殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

組長・9

2010年05月31日 07時07分18秒 | 組長
組長シリーズは、任期終了と同時に終わるはずだった。

しかし、相変わらず組長もどきをやっているのはどうしたことか。


「組長さん…組長さん…」

先週は、一人暮らしのおばあちゃんがうちに来て

エアコンの室外機をいたずらされたと訴える。

組長はもう終わったと言っても、おばあちゃんを苦しめるだけなのだ。


さっそく現場検証。

配線をカバーしているホースみたいなのが切られて

中の線がむきだしになっていると言う。

確かにちょびっとむきだしになっているけど

これ、取り付けた時から、こんなだと思うよ…。


しかし、年寄りは言い出したらきかない。

水の出るホースまで「誰かが切って短くなってる」と言い出す。

ああ、そう、悪い人がいるねぇ…と合わせておく。


「それに夜、誰かが玄関のドアをガチャガチャ回すのよ」

おばあちゃんは、恐怖に怯えた顔でそう言う。

それ、ドアにぶら下げた飾りが、風に吹かれてるだけだと思うよ…。

老人会で作ったらしき、かわいげのないマスコット人形だ。

人形の手足の先に付いている金属製のオモリが

揺れるとドアに当たって、音を立てるのだ。


    「縁起が悪いから、ドアには何も下げないほうがいいよ」

と、適当なことを言ってはずさせる。

どう縁起が悪いのか、私にもわからん。

真面目に昭和を生きてきた老人は、勘違い=恥をかいたことになってしまう。

その思いは、若い頃のように日々のせわしさの彼方へ、なかなか消えない。

こっちも老人に近くなってきているので、なんとなくそう思う。

一応気を使ったつもりなのだ。


とにかく室外機の線が出ているのが気に入らないようなので

家からクッション付きのテープを持って来て

形だけ、ちょろっと巻いてやる。

私は機械に詳しくないので、本格的には取り組めない。

ほんのおしるし。

それでもおばあちゃん、すごく喜ぶ。


     「怖いことがあったら、夜中でもいいから、電話して。

      すぐ行くから。

      これを電話のそばに貼っておくのよ」

と電話番号を大きく書いて、渡しておく。


     「しばらくは夜、うちの旦那に見廻りさせるから」 

などと、かなりいい加減なことも言う。

嘘ではない。

ゴミを出したり、散歩したり、夫は毎晩1回はおばあちゃんちの前を通る。


翌日は、道ばたに花を植えようと約束していたおばちゃんが、誘いに来る。

こないだ、そんなことを企てた気もするが、すっかり冷めていた私よ。

しかたなく、一緒に種なんぞまく。


そこへ、若いお母さんが二人来る。

「Sさんが去年、街路樹をバンバン切ってたんです。

 幹を切ってるから、今年は花が咲かないの。

 子供が楽しみにしていたのに」


去年の秋だったか、Sじじいがまだ威勢の良かった頃、街路樹を刈る姿は見た。

脚立に登って、電動ノコギリなんぞ振り回していたっけ。

「ああして、自分をアピールしたいのよ」

「落ちろ」

「あんまり見てたら、注目されてると勘違いして喜ぶから、よそう」

我々はささやき合ったものだ。


今回改めてよく見ると、枝落としじゃなくて

どれも真ん中の太い幹をちょん切っている。

    「あれれ、いかにもって感じだったから

     庭師の経験でもあるのかと思ってたよ」

「あるもんですか!高い所に登りたいだけよ!」

「ほら、ナントカと煙は…って言うじゃない」

しばらく悪口で盛り上がる。


彼が自治会長の座を狙って暗躍していた頃

巻き舌から繰り出される意味不明の主張には

「子供達のために」のフレーズが、多く混入されていた。

それさえ言えば、格好がつくと思い込んでいるらしい。


その口で、夏休みのラジオ体操がうるさいとネチネチ言う。

一貫性が無いにもほどがある。

この一件で彼は、それまで無関心だった

子供会の若い親達まで敵に回したのだった。


共通の敵というのは、結束を深める。

この次に見たら止めようということになったが

バッサリいっちゃってるので、何年後になるやら。


その日の夕方、ごく初期にSじじいの一味だった男が

我々夫婦に近付いて来て、いきなり言った。

「土建屋アツシって、知っとるか?」


このあたりで“誰それを知っているか”と話しかけるのは

教養乏しき人間が行う、威嚇を含んだ挨拶の一種である。

こんにちは…いい天気ですね…と話しかければよいものを

出来ない人間というのは、案外多いのだ。


この類の生物は、口うるさそうな者の名前を出し、どちらがより近いかを探る。

その遠近によって、本格的な威嚇になったり、自分なりの友好手段になったりする。


この人は酒好きが高じて

一時期、Sじじいの白昼夢につきあって活動した過去から

いまだに周囲に避けられていた。

このまま残党として生きるか否か、進退を見極めたいのだと察する。


     「ああ、知ってますよ」

「俺はアツシの同級生で仲がいいんだ。

 あんたら、親戚か何かか?」

     「父ですけど、何か?」

呆然として、きびすを返すおじさんを見送り

我々はいつも通り、夕食を持って両親の家に向かう。


     「ねえねえ、お義父さん、Yさんって知ってる?

      同級生で、仲がいいって言ってたよ」

アツシの反応は鈍かった。

「さあ…知らん、覚えてない」

これはアツシの記憶力の問題ではない。

幼少期をこの町で過ごしていないため、同級生に対する印象が薄いのである。


この日曜日は、年に一度の総会があった。

今年は何を言い出すか、楽しみにしていたんだけど

人数もいないし、おとなしかった。

待っていたのに…とても残念だった。
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プチ不倫・グラン不倫

2010年05月28日 16時40分40秒 | 検索キーワードシリーズ
おなじみの検索キーワード。

『プチ不倫 泥沼』

こらこら…不倫にプチもグランもありまへんで。

いったいどんな状態をプチ不倫って言うんでしょうね。

バレてない、頻繁に会わない、ホテル未満…などかしらん。

チロルチョコでも、和牛ステーキ肉でも、万引きは万引き…

犬小屋でも豪邸でも、放火は放火…やったことは同じです。


何でもプチと付けりゃあ、かわいらしげに聞こえると思ったら

大間違いでっせ。

泥沼の言葉が出た時点で、とっくにプチじゃねえし。


いっそのこと、目指せ!グラン不倫!

グラン不倫って、どんなのかって?

そりゃ泥沼の果ての刃傷沙汰あたりでよろしく。


『不倫した夫に死んでもらいたい』

おお!過激!

