々です。
牛飼いはピラニアの河を渡る時
一頭を犠牲にして、その隙に河を渡るのです。
部屋にはもう2人男がいました。
その1人…30代後半の男を見て「ちぃっ!」と思いました。
知人の義弟です。
子供の頃、何回か見たことはありますが
メタボなおっさんになっていました。
ボロボロの軽自動車をわざとゆっくり運転して
後続車にあおられたら急ブレーキで追突させ
因縁をつけて金を巻き上げると評判の札付きのワルでした。
どちらかというと右ふう?…の小規模な団体に属し
それを印籠に個人的収益を上げている男です。
のっぺりした顔とは裏腹に
口が立って悪知恵だけは働くという、早い話が町内のダニでした。
この一件を聞きつけて、儲け話に乗ったに違いありません。
もう一人は、その仲間のようでした。
C子の母親の彼氏らしき男は、自分をWと名乗りました。
「いやぁ~、娘が心配で来てみたんや」
うそこけ…
急に親子になりやがって…
「ここにおられるEさんをご存じ?」
「…はい」
Wは満足そうに
「そうだよねぇ、こっちじゃ有名なお人だもんねぇ」
有名ですとも。ダニとして…
愛想よく話すWが進行役のようです。
猫なで声でヘラヘラと人なつこく振る舞っておいて
各自必要によって豹変するのが、効率のよい恐喝です。
完全に仕組まれた席でした。
こっちもヘラヘラしてやろうじゃないか…
「わしらの団体でも、このことが問題になってねぇ
はっきりさせたいと思って、出て来たわけですよ」
問題になるわけないじゃないか。
団体を強調したいだけだろうが…
「ちゃんと事情を説明してもらってね
ケジメをつけてもらわないと、こっちも困るんですわぁ」
「事情ならC子さんから聞いていらっしゃいますでしょ」
「すべて認めるということで、ええんかいな?」
「そちらに伝わっていることが、どこまで本当かはわかりませんが
娘さんが結婚を望んでおられるということなので
それを承諾すればよろしいということでしょうか?」
さっきから黙ったまま
会話の一言一言に聞き耳をたてているEが不気味でしたが
金にならない方向へ行き始めたら都合が悪いので
いずれ介入してくるでしょう。
「いやぁ~、それじゃあもう済まなくなっているからねぇ。
なにしろ団体の幹部のほうにも伝わっているんでねぇ」
さも困ったように、Wは腕組みをして短髪の頭をかしげました。
猿芝居もいいところです。
「で、どうしろと?」
そりゃあ、なぁ…Wはダニ2匹のほうを見ました。
「あんたらの気持ちってものを表してもらいたいわなぁ」
「気持ち?どういうことですか?
はっきりおっしゃってくださいな」
はっきりおっしゃれないのです。
金額を提示した時点で、恐喝が成立するからです。
ダニ1号のE、ようやく口を開きました。
「おたくの旦那の不始末をどうケリつけるかっていうことですよ」
「不始末?…当の二人は終わってないんですのよ。
回りが始末だのケリだの言っても
始まらないじゃありませんか」
「なんだと?こらぁ!
女と思って下手に出りゃあ、ふざけやがって!」
ほうら、来た…
女として生きることを封印せざるを得なかった十ウン年…
これくらいで縮み上がっていては
母親稼業は張っていかれないのです。
「まぁ!怖い…
浮気されてひどい目に遭っているのはこっちですのに。
これではまるで、脅迫ですわ!