そうそう、ご主人が浮気者だった友人は、その通りになりましたね。

建てたばかりの家のローンが消え、労災の認定、生命保険金…

福祉手当も、生き別れとは違って、手厚いそうですわ。


亡くなり方は悲惨でした…プロペラ状の機械に巻き込まれ、バラバラですわい。

でもね、亡くなると、いいことばっかりが思い出されるんですって。

こんなに早く死に別れるなら、もっと泣かしてくれてもよかったのに…って。


私も一時期、それを待っていたことがありましたね。

でも、友人と自分の大きな違いに気づかなかったんです。

今はわかります。

友人は、人の悪口を言わず、優しく、心の美しい女でした。

あ~ららっと。


『不倫生還夫の精神状態』

生還…オーバーな…と、知らない人は言うでしょうけれど

そのニュアンス、わかりますよ。

おそらく、夫婦間に起きた初めての大事件だったんでしょうね。


ようよう終わったと思いきや、戻って来たのは

謝らない、反省しない、自白しないの「三ない亭主」。

ダンマリを決め込んで、いけ図々しく見えるのは

女をかばっているからでも、思い出を反すうしているからでもありません。

ただ、これ以上の地獄を避けているだけです。

女というものが、いかに物事を自分の都合よく解釈し、支配したがる生き物か…

ご主人は、女房で薄々感じていたことを、浮気相手で確信したのです。


別れた女のことなんて、どうでもいいのです。

のぼせればのぼせるほど、過ぎてみれば、面倒臭く苦々しいだけ。

男の思い出になりたがる女の習性からすると、信じられないでしょうが

本当です。


試しに、子供の頃の思い出話をしてみるといいです。

女は当時のことが次から次へと思い出され、話は尽きませんが

男は「あれはうまかった」「あれは面白かった」など

あくまで自分主体で感覚的な記憶しか話せません。

そしてすぐに話題を変えます。

長持ちしないのです。


一方、妻の方は、嵐にもまれたあげく

「三欲女房」になります。

謝って欲しい、反省して欲しい、一部始終を打ち明けて欲しいの三欲です。

他人の手あかのついた心と体を、ミソギさせたくなるのです。


最初は取り戻した喜びで一杯ですが、すぐに多くの疑問が湧きます。

ミソギどころか、のほほんとしているように見えるご主人を横目に

なんだ、こいつ…何考えてるんだ…精神状態が知りたくなるものです。

女ってのはマジメですから、マイナスになってしまったと思い込んでいる

夫婦目盛りを、いったんゼロに戻さないと気がすみません。


ミソギと言っても、奧さんは神官や霊験あらたかな修行者とは違い、普通の人…

ましてや当事者ですから、すべてを客観的には受け止められません。

ミソギ屋の資格は無いのです。

しろうとミソギを強行しても、厄介な記憶が増えて

もっと苦しくなるだけです。

医師が親族の手術をしないのと同じく、関与しないほうが後々良いようです。


夫婦間に浮気が入り込んで、精神的に辛い目に遭った…

それは「今までのあんたのやり方は、もう通用しないよ」

というお知らせが届いたのです。


悪いことしたら謝罪、反省、自白でミソギして見せぃ…

悪いのはあんたよ、あんたと女よ…

私の悪い所は問わないわ、だって私は被害者だも~ん…

「このやり方、考え方では、後々また別の問題でもうまくいかなくなるよ。

 今のうちに、切り替えといたら?」

というお知らせです。


このようなお知らせは、浮気した張本人ではなく

相方のほうへ、傷や痛みとして届くものです。

「違う!私は認めない!切り替えるのは、浮気した主人のほうでしょっ!」

と叫んでも、どうにもならんのです。


変えなきゃいけないから、変えた方がいいから、一番イヤなことで知らされます。

少々のことでは、わからないからです。

お知らせの宛名が違う!と言い続ける人と、なんとか変わろうとする人

強情と素直の差が、後の人生を決めると思います。


生還と言わざるを得ない心境は、浮気星から帰還したご主人だけでなく

奥さん自身をも指しています。

一日も早い生還をお祈りいたします。


『旦那 浮気 不倫 手紙 封書 別れない 2010』

2010年に何があった?!

あ、今年か。


『なぜ不倫をするのか?独身女の心境』

不倫がしたいわけではないのです。

恋愛がしたいだけです。

いいと思う男って、たいていすでに他人のモンですよ。

そこで不倫と後付けすれば、どうにか格好がつくじゃ~ん。


『忙しくしたがる不倫』

これ、当を得ていると思います。

特に初心者…特にザンネンさん…

「仕事もプライベートも、忙しくてとっても充実してま~す!」

ってのを、ことのほか強調したがります。

忙しくて充実ってのが、憧れだったんでしょうね。


簡単に脳内麻薬が放出される方法を知って、有頂天。

それが「のぼせる」ってことです。

脳内麻薬…出し過ぎると、頭や体に良くないそうですよ。
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床下乾燥機

2010年05月25日 10時52分25秒 | 検索キーワードシリーズ
『床下乾燥機 設置 詐欺』

検索キーワードに、こんなのがありました。


若い知人の話です。

ある日、白衣を着た知らないおじさんが来て

「すみませんが、トイレを貸してください」と言いました。

“調査”でこのあたりに来て、急にお腹が痛くなったそうです。

親切な知人は、トイレを貸しました。


トイレを終えたおじさんは、真剣な顔で言いました。

「今トイレで気がついたんですが、こちらのお宅は

 かなり湿気が強いようです。

 このままだと家が早く傷むし、体に良くないので

 何か対策を考えたほうがいいですよ」


なんたら研究所にお勤めしているという“専門家”のおじさんが持つ

“湿気測定器”らしきものは、危険度Aを示していました。

新築して、まだ数年の知人は、びっくりしてしまいました。


「お子さんにアトピーはありませんか?

 ご主人、腰痛はどうですか?

 奧さん、イライラしたり、体がだるいことはありませんか?」

どこの家だって、たいていどれかは該当しますよ。

しかし、三つとも心当たりのある知人は、すっかり信用してしまったのです。 


「奧さんは若いから知らないでしょうけど、ここらは昔、海だったんですよ。

 家を長持ちさせて、家族が健康に暮らすためには

 元の地形に合わせた設備をしないと、かえって先々で物入りなんです」

太古の昔は、たいていどこでも海ですよ。

ですが、素直な知人は、もっともだと思いました。


その人の働く研究所は

“たまたま”最新型の床下乾燥機を開発したばかりだったそうです。

“今なら”モニターということで、本当は120万円のところを

“特別に”原価80万円で提供してくれると言うのです。

“ちょうど”今、“頼まれて”よそへ取り付ける予定だったものが

車に積んであるということで、工事は即日行われました。


脳って、知らない人を家に上げた不安と後悔を打ち消すために

信用するほう、いい人に出会ったと思い込むほうへ働くみたいですね。

かなり後になってその話を聞き

なんだか残念なような、悔しいような気分になったものです。


知人もやはり、なんとなく後味の悪い買物だったので

細かく話したんだと思います。

機械に金額分の値打ちがあるのかどうかは、私にはわかりませんから

買ったことについては、何も言いませんでした。

アトピーや腰痛は改善されたのか…とは、たずねました。


知人はそれには答えず

「あれは必要なものだったのよ…おじさんも、いい人だった…」

と、自分に言い聞かせるようにつぶやいていました。

彼女のご主人は、床の下にそんな機械が置いてあるなんて、夢にも知りません。


あと、別の知人の話ですけど、アパートの一室なのに

「シロアリが発生しています。

 このままだと、退去する時に莫大な請求が来ますよ」

と言われ、自分の部屋の床下だけにシロアリ駆除を施した上

「今後の予防のために」と言われて、乾燥機を設置しちゃったそうです。


また、こんなケースもあります。

点検に来たと言って上がり込み

「まず床下に入って調べます」と言って

いきなり床に穴を開けた業者がいました。

穴開けられたら、直してもらわないといけませんね。

必然的に、おつきあいが始まっちゃうわけです。

これ、夫の実家です。

床下乾燥機の訪問販売…私は気を付けたほうがいいと思います。


訪問販売全般に言えることですが

「トイレを貸して」「電話を貸して」「手を洗わせて」

「持病の薬を飲む水をください」…これらは家に上がり込む手段です。

そもそも急にトイレに困ったり

持病があるのに水の準備を忘れるようなうっかり者は

高額商品を売り歩いちゃいけませんよ。

これは昔から、夏休みに行き場の無い子供が

友達の家に上がる手段として使ってましたけど

近頃は、大人もこの手を使うんですね。


そのセリフで見知らぬ人間を家に上げるのは、親切でお人好しの証拠ですから

押せば買うというマニュアルがあります。

家に上げた時点で見込み客となります。


断れない気の弱い人は、日頃から

近所の強気な家庭に頼んでおいて、その家に行ってもらうか

近くにある公共の場所を把握しておいて、教えたほうがいいと思います。

まず疑ってかかれ。
 
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出刃包丁…それから

2010年05月22日 12時04分45秒 | みりこんぐらし
義母ヨシコの再入院が近付いてきた。

ヨシコの心残りは、依然としてうちの長男。

前に書いたが、一昨年、夫の姉カンジワ・ルイーゼの陰謀が発端で会社を辞め

転職した孫と和解したいのだ。


長男は、弟が会社に入った時から

「兄弟揃って家業にぶら下がるのはダサい」と言い出し

転職先を探し始めた頃だった。

実家の経理を受け持つルイーゼに

「タイムカードをごまかして、給料を余計にせしめている」

とあらぬ告げ口をされ、泥棒扱いとなって以来、祖父母に会っていない。


その時、出刃包丁を研いだのも、今は懐かしい。

退職者と銘打って、長男の名前を大きく書き

「この者は、今後弊社と一切関係ありません」

という内容のFAXを取引先に回したルイーゼに、逆上した私だった。


退職手続きの際も、書類と共にイヤミなメモを添えてよこした。

「もう我が社とは無関係ですので、迷惑をかけないようにお願いします。お元気で」

という内容だ。

その頃には、私もあきらめがついており、長男の選択を喜べる気持ちになっていた。

そしてそのメモは、親としての情という最後の未練を断ち切る

絶好の最後屁(さいごっぺ)となった。


いずれは兄弟のどちらか一人を残す予定だったので

断腸の思いで二者択一をしなくてすんだのは、我々家族にとって幸運だったと思う。

まったく、ルイーゼさまさまだ。


弟をルイーゼの魔の手から守るために、しばらくは祖父母にも会わず

「ものすごく怒っているから、何をするかわからない」

ということにしていた長男であるが、これがこじれた。

原因はヨシコである。

孫に会たいさ1カップ、娘かわいさ1カップ

罪の意識大さじ1杯、逆ギレ少々、いら立ち風味…

複雑な心境を自己処理出来ず、迷走し始めた。


私や家族にあれこれ言っているうちはまだ良かったのだが

しばらく経ってから長男に電話して

「謝りに来れば、会社に戻って来てもいい」と伝えた。

これで長男は、ヘソを曲げてしまったのだ。

そんなこんなで、長男とヨシコはいまだ会わず。


「謝れば、家に戻って来てもいい」

15年前、両親の家を出た私に、ヨシコは同じことを言った。

気持ちはわかる…悪気は無いのだ…

かわいいからこそ、その方向へ行ってしまう。


当時、謝るのはそっちだろう!と憤慨し、音信不通が何年も続いた。

それゆえ、長男の気持ちもわかる。

私としては、サンドイッチの具みたいな気分ではある。


近頃はヨシコも焦り

「老い先短い病人なのに、顔ぐらい見せてくれたっていいじゃないの」

と私に言う。

ちょっとやつれて、前より多少、かっこよくなってるよ…ひっひっひ…

などと、いい加減なことを言うと、ますます会いたがる。


義父アツシは、最初からパッと違う方向へ行ったままだ。

「若いうちに、外へ出て苦労するのはいいことだ」

当事者の立場から、斜めに身をひるがえすこの手口…

何でもこれで乗り切って80年。

さすが年期が違う。


リングに一人残されたヨシコ。

「あの子は、会社と私達を見捨てたんだわ」

いやいや…あんたが娘にだまされたんじゃん。


「もういいです、辞めますって、私をにらみつけて言ったのよ。

 かわいい孫に、あんな態度をとられるとは…」

おいおい…その前に、あんた、泥棒って言ったじゃん。


「将来は、兄弟二人でやってもらいたかったのに

 私や娘が止めるのも聞かずに勝手に辞めて、恨まれて…」

やれやれ…原因がいつの間にか、すり替わってるじゃん。


「色々あっても、水に流せばいいのよ」

こらこら…あんたが色々やったんじゃん。


口論しても無駄なので、ほほほ…と笑っておく。

孫との再会を取り持たない私をなじることもあるが

あの子も私に似て、意固地だから、ごめんね~と言っておく。


ヨシコの主張を、長男には伝えてない。

そろり、そろりと「会いたいと言ってたよ」みたいなことだけ言う。

30もつれの大男を引っ張って連れて行くわけにもいかず

ヨシコの望みは早めに叶えてやりたいし…私も一応努力中なのだ。


はっはっは…甘いわい…長男は笑う。

この男の良くないところだ。

私にそっくりだ。


問題は、会う会わないではない。

事実を都合良くすり替えたり、善悪でなく、年齢や病気を武器に

頭を下げずに押し切ろうとする、天性の魂胆がいやなのだ。

こちらが折れて、それを通してやるのがシャクなのだ。

自分を見ているようで、痛し、痒し、面白し。


自分はブチ切れて、出刃包丁を研いでおきながら

長男には、ここからもう一歩前に進んで欲しいと思う、身勝手な私よ。

だが、二人の再会は近い予感がしている。
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ミヤ子無念

2010年05月19日 07時43分32秒 | みりこん童話のやかた
むかしむかし、あるところに

けゆきミヤ子という中年の村会議員がおりました。

これといった主義思想は無いものの

ミンミン党きれいどころコレクションの一員として

議会に華を添えていました。


ミヤ子は、ミニスカートが好みです。

カモシカのようでない、肉厚でむっちりした足の方が

かえって男心をくすぐることを、よ~くわかっているのです。


その日は、ミヤ子に大舞台が用意された、大事な日でした。

今回は特に、足を出す必要がありました。

ミヤ子は、これぞミニスカート!といった年代物を引っ張り出しました。

「これでいこう!」


やれ…と、はっきり命令されたわけではありません。

「わかってるね?」と言われただけです。

以心伝心が通用する所を見せたい…

ここは頑張って、存在感をアピールしておかなければ。


委員会の傍聴応援として潜入し

首尾良く、騒動の中心部分のポジション取りに成功。

頃合いを見計らって、トライ!