わたくしどもも、呼び立てられましたからこそ
こうしてやって来ましたのに、何をお望みやら…
ああ…恐ろしい…」
脅迫は、人を怖がらせ、ダメージを与えた時点で成立するのです。
どうにもならなければ倒れるから救急車を呼べ…
と夫と長男に言い含めてありました。
卑怯なヤツには卑怯で対抗です。
「奥さん、俺たちはね、そういうつもりじゃないんだよ。
怖がらせたとしたら、ごめんな」
今度はガラッと優しい口調に変わるダニ1号。
こいつは相当「お勉強」を積んどるな…
この強弱で、相手を精神的に追い込んでいき
最終的に自ら進んでイエスと言わせるのが、最も安全なプロの手口です。
ダニ1号は、○○剤で前科一犯、たしか執行猶予中です。
新聞に載ったので、知っていました。
次に犯罪を起こせば、小さなことでも間違いなく服役が待っています。
それでかなり慎重になっている様子でした。
私たちは打ち合わせをしました。
名刺を求められても渡さない
絶対にイエスと言わない
その場の雰囲気に流されて謝罪しない…などです。
他愛のないことですが
ビビリの夫にはきちんと言っておかないと
恐怖でどんな行動に出るかわかりません。
今夜はまず相手を見て
いったん帰れる方向に持ち込んでから
ゆっくり対策を考えることにしました。
あ~あ、これが全部夢か、夫の勘違いだったらな~
と心から願いましたが、チャイムを押すと
やっぱりC子でなく、おっさんが出て来ました。残念!
部屋に、C子や子供たちはいませんでした。
玄関に出たのが、C子の母親の彼氏という人でしょう。
50代半ばくらいの、ガッチリした体つきの男です。
精一杯派手なトレーナーの上下をお召しですが
安物感と洗濯でのくたびれ感が漂っていました。
奥へ…と勧められましたが、すぐ逃げられる玄関近くに夫と座りました。
なにしろ狭いので並んでは座れず
私は「控えめな妻」を装い、しおらしく夫の斜め背後に…。
いざとなったら敵に夫を与え、私だけ逃走するつもり満々です。
牛飼いはピラニアの河を渡る時
一頭を犠牲にして、その隙に河を渡るのです。
部屋にはもう2人男がいました。
その1人…30代後半の男を見て「ちぃっ!」と思いました。
知人の義弟です。
子供の頃、何回か見たことはありますが
メタボなおっさんになっていました。
ボロボロの軽自動車をわざとゆっくり運転して
後続車にあおられたら急ブレーキで追突させ
因縁をつけて金を巻き上げると評判の札付きのワルでした。
どちらかというと右ふう?…の小規模な団体に属し
それを印籠に個人的収益を上げている男です。
のっぺりした顔とは裏腹に
口が立って悪知恵だけは働くという、早い話が町内のダニでした。
この一件を聞きつけて、儲け話に乗ったに違いありません。
もう一人は、その仲間のようでした。
C子の母親の彼氏らしき男は、自分をWと名乗りました。
「いやぁ~、娘が心配で来てみたんや」
うそこけ…
急に親子になりやがって…
「ここにおられるEさんをご存じ?」
「…はい」
Wは満足そうに
「そうだよねぇ、こっちじゃ有名なお人だもんねぇ」
有名ですとも。ダニとして…
愛想よく話すWが進行役のようです。
猫なで声でヘラヘラと人なつこく振る舞っておいて
各自必要によって豹変するのが、効率のよい恐喝です。
完全に仕組まれた席でした。
こっちもヘラヘラしてやろうじゃないか…
「わしらの団体でも、このことが問題になってねぇ
はっきりさせたいと思って、出て来たわけですよ」
問題になるわけないじゃないか。
団体を強調したいだけだろうが…
「ちゃんと事情を説明してもらってね
ケジメをつけてもらわないと、こっちも困るんですわぁ」
「事情ならC子さんから聞いていらっしゃいますでしょ」
「すべて認めるということで、ええんかいな?」
「そちらに伝わっていることが、どこまで本当かはわかりませんが
娘さんが結婚を望んでおられるということなので
それを承諾すればよろしいということでしょうか?」
さっきから黙ったまま
会話の一言一言に聞き耳をたてているEが不気味でしたが
金にならない方向へ行き始めたら都合が悪いので
いずれ介入してくるでしょう。
「いやぁ~、それじゃあもう済まなくなっているからねぇ。
なにしろ団体の幹部のほうにも伝わっているんでねぇ」
さも困ったように、Wは腕組みをして短髪の頭をかしげました。
猿芝居もいいところです。
「で、どうしろと?」
そりゃあ、なぁ…Wはダニ2匹のほうを見ました。
「あんたらの気持ちってものを表してもらいたいわなぁ」
「気持ち?どういうことですか?