…支点、力点、作用点をまったく無視した、反物理的な転倒は

北斗の拳やドラゴンボールを連想させ

気と気のぶつかり合いのような華やかさでした。


車椅子や、身長に合わない松葉杖も用意されました。

転倒前は、作戦失敗も考慮して、目立たない保護色の服装でしたが

転倒後は、何が何でも断然目立つ黄色を選びました。

ケガを強調するために、さらに短めのスカートも必須アイテムです。


「できるだけ痛々しく…」の要望どおり、ミヤ子は頑張りました。

この役どころは、見栄えを考慮して、顔で決めたので

今まであんまりケガをしたことのないミヤ子にとっては、難しい演技でした。

ドラマやマンガで見た「ケガ人」というのを演じるしかありません。

痛みに顔をゆがめる…階段をわざわざ松葉杖で降りて、大げさに転んで見せる…

そういうわかりやすい行動をとるしかなかったのです。


同志が駆け寄り、抱き起こし、おんぶ…一同こぞっての渾身の演技。

しかし結果的にそれは、姥捨て山のワンシーンを彷彿とさせたばかりか

ミヤ子の細面(ほそおもて)とは裏腹の

豊富なぜい肉を露見させたに過ぎませんでした。

その上、ぜい肉の割に胸は貧弱という裏切りは、軽い失望を生みました。


裏腹、裏切りの効果というのは

見苦しいと思っていたものが、実は魅力的だった場合には非常に有効ですが

逆だと、一気に氷点下です。

その急速な冷却は、ミヤ子が本来持ち味としていたはずの魅力…

“血統の良さと、しどけない妖しさの裏腹同居”までも、疑問に変えていきました。


さらに党をあげて、彼女を突き飛ばしたとされる野党議員を糾弾し

懲罰問題へと発展させたのがアダとなりました。

転倒の仕方や、その後の言動、あの大きな足を露出する必要の是非までが検証され始め

自作自演…売名行為…事態は、ミヤ子が絶対に避けたい方角へ向かって行ったのです。


同志と思っていた仲間も、つるんでいては自分も危ないと思ったのか

パッと離れて行きました。

「私はあのおかたの起訴問題から、村民の目をそらすために

 協力しただけなのに…」

一夜にして手のひらを返したような仕打ちに、ミヤ子は悔しい思いでいっぱいでした。


ケガをしたくないのに、はからずも負傷した者は

避けられなかった自身の鈍さを恥じるものです。

患部が人目につくのを嫌い、人に気を使わせたり、手を借りるのはもっと嫌がり

無理にでも平静を装います。

一般人でもそうなのだから、公人なら、なおさらだったのです。

その心理を研究していれば…と悔やまれます。

何年か前、不祥事の弁明にバンソウコウ姿で現われ

議員生活から永久に葬られた男がいたのに…それを忘れていました。


ヤワラカちゃんが議員になったら、受け身を教わろう…

ミヤ子はそう決意するのでした。

しかし、次がもう無いことには、気づいていないミヤ子でした。


          この物語はフィクションであり、実在の団体や個人

          実際の出来事とは、関係ありません。
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こすず道(どう)

2010年05月17日 11時37分15秒 | 前向き論
『子 母性本能+ドキドキ母娘レッスン~教え 家庭教師』

『これまで何もしてこない子が多いため、少しの筋トレでも筋肉痛を訴える子が多い』

長さに感動して、ちょっと書いてみました。


『小学生 娘 息子 感情 起伏 激しい』

あらあら、家の中はサファリランド…さぞやお困りでしょうねぇ。

夜更かしやゲームなどの生活態度、親の夫婦仲や、きょうだい仲の不満も

チェックしといてくださいね。


それからこれは、私の観察による、ごく個人的かつ根拠の無い意見ですが

野菜不足で肉中心の食事に加え、水がわりに牛乳を大量に飲ませてませんか?

なにごとも、ほどほどがいいようですよ。


『恥を他人はいつまでも覚えているものですか』

覚えていません。

そもそも自分にとっての恥が、人にとっても恥かどうか、わかりゃしません。

いつまでも覚えていて、人をあざ笑うような者と

真面目につきあわなければいいのです。

忘れましょう。


『義母 入院 わがまま』 『理想 小姑』

義母という生き物から、わがままを取ったら、死んじゃいますよ。

本当はわがままなのではなくて、義母や小姑の性格や言動、存在そのものが

嫁にとっては都合が悪く出来ているものなのかもしれません。


女と生まれたからには、たいていは義母か小姑になります。

ならない人には、また別の悩ましい立場が訪れます。

明日は我が身と思って、お互い頑張りましょう。


唐突ですが、夫の姉カンジワ・ルイーゼの名前を

仮に「こすず」としておきましょう。

実際の名前と、あまりかけ離れてはいません。

本人にお似合いの、可憐な名前です。

私が結婚当初から、毎日のように…でなく、本当に毎日の

ルイーゼの里帰りに悩んでいたことは、後存知のとおりです。


さて数年前、ルイーゼの通勤路に、新しい道路が開通しました。

なんということでしょう…道路はたまたま

市外の山奥に位置するルイーゼ宅と、我々の住む町とを

一直線で結んでしまったのです。

これにより、片道25分かかっていたのが、半分に短縮され

ルイーゼは快適で安全な通勤と、さらに長い実家滞在時間を得たのでした。


広くて立派なこの道路は、今もって、ほとんど車が通りません。

議員と建設業者の癒着の上に完成した、需要の少ない道路だからです。

まさに、ルイーゼのためにこしらえられた専用道。


来るな、来るなと思っていると

よりによって、こういう信じられないことが起こります。

いえ、実はそれどころか、本心では

「いつか事故に遭って、通えなくなればいい」と思っていました。

そんなヨコシマな心でいると、あらぬ方向から

憎たらしいヤツに幸運が訪れる事実を身を持って知ったという、つまらぬ話です。


また同時に、個人にとっての不都合が、世間一般の認める不都合ではないこと…

ジクジクと邪悪な思いを巡らせながら、行動は常識的を装うのと

親の元へ帰りたい、顔が見たいという無心な行動とでは

無心のほうが、結局は正しいと見なされることも知りました。


多くが不都合と感じず、ましてや正しいと見なされることであれば

それはまかり通る…

そして人を憎み、不幸を望んでいたら

もっと地団駄踏むような出来事が起きる…

この世の法則に触れたように思ったものです。

そこで私は、自身へのいましめのために

この道路を「こすず道」と命名した次第です。


『サレ 不倫 修羅』 『修羅場 サレ』

サレ妻がどうたらこうたらっていう本、ありましたね。

サレって、さっさと被害者の側に回ってるようで

個人的には好きな表現ではありません。

やられた、されたと受け身で言ってるうちは、修羅ですよ。


経験から自戒を込めて言いますと、対処がまずいから修羅場になるんです。

あ、不倫する奧さんのことは「シ妻」って言うんでしょうかね?


『愛人か本妻か選ぶ』

えらそうに。

選べる立場か。

“選択肢のある幸せ”という錯覚を楽しみたいんでしょうね。

本当は自分が選ばれる立場なのに、気がつかないのが気の毒ですね。


まあ、どっちを選んでも、たいした変わりは無いです。

いったん他人から男を奪った女というのは

尋常でないほどのヤキモチ焼きになります。

1回でも旦那の浮気を経験した妻もまたしかり。


どちらを選んでも、残りの人生は

常に監視され、声高に責任を叫ばれる生き地獄が待っています。

どうぞお楽しみに。


『浮気され 出て行けと言われた』

出て行くこたぁありませんよ。

口論の末、言うに事欠いて、出て行けと言われたのでしょう。


あまりに大胆な言い草がショックで、正しい判断が出来なくなり

とにかくこの場から避難したいような気持ちになるものです。

でも、いちいち傷ついていると、黙らせるにはこれが有効なんだと思って

ますます言いますから、暴言の連鎖がどこまでも続きます。

それは、自分の心を不必要に痛めつけることになります。

出て行く時は、言われて追い出されるのではなく

自分で決めて、出て行ってください。


『浮気 自殺』

浮気ぐらいで、死ぬこたぁありません。

気持ちはわかりますが、死んでから後悔しますよ。

浮気者とその相手のために、なんで死んでサービスしてやらないといけないんですか。


死ぬなら、悪いほうが死ぬべきです。

生きてください。

生きて、すべてを見届けてください。

人生、そう悪くない…と思えるまで、しぶとく生き抜いてください。
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ハラミ、お前もか!

2010年05月14日 16時14分01秒 | みりこん童話のやかた
むかしむかし、あるところに順ハラミという女優がおりました。

ハラミは中年になって、自分の将来が想像しにくくなっていました。

数年前に体を壊したことがきっかけで

体調と美貌の維持に不安をおぼえたのです。


ずっと第一線で主役を張ってきたわけではありません。

一流と二流の間のきわどいところ、A級とB級のスレスレな位置を

ハスッパなキャラクターで渡り歩く危うさが、ハラミの持ち味でした。

ハスッパは、美しいからこそ許されるのです。


レーサーと離婚した当時は

「師匠と弟子の関係が苦しかった」という理由で

なんとか面目が立っていました。

何かにつまづくと、新しいことに目が行って突っ走り

やがてさっぱりと冷めてしまう性格は、これで美化できたはずでした。


しかし、売れないお笑い芸人との短い結婚と離婚で

行く先は確実にB級の方角を指し示したのです。

今後、ますます脇へ脇へ流されていくのは、目に見えていました。


すでに夫婦仲は崩壊していたにもかかわらず、仕事の無い夫のために

ダイエット食品のイメージキャラクターを引き受け

熱々のバカ夫婦を懸命に演じたことが、今となっては悔やまれます。

とんだところで、姉御肌を出してしまったものだ…ハラミは残念に思いました。


そんなある日、ハラミは、ジジ党から村議選に立候補することになりました。

これは、降って湧いた話ではありませんでした。

親しいジジ党の議員によって、以前から打診はされていたのです。

父親の世話で介護に目覚め、このたび介護施設を設立した時にも

お世話になった議員です。


今までは、まんざらでもない気分で聞き流していたものの

今回、ハラミの気持ちは動きました。

このまま地デジ対応のために、シワ取り手術を繰り返しながら

脇役女優を続けていくか…

それとも、以前カーレースに夢中になった時のように

まったく新しい自分を模索するか…

そう考えていた矢先、正式な立候補要請の話が来たのでした。


ハラミには、女優やキャスターが次々と政界入りする気持ちが

少しわかったような気がしました。

ファンや視聴者のために、骨身を削ってキレイを続けるのは

本当に大変なことです。


手を抜くと、すぐに「あの人は今」になってしまいます。

美しさと強い個性で、独特の位置を確立してきた自分に

それは耐えられないと思いました。

人々に注目され続け、尊敬され続けながら

大手を振って美から開き直れるのは、文化界の他に、政界しか無いのです。


出馬にあたり、党からは

「闘病経験と、介護関係の実績をアピールすれば、間違い無し!」

と言われました。

人の痛みを知る、とびきりの美人が

弱者のために世の中を変えてゆく構図が出来上がったのです。


当選後の役柄はもちろん、ミンミン党のホウレン議員にあてがう対抗馬です。

ハラミは思いました。

あのホウレンだって、若い頃は水着勝負だったわ…

それに比べりゃ、こっちは女優よ…

芸歴も長いわ…

シナリオさえあれば、どんな役だって演じられる…。


当選したあかつきには、スケバン役がブレイクした昔よろしく

「顔はヤバイよ、ボディにしな!」

などと言いながら、ばっさばっさと切り込んで行く手はずです。


役者は揃いました。

いえ、今度は本当の役者です。

そこにいるだけで漂う、どことなく淫靡かつユーモラスな雰囲気…

明確で小気味良いセリフ回し…

これが見られなくなるのは淋しいけれど

なんとなく頼りになりそうだと、村人は思いました。

人はくたびれてくると、誰でもいい…どこへでもいい…

ぐいぐい引っ張ってくれそうな、強い存在に引き寄せられるのです。

頑張れ!順ハラミ!