はっきりおっしゃってくださいな」
はっきりおっしゃれないのです。
金額を提示した時点で、恐喝が成立するからです。
ダニ1号のE、ようやく口を開きました。
「おたくの旦那の不始末をどうケリつけるかっていうことですよ」
「不始末?…当の二人は終わってないんですのよ。
回りが始末だのケリだの言っても
始まらないじゃありませんか」
「なんだと?こらぁ!
女と思って下手に出りゃあ、ふざけやがって!」
ほうら、来た…
女として生きることを封印せざるを得なかった十ウン年…
これくらいで縮み上がっていては
母親稼業は張っていかれないのです。
「まぁ!怖い…
浮気されてひどい目に遭っているのはこっちですのに。
これではまるで、脅迫ですわ!
わたくしどもも、呼び立てられましたからこそ
こうしてやって来ましたのに、何をお望みやら…
ああ…恐ろしい…」
脅迫は、人を怖がらせ、ダメージを与えた時点で成立するのです。
どうにもならなければ倒れるから救急車を呼べ…
と夫と長男に言い含めてありました。
卑怯なヤツには卑怯で対抗です。
「奥さん、俺たちはね、そういうつもりじゃないんだよ。
怖がらせたとしたら、ごめんな」
今度はガラッと優しい口調に変わるダニ1号。
こいつは相当「お勉強」を積んどるな…
この強弱で、相手を精神的に追い込んでいき
最終的に自ら進んでイエスと言わせるのが、最も安全なプロの手口です。
ダニ1号は、○○剤で前科一犯、たしか執行猶予中です。
新聞に載ったので、知っていました。
次に犯罪を起こせば、小さなことでも間違いなく服役が待っています。
それでかなり慎重になっている様子でした。
太刀打ちできない場面ってあるのねぇ~
恐喝って相手が怖っ
って思った時点で成立ねぇ~ん
なら、私は毎日恐喝うけてるじゃん・・・・・
まぁ、この手の人には
まだ出会ったことないけど
学んでおいて損はなさそうな話かしらん
実際場面に遭遇したら
怖いだろうなぁ~
あっ、これでももう恐喝未遂~??
ケースバイケースだろうと思うよ。
普通、そういう場面には一生遭わないから大丈夫。普通じゃない人と結婚しなければ(笑)
法律なんてよく知らないから、厳密に言えば違うのかもしれないけど、心構えは同じでしょうよ。
その場ではビビッたほうが負け。
しかし法律は弱者の味方に出来ている。
そこらの兼ね合いをしっかり頭に入れていれば
少々のことで絶望することは無いわよ。
そんなみりこんさんが大好きです(*^^)v
こーゆー時は後だしじゃんけんが1番なんですね!
人生の勉強になります(笑)
どーしてご主人は、数々の困った経験から学ばないのでしょうね(^^;笑
その分、みりこんさんが経験値から賢くなってうまく収めてくれるから?繰り返すの?
おバカと浮気は死ななきゃ治らない?(笑)
私の元旦那に言った言葉です(^^;
浮気性の男にはみんな当て嵌まるのかしらね?
下手に旦那さんが口を出さないことを祈ります(笑)
長男さんも大変ですねぇf^_^;
おバカと浮気は死ななきゃ治らない…名言ですね。その通りだと思います(爆)
多分ですけど、私をあてにしたり甘えているというより、「これをやったらどうなるか」という予測に関する能力に欠陥があるのではないかと思います。本当の病気や障がいに比べたら、ぜいたくですね。
本当に段取り八分といきたいところなんだけど、本来無知だし、ドタバタでそういうわけにはいきませんでした。
長男は家庭や父親のためではなく、自分の興味で協力したようです(笑)
暴れたいお年頃でした。
子供自慢と取られたり、暴力を容認する表現になるのは不本意なので書きませんが、用心棒としては申し分ない武道系の大男です(汗)
彼の出番を作ってはいけないので、必死でした(笑)