   この物語はフィクションであり、実在する個人や団体とは関係ありません。

   しつこいか!
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ヤワラカちゃん

2010年05月12日 09時14分43秒 | みりこん童話のやかた
むかしむかし、あるところに、ヤワラカちゃんという女の子がいました。

ヤワラカちゃんは、ドージューという

村に古くから伝わるスポーツが得意です。

いつも村の代表として、いろんな所へ試合に行きました。


ヤワラカちゃんは、とってもいい子ですが

ドージューばかりやって大きくなったので、世の中のことをあまり知りません。

努力と根性さえあれば、どんなことでも乗り越えられると信じていましたし

強いので、実際にその通りになってきました。


ただひとつ、乗り越えられなかったことがあります。

それは、グラビア撮影でした。

お年頃になったヤワラカちゃんをイメージチェンジさせ

みんなをあっと言わせようと企てた、物好きな人がいたのです。


手始めに、ヤワラカちゃんを村役場のポスターにしようと

一流の写真家に依頼しましたが

「僕にはどうしても出来ない」と断られました。

何人かに当たり、やっと撮影してもいいという写真家が現われました。


みんなで頑張って、ちょっぴりセクシーなヤワラカちゃんを

どうにか撮影することが出来ました。

その時、ヤワラカちゃんは明るく「次はグラビアですね!」と言いました。

ヤワラカちゃんは、とっても前向きな女の子なのです。

やる気満々でしたが、グラビアが撮影されることはありませんでした。


ヤワラカちゃんは、やがて結婚しました。

お相手は、やはり村に古くから伝わる

キューヤというスポーツをする選手でした。


ヤワラカちゃんには、たくさんのお金がありました。

村の有名人であるヤワラカちゃんの結婚で、ひともうけしたい人がたくさんおり

この時とばかりに、素朴で地味な印象のヤワラカちゃんを

豪華なドレスや指輪で飾り立てました。


ヤワラカちゃんもまた、一応は女の子ですから、夢があります。

お姫様のようなドレスで、皆さんに祝福してもらいたい…

ヤワラカちゃんは、勧められるままに、豪華な結婚式を行いました。


美しい花嫁姿のヤワラカちゃんを、村人たちは心から祝福しました。

しかし同時に、村人の多くは知ったのです。

当たり前のことですが、自分達が思っていたヤワラカちゃんと

本当のヤワラカちゃんは違うのだと。


自己を知り尽くした、謙虚な求道者と思い込んでいたヤワラカちゃんは

実は幻だったのでした。

目立ちたがり屋で野心家の、チヤホヤされるのが大好きな…

そう、よくいる普通の女の子だったのです。


二人の子供にも恵まれ、ヤワラカちゃんは、ますます幸せいっぱいです。

スポーツ選手の妻、子育て、ドージュー…

豊富な体力と取り巻き力で、元気にこなします。


さらに今度は、村会議員に立候補して欲しいと言われました。

以前から、ヤワラカちゃんを物心両面で応援してくれていた

村の権力者、ザワオに頼まれたのです。


狡猾なザワオは、ヤワラカちゃんを

一人前の村会議員に育てるつもりは毛頭ありません。

自分の言うことを笑顔でハイ、ハイと聞く良い子…

人気者で知名度と話題性があり、とりあえず今回の選挙で票の取れそうな

都合の良い子が欲しいのでした。

そのために、ドージューを続けがてら、村会議員はついでの片手間でいい…と

ヤワラカちゃんにとって、願ったり叶ったりの条件を提示しました。


いつも前向きで優しいヤワラカちゃんは、ザワオの期待に応えたいと思いました。

ザワオに「スポーツを通じて学んだことを生かすと言えばいい」と言われ

「そうだわ」と思いました。

「返答に困ったら、二人の子供の母として…と言っておけばいい」とも言われ

「本当にそうだわ」と思いました。


自信が無いなんて言葉は、ヤワラカちゃんにはありません。

なんだか大変そうだけど、努力と根性さえあれば

どんなことでも出来ると思いました。


村民をナメるんじゃねえ!という声があちこちから上がりましたが

ヤワラカちゃんには、対戦相手からのバッシングにしか聞こえません。

小さい頃から、そう訓練されているのです。

愛されることしか知らないので、みんなもきっと応援してくれると

思っています。

頑張れ!ヤワラカちゃん!


    この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは関係ありません。
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笑いのツボ

2010年05月10日 09時59分48秒 | みりこんぐらし
うちの子供達が、グァムで釣りがしたい…みたいなことを話していた。

それを聞いていたら、あることを思い出した。


何年か前、かの地を訪れた私と友人は

ナイトクルージングの送迎バスに乗り込んだ。

バスは混んでおり、一カ所だけ、座席が二つ並んで空いていた。

なんでここだけ?なんて考えない。

オバタリアンのことだから

「あった、あった」と言いながら、喜んで座る。


「ギャ~!」

叫んだのは、通路側に座った友人であった。

座席の背もたれが壊れていて、座ると後ろへガクンと倒れたのだ。

みんな、知ってたから座らなかったのね…。


港までは、けっこうな距離だった。

その間、友人はずっと、エア背もたれ。

どうにかしようとレバーをつついてみたところで

ブラブラのガクガク、抜けそこなった乳歯状態である。


周囲からクスクスと漏れる笑い。

ここで座席を代わってやるなら、立派なもんだが

笑うのに忙しくて、気がつかなかった冷酷な私である。


     「頑張れ!今のあんたは、志村けんより、おいしいとこにいるのよっ!」

「くっそ~!耐えてやる!」

クスクス笑いは、爆笑となった。

     「なんでぃ…タダで笑いやがって」

自分の冷酷を棚に上げ、乗客の冷酷に憤る私であった。


帰りも同じバスだった。

私達はタラタラしていたので、バスに乗るのが遅くなり

やはり同じ席に座る身の上となった。

「またかよ…」


今度は、私がその席に座る。

行きに代わらなかったので、仕方がなかった。

バスは揺れるし、エア背もたれは、けっこうきつかった。

ホテルに着いたら、後ろの席の外国人が握手を求めてきた。

とんだところで国際交流。


以来、公共の乗り物に乗る際には

まず背もたれの無事を確認するようになった。

連れがいればギャ~ですむが、一人の時はきっと耐え難いと思うのだ。

しかし、日本の背もたれは、今のところ健康である。

    「だからね、あんた達、グァムの背もたれには、気を付けるのよ」


そんな話をしていたら、次男が言う。

先日、コンビニに行ったところ

客も店の人も、自分をジロジロ見るのだそうだ。


皆、ひと目見るなり、顔をいったんそむける。

そしてまた見ると言う。

なんでかなぁ…と思いながら買物をすませ、車に乗った。


バックミラーを見たら、サングラスのレンズが片方無かった。

信じたくなくて、指を突っ込んでみた。

やっぱりレンズは無かったと言う。


「いやぁ~!わからないもんだねぇ!

 生まれてから今までで、一番恥ずかしかったよ」

一同、腹を抱えて笑う。


「ねえ、父さんは、何か無いの?」

次男が聞くが、さしあたって思い当たらない。

夫の半生…周囲にとっての恥は、彼にとっての幸せである。


仕方がないので、思い出した小ネタを披露する。

    「燻製(くんせい)を家で作ってみたいと言ったら

     父さんが聞くのよ。

     “キジとか?熊とか?”ってさ。

     父さん、はく製だと思ったのね」

「ふ~ん。へへへ…」

小ネタにふさわしく、あまり笑いは取れなかった。


私には、どうしても誰かに聞いてもらいたい話がある。

今放映されているNHKの連続ドラマ「ゲゲゲの女房」。

最初の頃、主人公の漫画家水木しげると奧さんが

結婚式を挙げるシーンがあった。


式の当日、しげるは穴の開いた靴下をはいていた。

しげるの母親が、急いで新しい靴下を調達に行くが

田舎だし、昔だし、白足袋しか売っていなかった。


母親は急遽、親族の男性の靴下を脱がせて、しげるにはかせ

代わりに白足袋を男性にはかせる。

モーニングに白足袋の組み合わせが、ツボにはまってしまった。


私にとっては久々のホームランであったため、話したいんだけど

顔が勝手に笑って、ひきつってしまい、ちゃんと話せない。

     「それでね…白足袋がね…ひひひひ…」

家族は「それがどうしたのさ?」という顔で冷ややかな反応。

     「だからね…モーニングにさ…へへへへ…」


どうしてもダメ。

こういうことって、誰にでもたまにあると思う。

聞かされる者の反応は、たいてい話し手のテンションに反比例する。

笑いのツボみたいなものは、多分、一人一人違うのだ。

笑わずに話せたところで、その可笑しさを共有出来るとは思えない。

伝達はあきらめて、自分だけで楽しむ方がよさそうだ。
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ヨシコとみりこん

2010年05月06日 11時25分07秒 | みりこんぐらし
夫の両親に夕食を届ける生活は、毎日続いている。

我々夫婦も一緒に食べる。

お互いに夫婦二人きりで食べるより、賑やかで楽しい。


先日の血液検査では、良い数値が出て

義母ヨシコは、たいそう喜んだ。

今月下旬の入院に備えて、今のところ順調…のように思われた。


ところが、検査結果に油断して、肉が食べたいと言い出す。

ヨシコにとっての肉とは、牛ロースのことである。

これをなるべく食べさせないために、毎日頭をひねっているというのに

なんちゅうことじゃ。


しかし、あんまりシメすぎもつらかろうと思い、許可する。

こうなったら、もう止まらない。

しゃぶしゃぶ、焼肉、すき焼き…と、いつものローテーションを望む。

これだと野菜“も”たくさん食べられる…というのが、ヨシコの主張である。

「ダメ!」と断じるのは、なかなかの快感。


このダメには、完成品宅配の方針を取ったがゆえに

うっかり食費がこちら持ちになった、私のしみったれた採算も加味されている。

請求するつもりはない。

金をもらうと、ゴチソウを作る必要が生じる。

それに、さんざんすったもんだしといてナンだが

ひそかに親孝行の真似ごとをしているような気分も、捨てがたい。


そう言いながら、この体勢を取るようになってから

臨時収入が相次ぎ、支出が減ったのは不思議なことである。

出した分だけ、またはそれ以上が、色々な方面から財布に戻って来る…

必要があって準備していた別の出費が、思いのほか安くすむ…

頂きものが増える…

ガッポリでなく、チビチビなのが、我が家らしいところだが

面白いので、どこまで続くのか、見ていようと思う。


ヨシコと私は、嫁姑だもの…

同居していた15年前までは、お互い若かったし、そりゃあ色々あった。

遊んで帰ると、玄関に鍵がかかっていた。

帰りが夕方の4時を過ぎると、私の洗濯物だけ物干しに残っていた。

気に入らないことがあれば、娘と組んで仇を取った。

きついことも言われた。

あげれば、キリが無い。


しかしそれらは、ヨシコの着火点のポイントをつかめなかった

私の青さであったと、今は思える。

これ以上傷つきたくない、無事に過ごしたい願望と

憎たらしい亭主の親という、歪んだ感情がごちゃ混ぜになり

真摯に向き合う姿勢が無かった。


敏感なヨシコは、それを感じ取っていた。

一緒にいた時にはわからなかったものが、離れて初めてわかる。

ヨシコが他界したら、もっとわかるんだと思う。


良いこともたくさんあった。

いつも「もっとお食べ」と言う。

生活全般において、もったいない関係の小言は皆無だった。

子供達をそりゃもうかわいがってくれた。

何かあると、全力で孫を守った。


子供達がかなり大きくなるまで、毎年まる2ヶ月の間

大きな鯉のぼりをせっせと上げ下げし続けた。

時々手伝う私は、正直めんどくさかった。

なぜあんなに鯉のぼりにこだわるのだ…

出かけた先で、天気の心配までしなくていいじゃないか…と思ったものだ。

しかしあれは、祖母としての祈りであったと、今にして思う。


どこへ行っても、若い、美しいお祖母ちゃんと言われた。

商店街の催しで、ファッションモデルを務めたこともある。

お得意様の中から選ばれた、余興めいたものではあったが

なぜか私まで誇らしかった。


面白いことも多かった。

中でも、いまだに二人で大笑いする話がある。

キッチンの修繕を頼んだ業者が来たので

ヨシコは、ナベを高い戸棚に片付けようとした。

その時、ナベのフタが落ちてきて、カ~ンとヨシコの前歯を直撃し

差し歯がどこかへ飛んで行った。


前歯を失っても、まったく動じないヨシコ。

口元に手を当て、何事も無かったかのように業者と話す。

美貌のヨシコにとって、この現実は、信じてはならぬことであった。


その間に、飛んだ前歯を必死で探す私。

テーブルの下で発見し、そっと渡す…それを後ろ手で受け取り

ササッと、にわか装着するヨシコ。

後で、痛くなかったのか…と聞いたら

「痛かったわよ!目から火が出たわよ!」と言った。

あの時の連携を、お互いにたたえ合う。


先日、ヨシコは言った。

「ゴールデンウィークなのに、私達の食事のために、どこへも行けないわねぇ」

    「年取ったら、人の多い所へ行きたくない。

     ここでワイワイ言いながら、一緒にごはん食べるのが

     一番のレジャーだねって、パパとも話してんの」

これは本心だ。

ヨシコは、涙を浮かべていた。

操縦の技術ではなく、ハート…単純なことだが

私が長い間、わからなかったのは、ここらへんだと思う。


こないだまではヨン様、ビョン様と騒いでいたが、今は嵐に夢中のヨシコ。

IKKOの髪型を見て

「あのオカッパ頭にしたら、誰でも顔が小さく見える」

     「もしもの時は、あのカツラを買うのじゃ」

と真剣に話し合えるヨシコ。

2個で割引になる通販のファンデーションを、一緒に申し込むヨシコ。


ヨシコがもしもいなくなったら…

それを考えると、私はううっと泣きそうになる。

なんだかそれは、演芸コンビの解消みたいな感覚だ。

引退のその日まで、わてらは舞台が命だす~。
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不倫の意味・2

2010年05月03日 13時29分09秒 | 前向き論
なぜ不倫が悪いか。

道徳上、人を泣かせてはいけないのは、皆知っている。

これは天災などの不可抗力ではない。

意思で制御可能なところを

結果がわかっていながら、あえて実行するから悪なのだ。


では、バレさえしなければ、泣く者がいないからいいのか。

違う。

バレるバレないに関わらず、家族にももちろん

社会に対する重大な背徳行為をしっかり行っている。


不倫には、経済的発展性が無い。

家庭では、離婚、完全別居、家庭内別居で収入が二分され

将来への不安も手伝って、消費の拡大が望み薄となる。


不倫中の者は、家族との外出を減らし、代わりに浮気相手と出かける。

外食ひとつとっても、家族で行けば数人分の消費のはずが、2人分になる。


その店が感じが良くて、味も良かったとする。

しかし、それを誰かにしゃべれない。

噂が広まったり、知り合いが出入りするようになると困るからだ。


中にはしゃべりたがる者もいようが

そんな者の言うことに、心から耳を傾け、その上実際に行く人は少ない。

よって、口コミの効果も望めない。

こんなわずかなことでも、多くの人がやると影響が出る。


まともな人は、無意識でありながら

畜生と自分との間に、きちんと線引きをしている。

防衛本能の一種である。


だから畜生は、じわじわと孤独になってゆくのだ。

親しいようでも、どこか遠巻きにされているような

表向きでははっきりしない、もどかしい孤独が

さらなる焦りと飢餓を生むことに、気づく者は少ない。


不倫をしていると、精神が安定しないので、仕事のミスも増える。

常に相手のことをもやもやと考え、ぼんやりする。

相手以外は皆、かすんでつまらなく見え、どうでもよくなる。


その時期が過ぎると、今度は

自分の現在の状況が、それほど満足のいくものではないことに気づく。

なんとなく不安で、落ち着かない。

どっちにしても、魂がお留守になるのだ。


手放しで恋だけしていればよい、独身同士の「さらっぴん」とは

明らかにペースが違う。

不倫だと、仕事に加え、家庭の雑事も同時にこなす必要があるし

双方の都合を合わせる必要があるわ、相手の家庭が気になるわ

オープンじゃ興ざめだから、一応秘密にしなきゃならんわ

それでもちょっとは周囲に勘づいてもらいたいわ…何かとせわしい。


ぼんやりしているのに、せわしいとなれば

そこに様々なアクシデントが生じやすくなる。

仕事の能率を下げ、そこにいるだけで反経済活動を促進する。


不倫が増えると、離婚も増える。

児童扶養手当や生活保護が、公の財政を圧迫していることは、周知の事実であるが

最も深刻なのは、親の縁が変わり、翻弄される子供が増えることだ。


新しい父親、母親に虐待される子供の何と多いことか。

殺されたり、病院送りにならなくても

人知れず戸惑い、悩み、苦しむ子供はいる。

これで天真爛漫、素直で良い子に育て…というのは、あまりにもむごい。


だからせめて、母親だけでもしっかりしてもらいたい。

浮気部門は、借金部門や暴力部門と違い

母親の裁量だけで、コントロールが可能である。

子供は実際問題、痛くもかゆくもないからだ。


もうけっこう、さいなら…とすぐに言える心境と条件が

揃っていればいいが、そうでないほうが多い。

母親は、再出発するなら少しでも若いうちに…という焦りと

なかなかつかない決心の間で揺れ動く。

これが苦しい。


生命に関わるひっ迫した状況でなければ

進退の決心がつかないうちは、動かないほうがいい。

心境や事情で動けないというのは、今のままの自分では

やり直しでなく、繰り返しになるよ…というサインだ。


あらゆる手立てを講じ、勇敢に戦った戦士に悔いは無い。

その境地で下した決断こそが、正しいのである。

悔いのない判断には、新しい運命がそっと手をさしのべてくれる。

子供を絶望の淵に追い込むことは避けられよう。


ここで断っておくが

昔から、ごく少数の選ばれた者には、不倫をする資格みたいなものがあった。

家庭と仕事の往復だけでは生まれない世界を表現する

芸能人、芸術家などだ。


それから、政治や経済で国を動かすような大きな役割りを担う者。

有り余る体力に加え、スケベ心から生まれる柔軟な発想

人たらしの才能を持つ人材も必要なのだ。

皆が皆、生真面目な四角四面では、事がうまく運ばない。


ただし、そのような人間は、快楽の後始末も出来た。

妻子にも、愛人にも、経済的に充分なことがしてやれたし

本人に魅力があって、人から好かれた。

たとえ非業の死を遂げようとも、その覚悟は常にあった。


そんな人々が、要所要所にポツポツと配置され

多くの清い人間の勤勉とまごころとが合わさって

日本国家は運営されていた。

だからこそ、資源の少ない小さな島国、しかも敗戦国でありながら

他国の植民地となる憂き目にも遭わず

独自の伝統と文化を守って、先進国の道を歩んで来られたのだ。


ところが、我も我もと、一般コモノがこの真似をするようになって

このバランスが崩れた。

コモノには、小さな快楽を大きな知恵に変換する能力が無い。

後始末が出来ないので、泣く人間を増やす。


好き勝手をしているのだから、機嫌良く遊んでいればいいものを

コモノ自身も、なぜか面白くない。

思い通りにいかないのを周囲のせいにし、いら立ち

おこがましくも、あらぬ方向を恨む。


それら憎悪の念は、社会に渦巻く。

これがあなどれない。

憎悪の念が、各所で発信地となり、無関係の人にも影響をおよぼす。

人心をすさませ、やる気をそぎ、不機嫌を招き、いさかいを誘発する。


不況だ、大変だと騒いでいるが

不倫人口の増加と、まんざら無関係ではないと私は考える。

生きながら地獄に堕ちた畜生が、活力ある豊かな日本を作れるはずがない。

不倫とは、まさに亡国の大罪であるといえよう。


                 完
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不倫の意味・1

2010年05月01日 14時30分58秒 | 前向き論
「不倫」という二文字の意味を考えたことがあるだろうか。

不倫をする人は、意味をわかっているのだろうか。

わかった上でやっているなら、たいしたものだと感心する。


不倫が市民権を得たのは、もう何十年も昔…

デヴィ夫人と、俳優の岡田真澄氏(だったと思う)との恋が

噂された時だと記憶している。

男性に家庭があったことから、その仲を「不倫の関係」と形容され

それをきっかけに、不倫という言葉が頻繁に登場するようになったと

認識している。


ヨーロッパ社交界で、その美貌を“東洋の真珠”とうたわれ

数奇な運命を辿るインドネシア元大統領夫人と

二枚目俳優との豪奢な恋。

そりゃ、ステキだ。

物語だ。

ドラマだ。


有名人はそれでいい。

双方が確固たるステイタスを以て自立しているし

とびきりの美は、鑑賞に値する。

時代の先端を行き、話題作りをするのが彼らの使命である。


ところが、これに一般人が憧れ、格の違いもかえりみず

真似をするようになってからおかしくなった。

そこいらの不細工なニイちゃん、ネエちゃんも

むくつけきオジン、オバンも

既婚者と逢い引きしては外でパンツを脱ぐのが不倫と思い込み

我も、我もとインスタントに実行するようになった。


人々は、指をくわえてドラマを見るよりも、自ら演じたくなったのだ。

不倫は、努力無しで主役を演じられる便利なアイテムということに

一人、また一人と気づいていった。


それは大きな舞台ではなく、ごく個人的な余興の場にすぎないが

そんなことはかまっちゃいられない…とにかく主役がいいらしい。

その気になれば、一億総ヒーロー、ヒロイン時代の到来である。


フリンという発音は、耳ざわりが心地よい。

仏壇の鐘や風鈴をイメージさせ、なにやら良さそうなものと感じやすい。

日本人は、アルファベットのRが組み込まれた言葉を

聞いたり、発音するのを好む傾向があるという。

子供の名前にもよく使われるが、車の名前にも多い。

Rの文字が入った名前の車は、売れ行きが良いそうだ。


耳心地、口心地の良い単語であるがゆえ

ここに大きな誤解が生じる。

また、耳心地、口心地が良いからこそ

いっそう忌まわしく、まがまがしい言葉なのだ。


「不倫」という言葉ではなくて、もしも別の言葉だったら

ここまで浸透したかどうかわからない。

例えば「よそパンツ」「すけべズロース」「おのれ知らず」「恥交(ちこう)」

などと、かわいげのない言葉で形容されたなら

こぞってやりたがるとは思えない。

極端な話になるが「不倫」のネーミングは

日本をダメにするために仕組まれた、他国の陰謀ではないかとすら思う。


不倫の倫は、訓読みで「みち」と読む。

人が人として生きる道…つまり人間道の意味がある。

その人間道に不という否定がくっつけば、人の道ならずということになる。

人の道を歩めない、歩まない者は、人ではない。

つまり不倫は、ひとでなしを表わす熟語なのだ。

ひとでなしとは、畜生道に堕ちた者のことを指す。


人間と畜生の違い…それは

人の物と自分の物の区別がつくか、つかないかの差である。

損得と勝ち負けがすべての畜生には、区別が出来ないのだ。


畜生のぶんざいで、幸せだけは人間並みを求めるのは、無理というもの。

だから、求めても求めても、その飢餓感は永遠に満たされることはない。

無限地獄とは、その状態を指す。


不倫の二文字は、畜生の快楽を選んだがゆえに

人としての幸福を放棄した者の刻印である。

刻印は目印となる。

良いことは刻印を避け、招かれざるものは刻印を目印にやって来る。

心当たりのある人…いや、畜生は、多いはずだ。


それをあえて決行するなんて、まさにチャレンジャー。

何かと大変とは思うが、頑張って畜生道を全うしていただきたい。


                続く
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